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高木彬光
川島竜子・大前田英策シリーズ
Since: 2025.10.26
Last Update: 2025.10.26


      シリーズ主要登場人物

    川島竜子 (龍子) (大前田竜子)
     九州の鉱山主の娘で、親の反対を押し切り私立探偵川島雄太郎と結婚。夫の死後はその私立探偵事務所を引き継ぐ。当初は単独で事件に当っていて大前田英策をライバルとしていたが、助けられたたりしているうちに彼の求婚を受け入れ結婚する。結婚後も英策を助け事件に関与することもある。
    大前田英策
     大前田英五郎の子孫で私立探偵事務所をもっている。犯波探知機といわれるように、不思議と犯罪に関しそうな事件を自ら調査に当ったり、偶然出くわすことが多い。行動的な探偵で犯人を罠にかける事も多いが、トリックを暴いたりもする。
    警察関係者
     松山警部は竜子の父の知人で子供の頃から竜子を知っていて相談相手でもある。
     黒崎駒吉警部は大前田英五郎に対抗心を持つ一方、情報を与えたり便宜をはかるなどフェアなところがある。
    探偵事務所関係者
     池内佳子は秘書であるが、事件解決に一役買うこともある。
     野々宮青年は助手として、主として調査や尾行を行うが、英策と共に事件解決に一役買うこともある。
     その他、数人の調査担当員がいるらしい。


      作品

    1. 「七つの顔を持つ女」
    読切傑作集増刊、別冊 1955.09.〜10.
    『浮気な死神』『犯罪蒐集狂』『恋は魔術師』収録
     轢死寸前の男を警官が助ける。ブラック・エンジェルにやられたという。男は交番に現れた医者に毒薬を注射され死ぬ。東洋新聞社会部山崎敏男記者は被害者は戦友の加藤寛一ではないかと調査する。商事会社社長鹿島陽子とバーで会っていたのを見ていたので訪れ話を聞く。占者三津枝に話を聞く。行方不明の兄が寛一で川島竜子にも聞かれたという。捕らわれる三津枝。襲われる敏男と助ける夜桜お時。黒い天使が現れるというキャバレー。赤いドレスの女、宝石商の銃殺。溝口警部。麻薬。朱文明。運転手大須賀慶子。敏男は川島竜子に助けを求め……。
     川島竜子単独の事件。

    2. 「姿なき女」
    朝日芸能新聞 1955.11.06〜1956.01.01
    『姿なき女』収録
     私立探偵川島竜子が不在中に弓田慶子という女が来て指を置いて行った。松山警部と共に夫の写真家弓田金三郎に会う。そこに電話で川辺鋭一の家に送られたトランクに死体が入っていたと報告を受けて行く。慶子の死体で竜子を訪れた以前に殺されていた。マダム篠原恭子、慶子が初恋の相手だったカメラマン山名竜造、幽霊の訪問、川辺の事務所に現れて消えた女。川辺宅の窓に印された指の欠けた手形。竜子は女を追って逆に……。
     川島竜子単独の事件。トリッキーな部分もある。

    3. 「顔のない女」
    小説倶楽部 1955.12.
    『浮気な死神』『犯罪蒐集狂』『顔のない女』ほか収録
     夫雄太郎の死後、遺志ををついで川島探偵事務所所長となった竜子。新宿の喫茶店ラムール二階に顔のない女が殺人をするという手紙に誘われて行く。顏に唇のみの絵に接吻して死んだ画家倉田雄三。雄太郎と親しかった警視庁松隈警部補。倉田の絵を購入したマスター相馬健夫、モデルだというマダム春江。倉田の家からの盗難、健夫をモデルにした対の絵の盗難。小松園子。竜子は……。
     川島竜子単独の事件。

    4. 「暗黒街の帝王」
    小説倶楽部増刊 1956.09.
    『浮気な死神』『顔のない女』『五人の探偵たち』ほか収録
     私立探偵川島竜子は私立探偵大前田英策と会う。竜子は村田康子からの依頼でシェヘラザーデからの手紙で船乗りシンドバットの面会に立ち会うことになっていた。男は来ず、金と宝石が渡された。康子の依頼は英策が竜子に廻したもので、宝石は殺された戸塚綾絵のものだと英策は指摘する。松隈警部補。康子の父雄造、桑原商事社長桑原詮造、賭場アラビアン・クラブ会員恩田愛子、支配人洪秀明、青木辰雄、斎藤玲子、英策襲撃、竜子拉致。英策は……。
     川島竜子と大前田英策とが対立し助け合いながらの事件。

    5a. 「黒魔王」(初出中編版)
    明星 1957.01.〜10.
    『高木彬光探偵小説選』収録
     江島慶子の恋人東洋新聞社会部記者湯浅勝司が黒魔王と書き残して行方不明になった。慶子と湯浅の同僚真鍋勇吉は庄野健作の家へ行くと謎の男が応対し女の死体が見つかる。赤沼警部、大前田英策、大塚財閥の遠縁近藤みどり、一月前に死んでいた夫君雄。攫われる慶子。モデルでみどりの友人秋山みつるが預ったもの。英策と黒魔王。ホテルでの殺人。みつるの叔母大塚君代、大塚悠子未亡人、長男徳太郎、次男福二郎、妾腹の子みつる、君雄。ブラジル帰りの今川行彦。ダイヤ蒙古王。襲われる竜子。仮想舞踏会での殺人。英策は黒魔王と対峙し……。
     大前田英策は川島竜子を助け求婚する。

    5b. 『黒魔王』(長編改稿版)
    東京文藝社 1959.04.25
    論創社 ほか
     大前田英策はブラジル帰りという今川行彦の依頼でハート形のあざのある娘慶子と妻澄子の行方を探し京都へ行き、同じ調査を依頼された川島竜子と会う。宝石商杉山康夫と近藤の話の中の蒙古王。帰途の汽車での近藤君雄が毒殺され黒魔王と書かれた名刺が残されていた。赤沼警部、財閥当主大塚徳太郎、東洋新聞記者湯浅勝司と恋人小宮裕子、近藤の妻マダムのみどり。大塚徳太郎と妻陽子、弟福二郎と妻君代。黒魔王からの脅迫電話。画商藤木静雄。助手野々宮の近藤みどりの尾行と庄野健作の家。みどりの絞殺死体。 阿部利弘と小宮裕子が勝司が裕子に渡した封筒に記されていた場所を訪問していた。赤沼警部と黒崎警部。秘密部屋の祭具。荒らされていたみどりの部屋。裕子と利弘の話。デザイナー脇村鶴代からの電話で裕子が英策を装った男に連れ去られていたのがわかる。モデル秋山みつるは裕子から預かっていたものがあった。黒魔王からの電話で水野という家に乗り込み竜子と裕子を救出する。ホテルでの殺人。今川行彦と裕子の対面。撃たれた竜子、助ける英策。徳太郎の絞殺死体、ダイヤ。二つの死体、そして対決……。
     中編版から関係性や出来事を追加するなど、不自然さが少なくなっている。

    6. 「犯罪蒐集狂」(「犯罪収集狂」)
    講談倶楽部 1957.02.
    『犯罪蒐集狂』『恐怖の蜜月』ほか収録
     丸福デパートに毎日スリッパを買いに来る男を店員池田和子が相手をしていると男が銃殺された。現場にいた私立探偵大前田英策。男は依願免職になった滝川信夫だった。M百貨店のパイプ、紅屋デパートのカフスボタン。紅屋デパートの店員木下敏江は滝川と結婚しようという仲になっていた。和子が射殺され、英策は……。
     奇妙な買物に面白みがあるかも。

    7. 「暗黒街の逆襲」
    小説倶楽部 1957.02.〜03.
    『東京秘密探偵局』『顔のない女』ほか収録
     私立探偵川島竜子に吉原富美子から行方不明になった妹富士枝の捜査依頼があった。和田倉健吾の家へ行くと殺されていた。竜子は英策に助けを求める。麻薬関係者山本耕治。雪村静枝から姉佳枝を探して欲しいとの依頼があった。山本は佳枝を、和田倉は麻薬を、犬上蔵吉は家を、近藤秀作は宝石を賭けた麻雀があり和田倉が勝ったという。チョップの鉄の襲撃、竜子の拉致、犬上の射殺死体。大蒙古といわれる宝石。英策は……。
     川島竜子が少し弱くなった印象がある。

    8. 「殺しますわよ」
    週刊東京 1957.02.09〜16
    『大前田探偵局事件簿』『恋は魔術師』ほか収録
     私立探偵大前田英策は木原裕二から金時計を取り戻して欲しいと依頼される。盗んだのは一夜を共にした鈴石歌子だが彼女はすられたという。歌子に会って話していると警官が来る。戸塚警部補の話では歌子が殺しますわよといっていた野原春枝が殺されたという。時計を持っていた歌子の男ジャッキの鉄。春枝の情夫砂原道夫。アリバイ。英策は……。
     少しだけトリッキーな作品。

    9. 「恋は魔術師」
    週刊東京 1957.03.23〜30
    『大前田探偵局事件簿』『恋は魔術師』ほか収録
     私立探偵大前田英策は酔っている時に神社の境内で香川えり子の絞殺死体を見つける。えり子の元恋人藤本貢は美澄と結婚していた。貢への容疑、美澄の英策訪問。えり子の叔母篠塚佳枝、易者八十島朋斎、佳枝の義弟篠塚三郎。脅迫状。英策は……。
     偶然が多く感じるが易者の登場など作者らしくもある。

    10. 「浮気な死神」
    週刊東京 1957.05.04〜11
    『浮気な死神』『大前田探偵局事件簿』『恐怖の蜜月』ほか収録
     同じ町内に木村実という同性の人がいた。貿易会社重役と妻世津子、教師とデザイナーの妻あや子。大前田英策はあや子からの依頼で弟則夫の縁談相手永瀬敏江の身元調査報告を持っていく。敏江、モデル泉麗子らが来て送られたチョコレートを食べると麗子が毒死する。重役とあや子は昔の恋仲で重役は世津子と別れて麗子と結婚するつもりだったらしい。麗子に送られていた脅迫状。英策は……。
     同性同名宛の配達物という設定の妙がある。

    11. 「人を呪わば」
    週刊東京 1957.06.15〜22
    『大前田探偵局事件簿』『恐怖の蜜月』ほか収録
     私立探偵大前田英策は佐野健夫から妻えり子と男の仲を、えり子から夫健夫と友子の仲を調査して欲しいと依頼される。健夫は拳銃の名人だった。えり子と猟銃をもつ久岡伸吉。助手野々宮青年の調査。夜、えり子から桜上水の橋で夫が銃撃されたと連絡があり駈けつける。マッチの灯、自宅の二階の明かりと人影。二階の状況と橋桁。英策は……。
     トリッキーでロジカルな部分もある作品。

    12. 「魔炎」
    週刊東京 1957.07.27〜08.03
    『お前の番だ』『大前田探偵局事件簿』『恐怖の蜜月』ほか収録
     秘書池内佳子の案内で大前田英策は妙なことを言う男と会う。封筒を預け週一の連絡と入金がなければ殺されたと思って開封し犯人を捕えて欲しいという。五重の塔炎上の絵とHOHOのサイン。野々宮青年の尾行と調査。男は麻薬製造のベテランで刑務所から出てきた大沼清三とわかる。神社社殿の焼死死体、画家山際達男と竜崎園子の小学校の放火心中事件があったことがわかる。HOHOのサイン。山際の妻、マダム、竜崎三郎。英策は……。
     絵とサインの謎は悪くない。雑誌掲載と単行本収録では差異があるとのこと。

    13. 「お前の番だ!」
    面白倶楽部増刊 1957.08.
    『お前の番だ』『大前田探偵局事件簿』『恐怖の蜜月』ほか収録
     私立探偵大前田英策は友人吉富節夫と飲んでいると千円札が燃えながら落ちてきた。女を追うが殴殺されていた。女は津島あけみで、警察に呼ばれてから元気がなかったという。あけみは大阪の社長荻野三郎の東京妻で、従兄の津島久夫が関係をもっていた未亡人小森恭子の絞殺犯の容疑者となったとき一緒にいたという。恭子の親類丸石勝吉、津島久夫の指名手配、騙されていた女。英策は……。
     導入部は放火になりかねず現実的ではないが興味を引かれる。

    14. 「死恋」
    週刊東京 1957.09.07〜14
    『三尺の墓』『恐怖の蜜月』ほか収録
     私立探偵大前田英策は殺人への招待状を受け取る。女優吉岡みよ子と社長新間敬三の結婚披露宴が予定されていた。みよ子の先夫は無産党員加藤健吉で地下に潜って行方不明だった。英策はみよ子に会う。女優浦辺京子の話ではみよ子宛に毎日脅迫状が来ているという。京子と英策がみよ子の家へ行くと敬三の妻和枝の死体が見つかる。自殺らしい。英策はなおも調査する。和枝の友人内海鎮子の話。英策は不審に思い……。
     導入部は殺人への招待状ということもあり興味を引かれる。

    15. 「蛇魂」
    講談倶楽部増刊 1957.10.
    『お前の番だ』『東京秘密探偵局』『顔のない女』ほか収録
     大前田英策は石垣由美子から彼女を蛇といった予言者水口宇宙夫の調査と夫石垣正二郎の殺人で十五年の刑になるとの予言の調査を依頼される。新妻竜子は水口に会う。英策夫妻は由美子からの正二郎毒殺の電話でかけつける。強精剤のカプセル。正二郎の弟賢三郎、医者外村数男。逮捕。英策は……。
     易者の調査など作者らしくもある。新妻となった竜子も活躍する。

    16. 「女を探せ」
    週刊東京 1957.10.19〜26
    『お前の番だ』『東京秘密探偵局』『顔のない女』ほか収録
     秘書池内佳子の案内で大前田英策は藤間章男に会う。結婚予定の杉浦栄子が投身自殺したことになっているが、隣の川村京子が直後に引っ越していて探して欲しいという。京子のところにシャロック・ジョンという逃走中の男が来たのを見たという。管理人の話、保証人今義之の細君の話。京子の友人久保田悦子。悦子の轢死。襲われる英策。新妻竜子。京子から英策への誘いの電話……。
     身近に起こり得る恐怖でもある。新妻竜子も登場。

    17. 「失われたダイア」
    産経時事 1957.11.10〜12.08
    『姿なき女』収録
     大前田英策は赤木雄造の依頼でY・Aという刺青のある娘安子を探し出したが、松村安子が本当の娘だというので会いに行くと毒殺されていた。情夫阿部勇吉、雄造の妻由子、現場にあったダイア。英策は……。
     刺青による人物特定を用いた作品。

    18. 「着衣の裸像」
    週刊東京 1957.11.30〜12.07.
    『お前の番だ』『大前田探偵局事件簿』『恋は魔術師』ほか収録
     私立探偵大前田英策は小島京蔵から海岸での娘頼子のヌード写真が婚約者津川喜久雄に送られたことに関しての調査を依頼される。仲人手塚良平。野々宮青年の調査。赤外線フィルム。英策は頼子に会い確かめるが撮ったことはないという。京蔵の殺人事件という電話で英策はかけつける。津川喜久雄が頼子の自殺ということでかけつける。家政婦内海とく子、頼子の兄久一。京蔵の毒死、頼子の絞殺死体。英策は……。
     写真を用いたややトリッキーな作品。

    19a. 「悪魔の火祭」(初出短編版)
    読切小説集 1957.12.
    『朱の奇跡』『帰ってきた探偵たち』収録
     大前田英策は青森から来た増長栄子から姉三津子が刺青を彫っているが夫の農林中央金庫勤務神田徳男と別居中、その理由を調べて欲しいと依頼される。女彫物師駒子の話。土木建築業社長村松良平と美津子との関係。新妻竜子は徳男を尾行するがまかれる。報告に行くと栄子が殺され化人の花笠を抱いていた。三津子の話。栄子の片思いの恋人小岸佳仁。良平との会談。英策と竜子は青森浅虫温泉へ行き徳男が乗ったらしい福宝丸の沈没のことを聞く。青森ネブタ祭り。花笠を抱いて殺されていた第二の事件。英策は……。
     刺青と青森ねぶた祭りを用いた作品。真相もやや意外性がある。

    19b. 『悪魔の火祭』(長編改稿版)
    桃源社・推理小説名作文庫7 1958.04.05
    角川文庫 ほか
     大前田英策は青森から来た増長栄子から姉三津子がネブタ祭りの化人の刺青を彫っているが夫の農林中央金庫勤務の神田徳男と別居中でその理由を調べて欲しいと依頼される。英策は女彫物師笠岡駒子に話を聞く。新妻竜子は徳男の話を聞くと刺青を知って別れたという。野々宮青年の尾行で土木建築業社長村松良平と美津子の関係がわかる。中間報告に行くと栄子が殺され化人の花笠を抱いていた。 三津子の話。栄子の片思いの恋人小岸佳仁。良平との会談。比良のおかみ佐藤よし子、花村おかみ吉野千恵子。闇ドル、外れ馬券、株の損失。英策と竜子は青森浅虫温泉へ行く。徳男が乗ったらしい福宝丸が沈没したという。駒子や佳仁と会う。ネブタ祭り。三津子と栄子の実家の宿屋に泊まる。花笠を抱いて殺されていた、第二の事件。英策は……。
     関係人物のことや描写などが盛られて、より錯綜した感じとなっている。

    20. 「二十三歳の赤ん坊」
    別冊平凡 1958.02.
    『三尺の墓』『二十三歳の赤ん坊』ほか収録
     大前田英策は殿村喜一郎に呼ばれていくが姪の久子は依頼を受けないでほしいという。喜一郎は二十三年前赤ん坊の進一を盗まれていたが、赤ん坊をそのまま渡すという連絡を受けたという。妻喜代子は十年前に死亡、久子と夫小沼純を養子にするつもりだという。謎の人物からの電話で公園に行き赤ん坊を見つける。銃声、男の死体。投書により疑われる英策。英策は……。
     年をとらないままで子供を渡すなど不可能的な状況が興味深い。

    21. 「魔の首飾」
    週刊東京 1958.02.22〜03.01
    『三尺の墓』『魔の首飾』ほか収録
     私立探偵大前田英策は永岡鋭子から額縁に隠されていたダイヤの首飾を見つけるが夫の会計課長の雄次と別居中で出所を突きとめるように依頼される。英策が雄次に会うと脅迫されたと警察をよばれる。鋭子から雄二が殺されたとの電話。窓から見えた黒い女の影。首飾は芦屋でサンダー夫人が殺され盗まれたものだった。雄次の妹桂子の死。英策は……。
     宝石を巡って起こる人間模様。

    22. 「掌は語る」
    週刊東京 1958.04.05〜12
    『三尺の墓』『魔の首飾』ほか収録
     助手の野々宮が殺人の時効の問い合わせ電話を受ける。大前田英策は黒田貞子と会う。昭和十八年三月五日に前夫米岡次郎が山部省吾を殺害したのを見たという。米岡は復員で佐世保上陸後行方不明、貞子は黒田勝弘と結婚していた。黒崎警部に聞くと貞子が刺殺されたという。掌の丸い三つの血痕。勝弘は米岡次郎が憲次と改名していた事を知っていた。憲次の逮捕と妻君子の話。葬儀の場で英策は……。
     時効ギリギリの事件が元での新たな事件。

    23. 「恐怖の蜜月」
    新生 1958.05.〜06.
    『幽霊復活』『恐怖の蜜月』収録
     秘書池内佳子の友人小野はるみは大前田英策に久我山利子の調査を依頼する。歌手小野三郎と新婚旅行中つきまとった女で後に正体が判ったという。ピストルで撃たれ殺されそうになったともいう。英策が利子に会いに行くと殺されていたが、つきまとった女ではないという。犯行時刻頃の三郎の目撃者、三郎の行方不明。三郎の居所を知らせるという電話で英策ははるみと行く。斎藤のり子と名乗る女からの電話。三郎の死。英策は……。
     記憶喪失とその過去に起因する事件。

    24. 「三尺の墓」
    週刊東京 1958.05.17〜24
    『三尺の墓』『魔の首飾』ほか収録
     大前田英策は黒崎警部の紹介で来たブラジル移民二世の大森敏行から姉パウリスタ敬子の失踪調査を依頼される。父の故郷秋田県射水へ墓参し秋田へ行く途中にいなくなったという。本家大森銀次郎、妻絹代、妹恭子。銀次郎の弟で旅館を営業している龍吉と妻久子。秋田で会うことになっていた熊谷京一。偽物という噂。黒眼鏡の男。土砂崩れで発見された死体。英策は……。
     偶然というべきか運命というべきか。

    25. 「幽霊復活」
    週刊東京 1958.06.28〜07.05
    『幽霊復活』『二十三歳の赤ん坊』ほか収録
     大前田英策は秘書池内佳子から幽霊屋敷を買った女がいて事件が起こりそうとの手紙を渡される。七年前権藤豊吉が自殺し半年後妻文子が姿を消して弟権藤貞吉のものとなったが、半年前能勢妙子が買ったという。能勢妙子が来て女の泣き声が録音されたレコーダーがあったという。旦那木谷堅蔵、妙子の弟茂彦、お手伝い吉本はるえ。英策が行って話していると妙子が毒殺された。ジュースの瓶、コップに入っていた形跡はなかった。同時期に家を買おうとしていた須川輝吉。英策は権藤豊吉の事件を調べ……。
     幽霊を利用した事件。

    26. 「猿を飼う家」
    読切小説集 1958.09.
    『幽霊復活』『二十三歳の赤ん坊』ほか収録
     大前田英策は戦友三上重吉から依頼される。諏訪の竹代で衣笠よし子がピストルで狙われたという。脅迫状でブラジルの実母の遺産を生きていれば受け取れることになっていたがその前に命をとるということだった。毒入りチョコレートの未遂事件もあった。英策は衣笠家へ行く。衣笠義雄、妾小松直子、妹頼子、よし子を口説いていた近藤省吾、猿のポリ。よし子が銃殺される。技師鯉沼春二郎。道ばたで見つかったピストル。英策は猿の習性を研究し……。
     鳴き声としては少し違うような。

    27. 「殺人阿呆宮」
    講談倶楽部 1958.11.
    『幽霊復活』『恐怖の蜜月』ほか収録
     私立探偵大前田英策は社長竹田信三に同行を依頼される。関係を持っていた外村芳子からの殺人予告が来ているという。英策は信三、女優藤沢まり子、杉野時江と全裸仮面舞踏会に出かける。まり子が刺殺され信三が眠らされていた。支配人、経営者呉文春。警察の手入れ。凶器の持ち込み方法。さらに毒殺が。英策は……。
     凶器の持ち込み方法が鍵となる事件。

    28. 「暗黒街の密使」
    傑作倶楽部 1958.11.〜12.
    『暗黒街の鬼』『魔の首飾』ほか収録
     私立探偵大前田英策は秘書池内佳子から井上すみ子が来て密輸用の特製の靴を預けてまた来るという事を聞いたが来なかった。暗黒街の密使と名乗る男からの脅迫電話。英策は横浜の軍隊当時の仲間中川清蔵を訪ね聞く。すみ子のいる桜木町の酒場ラムールでは麻薬取引があるという噂を聞く。ラムールのマダム勝枝。電話でかけつけるがすみ子が刺殺されていた。すみ子と関係のあった近藤雄吉、信岡源基、中川清蔵。英策はすみ子の友人藤田はるみに会うが殺される。勝枝の旦那関谷豪一。英策は……。
     名刺は今は昔のことような気も。

    29. 「よろめきの終幕」
    週刊実話 1958.11.27
    『幽霊復活』『魔の首飾』ほか収録
     大前田英策は広瀬洋子から劇作家弓田道夫が殺された事件の謎を解いてほしいとの依頼を受ける。その事件で杉野三郎が指名手配されていた。洋子は道夫が戦地で生死不明になり百々雄と結婚、道夫は帰国し可奈子と結婚していた。洋子は道夫の子を産んでいて百々雄が犯人ではないかという。黒崎警部に事件を聞く英策。テレビに出ていた百々雄。目撃されていた道夫と杉野三郎。英策は……。
     想像が多すぎるような。

    30. 「妖異大土教」
    週刊漫画サンデー 1959.08.25〜09.01
    『暗黒街の鬼』『二十三歳の赤ん坊』ほか収録
     大前田英策は藤本富美子から調査を依頼される。大土教を信じていた夫達夫が死に、石沢茂医師が死因不明ということで吉野博士を呼ぶが到着した時には死体が消えて小さな土の山が残っていたという。藤本家へ行く英策。富美子の弟剛一、お手伝い永井和江。石沢医師の話。石沢医師が裏山で懐に土饅頭を入れて殺されていた。看護婦小島令子、石沢医師の甥賢治。達夫の死の前の行動。英策は……。
     宗教にまつわる不可解な事件。

    31. 「飛びたてぬ鳥」
    週刊大衆 1959.11.09
    『暗黒街の鬼』『魔の首飾』ほか収録
     私立探偵大前田英策は宝石商横井良雄から殺人犯の罪から救うことを依頼される。吉沢という人が宝石を処分するというので面会することになったが来ず、女に合鍵を渡され行くと男が殺されていたという。英策は黒崎警部に連絡し、現場に行くと宝石ブローカー森田重一が殺され宝石が盗まれていた。弟健二の話。英策は羽田空港で……。
     唐突ともいえるが条件的には納得。

    32. 『断層』
    桃源社・書下ろし推理小説全集7 1959.12.25
    角川文庫 ほか
     小山三郎が出所して上野駅に着くと女が待っていた。三日後、荒川放水路土手の薮で小山の射殺死体が見つかった。黒崎駒吉警部と大前田英策との対話。十年前、強盗殺人で貴金属ブローカー篠原詮造を殺した四人組、主犯として中橋源一が死刑、小山と成田大作が十五年、横須賀譲治が七年で別の犯罪で再度収監されていた。中橋はもう一人別に主犯がいると自供していた。千葉刑務所を出た成田、保護司は推理作家の小松直樹。女に誘われる成田。 荒川の工場のかげで成田の刺殺死体が見つかる。英策と竜子の対話。英策は小松と宮城刑務所に行き横須賀と面会、英策は保護司をかって出る。謎の女。中原の女井上とみ子。小山の保護司小檜山徳太郎の妻蘭子。留守中の竜子の野々宮を使った調査。英策と小檜山、後藤弁護士。五番目の男金山長吉。横須賀の出所。竜子と横須賀。小檜山の妾の吉田しげ子と蘭子。英策は襲われかけ……。
     過去の犯罪が起因する事件。千葉の保護司は楠田匡介の本名と類似しているので設定などで影響がありそう。

    33. 「暗黒街の鬼」
    傑作倶楽部 1960.06.〜07.
    『暗黒街の鬼』『二十三歳の赤ん坊』ほか収録
     大前田英策は江藤澄子と会う。亭主は金高組の吉田公三で別れるなら殺されるという。澄子はバーはるみの殺人犯は公三で刑務所に入れて欲しいという。兄弟分の尾上進作との仲も疑われている。英策は公三に会いに行くと組の身内内藤文雄が飛び出してきて進作が殺されたという。公三が指名手配され、組長金高清太郎は公三を破門、澄子を保護する。一ヶ月後、澄子は英策に会い帰途射撃される。清太郎の二号大村とみ子、澄子の父一家三人殺し、澄子の負傷、清太郎が殺害され英策は……。
     大前田英五郎の子孫らしいといえそうな作品。

    34. 「死の色のヌード」
    別冊実話特報 1960.07.
    『暗黒街の鬼』『二十三歳の赤ん坊』ほか収録
     大前田英策は大崎芳江から死を思わせるような紙片を受け取りパラダイスへ来るように言われる。黒崎駒吉警部の話では賭博が開帳されているらしい。友人酒井裕一と行きインドの舞姫のストリップを見る。英策は大崎芳江に会おうと楽屋へ。ボーイ荒木信治、支配人田島耕造。殺されていた芳江。耕造とストリッパー関真砂子、支配人津島敏郎と芳江の妹弓江。芳江の前の男矢口達夫、耕造の前の女井上勝子。英策は……。
     目のつけどころは良いがストリップは無理があるような。

    35. 「蛇の罠」
    別冊週刊大衆漫画ストーリー 1961.02.25
    『姿なき女』収録
     大前田英策は昔世話になった秀村専一郎のわすれ形見の玲子とナイト・クラブ見物をしていた。蛇の女を見て玲子は両棲類の講師の彼岸本信明の家へ入っていくのを見たという。英策が岸本家を訪問すると父義一が専門の蛇の毒で殺された。蛇使いの訪問客坂井道則、飼育係松岡安男、義一の妹小野寺満代、甥佐川敬二郎。ダンサー吉野マリがチョコレートに入った毒で殺される。英策は蛇の習性を利用し……。
     蛇の習性といえるかどうか。知っていそうな気もしないではない。

    36. 「裸女と鍵束」
    別冊週刊大衆漫画ストーリー 1961.04.22
    『恐怖の蜜月』ほか収録
     大前田英策はセミ・ヌードの女が飛び出してきたアパートで男の死体を見つける。発見者緒方和子、駆け落ちして行方不明の姉信子の夫猪口繁男が被害者、部屋の借主島谷織江。和子は連れ込んだ男は繁男ではなかったという。洋服を入れて鍵がかけあった箪笥。無くなっていた鍵束と荒らされていた繁男の自宅。和子に恋する丸田新一郎。ダンス教師大沢良三。信子と竹中政彦。英策は……。
     着物を箪笥に入れて鍵をかけるという行為は不確実のような。

    37. 「殺人予告篇」
    別冊週刊大衆漫画ストーリー 1961.07.08
    『姿なき女』収録
     大前田英策は北斗製氷会社専務取締役石田鉄二から消えた死体の謎を解決して欲しいとの依頼を受ける。兄宏一が引っ越して空家の家を庶務課の森岡信男と見に行くと女の死体があり、警察を呼んでいるうちに消えたという。英策と鉄二と森岡がその家に行くと会計の瀬川綾子の扼殺死体があった。社長松崎義明、綾子と一緒に映画を見た大西令子。不動産屋竹林千蔵。令子が毒殺され合鍵が見つかる。英策は……。
     少しだけトリッキーなところがある。使い古されたものではあるが。

    38. 「夜の野獣」
    小説倶楽部 1961.11.
    『姿なき女』収録
     大前田英策が道を聞きに交番に寄ると妻を殺したという男が来た。三十回目位だという。好奇心でその柏田透と行くと妻糸子が絞殺されていた。柏田は楠山冴子のところにいたという。糸子の浮気相手平出達夫の逮捕。達夫の妹好子は英策を訪れる。ジャッキの鉄という男。透が殺してきたと交番に現れる。英策は……。
     神津恭介物「加害妄想狂」1954.06.の大前田物化といえる作品。

    39. 「失われた過去」
    別冊週刊大衆漫画ストーリー 1961.11.10
    『姿なき女』収録
     大前田英策がバーで飲んでいると女給の晴美は六年前に横浜で刺されて記憶を失くしたという。晴美は由井晴之に会えば過去がわかるという手紙を受け取り、英策と二人で行く。木下貴美子に過去を告げてはいけないという手紙がきた。由井がウイスキーに入った毒で殺される。二人のグラスにも毒が入っていた。由井は刑務所から出て二ヶ月だった。事務所に来た添田恒一は晴美が死んだと思われている妻ではないかという。英策は二人が会うところを……。
     神津恭介物「冥府の使者」1950.03.の大前田物化といえる作品。

    40. 「ショックで殺せ」
    小説倶楽部増刊 1962.03.
    『姿なき女』収録
     大前田英策は金沢道子から離婚の原因となる夫敏行の行状の調査を依頼される。敏行は大脳生理学専攻のもと助教授で霊波を研究していて、念波力をもつという関森幽斎が出入りするようになったという。義理の兄菅原周太郎が来る。周太郎からの電話で行くと妻恵子が心臓麻痺で死んでいた。幽斎も念波で殺したという。道子の恋人春山馨。襲われる英策。英策は道子と……。
     少しだけトリッキーなところがある。使い古されたものではあるが。題名が良い。

    41. 『狐の密室』
    問題小説 1977.04.〜05.
    徳間書店トクマノベルス、角川文庫
     私立探偵大前田英策は秘書島崎敏男を伴った京都の室松産業社長の室松源右衛門と秘書島崎敏男から息子源一郎が結婚しようとしている龍良教教主池上弘澄の後継者と目される弘善の調査を依頼される。弘善は源右衛門の戦前京城で生まれた子ではないかという。また結婚に反対、賛成と二通の脅迫状を受け取ったという。妻龍子は東京で弘善の過去調査を指揮し、英策は長浜の教団本部に調査に赴く。 総務局長田野木若彦、財務局長小畑忠太郎、外務局長三好田進一、道頂、護源、仁月尼、運転手関根隆。近江舞子の御堂で弘澄が絞殺されていた。雪の密室だった。弘善の叔母飯野時子。龍子の提案で神津恭介に助力を求める。長浜での第二の事件、毒殺……。
     神津恭介へ大前田英策と龍子が助力を乞う共演作品。離れた場所に同時に現われたり、密室的な不可能興味のある作品。


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