大慈宗一郎(だいじそういちろう)略年譜
1910.xx.(明治43年) 東京にて生まれる。本名は三浦純一。父は日本橋の商店?北海道炭礦重役?
1935.03. 同人で探偵文学を発行、発行元(探偵文学社)となる(母の援助)
1935.04. 探偵文学で江戸川乱歩号を発行
1936.01. 「雪空」を探偵文学に掲載
1938.頃〜 サラリーマンに戻り経理担当
1941.頃 文学建設に同人参加
1946.〜1947.04. 中島親と共に雑誌ロックの編集顧問となる(3号から)※辞任はクラブ会報1948.01.消息欄
19xx.xx. 不動産会社専務で現役引退
1992.12.20(平成4年) 死去
筆名は、大慈宗一郎、三浦純一、S・D、宗一郎
探偵小説
- 「帰郷(コント)」
( ぷろふいる 1935.05. ) |
彼は東京から流れてきたルンペンだった。不景気で会社員から労働者へ、そして健康までも奪われ自殺しようとしてていた。故郷に近い原っぱで歌う。海のような青空、羊のような雲を追う番犬のような飛行機……。 |
皮肉な結末ではあるが、心象と情景描写のみの作品。 |
- 「雪空」
( 探偵文学 1936.01. )
EQ 1990.03.
『こんな探偵小説が読みたい』鮎川哲也 晶文社 1992.09.15 |
私正夫は信州N温泉の宿屋松屋に生まれ、母およしは私を生んだ後に死に、父良平と兄二人がいました。私が十五の時に行商人の子とわかり、女中おせいも話してくれました。元女中のお光の子で一つ下のお静が女中として来ました。私は好きになりました。おせいが死に、父も死に、お光が死に際に残した兄宛の手紙で……。 |
哀れな結末の物語。明かされる出生の謎は少し意表をつかれる。 |
- 「インチキ」
( 探偵文学 1936.06. ) |
ユーモア作家神田君の話。インチキという題で八人がコントを持ち寄った。一等は丸子文八で神田君は読む。T子は死んだ、愛を求めながら……。 |
妙な話。面白いのか面白くないのか。 |
- 「猪狩殺人事件(四)」 (連作:覆面作家(小栗虫太郎)/中島親/蘭郁二郎/大慈宗一郎/平塚白銀/村正朱鳥/伴白胤/伊志田和郎/荻一之介)
( 探偵文学 1936.08. )
『「シュピオ」傑作選 幻の探偵雑誌3』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-03) 2000.05.20
『諏訪未亡人/猪狩殺人事件 合作探偵小説コレクション6』日下三蔵編 春陽堂書店 2024.03.26 |
小栗虫太郎が冒頭部のみで未完の作品を提供。(室蘭北方七里の炭坑町猪狩、猪狩新報記者田母澤大五郎は楠川医学士の醜聞取材で病院へ行くが留守。最上検事の車を見かけて乗り込み蒲原牧師の娘笠尾が殺されたのを知る。軽便鉄道松猪線が上下線共に七分進んでいた。)(樫本警部宅に探偵小説家大月蘭亭が来ていて事件のことを話す。「クス」と断末魔に書かれた便箋があった。容疑者は楠川医学士、軽便鉄道の機関手矢吹久壽夫、白系露人のクスターロフ。)
(大月蘭亭は「谷間の灯」の唄声を聴きバー・オーロラに入る。青年が女に笠尾が殺されたと告げ定代に会うため奥へ入っていった。)田母澤は蒲原家付近で拾い物をした後、バー・オーロラで大月蘭亭を見かける。(「屋上の殺人」を褒めて大月蘭亭に話しかける田母澤。潮定代の叫び声で奥へ行くと青年が殺されていた。)(大月、樫本警部、田母澤の話し合い。)(病院で受付野崎青年や看護婦への聞き込み、樫本警部との話。)(大月の定代の聴取、三人の話し合い、自殺の報。犯人は誰か?)(樫本警部から大月への手紙で真相が明かされる。) |
企画立案、舞台情報提供者か。四話担当、単独でみれば特に大きな動きもない。 |
翻訳
- 「娯楽トシテの殺人」
原作者:カスリン・フラートン・シヱランド ( 探偵文学 1935.12. ) |
随筆など
- 「ふぃやーす・おぶ・とれいん」
( 探偵文学 1935.03. ) |
汽車。事故の恐怖。轢死自殺や他殺。汽車内での殺人。アリバイ作り。 |
- 「(編集後記)」S・D
- 「(編集後記)」宗一郎
- 「”鍵に就いて”」
( 探偵文学 1935.06. ) |
作者が読者に与える鍵、手懸りはどの程度与えればよいのだろうか。セイヤーズの四つの描写方法の型。具体例。論理的常識的に判断できる鍵、フェアプレー。 |
- 「(編集後記)」SD
- 「完全犯罪に就いて」三浦純一
( 探偵文学 1935.10. )
『二十世紀鉄仮面 昭和ミステリ秘宝』小栗虫太郎 扶桑社文庫(S04-02) 2001.02.28 |
再読、感心。犯人当ての鍵は特殊。信じさせられた読者を引きまわすのが樂。密室より笑い声が主。動機。感心しないところもあるが、読んでいるときには感じない。優れた作品。 |
「(新刊評)」 探偵文学 1936.01.
- 「断片」
- 「木々高太郎氏を囲み―三五年度探偵小説合評座談会」中島親、大慈宗一郎、荻一之介、伴白胤、平塚白銀、木々高太郎
- 「探鬼病病型研究」三浦純一
( 探偵文学 1936.02. ) |
懐疑性(ハムレット)患者、偏執性(ドンキーホーテー)患者、移気性(コノウワキモノ)患者、悲観性(ナミコサン)患者、乱暴性殺人狂(アルカポネ)患者、反抗性(イチゲンコジ)患者、焦慮性(イソゲヤイソゲ)患者、反察性(アラサガシヤ)患者、恐怖性(ヨルハバカリヘイケナイ)患者、明察型性(エレリーヴァンス)患者。 |
- 「お問合せ(直木賞記念号の読後感と最近読んだ小説の感想)」
( シュピオ 1937.06. ) |
探偵小説史として価値、故人の作品も欲しかった。「坑鬼」大阪圭吉。 |
- 「ハガキ回答(昭和十二年度の気に入った探偵小説)」
( シュピオ 1938.01. ) |
「決闘記」渡辺啓助。「鉄の舌」大下宇陀児。 |
- 「探偵小説の再出発」
- 「小笠原秀晃作「芋代官切腹」(月例評壇)」
- 「パレンパンの花束・海戦・その他(月例評壇)」
- 「真杉静江『鹿鳴館以後』(月例評壇)」
- 「転業者の心理」
- 「作家と作品批評座談会」岡戸武平、鹿島孝二、大慈宗一郎、土屋光司、戸伏太兵、東野村章、中沢〓夫、村雨退二郎
- 「今井達夫著「新月」(月例評壇)」
- 「(編集後記)」S・D
- 「飛躍する宝石座談会」水谷準、小山内徹、木村登、大慈宗一郎、岩谷満、城昌幸
- 「老鬼のたわごと」
宝石 1955.05. |
宝石創刊十周年。唯一の登竜門。気に入らない時は暖かい気持ちで見送れば良い。読者―鬼―作家と成長。読み、書いてみたいという気もある。 |
- 「想い出(江戸川乱歩追悼)」
- 「御利益」
- 「同人誌探偵文学からシュピオまで」
( 日本推理作家協会会報 1983.03.〜05. )
抜粋「初の乱歩特集を編んだ・大慈宗一郎」鮎川哲也 1990.03.ほか |
- 「(ひとくち書評)(19xx年傑作ミステリーベスト10アンケート)」
週刊文春 1981.01.01/08,1982.01.07,1983.01.06,1984.01.05,1985.01.03/10,1986.01.02/09,1987.01.01/08,1988.01.07,1989.01.05,1990.01.04/11,1991.01.03/10,1992.01.02/09 |
参考文献
- 「初の乱歩特集を編んだ・大慈宗一郎」鮎川哲也
EQ 1990.03.
『こんな探偵小説が読みたい』鮎川哲也 晶文社 1992.09.15
『幻の探偵作家を求めて 完全版(下)』鮎川哲也、日下三蔵編 論創社 2020.05.10
- 「探偵小説隆盛期の掉尾を飾った「シュピオ」」山前譲、「「探偵文学」「シュピオ」総目次」山前譲編
『「シュピオ」傑作選 幻の探偵雑誌3』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-03) 2000.05.20
- 「「ロック」五年史」中島河太郎
幻影城 1975.12.
- 「35 大慈宗一郎」若狭邦男
『探偵作家発見100』若狭邦男 日本古書通信社 2013.02.20
- 「「文学建設」誌総目次」
『「文学建設」誌総目次』海音寺潮五郎記念館編 海音寺潮五郎記念館 1980.10.10
- 「クラブ・協会編集書籍雑誌一覧」中島河太郎
推理小説研究20号 1987.12.30
- ほか