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一条栄子(一條栄子)
小流智尼 作品

Since: 2021.09.15
Last Update: 2024.07.14
略年譜 - 探偵小説 - 随筆 - 特集

      一条栄子(一條栄子)(いちじょうえいこ)/小流智尼(おるちに)略年譜

    1903.02.28(明治36年) 1903.02.28(明治36年)  京都府宇治市で生まれる、本名北本栄子(のち丹羽栄子)
    19xx.xx.  京都高等女学校卒業
    1925.12.  「丘の家」(小流智尼名義)を映画と探偵に発表
    1926.08.01  「そばかす三次」(小流智尼名義)がサンデー毎日大衆文芸募集乙種に当選、掲載
    1927.01.02  「戻れ、弁三」(一条栄子名義)をサンデー毎日に発表
    1927.10.  「フラー氏の昇天」(一条栄子名義)を探偵・映画に発表
    1931.xx.  結婚、以降断筆を余儀なくされる
    1977.06.30(昭和52年)  死去

    筆名は、一条栄子(一條栄子)、小流智尼

      (国DC※)は国立国会図書館デジタルコレクション個人送信(ログイン必要)で公開されています(今後非公開になる可能性もあります)



      探偵小説(小流智尼名義)

  1. 「丘の家」
    ( 映画と探偵 1925.12. )
  2. 「無用の犯罪」
    ( 探偵趣味 1926.02. )
    『「探偵趣味」傑作選 幻の探偵雑誌2』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-02) 2000.04.20
     郵便屋の猿爺は、行嚢からお金を盗んだが、行嚢ごと盗まれたと主張する。過去に過失が一回もなかった事もあり警察から釈放された。競馬で勝ったと吹聴するが、やがて……。
     結末は皮肉な話。計画が狂ったのか、説明不足の為に無理矢理結末に結び付けたように思われる。
  3. 「手袋」
    ( 探偵趣味 1926.03. )
     男はナイフを持って女が家から出てくるのを待っていた。片思いを打ち明けた時に笑った女。出て来た赤い手袋をした女。おいでおいでをする女……。
     男の心理状態の変化の描写が面白い。
  4. 「そばかす三次」 [三次]
    ( サンデー毎日 1926.08.01 )
    ( 『大衆文芸傑作集 サンデー毎日懸賞入選』(北本栄子名義)大阪毎日新聞社編 1927.xx. )(国DC※)
     [宝石の巻]のみ
    創元推理19号 1999.11.10
     [墓穴の巻]前科十一犯、掏摸常習犯の匹田三次郎が出獄して京都南西部柳谷部落、通称どぶ谷に住んでいた。金公の子が死んだ。金公は両足がなく母親は産褥についているので三次が埋葬することになった。西島先生から経文を借り、獲物の青年をみると後を追う。一ノ瀬刑事に出会い……。
     [宝石の巻]曹長と南京虎とアザ万が立てた宝石窃盗計画。逃亡にはソバカス三次の貨物自動車を使おう。掏摸は技術的な職業で盗人ではないと自負する三次は脅されて加担するものの……。
     [墓穴の巻]三次の矜持が語られる。人物設定は面白いがオチは予想の範囲内。
     [宝石の巻]小気味良い作品。掏摸物の亜流ではあるが貨物自動車の運転手なのが異色。
  5. 「南京街」
    ( 探偵趣味 1926.12. )
     千早からヤマダ様宛の手紙形式。おかげ様で南京街の地下物置部屋でお爺さんと暮らすことができました。頂いたマリア絵。鼠のチイちゃん。仕事。お爺さんの行方。阿片窟。賭博。姜さん。記念すべき一日……。
     少女の感情の変化は面白いものの、やや不明瞭な結末。どちらともとれそう。



      小説(一条栄子(一條栄子)名義)

  1. 「戻れ、弁三」 [三次]
    ( サンデー毎日 1927.01.02 )
     毎日の平凡で退屈で変化のない生活にあきて山野弁三は綾部から華々しい京都へ出て来た。掏摸にでもなろう。狙った男から抜いた男、後をつけると逆に……。
     そばかす三次の粋なはからいの顛末。冒頭導入部分は良い感じ。
  2. 「平野川殺人事件」
    ( 探偵趣味 1927.09. )
    創元推理19号 1999.11.10
     私、C新聞社文芸部員中村の友人である坂田警視のもとへ訪れてきた女中の並川キエ。縄で縛られ溺死した白倉藤四郎の犯人は弓削田仙太ではないという。陳述書にあるおかしな話。屍体の写真、仙太との面会、目星をつけた警視は……。
     他者が気にもとめなかった部分から解き明かす名探偵もの。新聞記者の常識は大衆文芸作家の半分、偉い探偵の常識は大衆文芸作家の数倍、という比較は面白い。
  3. 「フラー氏の昇天」
    ( 探偵・映画 1927.10. )
    創元推理19号 1999.11.10
    『「探偵」傑作選 幻の探偵雑誌9』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-09) 2002.01.20
     ハロルド・フラー氏は欧州戦争で頭に傷をうけていて時々ぼーっとする事があった。人体飛揚の話をよくする。私が体重減少の話をした翌朝、フラー氏は……。
     奇妙な話。究極の体重減少に挑んだのだろうか。佳作。
  4. 「千眼禅師」
    ( 探偵趣味 1928.05. )
     千眼禅師の教えを聴聞せる在家の言葉。薫陶を受けた僧の言葉。或小者の言葉。長の言葉……。
     不思議な話。どこまで創作かは不明。前半は言葉使いなどで分り難いが 後半一転してからは印象的場面もある。
  5. 「ペチー・アムボス」 (「ペチィ・アムボス」)
    ( 猟奇 1929.05.〜06. )
    『「猟奇」傑作選 幻の探偵雑誌6』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-06) 2001.03.20
     1833年、ペテルスブルグの木賃宿兼居酒屋赤頭巾に独逸バリンスカーから来たという瀕死の少女は最後のターレル銀貨で宿をとるものの、タラセヴィッチュワ王妃とヘンリーの名を言って息を引き取った。シベリアのバリンスカー城守の封印のある小箱の中に高価な真珠が入っていたことから、警視総監は王妃側近のスミーエリスキー侯爵夫人に話を聞くことになった。
     少女の冒険譚でもなく、旅立った理由と真珠を持っていた理由がロマンスを交えて語られるだけの記事的な読物。
  6. 「三次と宝石」 [三次]
    ( サンデー毎日 1931.04.05 )
     私設簡易食堂つたやのポテ清夫婦に厄介をかけることが多かった掏摸のそばかす三次。つたやに現れた青年紳士はルビーを落す。紳士は人造の偽物だという。貴金属店の鑑定では本物。三次や店にいた人々は安く買う。宝石は、そして見つけた三次は……。
     それほど奇抜でもないし疑問もあるがそれなりに面白くはある。三次の魅力度もやや低調ではあるが。



      随筆ほか

  1. 「夜の家」 小流智尼
    ( 探偵趣味 1925.10. )
     例会前日、大毎三階会場の椅子に載っていた黄色い魂。陰気な場所より明るくても都会の真中に怪奇な幻影を見る。
  2. 「『探偵趣味』問答(アンケート)」 小流智尼
    ( 探偵趣味 1925.11. )
     奇抜という程ではないが面白いのは、心理的盲点を突く事件、人間の弱点を突く事件。
  3. 「宿業」 小流智尼
    ( 探偵趣味 1926.01. )
     盗癖のある娘が願かけして治ったと思いお礼参りしたが。拾遺古徳伝の耳四郎の口と手。わが身の葛藤。
  4. 「『探偵趣味』問答(アンケート)」 小流智尼
    ( 探偵趣味 1926.01. )
     普通の探偵小説の映画化は九分九厘失敗する。心理を重視するのはなおさら。役者、作者、監督が適していれば一番面白いはず。
  5. 「苦労性」 小流智尼
    ( 探偵趣味 1926.04. )
     苦労性で気をまわし先の先まで想像してしまう。死、死の世界、転生、その後。医者、サディズム、「三つの痣」小酒井不木、マルキ・ド。サド、残虐性……。
  6. 「作者の言葉」 小流智尼
    ( サンデー毎日 1926.08.01 )
    創元推理19号 1999.11.10
     家事のかたわらに。地下鉄サムやハンセン婆さんを意識。人間味のある犯罪。
  7. 「怪談にあらず」 小流智尼
    ( 探偵趣味 1927.01. )
     秋、祇園囃子、新撰組の組下の男は河原は刑場へきた。雨、女。連れて帰る。夜……。
  8. 「クローズ・アップ(アンケート)」 小流智尼
    ( 探偵趣味 1927.01. )
     ルパンなら、皇帝に復活し一大理想郷を。
  9. 「(昭和2年度印象に残った作品と希望)(アンケート)」 一条栄子
    ( 探偵趣味 1927.12. )
     今思い出せない。私や批評家の望みを聞かず作家の主張や理想を書けば良いと思う。
  10. 「私の好きな一隅(アンケート)」 一条栄子
    ( 猟奇 1928.06. )
     隅と聞いて思い出した事。禅道場の一隅で無を究明。隅の数、隅がなければ無限大。
  11. 「進軍(詩)」 一条栄子
    ( 猟奇 1928.12. )
     猟奇誌に対する進軍を鼓舞するような詩ではないかと思われるが不明。
  12. 「阿呆面展覧会(画)」 一条栄子
    ( 猟奇 1929.04. )
    創元推理19号 1999.11.10
  13. 「(れふき・あぱあとめんと!)(一言欄)」 一条栄子
    ( 猟奇 1929.04.,05.,1930.01.,03.,1931.03.,05.,09.,12.,1932.01.,02. )
     夢を。スケッチ掲載!。ほか。「三次と宝石」をサンデー毎日に書いたら悪口を。ほか。



      特集(関係部分のみ)

  1. 創元推理19号 東京創元社 1999.11.10
    △「新・幻の探偵作家を求めて 結婚のため創作の道を捨てた 日本最初の女流ミステリー作家 ……小流智尼・一条栄子の巻」鮎川哲也/△「サンデー毎日「大衆文芸」当選者発表」(結果、A〜E審査員選評)/「そばかす三次(宝石の巻)」小流智尼/△「作者の言葉」小流智尼/「平野川殺人事件」一条栄子/「フラー氏の昇天」一条栄子/△「阿呆面展覧会」一條栄子画/△「早すぎた才媛」新保博久/☆「小流智尼・一条栄子作品リスト」新保博久編



      参考文献

  1. 「新・幻の探偵作家を求めて 小流智尼・一条栄子の巻」鮎川哲也
    創元推理19号 1999.11.10
    『幻の探偵作家を求めて 完全版(下)』鮎川哲也、日下三蔵編 論創社 2020.05.10
  2. 「早すぎた才媛」新保博久
    創元推理19号 1999.11.10
    『幻の探偵作家を求めて 完全版(下)』鮎川哲也、日下三蔵編 論創社 2020.05.10
  3. 「小流智尼・一条栄子作品リスト」新保博久編
    創元推理19号 1999.11.10
    『幻の探偵作家を求めて 完全版(下)』鮎川哲也、日下三蔵編 論創社 2020.05.10
  4. 「「探偵趣味」総目次」「「探偵趣味」作者別作品リスト」山前譲編
    『「探偵趣味」傑作選 幻の探偵雑誌2』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-02) 2000.04.20
    「「猟奇」総目次」「「猟奇」作者別作品リスト」山前譲編
    『「猟奇」傑作選 幻の探偵雑誌6』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-06) 2001.03.20
  5. ほか



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