伊志田和郎(いしだかずお)略年譜
1910.xx.(明治43年)? 大慈宗一郎とほぼ同年配とのこと。本名は石田和郎
1935.05. 「暗闇行進曲」を探偵文学に掲載、以降ほぼ毎月評論か創作を掲載
1941.頃. 文学建設に同人参加
1948.04. 真珠に最後?の作品を掲載
1990.頃. 窯業の大家とのこと(「初の乱歩特集を編んだ・大慈宗一郎」より)
筆名は、伊志田和郎、石田和郎
探偵小説など
- 「暗闇行進曲」
( 探偵文学 1935.05. )
『「シュピオ」傑作選 幻の探偵雑誌3』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-03) 2000.05.20 |
海浜で男から聞いた話。作曲家田崎重次郎は失恋で放浪、母を亡くした少女相川ユミ子と知り合う。清純さを失わせないように過激な労働と深夜の作曲を続ける。喀血、ユミ子は花売りを再開し看病する。田崎は過分の薬や果実に疑いをもつ。そして作曲した暗闇行進曲を親友でもある失恋した女の夫に託し……。 |
抒情ある少し意外な結末となる作品。叙述と構成が考えられている。 |
- 「姿なき作家(コント)」
( ぷろふいる 1936.01. ) |
西久保子爵は夫人に謎の探偵作家宇賀狂介のことを語る。新世年の懸賞に当選、以後作品は住所を秘し違った局から送付していた。白文館から探偵小説全集が出るということで最後の作品「ある夫人の姿見」と共に写真が送られてきた。一年後、写真の男喬助が精神病院にいることがわかった。探偵作家森田谷鬼一の正体、狂介が筆を絶った理由……。 |
名前と筆跡は少し出来過ぎな展開結末だがコントということで。 |
- 「霧(小品)」
( 探偵文学 1936.02. ) |
夜の霧の港。俺はルミをあきらめよう。霧の中の男。首を絞める。霧の中……。 |
ホラーだろうか。情景のみの作品で背景がよくわからない。 |
- 「墳墓」
( 探偵文学 1936.04. ) |
妻の美彌子は毎年十月二十日に秘密の旅に出て二十二日夜に戻って来る。私は後をつけると千葉県の町の宿屋に泊まった。夜、彼女は洞窟に入り……。 |
怪奇小説だろうか。情景が主であろうか、座しているのと心情がよくわからない。 |
- 「コンパクト(コント)」
( 探偵文学 1936.06. ) |
出所した男は女に会う。男は女のために、女は生活のために。男は女に……。 |
女への男の恨みの話。題名は気が利いて最後の部分は悪くない。 |
- 「猪狩殺人事件(八)」 (連作:覆面作家(小栗虫太郎)/中島親/蘭郁二郎/大慈宗一郎/平塚白銀/村正朱鳥/伴白胤/伊志田和郎/荻一之介)
( 探偵文学 1936.08. )
『「シュピオ」傑作選 幻の探偵雑誌3』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-03) 2000.05.20
『諏訪未亡人/猪狩殺人事件 合作探偵小説コレクション6』日下三蔵編 春陽堂書店 2024.03.26 |
小栗虫太郎が冒頭部のみで未完の作品を提供。(室蘭北方七里の炭坑町猪狩、猪狩新報記者田母澤大五郎は楠川医学士の醜聞取材で病院へ行くが留守。最上検事の車を見かけて乗り込み蒲原牧師の娘笠尾が殺されたのを知る。軽便鉄道松猪線が上下線共に七分進んでいた。)(樫本警部宅に探偵小説家大月蘭亭が来ていて事件のことを話す。「クス」と断末魔に書かれた便箋があった。容疑者は楠川医学士、軽便鉄道の機関手矢吹久壽夫、白系露人のクスターロフ。)
(大月蘭亭は「谷間の灯」の唄声を聴きバー・オーロラに入る。青年が女に笠尾が殺されたと告げ定代に会うため奥へ入っていった。)(田母澤は蒲原家付近で拾い物をした後、バー・オーロラで大月蘭亭を見かける。)(「屋上の殺人」を褒めて大月蘭亭に話しかける田母澤。潮定代の叫び声で奥へ行くと青年が殺されていた。)(大月、樫本警部、田母澤の話し合い。)(病院で受付野崎青年や看護婦への聞き込み、樫本警部との話。)大月の定代の聴取、三人の話し合い、自殺の報。犯人は誰か?(樫本警部から大月への手紙で真相が明かされる。) |
第八回担当。容疑者が絞られていく場面だが、除外理由は安易。 |
- 「火死 ある検事室にて」
( 探偵文学 1936.08. ) |
森岡勇吉と山崎勇雄検事の会話のみで構成された作品。野原の一軒家で火事があり妻が真黒で人相がわからないほどの焼死体になっていた。保険金、自殺、アリバイ……。 |
単純なトリックを用いた作品。可能性があるだけで断定は無理。 |
- 「アパート奇談(コント)」
( 探偵文学 1936.10. ) |
南吉夫の上の部屋に美人の女性が入った。夜、上からの声、日曜日の男。悪友瀬村覚一は……。 |
話としては単純でありがち。 |
- 「友情の切札」
- 「驟雨」
- 「堕落」
- 「バラに棘ありや」
( 仮面 1948.03. ) |
青年毛利太平君は骨董屋主人宇井孤舟老人に恋をしていると見抜かれ、バラにトゲありと言われる。老人が病気になる。娘美奈子に恋する太平君。老人が亡くなり……。 |
抒情的な部分もあるショート・ショート。孤独な老人なのか婦人なのか娘なのか、地の文で混乱させてトゲとは何なのかを最後に明かす趣向なのだろうか。よくわからない。 |
- 「復活」
随筆など
- 「思ふままに」
- 「日本探偵文学の再認識」
( 探偵文学 1935.06.,09.,12.,1936.01. ) |
- 「(編集後記)」
( 探偵文学 1935.06.,10.,1936.12. ) |
- 「「白蟻」随感」 (「虫太郎・断想」)
( 探偵文学 1935.10. )
『二十世紀鉄仮面 昭和ミステリ秘宝』小栗虫太郎 扶桑社文庫(S04-02) 2001.02.28 |
素晴らしい作品。演出家的地方風景描写。劇と曲の交錯。劇の誇張。作者自身の夢物語。女性らしくない瀧人の一人芝居。作者の性格の反映と演出家として異様な世界を物語ったのではないか。 |
- 「「夢鬼」に就いて」
- 「(同人独語抄)」
- 「懐郷としての探偵文学」
- 「あの頃(同人随筆)」
( 探偵文学 1936.02. ) |
一周年、発刊で寒気の中歩き回ったなつかしさ。 |
- 「海(詩)(同人随筆)」
( 探偵文学 1936.03. ) |
放浪日記より、昭和八年十月二十八日作。 |
- 「好きな探偵二三」
- 「その怪物的存在」
( 探偵文学 1936.05. )
( 『夢野久作の世界』西原和海編 平河出版社 1975.12.15 )
( 『夢野久作の世界』西原和海編 沖積舎 1991.11.29 ) |
- 「夢野久作とその作品」
( 探偵文学 1936.06. )
( 『夢野久作の世界』西原和海編 平河出版社 1975.12.15 )
( 『夢野久作の世界』西原和海編 沖積舎 1991.11.29 ) |
- 「夢鬼について」
- 「お問合せ(直木賞記念号の読後感と最近読んだ小説の感想)」
( シュピオ 1937.06. ) |
当を得た選定。「折蘆」の難解さ、渡辺啓助の連続短篇。 |
- 「ハガキ回答(昭和十二年度の気に入った探偵小説)」
( シュピオ 1938.01. ) |
フランシス・カルコ「芸術放浪記」に探偵文学時代を思い出す。初期が懐かしい。 |
- 「家・赤ん坊その他」石田和郎
- 「探偵作家の現状」
- 「ある視覚からの眺望」
- 「市井雑記」
- 「昭和十五年度の回想(アンケート)」
- 「赤ん坊誕生記」
- 「独白人のモノロオグ」
- 「書きたいものについての抱負を語る」
- 「環境と文学」
- 「小さな町で」
参考文献
- 「初の乱歩特集を編んだ・大慈宗一郎」鮎川哲也
EQ 1990.03.
『こんな探偵小説が読みたい』鮎川哲也 晶文社 1992.09.15
『幻の探偵作家を求めて 完全版(下)』鮎川哲也、日下三蔵編 論創社 2020.05.10
- 「探偵小説隆盛期の掉尾を飾った「シュピオ」」山前譲、「「探偵文学」「シュピオ」総目次」山前譲編
『「シュピオ」傑作選 幻の探偵雑誌3』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-03) 2000.05.20
- 「「文学建設」誌総目次」
『「文学建設」誌総目次』海音寺潮五郎記念館編 海音寺潮五郎記念館 1980.10.10
- ほか