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川田功 作品

Since: 2018.07.03
Last Update: 2023.08.25
略年譜 - 小説 - 随筆 - 著書 - 軍記 - その他 - おまけ

      川田功(かわだいさお (かはたこう))略年譜

    1882.01.04(明治15年)  東京にて生まれる (『追悼録』略歴より)
    (1883.01.04(明治16年)  『日本推理小説辞典』中島河太郎 より
    (1885.01.10(明治18年)  『評論随筆年家名鑑 昭和3年版』(国DC※) より
    (1885.03.xx(明治18年)  著者自伝 より
    1887.06.  高知県の小学校に修業
    1895.04.  東京の中学校に入学
    1900.12.  海軍兵学校に入学
    1904.〜1905.  日露戦争に従事
    1914.〜1915.  青島戦に従事
    1917.12.  少佐にて現役引退
    1917.08.  『軍する身』刊行
    1924.01.〜  『砲弾を潜りて』連載、翌年刊行
    1926.01.  「酩酊」を発表、以後探偵小説風作品も執筆するようになる(「ある朝」が最初の執筆の可能性有)
    1928.12.  博文館入社
    1929.12.  『譚海』嘱託
    1930.02.  『少女世界』主任
    1926.〜1930.頃  『ドグラ・マグラ』夢野久作の刊行にむけて支援する
    1931.05.28(昭和6年)  死去 (享年五十歳)

    筆名は、川田功、(川田)叱風(俳号)、匿名二三

      (国DC)は国立国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開されています
      (国DC※)は国立国会図書館デジタルコレクション個人送信(ログイン必要)で公開されています(今後非公開になる可能性もあります)
      (青空)は青空文庫でインターネット公開されています
      (幻影城)は探偵小説専門誌「幻影城」と日本の探偵作家たち の 幻影城書庫でインターネット公開されています
      (CiNii)はCiNii機関リポジトリでインターネット公開されています
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      探偵小説風作品

  1. 「酩酊」
    ( 新青年 1926.01. )
    『山下利三郎・川田功集』 改造社・日本探偵小説全集15 1930.01.10 (国DC)
     土田が人を殺した。友人の遠藤は事務所で言ってきた。酒の上だよ。丸野は青年を同居させたが丸野夫人が追い出してしまう。病気で口が利けなくなった丸野は夫人と喧嘩し、逃げ出した夫人は。
     結局よくわからない話。事件に巻き込まれたが酩酊して記憶があいまい。 (2018.06.)
  2. 「偽刑事」
    ( 新青年 1926.02. )
    『創作探偵小説選集 一九二五年版』探偵趣味の会編 春陽堂書店 1926.03.20/復刻版 1994.04.10 (国DC※)
    『新進作家集』 平凡社・現代大衆文学全集35 1928.12.01 (国DC※)
    『山下利三郎・川田功集』 改造社・日本探偵小説全集15 1930.01.10 (国DC)
    幻影城 1976.12. (幻影城)
    『「新青年」傑作選 幻の探偵雑誌(10)』 光文社文庫(み-19-10) 2002.02.20 (青空)
     素敵な美人のあとをつけていくと、デパートで万引きするのを見かけてしまった。彼女に訊ねるが盗品はなく、逆に偽刑事だと指摘される。そこへ巡査が来るが。
     ありきたりな話ではあるが、理由付けや話の展開の仕方にやや上手いところがある。
  3. 「乗合自動車」
    ( 探偵趣味 1926.02. )
    『新進作家集』 平凡社・現代大衆文学全集35 1928.12.01 (国DC※)
    『山下利三郎・川田功集』 改造社・日本探偵小説全集15 1930.01.10 (国DC)
    『探偵小説の風景 トラフィック・コレクション(上)』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-33) 2009.05.20 (青空)
     簑島刑事に尾行されている隼英吉。乗合自動車で掏摸の機会をうかがう。先を越されたか。
     ありきたりな話。裕福さを感じる掏摸は珍しいかも。 (2018.06.)
  4. 「偶然の一致」
    ( 新青年 1926.03. )
    『創作探偵小説選集 一九二六年版』探偵趣味の会編 春陽堂書店 1927.02.10/復刻版 1994.04.10 (国DC※)
    『新進作家集』 平凡社・現代大衆文学全集35 1928.12.01 (国DC※)
    『山下利三郎・川田功集』 改造社・日本探偵小説全集15 1930.01.10 (国DC)
     遠山翠の書いた戯曲が雑誌に載った。もうラジオ劇で放送? 夕刊に近所の煙草屋のお駒が殺されたとでていた。戯曲のモデルにした女性だ。犯人は決まっている。
     虚構と現実の交叉を描いているともいえるが、単なる思い込み。偶然ですらないように思える。 (2018.06.)
  5. 「赤鬼退治」
    ( 探偵趣味 1926.04. )
    『山下利三郎・川田功集』 改造社・日本探偵小説全集15 1930.01.10 (国DC)
     四日市熱田間の運送船の親方に赤鬼の権四郎という男がいた。弱い海軍兵を脅していたが、ついに手強い相手にやられてしまう。指令艇を訪れ犯人逮捕の協力を依頼する巡査だが。
     現代の感覚では組織的犯行と思えてしまい逆効果。 (2018.06.)
  6. 「或る朝」 (「ある朝」「或朝」)
    ( 新青年 1926.05. )
    『新進作家集』 平凡社・現代大衆文学全集35 1928.12.01 (国DC※)
    『山下利三郎・川田功集』 改造社・日本探偵小説全集15 1930.01.10 (国DC)
     飢餓と寒さと疲労と眠さで牛乳受け箱な前を通りかかった夫婦。葛藤。表札をみると。
     牛乳屋の言い分に喝采、となるのだろうか。契約相手は主人だが。 (2018.06.)
  7. 「Aさんの失敗」
    ( 探偵趣味 1926.05. )
     Aさんは酔って散歩している。犬か怪物か。芸者が唄い踊る。帰り道、五十銭銀貨を拾う。派出所、巡査……。
     軽いコント。今ではあまり有り得る状況とは思えないが、当時としては違和感がなかいのだろうか。
  8. 「彼女と彼」
    ( 探偵趣味 1926.06. )
     久松鐘吉は三年前まで同棲していた登美子を見かけて後をつける。そして襲い……。
     コント。襲うところまでの心理描写は悪くない。
  9. 「愛を求めて」
    ( 探偵趣味 1926.07. )
    『山下利三郎・川田功集』 改造社・日本探偵小説全集15 1930.01.10 (国DC)
     飲み仲間の喧騒の中、お内儀さんの人殺しッの声。谷山が折尾に言われ隣の部屋に行くと。
     愛を確認する為の夫婦喧嘩の話。一つの決着ではある。 (2018.06.)
  10. 「夜廻り」
    ( 探偵趣味 1926.08. )
    『山下利三郎・川田功集』 改造社・日本探偵小説全集15 1930.01.10 (国DC)
     夜警の源蔵爺さんは不審な男を見たが見失った先の家に巡査と入ったが間違いだった。明け方、その奥の妾宅から出て来た青年紳士がいた。巡査は爺さんの家に立寄って知らせる。
     爺さんの行動は、結局は弱者の味方という事だろうか、よくわからない。 (2018.06.)
  11. 「夕刊」
    ( 探偵趣味 1927.01. )
     彼は追い抜いていった婦人の後をつける。車に乗った紳士が通り過ぎる。あの男を殺してしまおう、と婦人の独白。彼女の入った家。翌日の夕刊には……。
     コント。ありがちの結末で唐突ではあるが思わせぶりな展開が良い。
  12. 「髪」
    ( 桂月 1927.04. )
    『山下利三郎・川田功集』 改造社・日本探偵小説全集15 1930.01.10 (国DC)
     回覧雑誌に髪の毛が挟まっていた。髪は不快だが艶なる匂いよ。白い絵の具の跡だろうか、文字を拾っていくと。
     夫婦どちらの見解が正しいのか、どちらが何を不快と感じて断定してしまうのか、よくわからない。 (2018.06.)
  13. 「不帰澤の怪」
    ( 騒人 1927.07. )
    『山下利三郎・川田功集』 改造社・日本探偵小説全集15 1930.01.10 (国DC)
     叔父の通夜の時、話しかけてきた鉱山師がいた。叔父ら六人で秋田県の山奥の大蛇のいるという谷へ金鉱脈を求めて探検したという。二人ははぐれ、四人が澤に着き、ロープを伝って下りている時だった。
     谷に下りて帰ってきた者はいない。怪談なのか復讐なのかホラ話なのか、判然としない。 (2018.06.)
  14. 「溝」
    ( 桂月 1927.08. )
     子供たち、子を背にした女達が集まる空地。餓鬼大将がいう。継母ごっこをしよう、と。彼が継母、秀雄が実子、秀雄の姉八重子が継子になる。掃除させられ半分のお菓子を与えられる八重子……。
     コント風の作品といえなくもない。唐突のような、そうでもないような。
  15. 「平助」
    ( 桂月 1927.09. )
     海辺の町、浮浪者の平助は酒屋の子守をしながら居候をしていた。富豪の未亡人の邸に泊まり込んでいた時もあった。子供が海に連れていってくれとせがむ……。
     特異な環境や心理をもつと思われる男の話。探偵小説味が全くないともいいきれない作品。
  16. 「生霊」
    ( 猟奇 1928.11. )
    『山下利三郎・川田功集』 改造社・日本探偵小説全集15 1930.01.10 (国DC)
     鉄彦の妻小萩は一ヶ月位の間に多くの病気を抱えてしまった。小萩はかつて友人の秋月十吉の妻だった。放火に見舞われる前に高村は高級写真機の盗難届を出していたが、十吉は高村の妻から借りて返していなかった。獄中で十吉は呪っているという。
     生霊である必然性がわからない。逆恨みの呪いの結果を確認しにきたのだろうか。子宮、痔、神経、肺、腸、脚気、同じ部位がなく併発ではなさそうなので錯覚ともいえない。やはり生霊か。 (2018.06.)
  17. 「復仇」
    ( 初出不明 )
    『新進作家集』 平凡社・現代大衆文学全集35 1928.12.01 (国DC※)
    『山下利三郎・川田功集』 改造社・日本探偵小説全集15 1930.01.10 (国DC)
     朝鮮鎮海の港で女性の死体が浮いていた。真壁大尉の女中で怨みを記した遺書を懐中に入れて居た。司令官大槻少将の信任が厚かった真壁ではあっらが、疎んじられるようになった。大演習の時、真壁は同乗すべき偵察員を残して飛行機に乗る。
     命令に従う真壁は憐れ。元軍人が書いて良かった内容なのか、反響があったか気になるところ。 (2018.06.)
  18. 「二萬圓」
    ( 新青年 1929.04. )
    『山下利三郎・川田功集』 改造社・日本探偵小説全集15 1930.01.10 (国DC)
     運転士の鈴本は恋人と会う主人を森の中のアトリエへ連れ込んだ。恋人を取られた怨み。金をだすから命だけは。
     偶然からの出来事とはいえ、うまくいったものだ。二万円が適度なのか、よくわからないが。 (2018.06.)
  19. 「癖」 (「小品二篇 財布」)
    ( 猟奇 1929.08. )
    『山下利三郎・川田功集』 改造社・日本探偵小説全集15 1930.01.10 (国DC)
     B君は財布を拾い派出所に届けた。持ち主は現れないと見越して。
     考えたとは思う。誰でも見当がつく癖でもある。わかり易い作品。(2018.06.) (2018.06.)
     追記:「財布」ではD君で単行本収録時に大幅に改稿されている。
  20. 「探偵眼」 (「小品二篇 切符」)
    ( 猟奇 1929.08. )
    『山下利三郎・川田功集』 改造社・日本探偵小説全集15 1930.01.10 (国DC)
     探偵小説好きなAさんは電車の中で本を読んでいると車掌の切符回収の声が聞こえてきた。渡したじゃないか。
     どこが探偵眼なのか、よくわからない。(2018.06.)
     追記:「切符」ではC君で単行本収録時に大幅に改稿されている。
  21. 「粗忽な」
    ( 猟奇 1930.01. )
     彼は女を尾行していた。女は気付いて彼に問いただす。お初に似ていたから。お品のところに泊り翌日……。
     コント。幻想味がありそうでない。
  22. 「迷子札」
    ( 初出不明 )
    『山下利三郎・川田功集』 改造社・日本探偵小説全集15 1930.01.10 (国DC)
     子供を連れての銀座。女性に声をかけられたが誰だかわからない。子供の袂の中には。
     ありきたりな話だが一工夫ある。でも題名が良くない。 (2018.06.)
  23. 「櫛」
    ( 初出不明 )
    『山下利三郎・川田功集』 改造社・日本探偵小説全集15 1930.01.10 (国DC)
     岩を見た者は病気か傷害か死か、災厄を免れないという。島へ療養に来た青年は寺に梵妻の世話で宿泊する事になった。笛の音が島の娘たちをひきつける。逃げ隠れるように青年は涙石へと通うようになり。
     伝説は伝説としておいた方が良かったと思う。櫛は蛇足に思える。 (2018.06.)
  24. 「光は薄る ゴルゴタへの道の三」
    ( 犯罪科学 1931.02. )
     松本泰「宝石の序曲」参照
     連作の説明不足のまとめ役として光る。 (2018.03.)
  25. 「乳」
    ( 猟奇 1931.05. )
     私紫郎は日本画家の永島さんから声をかけられ銀ぶらをしていると孔雀のような女と会う。姿を消す永島さん。お茶をして別れたあと、永島さんと再び会い彼の下宿へ行き話す。彼は少女をモデルにしているうちに男ではないかと考え出し、乳房を見たいと……。
     意外な結末といえるかもしれない。展開と描写によるが。
  26. 「恐ろしいキッス」
    ( 新青年 1931.06. )
     保険会社勤務の土屋は角田と馴染みの女給お君のいる銀座の孔雀で飲んでいて男と争い殴られた。いつか殺してやると言ったその男築屋は土屋に似ていた。土屋は新妻を迎えたが、留守宅に築屋が来たという。二度三度、彼は土屋の留守に来て双子の兄を探しているという事らしかった。連休明け、角田と私は榛名山の死体が土屋らしく確認のため行く。舌を噛んで自殺したと思われ……。
     意外な結末といえる作品。医者や警官が気付かないなど不自然さはあるが話の展開は上手い。題名はネタばらし気味。



      探偵小説関係の随筆など

  1. 「(マイクロフォン)」
    ( 新青年 1925.12. )
  2. 「(マイクロフォン)」
    ( 新青年 1926.03. )
  3. 「読後寸感(マイクロフォン)」
    ( 新青年 1926.05. )
     「火星の運河」江戸川乱歩、「安死術」「秘密の相似」、「悪戯」甲賀三郎、「銀三十枚」「まろうしっぷ」「旅の恥」
  4. 「探偵小説合評(座談会)」甲賀三郎、城昌幸、延原謙、川田功、江戸川乱歩、大下宇陀児、巨勢洵一郎
    ( 探偵趣味 1926.06. )
  5. 「(マイクロフォン)」
    ( 新青年 1926.07. )
  6. 「熊公合評会(座談会)」森下雨村、甲賀三郎、延原謙、横溝正史、江戸川乱歩、大下宇陀児、川田功、高田義一郎、金子準二、平林初之輔、新居格、人見直善、川上三太郎
    ( 東京毎夕新聞 1926.09.30 or 10.02 )
  7. 「(マイクロフォン)」
    ( 新青年 1926.11. )
  8. 「今年印象に残れる作品(アンケート)」
    ( 新青年 1926.12. )
  9. 「クローズアップ(アンケート)」
    ( 探偵趣味 1926.12. )
     自分の作品は駄目で嫌い。将来は恐らく何も出来ないと悲観。
  10. 「(マイクロフォン)」
    ( 新青年 1926.07. )
  11. 「(マイクロフォン)」
    ( 新青年 1927.01. )
  12. 「(マイクロフォン)」
    ( 新青年 1927.03. )
  13. 「クローズアップ(アンケート)」
    ( 探偵趣味 1927.05. )
     最初に読んだ探偵小説は涙香。三十年後の探偵小説は予想できないが芸術的と通俗的が分かれれば探偵小説は独立しないと思う。
  14. 「探偵小説の前途に就て」
    ( 探偵・映画 1927.10. )
     現状のままなら探偵小説は行き詰まる。作家が理智的、常識的なのではないか。自然は小説より不自然。変装も進歩するので少し位超現時代的でも良いのでは。探偵小説の実際の事件における功罪。
  15. 「(昭和2年度印象に残った作品と希望)(アンケート)」
    ( 探偵趣味 1927.12. )
     「八月探偵小説」小舟勝二での多くの探偵小説に驚き。余りに寡聞なので辞退。
  16. 「(マイクロフォン)」
    ( 新青年 1928.02. )
  17. 「著者自傳」
    『新進作家集』 平凡社・現代大衆文学全集35 1928.12.01 (夢現)(国DC※)
  18. 「川田功覚え帖」
    ( 猟奇 1929.06. )
     明治十五年頃の米軍艦が遭遇した光と海上の美女の話。明治十六年四月の新聞より小林芳造が泥棒して捕まった話。茶袋から泥棒が露顕した話。古物商の店先にあったおもと売買の話。
  19. 「剣塚由来記」
    ( 猟奇 1930.03. )
     南京のやや上流の萩港の茶商の息子王九は青華観で陰翁の夢を見、仙術の奥義を得る。空中浮遊、雪中の開花。突然死、消えた棺の中の屍体。今も残る剣塚。
  20. 「(夢野久作宛書簡 5通)」
    ( 「夢野久作宛川田功書簡 翻刻と解題 川田功書簡から見た『ドグラ・マグラ』執筆初期段階の構成」大鷹涼子 2005.11. )(CiNii)



      探偵小説合集

  1. 『新進作家集』 平凡社・現代大衆文学全集35 1928.12.01 (国DC※)
    △「巻頭の言葉」編者/(林不忘集/山下利三郎集)/川田功集「或る朝」/「偶然の一致」/「偽刑事」/「復仇」/「乗合自動車」/(大下宇陀児集/久山秀子/角田喜久雄集/城昌幸集/山本禾太郎集/水谷準集/橋本五郎集)/△「著者自傳」
  2. 『山下利三郎・川田功集』 改造社・日本探偵小説全集15 1930.01.10 (国DC)
    (山下利三郎集)/町の出来事(「探偵眼」/「癖」/「乗合自動車」/「愛を求めて」/「迷子札」/「偽刑事」)/郊外の出来事(「或る朝」/「酩酊」/「夜廻り」/「偶然の一致」)/「赤鬼退治」/「髪」/「不帰澤の怪」/「生霊」/「復仇」/「二萬圓」/「櫛」



      軍記など(小説・随筆など混在)

  1. 「序」
    ( 『海軍下士卒必携届願便覧』岩石一郎 友田誠真堂 1911.11.01 )(国DC)
  2. 「世界の大勢を論じて海軍拡張の続論を嗤ふ」
    ( 新小説 1914.02. )※7
  3. 『軍する身』
    ( 『軍する身』 止善堂書店 1917.08.26 )(国DC)
  4. 「何を諷する」
    ( 新小説 1918.01.or02. )
  5. 「金鵄勲章全廃論」
    ( 新日本 1918.02. )
  6. 「想定敵国と対比して見たる国防計」
    ( 新日本 1918.03. )
  7. 『砲弾を潜りて』
    ( 新青年 1924.01.〜12. )
    ( 『砲弾を潜りて』 博文館 1925.08.15 )(国DC※)
    ( 『戦記名著集 熱血秘史5』 戦記名著刊行会 1929.xx. )
  8. 「武士の情 実戦記」
    ( 新青年 1924.10. )
  9. 「祖国の面目」
    ( 新青年 1925.01. )
  10. 「砲を取り還せ!!」
    ( 新青年 1925.03. )
  11. 「危険を問題外として」
    ( 新青年 1925.05. )
  12. 「怨の弾丸」
    ( 新青年 1925.06. )
  13. 「機雷に触れて」
    ( 新青年 1925.07. )
  14. 『尼港の怪婦人』
    ( 新青年 1925.08.〜11. )
    ( 『赤軍の女参謀 ニコライエフスク秘録』 スメル書房 1941.11.20 )(国DC)
  15. 「某艦の撃沈」
    ( 新青年 1926.01.〜02. )
  16. 「「初瀬」が沈んだ時」
    ( 新青年 1926.07. )
  17. 「作者の言葉(日米実戦記)」
    ( 新青年 1926.11. )
  18. 「日米実戦記」
    ( 新青年 1926.12.〜1927.02. )
  19. 「初陣」
    ( 新青年 1927.05. )
  20. 「日露戦争 襲撃の夜の旅順」
    ( 文藝倶楽部 1927.05. )※8
  21. 「海の怪」
    ( 文藝倶楽部 1927.08. )※8
  22. 「呪はれたる畝傍艦(沈没船物語)」
    ( 文藝倶楽部 1927.09. )※8
  23. 「噫!四十三號潜水艦(沈没船物語)」
    ( 文藝倶楽部 1927.09. )※8
  24. 「死ぬる日」
    ( サンデー毎日 1927.09.15 )※8
  25. 「宇久島物語」
    ( 文藝倶楽部 1928.03. )
  26. 「晴れの泥棒試験」
    ( ? 1928.03.? )
  27. 「K中尉の手記」
    ( 新青年 1928.08. )
  28. 「消えた女」
    ( ? 1928.08.? )
  29. 「坂本龍馬の達識」
    ( 『修養全集』? 1928.xx.xx )※5(国DC※で見当たらず)
  30. 「序」
    ( 『弘田直衛』弘田晴江編 弘田花喜 1929.03.13 )(国DC※)
  31. 「弘田君の憶出」
    ( 『弘田直衛』弘田晴江編 弘田花喜 1929.03.13 )(国DC※)
  32. 「壮烈!岩瀬機関少佐」
    ( 『悲壮痛烈 戦争美談集 譚海読本巻の四』森下岩太郎編 博文館 1929.04. )
  33. 「四十三号潜水艦の遭難 殉国美談」
    ( 少年少女譚海 1930.04. )
  34. 「壮烈 敵艦を撃滅す 日露海戦」
    ( 少年少女譚海 1930.05. )
  35. 「軍艦造り」
    ( 新青年 1930.06. )
  36. 「日本戦勝記」
    小学六年生附録 1930.08.
  37. 「国民は売られ国家は毒せらる(倫敦条約破棄論)」
    ( 日本及日本人 1930.09.15 )(国DC※)
  38. 「軍艦造り 軍縮会議の馬の脚解剖」
    ( 新青年 1930.10. )
  39. ほか、鈴の音、クラク にも掲載作品があるらしい



      軍記などの著書

  1. 『軍する身』 止善堂書店 1917.08.26 (国DC)
    「はしがき」/(写真)/『軍する身』
  2. 『砲弾を潜りて』 博文館 1925.08.15 (国DC※)
    △「自序」/△「(無題)」森下雨村/『砲弾を潜りて』
    『戦記名著集 熱血秘史5』 戦記名著刊行会 1929.07.20 (国DC※)
    △「自序」/『砲弾を潜りて』/△「自序」津野田是重/『斜陽と鉄血』津野田是重/△「自序」津野田是重/『軍服の聖者』津野田是重
  3. 『赤軍の女参謀 ニコライエフスク秘録』 スメル書房 1941.11.20 (国DC)
    △「序」編者/『赤軍の女参謀 ニコライエフスク秘録』/「河本中尉ノ任●●●●不●ノ書」



      俳句・その他の随筆など

  1. 「支那革命戦中の一小話」
    ( 桂月 1925.12. )※7
     支那革命時に艦は上海へ。旅館の窓から見えた第一夫人と第二、第三夫人のこと。
  2. 「支那革命小話」
    ( 桂月 1926.02. )
     前回の続き。印度人の巡査に追いかけられ人車に乗り強請られるが艀船に乗り結局運賃を踏み倒す話。
  3. 「雪空」
    ( 桂月 1926.03. )
     自殺しようとする彼。止める男。親切心、反発、憤怒。彼女。(創作小説のような作品)
  4. 「一泊行」
    ( 桂月 1926.05. )※7
     修善寺へ行く。知人の千両牛の話。後家さんの噂話など。
  5. 「苦味のある笑」
    ( 桂月 1926.07. )
     S氏は道を尋ねた婆さんを目的のところまで連れて行った。婆さんがお礼に来た。息子の嫁、養女の話。私はその養女の会う。美人礼賛。
  6. 「裸にされた話」
    ( 桂月 1926.08. )
     天草牛深、三度行けば三度裸という話で艦長以下上陸。三味線の音に釣られていく。
  7. 「胃癌」
    ( 桂月 1926.10. )
     症状から胃癌だと素人診断。酒の為だと言って貰いたくない。
  8. 「伊東の一夜」
    ( 随筆 1926.10. )※7
     兵学校生徒の時、熱海から汽船で友人Kが夏季休暇でいる伊東へ。同船した婦人。夜。
  9. 「ありまーす物語」
    ( 桂月 1926.12. )
     こう言った人があります、というジョーク8篇。
  10. 「悪日」
    ( 桂月 1927.01. )
     子供が殴られた。飼っているホックステリアに大きな犬。足を噛まれた子供。母親の態度。子供用の毛糸の外套。病院。犬の痘瘡。今日は悪い日。
  11. 「口悪」
    ( 桂月 1927.02. )
     横須賀行の電車、佐世保から移った延岡中佐と会う。芸者清葉が大学生といるのを新宿で見た話、艦へ尋ねてきた話。帰りの電車で清葉と会った話。
  12. 「悪友」
    ( 桂月 1927.03. )
     正月に花骨牌を覚えた。悪友との花会わせ。役。知っているのが悪友で知らないのは貴重品。麻雀で。
  13. 「漫談」
    ( 桂月 1927.05. )
     月日の経つのは早い。短歌雑誌曙光発行の松山白洋。一円全集。略。生と死。上野、華、人間が置いていない動物園。神様、子供の死、権力。偉くなると。
  14. 「野外スケッチ」
    ( 随筆 1927.05. )※7
     春、子供を連れて畦道へ。乙女と侍女。私は少年のようになる。
  15. 「鶏の話」
    ( 桂月 1927.06. )
    『実用新文章総覧』高木斐川編 教文社 1931.05.25 )(国DC※)
     時間は太陽と地球と時計が妥協したもの。鶏の餌の催促。労働争議。雄鷄。
  16. 「様々な幸福」
    ( 桂月 1927.07. )
     彼進藤俊雄は妻の芳子に怒鳴る。襤褸を売らせ煙草を得る。家を出る。活動写真の看板。始めようとしている商売。友人宅。盗み得る人。知人宅。嘘を吐ける者。(創作小説のような作品)
  17. 「嘘のやうな実話」 (「謎の透視術」)
    ( 騒人 1927.06. )(夢現)
    ( 朝日 1929.08. )※8
     夏服の行李が行方不明になり、透視術者が発見する話。
     追記:「謎の透視術」では大幅に改稿、さらに末尾には透視術肯定と思われる文が追加されている。
  18. 「宿酔」
    ( 桂月 1927.10. )
     私は連続の宿酔で太陽を呪う。鶏の絶叫を呪う。三羽の鶏は隣の猫に殺されていた。悲鳴をあげる鷄、犬にあたる。SとYが来る。鷄を調理する。食慾はない。浮世の義理。T氏夫妻が来る。翌日の知らせ。(創作小説のような作品)
  19. 「酒か泥水か」
    ( 万朝報 1928.10.09,10 )
  20. 「俳句の批判に関する心提言」川田叱風
    ( 生光 1929.09. )
    ( 『川田功追悼録』 (不明) )
  21. 「句の新旧」川田叱風
    ( 生光 1930.01. )
    ( 『川田功追悼録』 (不明) )
  22. 「国境を渡る(小品)」※別人の可能性あり
    ( 協和 1932.04.15 )※7
  23. ほか(帚木1930.01.に名前あり?)



      その他

  1. 『川田功追悼録』 不明 (昭和館所蔵)
     (写真)/「川田功略歴」/「句」叱風/「幼年時代の兄」川田可男/「川田君と僕」田中貢太郎/「中学時代」近藤貞吉/「兵学校時代」石原北夫/「至誠至情の人」枝原百合一/「古武士の風格」及川鼎壽/「河田君の海軍無用論」金地嘉樹/「川田君の子煩悩」吉川正宜/「夜来吟社と川田君」磯村嘉喜/「博文館時代」森下雨村/一言感想/「俳句の批判に関する心提言」川田叱風/「句の新旧」川田叱風/「(句作)」



      参考文献

  1. 「日本探偵小説總目録」中島河太郎
    『探偵小説年鑑 1950年版』日本探偵作家クラブ編 岩谷書店 1950.11.20
  2. 「『新青年』全巻総目次」新青年研究会編
    『新青年読本』 作品社 1988.02.20
  3. 「「探偵趣味」総目次」「「探偵趣味」作者別作品リスト」山前譲編
    『「探偵趣味」傑作選 幻の探偵雑誌2』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-02) 2000.04.20
    「「猟奇」総目次」「「猟奇」作者別作品リスト」山前譲編
    『「猟奇」傑作選 幻の探偵雑誌6』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-06) 2001.03.20
  4. 「「マイクロフォン」インデックス」阿部崇編
    新青年趣味10号 2002.12.31
  5. 「川田功」
    『評論随筆家名鑑 昭和3年版』評論随筆家協会編 評論随筆家協会 1928.04.10 (国DC※)
    『評論随筆年鑑 昭和4年版』評論随筆家協会編 評論随筆家協会 1929.03.20 (国DC※)
  6. 『川田功追悼録』
    (昭和館所蔵)
  7. 「続・書誌の補遺」黒田明
    新青年趣味23号 2023.05.05
  8. 「書誌の補遺(補訂)」黒田明
    新青年趣味24号 2024.07.07
  9. ほか



      おまけ

「著者自傳」
『新進作家集』平凡社・現代大衆文学全集35 1928.12.01 (昭和3年12月) より

 明治十八年三月生れ。 同三十三年東京府立一中中途退学、 同年海軍兵学校入学、 三十六年同校卒業。 三十七八年日露戦争に従ふ。 大正三四年青島戦従事、 同六年現役を退き、爾来特記すべきことなし。
 生年月に関して判然とせず


「嘘のやうな實話」
「騒人」 1927.06. (昭和2年6月号) より

 波に照返す陽の光や、木の葉を翻す風の温みに、迫った夏が感ぜられた。私は夏の衣類を用意する爲、倉庫に置いてある行李を出す様に吩咐けた。出しに行った從卒は云った。制服筐と二ツの行李はあるが、行李は空っぽであると。
「其外にまだ一ツ、夏物を一杯詰めた行李があるんだよ。從卒長にそう云って一緒に捜して見ろ。」
 若い從卒だから注意が足りないと思って、私はかう命じたきりで二三日忘れて居た。明日から愈々白服着用と云ふ日が來た。
「幾度捜しても見當りません。次室倉庫も捜して見ましたし就任された當時の從卒にも捜させましたがありません。」
 これが從卒長の言である。私は少々驚いた。小さな物なら紛失と云ふ事もあるが、大型一番の行李である。そんな物が他へ紛れ込む程不整頓な軍艦は日本に無い筈だ。私は不愉快な思ひを抱いて上陸した。明日からどうしようと云ふ當はなかった。が、妙な時には妙な事を聞くものである。私がちびりちびりと飲んで居ると、近くの町に透視術の巧みな盲が居ると云ふ話を、座敷に來た二人の藝者が話合つて居たのである。溺者の藁だ。私は道を教へて貰つて盲人を尋ねる事にした。
 術者と云ふのは三十位の小柄な男で、金光教の信者であった。或時神様のお告げがあったので.山上の岩穴に籠る事一週間、其間に透視術を覺えたと云ふのである。山を登る時と降る時丈けは、不思議に道が明瞭に見えましたとも云つた。彼は早速私の爲めに紛失物を捜さうと云って、床に祭つた神前に端座した。沈默する事五分間位で、持って居た扇を半開にし、凝視める様に眼の前へ翳した。
「朧氣に見えのるは長方形です。無くなったものは紙幣ですか。」彼が訊いた。
「いゝえ。着物類を一杯詰込んだ大型の行李です。」正直に云って了ったが、既に輕蔑の心は起って居た。
「さうですか。大變な見誤りを致しました。今少しくお待ち下さい。心を落着け直して好く透視しますから。」彼は大きに耻入った。
「貴下は軍艦から来られた方でしよう。此品は沖に浮んで居る船の中の、それも水線より下に成った所にありまする。だから初めは朧にしか見えなかったのです。」
 今度は餘程大事を執ったらしく、十分問も沈默を續けた後で云った。
「水線下のどんな所です。」
「倉庫、物置、と云った様な所です。」
「實は之れは軍艦丹波の出來事です。所がある可き筈の其倉庫を、幾度捜しても見當らないのです。」私はかう云って妙に心を迷はした。
「其行李は隠れて居ます。眞赤な物の下に隠れて居るのです。それで見出せなかったんでしょう。」
 かう云はれて見ると、今迄適中した點さへも眉唾ものに成って來た。幾人もの從卒が捜した筈である。其等が皆それ程不注意である譯がないし、第一軍艦と云ふ殺風景な所に赤いものなんかあり様がない。私はもうこんな迷信的な事に關係した事を悔い始めて居た。
「あゝさうですか。有り難う厶いました。それで料金はいくら差上げれば好いんです。」私は起ち上らうとする氣配さへも見せて云った。
「それ丈けでお判りに成りますか。何ならこれがら私と一緒に行つて見ましょう。貴下後から跟いて來て下さい。」彼は私と反對に落着佛って云ふのであった。
「じょ、冗談ぢゃねえぞ。」私は思った。全く之れは途方も無い事であった。折角私は上陸して來て居る。料理屋へ上って飲み掛けて居る。藝者二人も待たしてある。眼の見えない男のお守りなどして、艦の中迄引摺歩かされては堪ったものではないのである。勿論斷然謝絶をしようと決心した。が、先方が好意を持て云って居る丈けに、體裁よく斷はらうと云ふ氣であった。共言葉を捜して居る間に、彼は私などにはお構ひなく、颯々と一人で喋り出した。
「えゝと、これで今丹波の舷側の艀船を乗り着けました。此所に梯子が一ツ吊り下って居ります。之れから上って差支ヘないでしょう。」
「なあんだ。本當に行くのぢゃ無かったのだ。」
 私は大に安心した。彼は只口先丈けで行くのであった。これならば一寸面白い。此盲が果して私の乗つて居る艦の中の状況を、明瞭私に語り得るだらうか。私は調戯氣分を除き得なかったが、相當興味も持つ事が出來た。
「えゝ好いですとも、遠慮なく舷梯を登って下さい。」私が云った。
「上まで上りましたが、どちらが船の舳だか艨だか私には判りません。左手の方に旗が樹って居ります。」
 盲目の癖に好く見付け出したものだ。これで察すると右舷側から舷梯を上り、今舷門の所に立って居るらしい。左手に旗があると云へば、艦尾に掲げられた軍艦旗に相當する。私は其旨を語って遣った。
「少し斜に艦尾の方へ寄って、眞中に樹って居る柱の前を左舷の方へ通ります。其前方に出入口があって、下へ降りられる様に梯子が懸って居ります。此梯子段を降りて行きましょう。」
 これは正しく士官室昇降口と稱する出入口に相當する。私は少し宛驚きが顏を出して來るのを感じた。
「へえ。梯子段を降りて了ひました。」
「そこは中甲板と云ふのです。」
「此下にも叉梯子段が有りますね。行李はまだ下の方にありますから、此梯子段も降りましょう。」
 かう云つて中甲板から更に下甲板へ降りた事に成った。と彼は又云ひました。
「まだ此下に艦尾の方へ向って降りられる段梯子があります。これを降りて行きましょう。」
 そう云はれて見ると、之れこそ士官室倉庫と、士官次室倉庫とへの人口であり、突當りが士官室倉庫の入口で.次室倉庫の人口は、其手前の右壁に附いて居るのである。
「此處の倉庫の中に有るんです。」彼が云った。
「突き當りに入口のある方ですか。」と私。
「いゝえ。突當り迄行かないんです。其途中右手の方に入ロがあるんです。其中にあるんです。」
「扉を開けて這入ってご覧なさい。其所も幾度か調べさした所なんですが。」私が云った。
「此處です此處です、中段の棚で、一番右の端のです。」
「依然赤いものが乗って居ますか。」私が訊いた。
「えゝ、何だか赤いきれの様なものが掛けてあります。」
 總て彼の云ふ所は眞面日であり確信的であつた。私は何時迄も輕蔑して居る譯に行かなくなった。此男が嘗て日明きであったとして、丹波艦内を見に行った事があるとしても、外來者を倉庫迄連れ込む筈はない。又若し此男が給仕に雇はれて居たと考へられないでも彼が、子供であった時分には丹波と云ふ艦は未だ出來て居なかった。之れは或は紛れ當りかも知れないが、兎に角透視に依て適中したものと見なければならなくなる。私は何故ともなく大分に感心させられた。料金も申出の倍額を佛つて歸った。行李が有っても無くても此判斷は面白いものゝ様に思はれたのである。
 翌朝は生惜とからッと晴れて、相當暑い日であつた。私は鎮守府の旗竿に白服着用の信號を見乍ら歸艦した。士官室に入ると多勢が食後の漫談に耽って居る所であった。其処へ私は從卒長を呼んだ。
「今日はいやでも白服を着用しなければならないんだ。今一度倉庫を捜して見ろ。幾度捜しても不注意な捜し方では見付かりはしない。私は未だ一度も倉庫なんかへ這入って行った事はないが、それでもお前達よりは中の様子が好く判って居る。私は精神を統一して其中を透視する事すら出來るんだ。嘘と思ふんなら私が試しに透視した所を云って見ようか。私の行李は次室の倉庫へ紛れ込んで行って居るんだ。之れは私が此艦に着任した時、私の從卒は私室の外の廊下へ其行李を出した儘、室内を整頓して居ったんだ。處が其時丁度中下甲板の大掃除であったから、分隊の者が廊下を掃除に來たんだ。其行李を發見したので、好意を以て倉庫迄運んで呉れた處が倉庫の掃除をして居つた次室の從卒がそれを下で受取ったので、名前も調べないで次室士官の物と思ひ込んで次室の倉庫へ入れて了ったのだ。其場所は中段の棚で……倉庫の中は三段に成って居るだらう。」
 實際私は知らないのでかう訊いた。
「さうです。」從卒長が答へた。
「……其中段の棚で、一番右舷側へ寄った端の所にあるんだ。併も私の透視によると、何か眞赤な布か何かゞ掛って居る様な氣がする。直ぐ行って調べて見ッ。」
 私は澄し切って云った。次室倉庫へ紛れ込んだ譯は私の推定であった。私が從卒長に吩咐けて居るのを聞いて、或者は其理由を訊いた。或者は私が透視すると云ふ丈けで、既う冷かしに掛るものもあつた。が.徒卒長は何だか思ひ當る節でもありさうな顏で云った。
「次室の從卒長と立會つて貰って、今直ぐ行つて捜して見ます。」
 ものゝ五分とは經たない中、行李は士官室へ運ばれた。
「ありましたありました、これなら前に捜した時にもありましたが何しろ此危險旗が掛って居るもんですから、危いと思って手を觸れませんでした。」と、從卒長は云ふのであった。行李に掛って居た危險旗も持って來て居った。危險旗と云ふのは射撃發射の際とか火藥搭載の際に掲ける旗で、危險物を標示する旗でもある。それは眞赤一卜色の旗であるが、其古旗が何故倉庫へ迷ひ込んだかそれは私にも推定が出來なかつた。(終)

注)冒頭の「なみ」はサンズイ+ケモノヘン+奇ですが「波」としています。




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