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桜田十九郎 作品

Since: 2021.10.24
Last Update: 2021.10.24
略年譜 - 小説 - 随筆 - 著書

      桜田十九郎(さくらだとくろう)略年譜

    1895.10.18(明治28年)  愛知県宝飯郡塩津村にて生まれる。本名福井穣
    19xx.頃  一高卒、東京帝国大学中退
    1933.06.18  「青龍白虎の争闘」がサンデー毎日・実話募集に入選
    1935.04.28  「幇間の退京」浮世夢介名義がサンデー毎日・大衆文芸募集に入選、掲載
    1937.10.  「鉄の処女」がモダン日本小説募集に入選、掲載
    1939.12.  「髑髏笛」を新青年に掲載
    1940.01.  「めくら蜘蛛」を新青年に掲載
    1943.xx.  塩津村に疎開
    19xx.xx.〜  塩津村議会議長
    19xx.xx.〜1954.03.  塩津村村長
    1980.xx.(昭和55年)  死去

    筆名は、桜田十九郎、(櫻田十九郎)、浮世夢平、浮世夢介



      探偵小説/冒険小説

  1. 「鉄の処女」
    ( モダン日本増刊 1937.10. )
    『桜田十九郎探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書75 2014.05.30
     スペイン、アルヘシラス。私ジョオジ・ミキ船長はヘレナ丸にカルメン・モラルスを乗船させる事になった。さらに密行で乗り込んでいた兄エミリアと妹ミチリナ。女二人は海に投身、男は刺殺されておりルビーが残っていた。スータの隣村でミチリナの手紙に呼び出され、ガウデロ操舵手とピカッソ機関手は撃たれ私は捕らえられてしまう。アイオタ島に連れてこられた私は……。
     アイオタ島はアルセマス島がモデルか。史実を織り交ぜていると思われる。この地域で日本人が活躍する冒険小説はほぼなかったのではなかろうか。
  2. 「燃えろモロッコ」
    ( モダン日本増刊 1938.10. )
    『桜田十九郎探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書75 2014.05.30
     スペイン領モロッコ、スータ。義勇軍元中尉の私マッキー(牧武夫)は隊商の中から女性の日本語での助けを呼ぶ声で月の部落の英雄モブクを殺してしまう。月の酋長ピスルは父を殺し部落を奪ったケワニを討ちたいという。オリーブ屋敷で攫った春川富士子は再び捕らえられる。マホメットの黄金像を得て吊り部屋から抜け穴を通り追う牧。月の部落では……。
     日本人が活躍する冒険小説。トリック的な要素も少しある。話自体はウイグル地域でもそのまま通用しそうに思われるが舞台がモロッコというのが当時としては異色だったと思われる。
  3. 「髑髏笛」
    ( 新青年 1939.12. )
    『桜田十九郎探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書75 2014.05.30
    『茂田井武(1)幻想・エキゾチカ 挿絵叢書6』中村圭子編 皓星社 2018.04.10
     モロッコのメリラ。義勇軍元少尉の私セニョール白刃(木下)は外人部隊大尉ゴメズがリフ族の囚人を虐待するのを見て止めようとした。木下はリフ人街に逃げ込むが、乞食から恋人ミチリナの姉エミリアが白人に騙され死亡、残されたミチリナはリフ族の掟により新月(ヒラール)部落へと連れさられたのを知る。部落へ向かう木下だが……。
     国際任侠冒険小説の角書きとの事。挿絵叢書版は絵の題字にある。リード文は挿絵叢書版は本文、探偵小説選版は解説に引用。絵の有無で印象が多少変わるのは事実。個人的には、任侠には違和感がある。探偵小説味は薄い。
  4. 「めくら蜘蛛」
    ( 新青年 1940.01. )
    『おお、痛快無比!! 新青年傑作集5ユーモア・幻想・冒険編』中島河太郎編 角川文庫(緑434-05) 1977.12.25
    『桜田十九郎探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書75 2014.05.30
     安南(ベトナム)順化(ユエ)。私佐藤は軟禁されている父の旧友カン氏を訪ねたが知らないと言われる。レストランで仏人ジャンと再会、謎の女性が日本語で「イケナイ」と一言残す。私達はダイヤを求め洞窟へ行く事になった。洞窟へ行った仏人は全滅、戻った下男ジャンは「めくら蜘蛛、青くて美味いよ、どぶウん」と謎の言葉を言うが……。
     冒険小説ではあるが、主人公が積極的な活動をするわけではない。言葉の謎はあるが探偵小説味は薄い。国策が加味され始めている。羅列描写に味がある。
  5. 「女面蛇身魔」 (「ラミア」)
    ( 新青年 1940.04. )
    『桜田十九郎探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書75 2014.05.30
     アマゾン。ブタンタン血清研究所の毒蛇研究第一人者牧のところに英人ラリイ少年が兄を毒蛇で殺したのは牧だといってヘレンと共にやってきた。響尾蛇(カスカベール)に襲われそうになるが口笛で助かる牧ら。二人が引き揚げた後、カロスの案内で深青(レルダ)蕃社へ行く牧とパンチョだが……。
     編集で削られ末尾に蛇足が加えられたような気もする。煙草は良いのだが。
  6. 「呪教十字章」
    ( 新青年 1940.11. )
    『桜田十九郎探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書75 2014.05.30
     倫敦。旭商会倫敦支店の私山田幸平は所持する正宗の刀を支店長赤城からホワードに正宗の刀を売り渡すよう強要されている。ドイッチェ・マイヌンク紙の友人ランクは悪魔ホワードだという。ホワードに会うと十字章を胸につけてアフリカの友人達の祝宴に代理で出席してほしいという。そこでは魔法使いが……。
     妖刀なのか、やや怪奇味のある作品。背景として日独伊三国同盟調印が1940年9月27日なので手直しが入った気もしないではない。
  7. 「沙漠の旋風」
    ( 新青年 1941.01. )
    幻影城 1975.03.
    『桜田十九郎探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書75 2014.05.30
     シリア砂漠。ナシール・パシャの秘書長官アリフェヨはフランス人士官にスパイ嫌疑の旋風(マジール)ササキの事を聞かれる。マジールは陰謀部落にいてルル姫の弟を誘拐し結婚を無理強いさせたという。アリフェヨはマジールに決闘を挑むが多勢に襲われ逃げ込んだ先はルル姫の天幕だった。アリフェヨとマジールは……。
     ある意味、探偵小説味のある作品。最後の一行も良い感じ。
  8. 「五時間の生命」
    ( 新青年 1941.06. )
    『桜田十九郎探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書75 2014.05.30
     カイロ。埃及沙漠研究所の岩田大造はバデアの依頼で偽花婿として老父母と会食していた。が、バデアは岩田に毒を飲ませ消えた。解毒薬を五時間以内に飲まなければならない。同僚のラダンの話では岩田の留守中にイムシがらが研究所を襲ってパシャ博士を攫い重要書類を持ち去ったという。博士の娘スウラに会うが誤解はとけない。老婆に教えてもらった秘密倶楽部へ乗り込むが……。
     時間期限のサスペンスではあるが、死をも厭わないところもあり弱く感じる。スパイ戦の方の印象が強い。
  9. 「蛇頸龍の寝床」
    ( 新青年 1941.09. )
    『桜田十九郎探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書75 2014.05.30
     シンガポール。チャド博士が南洋から持ち帰った巨大な卵、いよいよ孵化する時がきた。博士の娘の宝石嬢ラトナもボンペイから来る。レムリア大陸の遺物蛇頸龍(プレジオサウラス)との見立てだ。博士の助手になっている佐久良散太郎を捕らえる為、暗黒街の顏役アリ・シンの助けで洞窟に入れる二百十人に紛れた英国秘密情報部員グラハムとシン。洞窟の中では……。
     伏線的には弱いが意外性のある最後。長径4フィートの卵はさすがに大きいがレムリア大陸の遺物ならあるいは。
  10. 「屍室の怪盗」
    ( 新青年 1941.12. )
    『桜田十九郎探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書75 2014.05.30
     ベルリン郊外。メリケ研究所員の今井シュンサクが心中した男の解剖をし終えた深夜、忍び込んで来た者があった。執事ステッフェンの話では、男はホーエンベルグ将軍の子エルネストでペニタに求婚したが将軍に反対され家出、ペニタの叔父に諒解を得る為モスクワへ行こうとしていた、従兄のロート将軍にも叱られたと言い残していたという。そこへ乱入してきたのは……。
     怪奇味のある作品。題材は面白いのだが、一場面という事もあり説明不足。状況に関しては当時としては周知なのかもしれないが。
  11. 「悪霊の眼」 (「バディの眼」)
    ( 新青年 1942.01. )
    『桜田十九郎探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書75 2014.05.30
     マレーシア。ゴム園主戸倉トウヘイは追われて梟団(ジャンボ)首領ハジ・バランのところへ逃げ込んだ。馬来の猛虎(ハリマウ)である戸倉は英国官憲が護送中のサルタン・ムハメッド王の奪還を目指していた。計画を話す戸倉、祭りにまぎれて十時に開始されるというが……。
     狐と狸の化かしあい、フェイクが効いてはいるが国策思想で制限されてしまう。目力が妙に面白い。
  12. 「唖の雄叫び」
    ( 新青年 1942.03. )
    『桜田十九郎探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書75 2014.05.30
     ビルマ、ラングーン。パーマは夫の高武生には秘密で旋風団(レブエ)という親日結社に入っていて、首領の鸚鵡爺さんに夫から得た情報を流していた。援蒋物資を載せて河を上る支那汽船永昌丸を見送るようにと言われる。家に戻ると夫は英国秘密情報部ウィルキンスと米国秘密警察ヤングと共に船に乗り込むという。止めるパーマであったが……。
     妻の秘密というのが意外といえば意外。情報が入り難くなった為かペダントリック味も薄く時局を感じさせる。
  13. 「魔女の木像」
    ( 新青年 1942.07. )
    『桜田十九郎探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書75 2014.05.30
     コロンボ。グレース嬢の快速艇スワン号に乗り込んでいた人々の話題は狂人についてであった。加わらないのはグレース嬢と印度北部ファティアバッド王国ラル王とポルトガル貴族ボンバル侯であった。グレース嬢は夜叉族魔女クヴェーニ妃の木像を購入したが見る者を狂い死ぬという。既に二人が死に、海に捨てる航海だという。木像を見た王と侯爵は……。
     笑い狂い死ぬというので怪奇性はなくなっているように思う。当時の状況として枢軸国が優勢だった頃だろうか。ただ、外国の情報入手が難しくなってきた時期のようにも思われる。
  14. 「落陽の岩窟」
    ( 新青年 1943.01. )
    『桜田十九郎探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書75 2014.05.30
     ジブラルタル。カフェ・サン・セバスチャン、店主パウリノ爺さんはバスク人ピオに店をまかせている。英国駐屯軍カー中尉はジプシイの踊子マルチリーナに無理強いし乱暴狼藉を働くがピオは頭を下げるだけだった。ジプシイによるピオへのマルチリーナとの結婚強要、カー中尉管理の名馬北風号の盗難、そして約束の期限に……。
     酒の蘊蓄は面白い。しかしながら冒険小説でも詭計を用いた話でもなく精神主義でしかなくなっている。当時の状況がそうさせたのだろうか。
  15. 「恐怖の水牢」
    ( 譚海 1944.02. )
    『桜田十九郎探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書75 2014.05.30
     イスタンブール。日独貿易商会の山村は援助を受けていたイスタンブール農工銀行頭取から娘ジャミレを通して出入り禁止を言い渡された。共同経営者のフリッツも行方不明になっていた。ジャミレ嬢を見かけ英国秘密情報部にフリッツの恋人アンナと乗り込む山村だが……。
     紀州沖難破船の件で親日が多いとは当時もいわれていたとは思わなかった。冒険小説味はあるが、探偵小説的には唐突な結末。



      実話/一般小説

  1. 「家庭珍争議」桜田十九郎
    ( 月刊満洲 1929.11. )
     ※ユーモア小説 未確認
  2. 「青龍白虎の争闘」桜田十九郎 (実話)
    ( サンデー毎日 1933.06.18 )
    『桜田十九郎探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書75 2014.05.30
     町の中学校の名物は直角先生と柔道部野球部の確執。柔道部青龍団の黒牛と野球部白虎団の私は百人塚にて裸で争闘。子供の泣き声が……。
     「わが武勇伝」というテーマでの実話公募で入選した作品との事。
  3. 「哀愁佃夜話 佃島心中」浮世夢平 (実話)
    ( サンデー毎日 1933.10.01 )
    『桜田十九郎探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書75 2014.05.30
     半玉のお咲と中学生の伸太郎。どうしても明日朝鮮へ行くの? 薄情?
     「心中風土記」というテーマでの実話公募で入選した作品との事。詩情ある作品。
  4. 「幇間の退京」浮世夢介 (創作)
    ( サンデー毎日 1935.04.28 )
    『桜田十九郎探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書75 2014.05.30
     幇間の花蝶、母は生んで直ぐ失踪、養父は幇間で金を持ち逃げし寿美川の女将に借金がある身の上。女将に春ちゃんをZ蓄音機社長の田川さんに取り持つようにいわれる。田川さんに執心の身重の一龍さん。春ちゃんに恋心をもつ花蝶は田川の狼藉に笑って堪える。高級官吏でやもめの大津さん。春ちゃん、一龍さんと成田さんへの帰り、場末の料理屋に現れた幇間に花蝶は……。
     哀愁の中から心機一転する話。何もかも金が悪いという話でもあるが。
  5. 「夏宵痴人夢」浮世夢介 (創作)
    ( サンデー毎日 1935.06.02 )
    『桜田十九郎探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書75 2014.05.30
     海道筋の小さな町の新聞社、料亭海月の親爺が死んで、女将が甥の私を無理矢理社長に据えた。女将はしっかり者の栄家の玉栄を嫁にと勧める。女将に図られた座敷と社に現れた栄子とは……。
     蜃気楼を見るような作品。オチに対して意味深な題名。
  6. 「花婿検定試験」浮世夢介
    ( 雄弁 1935.09. )
     ※未確認
  7. 「洗場の恋唄」浮世夢介
    ( 雄弁 1936.05. )
     ※未確認



      随筆など

  1. 「作者の言葉(「幇間の退京」)」浮世夢介
    ( サンデー毎日 1935.04.28 )
    『桜田十九郎探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書75 2014.05.30
    感情を母胎へ置き忘れなかった幇間氏を取り扱った。
  2. 「王龍・阿蘭の歌(歌詞)」第一書房・日本ビクター懸賞募集当選歌?
    ( 日本ビクター SPレコード 1938.03. )
  3. (「相談往来」福井穣 )
    ( 人権通信 1970.06.,1972.06. )



      著書

  1. 『桜田十九郎探偵小説選』 論創社・論創ミステリー叢書75 2014.05.30
    「鉄の処女」/「燃えろモロッコ」/「髑髏笛」/「めくら蜘蛛」/「女面蛇身魔」/「呪教十字章」/「沙漠の旋風」/「五時間の生命」/「屍室の怪盗」/「悪霊の眼」/「唖の雄叫び」/「魔女の木像」/「落陽の岩窟」/「恐怖の水牢」/「青龍白虎の争闘」/「哀愁佃夜話」/「幇間の退京」/△「作者の言葉」/「夏宵痴人夢」/△「解題」横井司



      参考文献

  1. 「文士村長のジレンマ・桜田十九郎」鮎川哲也
    EQ 1994.01.
    『幻の探偵作家を求めて 完全版(下)』鮎川哲也、日下三蔵編 論創社 2020.05.10
  2. 「解題」横井司
    『桜田十九郎探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書75 2014.05.30
  3. 「戦前期中国東北部刊行日本語資料の書誌的研究」岡村敬三
    Web Site 「おおすみ書屋」収蔵庫 2009.03.
  4. ほか



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