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野島淳介/鮫島龍介 作品

Since: 2025.01.26
Last Update: 2025.01.26
略年譜 - 探偵小説 - 随筆 - おまけ

      野島淳介/鮫島龍介(のじまじゅんすけ/さめじまりゅうすけ)略年譜

     経歴不詳
    1934.08.  荻一之介の文でぷろふいる紙上にて東京探偵趣味同好者をよびかける
    1934.11.20  小冊子「新探偵」発行、江戸川乱歩の罵倒文を掲載したらしい
    1935.03.  会を抜けた人々により「探偵文学」が創刊される
    1935頃以後  不明

    筆名は、野島淳介、鮫島龍介



      探偵小説

  1. 「深夜の患者」野島淳介
    ( ぷろふいる 1933.10. )
     私が加藤氏から居抜きで安く譲ってもらい眼科を開業して三日目の夜、右眼を潰した男がやってきた。傷ついた左眼を直すと男は語る。盲目で孤児院で育ち嘲笑され、盲唖学校で教師となり女生徒と知り合うが結婚は許されず、病院のマッサージ科の教師となり看護婦長と結婚、その後……。
     着想自体は悪くはないが、不自然すぎたりして引っかかるところが多い。
  2. 「龍太の女婿」鮫島龍介
    ( ぷろふいる 1935.04. )
     隠退して田舎で弁護士を開業している手塚龍太を訪問する鮫島。女婿が獅子内俊次。
     二人の主人公を関係付けただけの小話。



      随筆など

  1. 「甲賀三郎論」野島淳介
    ( ぷろふいる 1934.02. )
     甲賀三郎宅を訪問した時の感想。妄信的敬愛。
  2. 「応用文学と探偵小説に就て(POP欄)」鮫島龍介
    ( ぷろふいる 1934.08. )
     『犯罪・探偵。・人生』甲賀三郎より。純文学が純正科学で探偵小説は応用科学。階級の上下はない。
  3. 「乱歩に忠告す!!=起生働與=のことども」鮫島龍介
    ( 新探偵 1934.11.20 )



      参考文献

  1. 「オンライン版 江戸川乱歩『貼雑年譜』 解題」石川巧
  2. ほか



      おまけ
「野島君の「深夜の患者」」甲賀三郎
「ぷろふいる」 1933.10. (昭和8年10月号) より

 野島君は未知の青年だが、作品は二三讀んでゐる。野島君はどっちかと云ふと、文學的要素を多分に合んだものを書きたいらしい。然し、それが私の持説である如く、探偵小説はストーリイでなくてはならないのだから、無論文學的であることは結構だが、それより以前にいゝストーリイであって欲しい。この事は個人的に野島君にも云ってある。
 野島君のも一つの特徴は、人間の特異心理に興味を持ってゐることだ。こゝに特異心理と云ったのは、變態心理とはやゝ異った意味で、之は敢へて定義しなくっても、判って貰へると思ふ。
「深夜の患者」もやはり特異心理を扱ったもので、こゝでは盲人の特異心理が相當はっきり書けてゐると思ふ。盲人が限が見えるやうになったら、すべてのものが醜く、忽ち幻滅を感じたと云ふ事は、眼明きの常識的な考へかも知れないが、こゝでは他に幾多の急迫した事情、失戀、妻の不貞、友人の哀切などが彼を取卷いてゐるから、彼の心理に相當の迫眞を與へてゐる。
 筋の上にも大した難がないと思ふ。冒頭の書出しは殊にいゝ。缺點は最後の説明がやゝ生氣に乏しい。盲人に話しかけられた醫師が、殺人の嫌疑を受けたり、發狂したりするのはどうかと思ふ。要するに書足りないのだ。之は枚數を節約する必要上からかも知れないが、あれだけの枚敷を旨く鹽梅すればもう少し手際よく仕上が出來た事であらう。
 野島君は「ストーリイ」を大分持ってゐるやうだ。文章は未だ幼稚な所があると思ふ。然し、之は決して悲しむべき事でなく、むしろ喜ぶべきことである。何故なら文章の達者なものは、たゞ筆にだけ委せて、ストーリイを輕んずる危險がある。文章は骨を折って書いてゐるうちに上達するものだ。探偵小説は文章より先に、ストーリイに骨を折らなければならないのだ。
 この意味に於て、野島君の前途は、多難であるかも知れないが、プロミシングのものだと思ふ.

注)「甲賀三郎論」野島淳介によれば七月に会っていることになっている。原稿を持ち込んだのであろうか。その中の一篇を選んだように思える。


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