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耽綺社同人 作品

Since: 2022.09.19
Last Update: 2024.01.21
(土師清二、長谷川伸、国枝史郎、小酒井不木、江戸川乱歩、平山蘆江)
略年譜 - 探偵小説 - 座談会 - 著書

      耽綺社同人(たんきしゃどうじん)略年譜

    1927.11.(昭和2年)  小酒井不木と国枝史郎の発案で江戸川乱歩、土師清二を勧誘、長谷川伸も参加
          書記として岩田準一、岡戸武平が参加していたらしい
    1927.11.27〜  第一回会合が名古屋寸楽園にて行われ「残されたる一人」「飛機睥睨」をまとめる
          座談会参加者は江戸川乱歩、国枝史郎、山下利三郎、小酒井不木、長谷川伸、横溝正史で翌年新青年掲載(土師清二は欠席)
          以降、基本的に月一回会合をもつ
    1927.12.  「残されたる一人(脚本)」をサンデー毎日に掲載
    1928.02.〜  『飛機睥睨』(『空中紳士』)を新青年に連載開始
    1928.04.  平山蘆江が参加
    1929.04.01(昭和4年)  小酒井不木死去
    1929.夏  最後の作品(原案)「非情警戒」の打ち合わせが大須ホテルで開かれる(不木没後百日忌)
    1930.春  最後の集まり(不木没後一周忌)、以降自然消滅?

    筆名は、耽綺社同人、ほか参加者名(作者当て)

      (国DC※)は国立国会図書館デジタルコレクション個人送信(ログイン必要)で公開されています(今後非公開になる可能性もあります)
      (奈落)は もる氏 の「奈落の井戸 小酒井不木研究サイト」でインターネット公開されています



      探偵小説

  1. 「残されたる一人(脚本)」
    ( サンデー毎日 1927.12.18 )
    名古屋新聞 1928.01.16
    『南方の秘宝 他二編 合作探偵小説』 春陽文庫(C-01-41) 1994.08.10
    参考( 『江戸川乱歩 電子全集6 傑作推理小説集2』 小学館eBooks 2016.07. )
    『空中紳士/南方の秘宝 合作探偵小説コレクション3』日下三蔵編 春陽堂書店 2023.03.30
     三幕五場。時は文政春。日食の江戸、暗くなった時に南朱之助が丈吉を殺す。目明し筋違い文吉は死体を調べる。碇屋の寮で浜路は許婚船越雪次郎と会うが夫婦にはなれないと言う。祝言を迫る音蔵。蝦夷樺太択捉の警備への血判。蛇柄の音蔵の死骸。文吉の妹と朱之助、文吉と浜路。韃靼得兵衛と碇屋仁右衛門。朱之助は……。
     探偵小説味のある時代劇。配役が気になるところ。北方への背景は作成当時の思想だろうか。
  2. 『空中紳士』 (『飛機睥睨』)
    ( 新青年 1928.02.〜09. )
    ( 『空中紳士』(土師清二、国枝史郎、長谷川伸、小酒井不木、江戸川乱歩) 博文館 1929.02. )(国DC※)奥付欠
    『空中紳士 合作探偵小説』 春陽文庫(C-01-40) 1994.07.10
    ( 『陰獣 江戸川乱歩全集3』 光文社文庫(え-06-28) 2005.11.20 )
    参考( 『江戸川乱歩 電子全集6 傑作推理小説集2』 小学館eBooks 2016.07. )
    『空中紳士/南方の秘宝 合作探偵小説コレクション3』日下三蔵編 春陽堂書店 2023.03.30
     探訪記者星野龍子は見習外交官平山松太郎とカフェシセリヤで語り合っていた。東欧R国から追放されたルール殿下がカロロ伯爵として秘かに巽小路侯爵のところに滞在しているという。カフェにはマダム長川伸子とこの世に別れを告げる男がいた。侯爵の園遊会は夫人美那子と親密な関係があるという噂の園部男爵が幹事役で開催された。龍子は温室での出来事から不思議な男響晰に関心をもつようになる。 園遊会でのインド人の蛇使いの演技、帰国間もない奇術師の演技、巽夫人の獅子の逃亡。巽侯爵の猟場でのお波の予言、そして侯爵は樹木で殴殺された。小間使の千早謠子が見た男。ポケットの紙片。カロロ伯爵の行方不明。龍子のY市阿片窟探索。響晰と白樺清児。帰って来た巽小路美麿。侯爵夫人の失踪。龍子の急襲。美麿の最後。龍子は……。
     江戸川乱歩執筆とのことだが第三回?は岩田準一らしい。物語は波乱万丈、謎で引っ張り読ませる作品。冒頭、園遊会、猟までは良いとしてもその後も偶然や後出しが多いのが気になる。また個人的にだが、思わせぶりな地の文、神の声も多く邪魔に感じる。
  3. 「ジャズ結婚曲(脚本)」
    ( 週刊朝日 1928.03.11〜18 )
    参考( 『江戸川乱歩 電子全集7 傑作推理小説集3』 小学館eBooks 2016.07. )
    『空中紳士/南方の秘宝 合作探偵小説コレクション3』日下三蔵編 春陽堂書店 2023.03.30
     ベーリング漁業社長北見鱈右衛門邸での還暦祝い。お抱えの新日本ジャズ団で和楽器に民謡に日本ダンス。社長と妻お鱒、姉の白魚に妹鯱子。社員沖野鰯に家政婦大綱鰤子、白魚に恋する画家長良鮎太郎、白魚と婚約することになる鎌倉勝魚。高架下の駅改札付近。鯱子と鰤子、鰯と鮎太郎、電話する鮎太郎。北見邸での晩餐会……。
     笑劇脚本。話自体はナンセンスでギャグ主体。演出と演技次第で面白くもつまらなくもなりそう。
  4. 『南方の秘宝』
    ( 名古屋新聞 1928.07.01〜08.10 )
    『南方の秘宝 他二編 合作探偵小説』 春陽文庫(C-01-41) 1994.08.10
    『空中紳士/南方の秘宝 合作探偵小説コレクション3』日下三蔵編 春陽堂書店 2023.03.30
     上野山の大仏(東海市の聚楽園大仏)付近で深夜音がする。古見(知多市)沖モーターボートで肥田周造と飯塚留吉が松丘鍵一から奪った七宝の花瓶で争う。豪商中込の娘寿美子と松丘鍵一はボートから入水心中する。二人は許婚だったが鍵一の父は番頭不破の横領で破産し行方不明、寿美子の父中込東吾は肥田と結婚させようとしていた。二人を救った不思議な予言者鉄さんは花瓶も拾っていた。絵柄に黄金の仏像のありかの鍵があるという。新舞子(知多市)の舞妓館の女中お咲の相談。私立探偵銀崎哲……。
     観光案内風作品で御都合主義的な喜劇要素が笑える。名古屋の南の愛知鐡道沿線が舞台。鉄道、車、モーターボートの競争場面は面白い。暗号も面白いが経年変化を考慮しておらず少し無理があると思うのは厳しいか。※一部不明字あり ※想像では地理描写的にも国枝史郎が主の作品と思われる
  5. 「無貪清風(宗教劇)」
    ( 雑誌未発表? 1928.xx. )
  6. 『白頭の巨人』
    ( サンデー毎日 1928.10.21〜12.16 )
    『白頭の巨人 合作探偵小説』 春陽文庫(C-01-42) 1994.09.10
    『空中紳士/南方の秘宝 合作探偵小説コレクション3』日下三蔵編 春陽堂書店 2023.03.30
     東京駅改札付近で雪岡六郎博士が殺され、発明書類が奪われていた。同乗の知人は雁金博士と真珠の実業家鱗健介。知らせを受けた娘の美智子と子供の頃に引き取られた助手東章夫だが、章夫は研究室から拉致された。美智子は六郎博士の知人の白髪の男明石不二人に助力を請う。行方不明となり時折姿を見られる雁金博士、追う小林刑事、廃船紫影丸での謎の男。抜け穴、暗号、澪子、硝子筒の拷問、覆面の男、綾乃、怪人、救出、因縁……。
     冒険探偵小説風作品。説明不足、解明不足で思いつきを繋げただけの連作のような感じもする。硝子筒もアイディアのみで意図不明。ほか、ほとんど必然性が感じられない。携帯可能な砲弾を防ぐ気流発生装置もほぼ名前のみ。暗号のみ面白い。
  7. 「意外な告白」
    ( サンデー毎日 1929.03.20 )
    『南方の秘宝 他二編 合作探偵小説』 春陽文庫(C-01-41) 1994.08.10
    参考( 『江戸川乱歩 電子全集6 傑作推理小説集2』 小学館eBooks 2016.07. )
    『空中紳士/南方の秘宝 合作探偵小説コレクション3』日下三蔵編 春陽堂書店 2023.03.30
     目黒の学者村に通じる檜林で台湾帰りの背中に刺青のある大林源次郎が銃殺されていた。検事、本荘警察医、足立、金子刑事の検証調査。家探しをしていて捕らえられた鷲見金策。夜盲症の医学博士下平明からの招待状。その夜、源次郎は下平博士と珠枝夫人を訪れた帰途に殺害されたらしい。助手鳴瀬音三の証言。弾丸の調査……。
     意外な結末の作品。証言や告白によるので伏線はほぼない。合議によってうまく展開させていっているように思う。
  8. 「非情警戒(映画原案)」
    ( (日活太秦映画) 1929.12.公開 )
    参考(シナリオ)( 映画時代 1930.01.,02. )

  9. 参考「六大都市小説」
    ( サンデー毎日 1928.03.15 )
    『覆面の佳人/吉祥天女の像 合作探偵小説コレクション5』日下三蔵編 春陽堂書店 2024.01.10
     「手紙(東京)」国枝史郎/「角男(大阪)」江戸川乱歩(横溝正史)/「都をどりの夜(京都)」渡辺均/「異人屋往来(横浜)」長谷川伸/「うゐろう(名古屋)」小酒井不木/「劉夫人の腕輪(神戸)」横溝正史
     ※耽綺社競作ではあるが筆者が明確なので個人作品、参考扱いとしておく
  10. 「高町小屋の人々」長谷川伸(作者当て)
    ( サンデー毎日 1928.04.08 )
     ※筆者が明確なので個人作品扱いとしておく
  11. 「黄色の街」小酒井不木(作者当て)
    ( サンデー毎日 1928.04.15 )
    『叢書新青年 小酒井不木』天瀬裕康[監修]、長山康生[監修] 博文館新社 1994.04.25
     ※筆者が明確なので個人作品扱いとしておく
  12. 「沙漠の美姫」国枝史郎(作者当て)
    ( サンデー毎日 1928.04.22 )
    ( 『大衆文学集 昭和四年版』 新潮社 1929.05.14(国17) )(国DC※)
    『国枝史郎探偵小説全集』末國善己編 作品社 2005.09.15
     ※筆者が明確なので個人作品扱いとしておく
  13. 「ふところ手」平山蘆江(作者当て)
    ( サンデー毎日 1928.04.29 )
    ほか
     ※筆者が明確なので個人作品扱いとしておく
  14. 「根来卜斎」土師清二(作者当て)
    ( サンデー毎日 1928.05.06 )
     ※筆者が明確なので個人作品扱いとしておく



      座談会、随筆など

  1. 「合作長篇を中心とする探偵作家座談会」 江戸川乱歩、国枝史郎、山下利三郎、小酒井不木、長谷川伸、横溝正史
    ( 新青年 1928.02. )
    『叢書新青年 小酒井不木』天瀬裕康[監修]、長山康生[監修] 博文館新社 1994.04.25
    参考( 『江戸川乱歩 電子全集16 随筆・評論1』 小学館eBooks 2017.10. )
    『空中紳士/南方の秘宝 合作探偵小説コレクション3』日下三蔵編 春陽堂書店 2023.03.30
     1927年11月17日名古屋寸楽園に於て。歌舞伎で合作はあるが小説ではない。知恵を出しあい最初に筋を立てる。オーケストラのようなものに。読者が望んでいるのはルパンのようなもの、ナンセンスもの。個人の想像力の限界、実際の事件に因果関係をつけ現実味を。長篇で。同じようなものを書くのは肩身が狭い。批評に関して。褒めること、同情と優越感。作者の陶酔について。翻案と独自性。神秘性。探偵劇。
  2. 「『南方の秘宝』について」耽綺社(小酒井不木)
    ( 猟奇 1928.11. )
    『空中紳士/南方の秘宝 合作探偵小説コレクション3』日下三蔵編 春陽堂書店 2023.03.30
     映画「南方の秘宝」は未見、江戸川兄は見られた。
  3. 参考「耽綺社同人諸氏の新進作家集観」国枝史郎、小酒井不木、江戸川乱歩、甲賀三郎
    ( 『平山蘆江集 現代大衆文学全集22』大衆文学(月報)19 平凡社 1928.11.01 )
    『空中紳士/南方の秘宝 合作探偵小説コレクション3』日下三蔵編 春陽堂書店 2023.03.30
     「林不忘氏と久山秀子氏」国枝史郎/「大下水谷両君」小酒井不木/「鬼才三人」江戸川乱歩/「山本、角田、山下三君」甲賀三郎 ※次回配本『新進作家集』収録作家に関しての耽綺社としての評のようだが個人名義と同人探偵小説作家三名だけなので個人作品とし、参考扱いとしておく
  4. 「耽綺社座談会(1月8日寸楽園)」 土師清二、長谷川伸、国枝史郎、小酒井不木、江戸川乱歩、平山蘆江、小田富彌、編集部(大竹憲太郎、渡辺均)
    ( サンデー毎日 1929.02.03 )
    参考( 『江戸川乱歩 電子全集6 傑作推理小説集2』 小学館eBooks 2016.07. )
    『空中紳士/南方の秘宝 合作探偵小説コレクション3』日下三蔵編 春陽堂書店 2023.03.30
     「耽綺社」について/合作試演/挿絵の話/剣戟の話/万歳の話



      著書

  1. 『空中紳士』 博文館 1929.02. (国DC※)奥付欠
    『空中紳士』
  2. 『空中紳士 合作探偵小説』 春陽文庫(C-01-40) 1994.07.10
    『空中紳士』/△「「空中紳士」解説」山前譲
  3. 『南方の秘宝 他二編 合作探偵小説』 春陽文庫(C-01-41) 1994.08.10
    『南方の秘宝』/「意外な告白」/「残されたる一人(脚本)」/△「「南方の秘宝」解説」山前譲
  4. 『白頭の巨人 合作探偵小説』 春陽文庫(C-01-42) 1994.09.10
    『白頭の巨人』/△「「白頭の巨人」解説」山前譲
  5. 『空中紳士/南方の秘宝 合作探偵小説コレクション3』日下三蔵編 春陽堂書店 2023.03.30
    『空中紳士』/「ジャズ結婚曲」/『南方の秘宝』/『白頭の巨人』/「意外な告白」/「残されたる一人」/▲「合作長篇を中心とする探偵作家座談会」/△「耽綺社同人諸氏の新進作家集観」/▲「耽綺社座談会」/△「耽綺社打明け話」土師清二/△「〈小酒井不木氏を悼む〉耽綺社の指導者」長谷川伸/△「耽綺社の頃」土師清二/△「合作組合「耽綺社」」江戸川乱歩/△「編者解説」日下三蔵/・「執筆者プロフィール」



      参考文献

  1. 「解説」山前譲
    『空中紳士 合作探偵小説』 春陽文庫(C-01-40) 1994.07.10
    『南方の秘宝 他二編 合作探偵小説』 春陽文庫(C-01-41) 1994.08.10
    『白頭の巨人 合作探偵小説』 春陽文庫(C-01-42) 1994.09.10
  2. 「合作組合「耽綺社」」江戸川乱歩
    宝石 1952.07.、08.
    『探偵小説四十年1』江戸川乱歩 講談社江戸川乱歩推理文庫53 1987.12.08
    ほか
  3. 「耽綺社の指導者」長谷川伸
    ( サンデー毎日 1929.04.14 )
    別冊幻影城『小酒井不木』 1978.03.
  4. 「耽綺社の頃」土師清二
    別冊宝石42江戸川乱歩還暦記念号 1954.11.
  5. 「江戸川乱歩小酒井不木往復書簡」
    『子不語の夢 江戸川乱歩小酒井不木往復書簡集』浜田雄介[編]、乱歩蔵びらき委員会 皓星社 2004.10.21
  6. 「不木が乱歩に夢みたもの」阿部崇
    『子不語の夢 江戸川乱歩小酒井不木往復書簡集』浜田雄介[編]、乱歩蔵びらき委員会 皓星社 2004.10.21 (奈落)改稿
  7. 「編者解説」末國善己
    『国枝史郎探偵小説全集』 作品社 2005.09.15
  8. Web Site 「奈落の井戸 小酒井不木研究サイト」
  9. 「編者解説」日下三蔵
    『空中紳士/南方の秘宝 合作探偵小説コレクション3』日下三蔵編 春陽堂書店 2023.03.30
  10. ほか



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