山本禾太郎作品

山本禾太郎

略年譜

1889.02.28(明治22年) 　兵庫県神戸市にて生まれる。本名山本種太郎
1926.06. 　「窓」が新青年の懸賞２等となり掲載
1932.07.06～　「小笛事件」を神戸新聞、京都日日新聞に連載
1937.01. 　「抱茗荷の説」をぷろふいるに掲載
1951.03.16(昭和26年) 　死去

筆名は、山本禾太郎、米島清、山本雅太郞(※種の誤植？)

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探偵小説

「窓」 [明上検事]

（新青年 1926.06. ）
『新進作家集』平凡社・現代大衆文学全集35 1928.12.01 (国ＤＣ※)
（『長谷川伸・山本禾太郎集』改造社・日本探偵小説全集17 1929.09.03 ）(国ＤＣ)
（妖奇 1947.09.～12. ）
（『消える女』梅田出版社 1948.12.01 ）
（『昭和前期集』東都書房・日本推理小説大系６ 1961.05.20 ）(国ＤＣ※)
（『短篇(下)』講談社・大衆文学大系30 1961.05.20 ）(国ＤＣ※)
（小説推理増刊 1974.08. ）
幻影城 1976.12.
『パズルの王国　ミステリーの愉しみ３』鮎川哲也編、島田荘司編立風書房 1992.04.20
『山本禾太郎探偵小説選(１)』論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30

　夙川の別荘の離れで野口甚一の姪野口清子が殺されていた。明上検事、時原書記は現場検証をし、指紋研究大家の大沼は指紋検出を、小島医学士は検死をする。貿易商野口甚一、下女林ふく、支配人山下誠一、店員安田敏雄、番人林房造、店員山口要吉の聴取書。解剖の鑑定書。泥棒の逮捕始末書。聴取書。指紋の鑑定書。供述を翻す人たち……。

　新青年懸賞２等２作の一つ。もう一作は夢野久作。ほぼ調書のみで構成されたもので、供述の嘘をみつけていくという展開。起伏に乏しく物語性は薄い。冒頭描写がなければ、現代視点では供述にたよりすぎていて最後の供述も嘘かもしれないと思ってしまう。実験的野心的な構成作品。

「童貞」

（新青年 1926.11. ）
（『長谷川伸・山本禾太郎集』改造社・日本探偵小説全集17 1929.09.03 ）(国ＤＣ)
『山本禾太郎探偵小説選(１)』論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30
　聖人とも石仏ともいわれている女工監督の西田。美女の磯谷に誘われて西田は断る。しかし映画館に入っていくところを見かけた彼は……。

　一度の偶然が致命的になった話。二十八歳で五年前入社に意味があるのか、は疑問点ではある。

「閉鎖を命ぜられた妖怪館」

（新青年 1927.04. ）
『新進作家集』平凡社・現代大衆文学全集35 1928.12.01 (国ＤＣ※)
（妖奇 1947.08. ）
『モダン殺人倶楽部　新青年傑作集２推理編２』中島河太郎編角川文庫(緑434-02) 1977.07.20 (国ＤＣ※)
（『君らの狂気で死を孕ませよ　新青年傑作選』中島河太郎編角川文庫(ん-18-02) 2000.12.25 ）
『山本禾太郎探偵小説選(１)』論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30
『江戸川乱歩と13人の新青年　論理派編』ミステリー文学資料館編光文社文庫(み-19-29) 2008.01.20
　Ｙ君への手紙。法学士弁護士の僕は納涼博のばけものやしき通いをしていた。そのうち一人で味わいたく閉館間際に入っていった。生憎夫婦者がいて、幽霊が出た時に女が倒れた。翌日、ばけものやしきが閉鎖を命じられた。事務所では、デパートの屋上から女が転落し、通りを歩いていた夫婦の夫が死亡、女からデパートへの訴えの弁護をしていた……。

　偶然が多い。しかも手懸りではなく直接証拠とは。返信のない複数の一方的手紙のみの構成は珍しいかもしれない。

「馬酔木と薔薇」

（サンデー毎日増刊 1927.04.10 ）
（『大衆文芸傑作集　サンデー毎日懸賞入選』(山本雅太郞名義)大阪毎日新聞社編 1927.xx. ）(国ＤＣ※)
『山本禾太郎探偵小説選(１)』論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30
　新婚家庭の私は女魔術師の地球斎天幽の弟子河内天声からの手紙を受け取った。天幽がみどりと天声に嫉妬していて殺されるかもしれない、と。天声を送っていく夜に彼は女に首をさされて薔薇を押し込まれ、汽車では鉄橋から身を投げる。Ｈ座に行くと天幽の催眠術……。

　谷崎潤一郎を思わせるが、幻想的ではない話のような印象。支那カバンの秘密というべきか。誤読かもしれないが。

「空想の果て」

（探偵趣味 1927.08. ）
『山本禾太郎探偵小説選(１)』論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30
　彼は空想を喰って生きている男であった。大金を拾うこと、人間を造る機械のこと。自動車に乗せられ、着いた先の部屋。一夜の女を忘れることができなかった。鳩の首のダイヤ。松旭斎天洋の鳩か。二十年……。

　空想と現実が混在した話。最後の富豪も含めて謎が多い。現実と思われる部分も全て空想としか思えなくなってしまう。

「一枚の地図　楠田匡介の悪党振り　第五話」

（新青年 1927.11. ）
『創作探偵小説選集　一九二七年版』探偵趣味の会編春陽堂書店 1928.01.01/復刻版 1994.04.10 (国ＤＣ※)
『山本禾太郎探偵小説選(１)』論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30
『諏訪未亡人／猪狩殺人事件　合作探偵小説コレクション６』日下三蔵編春陽堂書店 2024.03.26
　被告となた気弱な悪党楠田匡介。鈴代と同棲していて山津温泉で一人の妻の澄子を殺そうとしながらできずにいた。見かけた自殺死体、澄子を殺害した後、位置を地図にした紙片をその懐に入れておいた。楠田匡介は自供したが裁判では翻し弁護士は……。

　裁判小説。猟奇趣味的作品が多い連作の中で一番本来の探偵小説らしく出来の良い作品。

「小坂町事件」

（新青年 1928.01. ）
（『長谷川伸・山本禾太郎集』改造社・日本探偵小説全集17 1929.09.03 ）(国ＤＣ)
『創作探偵小説選集　一九二八年版』探偵趣味の会編春陽堂書店 1929.02.13/復刻版 1994.04.10
『山本禾太郎探偵小説選(１)』論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30
　犯罪捜査報告。森野老夫婦が殺害された。娘八重子に婿入りしたいと精神薄弱者の山中石松は兄虎松を通して申し入れたらしい。石松は小坂駅構内の信号灯をみて呟く。友人の末松篤は隔日の合図を示唆する。石松の死、助役小林正一の行動、青年団員山本重蔵の暗示……。

　実際の事件の小説化らしい。八重子の話がないのは離れで気づかなかったという前提での報告だからだろうか。特定していく筋としては面白くはある。

「映画館事故」

（探偵趣味 1928.08. ）
『山本禾太郎探偵小説選(１)』論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30
　百々之助の武士、女の膝に手を。マキノ輝子のお洒落狂女、女に誘われて。岡田嘉子の京子、女の手を握り。

　よくわからない。見ている映画の題名が記載されていて関係があるのではないかと思われる。

「長襦袢」

（新青年 1928.07. ）
（『長谷川伸・山本禾太郎集』改造社・日本探偵小説全集17 1929.09.03 ）(国ＤＣ)
（妖奇 1949.06. ）
『山本禾太郎探偵小説選(１)』論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30
　ある探偵座談会の筆記抄より、自殺を装わしめた他殺。但馬Ｈ署勤務時に井戸に投身自殺との事で検死依頼があった。松谷寛一の妻すみは全裸で傷が少しあったが水を飲んでおり自殺と判断された。Ｓ町で民野たみが工事夫呉成塞に頼まれてすみの長襦袢を質入れしていた。拾ったという。投げ込まれた伊達巻、そして轢死体……。

　座談会形式の作品。現代では通用しない、冤罪の元となる手法の方が印象に残る。

「当選美人の死」

（新青年 1928.10. ）
『山本禾太郎探偵小説選(１)』論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30
　私が散歩中、人が殺されているという婦人に出会った。正装した美人だった。私には床の間の仙人掌の絵が事件に関係あると思われた。ある日、良婦の友の口絵に殺された時の衣装があり小松弓子に送られたとあった。その三月前に東山みどり氏推薦で被害者の写真が掲載されていた。東山氏の正体は不明のままだった。都合四枚の写真、北国の温泉へ行った時のものらしい……。

　偶然の多い作品。但し積極的に謎を解こうとしている訳ではないのと悲恋を描こうとしたと思われるので問題はないが。

「龍吐水の箱」

（新青年 1929.03. ）
『山本禾太郎探偵小説選(１)』論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30
　老前科者と老看守の交互の話。囚番百十一号、隼の秀と異名をとった掏摸の久山秀吉の十六回目の服役は雑居房ではなく独房だった。看守に反抗していたが、隣に強盗傷人の二二二号が入ってから態度が一変した。二二二号が、その後隼の秀も雑居房に移され裁縫工場へ出役するようになる。福助と綽名された田中看守の妻が掏摸の被害にあったとくき、隼の秀は龍吐水の箱の中に金があると告げ……。

　当時の刑務所内の事情で起こる話は面白い。内容が変わっていき唐突な因縁話的な展開になっていくが。

「反対訊問」

（新青年増刊 1929.08. ）
（妖奇 1949.11. ）
『山本禾太郎探偵小説選(１)』論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30
　弁護人と証人の会話のみで構成。夜、常盤神社境内で森田義兵衛を音吉が殺害したのを茶店の床几から常夜灯の灯りで目撃したとの証言。盗られた鞄と発見、捨てられた首巻き、切符の番号。弁護人は……。

　調査済の証人の矛盾点を証言で引き出す話。またはそのように構成し直したものかはわからない。

「貞操料」

（猟奇 1931.06. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30
　原告中山登、被告大川流子。訴状、理由なく離婚要求、結婚費用を請求。答弁書並びに反訴状、性交なし、貞操蹂躙。準備書面第一、貞操蹂躙なし。証人訊問調書、結婚媒介人中山立吉、登の母。準備書面第一、第二……。

　ユーモア作品というべきか。姓が違うのは離婚訴訟だからだろうか。判事、書記の名は気付いていなかった。

「重大なる過失」

（猟奇 1931.07. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30
　夫が夜に麻雀で出かけた。その夜の言葉を残して。夜半、覆面をした男が……。

　精神分析の一例とのこと。書かれたことからはそうかもしれない。厳密には主観描写もあるし無関係で描写されていない行動もあるはず。単純にユーモア作品で良いと思うが。

「仙人掌の花」

（猟奇 1932.01. ）
『「猟奇」傑作選　幻の探偵雑誌６』ミステリー文学資料館編光文社文庫(み-19-06) 2001.03.20 (青空)
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30
　閑枝は病気療養で加賀の温泉地の姉夫婦のところに来ていた。差出人のない生への希望を綴った手紙。京都へ戻る前日、仙人掌の花の絵と啄木の詩集が送られてきた。その後、兄から写真屋の陳列箱から閑枝の写真が盗まれたと知らせがあった。二年後、結婚していた閑枝は……。

　日付と状況から関係しているのは明らかだが明記はされていないので関係度合いはよくわからない。閑枝の気持ちも不明。結末は読者にという形なのか中途半端によくわからない作品。

『小笛事件』 （「首の索溝」）

（神戸新聞、京都日日新聞 1932.07.06～12.28 ）
（『小笛事件　犯罪事実小説』ぷろふいる 1936.03.01 ）
（妖奇 1948.03.～1949.02. ）
幻影城 1977.09.
『日本探偵小説全集11　名作集１』中島河太郎監修創元推理文庫(400-11/Ｍん-01-11) 1996.06.21
　事実小説。大正十五年六月三十日、京都。平松小笛に連れられた大月田鶴子と喜美子を母大月シゲノは捜していた。シゲノらが小笛宅を隣家から見て異常を発見、田鶴子と喜美子、小笛の養女千歳が布団の中で、小笛が鴨居から首を吊って死んでいるのが見つかった。田丸予審判事らの現場検証。千歳と小笛の遺書、二つの索溝などなど。小南博士は食物の消化状態から二十八日午前一時から三時頃に、索溝から殺されたとの鑑定する。京大下宿時から小笛と関係のあった広川条太郎が尋問される。午前五時半、生きている小笛と別れたという。起訴され、高山義三弁護人らが救うべく法廷闘争をする……。

　事件自体は明確に解決されるわけではない。調書を主体にして一部登場人物主観も混じる。現実的であり、当時の資料的価値はあるものの、現在的視点では調査不足の観は否めない。ほぼ文章のみによるのが要因なのかもしれないが。

「二階から降りきた男」

（ぷろふいる 1933.05. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30
　外人居留地が設けられた頃の木造三階洋風建物。日本風、支那風、ドレスの羽織の女たちがマドロス達を待ちうけているが客はいない。秋の風雨の夜、露台から飛び下りた女の話をしていると誰もいない三階からベル、そして女が誘う。ドレスの美代子が三階へ、降りると外へ飛び出して行った。女将が三階へ行くとまた。美代子の情人佐伯が調べると……。

　怪談。正体を明かしているが中途半端でより一層わけがわからなくなっている。

「一時五十二分」 [明上検事]

（ぷろふいる 1933.07. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30
　明上検事の聴取。女は庭にいる夫と男を見たという。しかし二枚重ねの簀戸越しには見えないと警部はいう。検事は同時刻に実地検証を行うと発表し……。

　検証結果は良いとしても意図は全くわからない。また帰宅時間が同じなのか作為なのかもわからない。

「車庫」

（ぷろふいる 1933.08. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30
　Ｈ駅、車庫から出された列車の一等車のカーテンが盗まれていることがしばしば起った。駅夫が番をしていると、列車はかすかに動いていた。下からうめき声が……。

　随筆篇に収録されているが解題では創作篇にある。伝聞実話かもしれないが創作怪談扱いに賛成。カーテン盗難と結末の関係はよくわからない。意思があったと見做すべきか。

「黒子」

（ぷろふいる 1933.10. ）
（『探偵小説　抱茗荷の説』熊谷書房 1946.06.25/11.25 ）
（妖奇 1951.08.～09. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30
　西杉才二は容貌から見合い後に破談を繰り返し結婚はあきらめていた。課長の細本の世話で光子と結婚したが、叔母の亭主という佐々重夫からの無心の手紙、細本と光子が乗った自動車の目撃、給仕戸村と光子の噂があった。由幾子が生まれたが光子はあまり可愛がらなかった。由幾子が二歳の時、とうとう西杉はアリバイを用意し光子を殺害しようとしたが既に殺されていた。荒本警部補の調査で……。

　本格色の濃い作品だが後出しも多く謎は解かれていない。特にアリバイに関しては謎提示すらされていない。荒本の見解や西杉の工作や由幾子の誕生時のことなどなかなか面白いところもある。不満も多いが佳作。

「おとしもの」

（ぷろふいる 1933.12. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30
　自転車の小僧が三十銭と書かれた封筒を落した。拾うルンペン。飯屋に渡る石入りの指輪。息子からカフェの女給へ。ヌスト(？)へ。故買屋へ三十銭で。そこから……。

　コント。結末は思いつかなかった。落差ありすぎのような。

「黄色の寝衣」

（ぷろふいる 1934.01. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30
　僕は時々探偵小説を発表している神部君を百貨店の別館宿直室に訪ねた。詰めていた消防員楠西は本館屋上から人が落ちたという知らせを受けた。また、宿直員蘆谷は名田が殺されているという。発見者の隣の此花劇場番人馬木和助の証言、消防員の証言。墜死した二宮と名田と三根美代子の関係。本館巡回の証言、蘆谷の証言。神部は……。

　目撃は注意を引くというだけで偶然のはず。鍵も同様。無理がありすぎる犯行。

「東太郎の日記」 米島清

（週刊朝日 1934.01.01 ）
　山木の日記形式。一座が泊っていたみどり屋にて、紳士が高砂座で浪花節語り京山大圓を見て礼服の色を染め変えたいと話していたのに対応。大圓の専横、手紙代筆。三枚目読みの圓八の細君である桜中軒花奴おふくの一座加入。圓八のおふくへの暴力。勧進帳改作など大圓の代筆。おふくの頼み。圓八とおふくが一座を立ち上げ別れる。桜中軒花奴改め富士雪子として渡した菊池寛原作のネタ本「義民新助」。一年後、さらにその後……。

　事実小説との事で後に名誉毀損トラブルになり、作者の言葉も含めて創作として対応したらしい。作品自体は前半は旧来の不条理な師弟世界が面白く、結末部は良い話。知らないところは書けない日記形式という事もあり急展開だが。

「幽霊写真」

（ぷろふいる 1934.06. ）
幻影城 1975.08. (幻影城)
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30
　高取正介が部屋にきた時、私は彼と幸田と三人で行った撮影旅行の印画を貼っていた。彼は心霊現象のことを聞いた後、敏子のことで明石を殺したのは自分だという。原版ない明石の姿が印画に出るという。誰か知っている者がいる……。

　敏子はどうなったのだろう。高取の行動などよくわからない。

「涼み床机の怪談三つ」

（神戸新聞 1934.07.21，24 ）
（「山本禾太郎における事実と虚構―『窓』『小坂町事件』を中心に」細川涼一京都橘大学大学院『京都橘大学大学院研究論集　文学研究科』第５号 2007.03. ）
　隣の涼み床机から聞こえてくる話。土蔵の中、機関車、漁船。

　落語のネタのような話でオチがついている。説明があるので、そのままでは落語にならないが。

「セルを着た人形　連作「Ａ１号」第五話」

（ぷろふいる 1934.08. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30
　怪盗Ａ１号を主題とし、九鬼澹、左頭弦馬、杉並千幹、戸田巽、山本禾太郎、伊藤利夫による連作との事。私達は月一回、探偵小説家東山正介宅で会合をもっていた。突然の来客は高麗屋デパートの貴金属売場勤務で一個のダイヤモンドに魅入られてしまったと語り出した。男は夜、死んだ恋人水沢水子にそっくりな人形の指にはめたりしていた。十日後、人形は動き八階から一階の家具売場の洋服箪笥に消えていった。Ａ１の記号が……。

　男の話は前にどこかで聞いていたのだろうか。指輪は前もって用意していたのだろうか。それなりの解決はしているので良しとすべきか。

「八月十一日の夜」

（ぷろふいる 1935.05. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30
　戯曲全七場、陪審評議室以外陪審法廷。被告花岡蘭子は離婚した元夫阿部熊雄を殺害した嫌疑を受けていた。財産を持っていた鈴木実と同居、熊雄と離婚して別居していた。当初は熊雄と離婚して実の財産を得た上で再婚する計画だったが熊雄を殺してはいないという。蘭子と同じカフェに働いていた事のある野間百合子は犯行頃に熊雄の家の前で蘭子に会ったという。蘭子は眼を負傷した実に谷崎潤一郎の「ある少年の怯え」を朗読していたという……。

　陪審法廷の様子がわかり興味深い。事件自体はどちらの証言を信じるかということで物的証拠はなく裁くことの危険性も示唆できている。最後の演出は見事。佳作。

「小さな事件」

（探偵文学 1936.08. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30
　掌編２篇。下総国年弥の茂助が代官所の下男を訪ねた夕方に公金紛失、茂助は嘘の白状、お咲も嘘の白状、幸太も……。江戸妙応寺町に火事で丑松と仙太は質屋甚五郎方が火元というが、甚五郎は有力者で風上の三河屋の長屋も焼けているので長屋の後家おむらに嫌疑が……。

　証言のみではあてにならないが嘘でも自白すると取り返しがつかない。江戸時代も戦前も変わらないということか。

「抱茗荷の説」

（ぷろふいる 1937.01. ）
（『探偵小説　抱茗荷の説』熊谷書房 1946.06.25/11.25 ）
幻影城 1975.08.
（『続々・怪奇探偵小説集　幻の傑作ミステリー』鮎川/哲也編双葉社 1976.10.01 ）
『怪奇探偵小説集(３)』鮎川/哲也編双葉文庫(あ-02-03) 1984.10.25 (国ＤＣ※)
『怪奇探偵小説集３』鮎川/哲也編ハルキ文庫(あ-04-03) 1998.07.18 (青空)
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30
　田所君子が物心つく頃には四国の山端の陋屋に祖母と住んでいた。父は遍路の人達のために一棟を宿にしていた。白髪の老女と母に似たお高祖頭巾の女が泊った時、母は病気だった。二人は金色の護符を飲ますようにと去り際に父に渡した。父がそれを飲み死んだ。母は後妻であり君子の異母兄も可愛がっていたというが君子が生まれる前に死んでいた。家計が苦しくなり、母は君子を連れて抱茗荷が家紋の大きな池のある家へ出かけた。祖母のもとに帰ったのは君子と人形だけだった。祖母が死に、旅芸人に加わり探す。そこには……。

　記憶が元でもあり幻想が具現化していく作品。最後はどちらであっても成り立つが心情的には納得しきれない。小説としてのまとまり度合としては代表作といえる。

「少年と一万円」

（シュピオ 1937.09. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30
『探偵小説の風景　トラフィック・コレクション(上)』ミステリー文学資料館編光文社文庫(み-19-33) 2009.05.20
　一郎は小学二年を終えると村一番の成功者である神戸の義兄栄吉の家に引き取られた。秋、一郎は新しい帽子に服、嫂らくがはめていた金時計、そして一万円が入っているという風呂敷包みを背負わされて両親のところに一人帰った。両親が開くと手紙があり一万円の有価証券を預けるので千円貸してほしいというものだった。父からは一万一千円を背負わされて神戸へ戻った。翌年秋、同じように帰る途中の汽車で……。

　見栄っぱりなのだろうか、金時計は気になる。その後の成行きも。

「奈落」

（科学ペン 1938.05. ）
　圓丸は浪花節語り一座の座長に上草履の揃え方でも八つ当たりされていた。好意を見せてくれるのは座長の姪お里の婿の京十郎だけだった。やがて新弟子圓声が入るが馬鹿にされているようでもあった。芸ではなく声で客受けも良い圓声とお里の三味線により前に演じさせられるようになる。そして圓丸の舞台の時、圓声が奈落で殺された。調べを受ける圓丸、お里、京十郎……。

　舞台を舞台にした探偵小説。トリック自体は安易だが一座の様子などはさすが内部にいた人だと思わせられる。

『消える女』 （「心の狐」）

（神港夕刊 1947.09.09？～11.17 ）
（『消える女　女浪曲師京山秋野伝』梅田出版社 1948.12.01 ）
（妖奇 1950.01.～04. ）
　明治四十三年九月、神戸大黒座に桃中軒雲右衛門の浪花節がかかった。浪花節は祭文語りを起源としうかれ節から浪花節となった。明治四十四年九月、唯一の女浪花節師京山秋野が広島に現れた。銀色の薄をあしらった新聞紙大の辻ビラが配られていた。秋野は町廻りをせず、顔つなぎの宴会も退席する。初日後席の演目を「石童丸」にしたが台本に「湯を飲むな」と書かれた紙片があった。秋野は卓子に一度はうつ伏しになってしまったが宇津木草太郎の呼ぶ声で起き上がり語り終えた。湯の用意は弟子で野菊だった。秋野の前が三語りの三子、その前が野菊、その前が春子だった。序列には厳しい。宇津木は別府公演の時に現れそのまま共にして先生とも呼ばれている。過去を語らない秋野、岡山公演の時、神戸公演の時には母だという女性が現れる。「葛の葉物語」の刺繍、信田の森での出来事、宇津木は秋野の過去を探ろうと……。

　広義の探偵小説といえなくもない。終盤は幻想的な流れになっていく。結局謎は明確には解明されない。

随筆など

「冷汗三斗」

（新青年 1926.07. ）
『山本禾太郎探偵小説選(１)』論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30

　「窓」について。人間離れの探偵小説から実在性をもたせた。前記、時期、小道具、鑑定書、下女の恋、種明かしのこと。

「妻の災難」

（新青年 1926.10. ）
『山本禾太郎探偵小説選(１)』論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30

　神戸板宿駅から田圃道を十五分の文化住宅に越してきた。殺人狂の病院からの脱走、切り殺される人たちの新聞記事。夜道の人影。妻の悲鳴……。

「大正十五年度　探偵小説壇の総決算(印象に残れる作品)(アンケート)」

（新青年 1926.12. ）
『山本禾太郎探偵小説選(１)』論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30

　神ぞ知食す(城)、恋人を喰べる話(水谷)、闇(田中訳)。奇警を利かせた複雑な筋のものは読んでいるときは面白いが時日がたつと印象が薄い

「ペスト・ガラス」

（探偵趣味 1926.12. ）
『山本禾太郎探偵小説選(１)』論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30

　ペストの予防法。ガラスを通しての盗難の防止法。

「クローズ・アップ(最初に読んだ探偵小説と三十年後)(アンケート)」

（探偵趣味 1927.05. ）
『山本禾太郎探偵小説選(１)』論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30

　「奇想天外」というような本だった。犯罪がなくならない限り、社会組織の新保と犯罪の複雑化で栄える。

「ざんげの塔」

（探偵趣味 1927.06. ）
『山本禾太郎探偵小説選(１)』論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30

　氏名詐称の告白。浪花節語りの桃中軒×右衛門の事務員の時、長崎に先乗りした。魔奇術の松旭斎天×の幹部が桃中軒一行には女にかけて凄い男がいると言っていた。女中たちは勘違いしそのまま私も宿帳に立花伝吉と。

「死体・刃物・猫」

（探偵・映画 1927.10. ）
『山本禾太郎探偵小説選(１)』論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30

　食後直に横になると。猫のエレキで死体の下の刃物を通して死体が動く。死児の頭に剃刀をあてていたところ叫び声がして部屋の一隅が明るくなっていた。

「屏風の蔭から出て来た男」

（探偵・映画 1927.11. ）
『山本禾太郎探偵小説選(１)』論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30

　山陰巡業Ｐ町の旅館。屋根裏部屋のような三階で梯子の登り口の扉がないので屏風をたてておいた。夜、人影が。頭、額、眉、首。泥棒か幻視か。

「(印象に刻まれた探偵小説と来年度の希望)(アンケート)」

（探偵趣味 1927.12. ）
『山本禾太郎探偵小説選(１)』論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30

　ネクタイ奇談(横溝)、最後の手紙(窪訳)、どもり奇談(梶原訳)。芸術的な探偵小説を。角田氏に期待。

「法廷小景」

（探偵趣味 1928.05. ）
『山本禾太郎探偵小説選(１)』論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30

　酔った被告ガマン、酔ったカンカンこと池野庄太郎と出会い「いようー」と言って肩を叩いた。池野は倒れて死亡。傷害致死で起訴されているがはたして判決は。

「著者自伝」
『新進作家集』平凡社・現代大衆文学全集35 1928.12.01 (夢現)(国ＤＣ※)
　略歴、発表作。
「(れふき・あぱあとめんと)(一言欄)」
（猟奇 1932.02. ）
　酔っ払った。

「作品読後感想」

猟奇 1932.04.

　※「解題」による　※目次は山本禾太郎になっているが本文は記載なし、前々号の滋岡透から継続されていて誤記だと思われるが不明

「作者の言葉(小笛事件)」

（神戸新聞、京都日日新聞 1932.07.04 ）
『日本探偵小説全集11　名作集１』中島河太郎監修創元推理文庫(400-11/Ｍん-01-11) 1996.06.21

　認定された事実と真実が反対の場合がある。人が人を裁く限り甘受しなければならないのか。「実話　頸の索溝」で問題に触れ興味を味わおうと思う。

「ヒヤリとした話」

（ぷろふいる 1933.06. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30

　夜二時、目の前のガラス戸が開いた。入ってきた男が私の方を向いた。その男も。

「筆者の言葉・略歴(東太郎の日記)」米島清
週刊朝日 1934.01.01
　事実だが百枚の内容を五十枚にしたので窮屈になった。浪花節語りを志し弟子入り、一座に七年、現在は勤め人。
「(マイクロフォン)」
（新青年 1934.02. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30
　「お医者さんの匿名座談会」「悪霊」

「事実問題と推理」

（ぷろふいる 1934.07. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30

　実際に起こった事件の新聞への予想や意見の五件に関して。

「寝言の寄せ書き　神戸探偵倶楽部席上にて」
（ぷろふいる 1934.08. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30
　小栗虫太郎以上のものを。

「(マイクロフォン)」

（新青年 1934.02. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30

　「義眼」大下宇陀児、「失踪」「行きづり異人館」ほか

「白蟻の魅力」

（ぷろふいる 1935.10. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30

　犯罪心理小説とある小栗虫太郎の『白蟻』に関して。

「探偵小説と犯罪事実小説」

（ぷろふいる 1935.11. ）
幻影城 1977.09.
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30

　犯罪事実は心理的社会的に面白い。犯罪実話は面白くない。実話と小説の中間、事実中の夾雑部分を減じたものが犯罪実話小説。探偵小説は常識を超越するので子供っぽさがある。小笛事件の実話では多くの謎の部分が捨てられている。疑問の探求が面白い。事実という強みがあればなおさら。

「ハガキ回答(推薦の書と三面記事)」

（ぷろふいる 1935.12. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30

　読ませたい本は小栗虫太郎、「日本探偵小説傑作選集」の「日本の探偵小説」。興味ある新聞三面記事は帝人事件の後半記事、熊本県かの偽れる貞婦事件。

「ペンぬり犯人」

（ぷろふいる 1936.01. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30

　女の髪を切る犯行、女の顔を切る犯行、女の着物にペンキを塗る犯行。ペン塗り犯罪を発見したのは私。看板のコーヒがヨーヒとなっていた。新聞によれば色々な被害が出ている。

「犯罪から裁判まで」

（ぷろふいる 1936.02. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30

　一通りの手続き説明。殺人発見、派出所の巡査、本署から、検事、場合により予審判事、現場検証、死体解剖、命令書と鑑定書、捜査方針、警察による被疑者等の聴取書と意見書、検事による聴取書と予審請求、予審判事による予審終結決定書、公判、事実審理、証拠調べ、検事と弁護人による弁論、理由と主文からなる判決書。陪審審理、控訴、上告。

「序(小笛事件)」

（『小笛事件　犯罪事実小説』ぷろふいる 1936.03.01 ）
『日本探偵小説全集11　名作集１』中島河太郎監修創元推理文庫(400-11/Ｍん-01-11) 1996.06.21

　実話はあるが面白くなく、事実小説という形式でまとめた。記録の面白さをある程度まで描き得たことと女性犯罪研究資料に役立つと自負。材料提供、出版、装幀、序文に深謝。

「探偵劇のこと」

（月刊探偵 1936.04. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30

　探偵劇が面白くないのは目標が誤っているからではないか。トリック、感情を盛ることが希薄。例えば精神分析的なものなら劇的効果がある。

「探偵劇座談会―市川小太夫氏を中心とする―」市川小太夫、末広浩二、西田政治、丸尾長顕、前田喜朗、加納哲、九鬼澹、山本禾太郎
（ぷろふいる 1936.05. ）

「あの頃」

（シュピオ 1937.06. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30

　夢野久作と共に入選した「窓」、読売の長編懸賞、選考時、「小坂町事件」「長襦袢」と実在した事件を小説化、実話脚色家とも。大衆雑誌懸賞の事実小説の名誉毀損事件。

「お問い合わせ　シュピオ直木賞号の読後感と才気に読んだ小説について」

（シュピオ 1937.06. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30

　シュピオ直木賞記念号は、膨大さ、再録だが意義に感心、傑作集。最近読んだ小説は「悪女」大下宇陀児、芸術的探偵小説を感じる。

「ハガキ回答　昭和十二年度の気に入った探偵小説と感想」

（シュピオ 1938.01. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30

　昭和十二年度の気に入った探偵小説は、「大浦天主堂」木々高太郎、「悪女」大下宇陀児。読者に憤りを感じさせる、性格がよく描かれている。

「探偵小説思い出話」

（ぷろふいる 1946.07. ）
『「黒猫」傑作選　甦る推理雑誌２』ミステリー文学資料館編光文社文庫(み-19-12) 2002.11.20 (青空)
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30

　夢野久作と共に入選した「窓」の選考時のこと。ぷろふいる創刊時からの経過。批評、評論が充実。大衆文学全集が出た時のこと。

「日本人ばなれの嘉七さん」

（ぷろふいる 1947.04. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30

　嘉七は呉服屋の番頭を思わせる名だが、洋服の似合う外国の薬会社の社員。翻訳を原作者に送り写真の返信もあった。若くして逝かれたのは惜しまれる。

「月蝕について」

（真珠 1947.10. ）
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30

　木々高太郎の「探偵小説芸術論」には共鳴するが変格も探偵小説と信じている。「月蝕」は「新月」の解決編かつ独立した作品。難解。本格かつ感銘を与える作品を。

「乱歩氏を囲んで(座談会)」江戸川乱歩、西田政治、山本禾太郎、岡戸武平、服部元正、福田照雄、若松秀雄、ほか
（神港夕刊 1947.11.15 ）
「奇術と探偵小説」
（関西探偵作家クラブ会報 1948.12.(11月号) ）
　奇術手品が嫌い。空々しい。探偵小説も割り切れない不思議に魅力がある。

「あとがき(消える女)」

（『消える女　女浪曲師京山秋野伝』梅田出版社 1948.12.01 ）
「漆黒の闇の中の目撃者」権田萬治幻影城 1975.08. ※全文か部分引用かは不明
『日本探偵作家論』権田萬治幻影城、講談社文庫、悠思社、双葉文庫

　「窓」から二十二年。記録体小説から幻想的小説、本格から変格と見る人もいるが小説の形が変わっただけで質は変わっていない。ウソを感じさせない小説として記録体の小説を書いた。徹すると小説でなくなるので作風に変化が生まれた。

実際に起こった犯罪に対する新聞コメントが５件以上あるらしいが不詳

著書

『新進作家集』 平凡社・現代大衆文学全集35 1928.12.01 (国ＤＣ※)
△「巻頭の言葉」編者／(林不忘集／山下利三郎集／川田功集／大下宇陀児集／久山秀子／角田喜久雄集／城昌幸集）／山本禾太郎集「窓」／「閉鎖を命ぜられた妖怪館」／（水谷準集／橋本五郎集）／△「著者自伝」
『長谷川伸・山本禾太郎集』 改造社・日本探偵小説全集17 1929.09.03 (国ＤＣ)
(長谷川伸集「日本巾着切」／「舶來巾着切」／「旅に行く幽靈」／「掏摸の家」／「二本松心中」／「親分病」／「異人屋の女」)／山本禾太郎集「窓」／「童貞」／「小坂町事件」／「長襦袢」
『小笛事件　犯罪事実小説』 ぷろふいる 1936.03.01
△「はしがき」森下雨村／△「序文」江戸川乱歩／△「序」／『小笛事件』
『探偵小説　抱茗荷の説』 熊谷書房 1946.06.25/11.25
「抱茗荷の説」／「黒子」
『消える女　女浪曲師京山秋野伝』 梅田出版社 1948.12.01
「窓」／「消える女」／△「あとがき」
『山本禾太郎探偵小説選(１)』 論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30
「窓」／「童貞」／「閉鎖を命ぜられた妖怪館」／「馬酔木と薔薇」／「空想の果て」／「一枚の地図」／「小坂町事件」／「映画館事故」／「長襦袢」／「当選美人の死」／「龍吐水の箱」／「反対訊問」／△「冷汗三斗」／△「妻の災難」／△「ペスト・ガラス」／△「ざんげの塔」／△「死体・刃物・猫」／△「屏風の蔭から出て来た男」／△「法廷小景」／△「大正十五年度　探偵小説壇の総決算(アンケート)」／△「クローズ・アップ(アンケート)」／△「(印象に刻まれた探偵小説と来年度の希望)(アンケート)」／△「解題」横井司
『山本禾太郎探偵小説選(２)』 論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30
「貞操料」／「重大なる過失」／「仙人掌の花」／「二階から降りきた男」／「一時五十二分」／「黒子」／「おとしもの」／「黄色の寝衣」／「幽霊写真」／「セルを着た人形」／「八月十一日の夜」／「小さな事件」／「抱茗荷の説」／「少年と一万円」／ △「ヒヤリとした話」／「車庫」／△「事実問題と推理」／△「白蟻の魅力」／△「探偵小説と犯罪事実小説」／△「ペンぬり犯人」／△「犯罪から裁判まで」／△「探偵劇のこと」／△「あの頃」／△「探偵小説思い出話」／△「日本人ばなれの嘉七さん」／△「月蝕について」／△「(マイクロフォン)」／△「寝言の寄せ書き」／△「(マイクロフォン)」／△「(ハガキ回答)」／△「(お問い合わせ)」／△「(ハガキ回答)」／△「解題」横井司

参考文献

「解題」横井司
『山本禾太郎探偵小説選(１)』論創社・論創ミステリ叢書14 2006.03.30
『山本禾太郎探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書15 2006.05.30
『戸田巽探偵小説選(２)』論創社・論創ミステリ叢書26 2007.05.20
Web Site「瑣事加減」　※サイト内「山本禾太郎」および「東太郎の日記」で検索
ほか

おまけ

　「著者自伝」

『新進作家集』平凡社・現代大衆文学全集35 1928.12.01 (昭和３年12月) より

　明治二十二年二月生れ。尋常小学校卒業後丁稚奉公。紡績、護謨、電機、造船等工場の職工、其他数種の労働に従事し大正十四年八月失業。現今にては神戸弁護士会の仕事を為しつつあり。大正十五年六月「新青年」の懸賞に入選し、以来「童貞」「一枚の地図」「小坂町事件」「あせびとばら」等三四編を発表す。

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山本禾太郎 作品

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