阿知波五郎(あちなみごろう)略年譜
1904.04.20(明治5年) 名古屋市にて生まれる
192x.xx. 名古屋八高卒業
1930.xx. 九州帝国大学医学部卒業
1946.10.〜 ロックに「ロック大学」掲載
1951.xx. 京都にて開業
1951.12. 別冊宝石に「墓」楢木重太郎が掲載
1952.07.,10. 同人誌「めどうさ」発行
1983.02.12(昭和58年) 死去
筆名は、阿知波五郎、楢木重太、楢木重太郎、宵甚三、阿木蒼郎、前田美知代
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探偵小説など
- 「袖珍小説一束」
( 『一番鷄は鳴く 文芸真砂1』小野田益三編 真砂社 1927.03.03 )(国DC※) |
人生の目的/秋日小景/勝負 |
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- 「紅毛流流行」
( 『新緑を呼ぶ 文芸真砂2』小野田益三編 真砂社 1927.07.25 )(国DC※) |
解体新書を手に入れた男は……。 |
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- 「幻想肢」
宝石 1951.10.
EQ 1991.05. |
外科医の私は肢を創造した。芸術家の君が結婚するバレリーナの麻利の肢を。ギブスに包まれた義肢を彼女は知らない。幻想肢として義肢とは思っていない。恋に破れた私の復讐。軋む音、疑心暗鬼の君……。 |
奇妙な何ともいえない話。SF風とも精神的神秘現象ともいえなくはない。 |
- 「アパートとピストル」
( 神戸新聞夕刊 1951.11.01,02 )※2 |
推理くらべ(クイズ)。洋館でA老人が銃でこめかみを撃たれて死んでいた。窓、落ちていたピストルとハンカチ、セパード……。 |
単純化したクイズという事で。 |
- 「墓」楢木重太郎
( 別冊宝石 1951.12. )
『こんな探偵小説が読みたい』鮎川哲也 晶文社 1992.09.15 |
大学の図書館。私しまは世界女性史の編集を思い立つが奥行に唖然とし保育園の保母になっていた。知り合った司書渋谷には他の女性がいるらしい。夏、私は一ヶ月閉鎖される図書館に故意に閉じ込められる。園児の青葉太郎、食べ物、本……。 |
奇妙な味の作品。本は心の栄養、過去の遺物、モニュメントなどの言葉が浮んで来る。 |
- 「科学者の慣性」
宝石 1952.03.
『「宝石」傑作選 甦る探偵雑誌10』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-20) 2004.01.20 |
レントゲンの私と内科の水島と外科の佐利は古い友人で典江を争い佐裡が得た。三人はA病院に勤めていた。佐利が浸潤で入院、レントゲン写真では軽微だったが最初見せなかったこともあり彼は疑うようになる。彼は、そして私はやがて……。 |
科学者の慣性を利用した話、という事のようだが個人的には納得できない。最後も今一つわからない。 |
- 「和蘭馬」
宝石 1955.07. |
明治二年九月、大村益次郎は京都で襲われた。大村達吉ら京都の医師らは総力をあげて手当てをする。槙村府参事はいよいよ大阪からボードインを招聘し……。 |
近代医学への転換と繋がる治療の話。診察に探偵小説的要素が無いとはいえないが。 |
- 「ジャパン・テリブル!」
宝石 1956.02. |
オーベルマイヤー夫妻と通訳水越太郎と犬のジョンスケは四条通り宝石店丸屋でダイヤを盗んだとして拘引された。私は彼等のことを説明する。店員ら含めダイヤはどこからも出て来なかった。私は水越太郎の妹五月に会い結婚を考えるようになる。水越からの怨みの手紙。吉本さよ子を殺害して逃げ轢死した水越。死者からの手紙……。 |
宝石盗難事件、全く理由もわからない殺人事件など面白い着想。テリブルが常套句の夫妻や闇米列車なども当時を感じる。探偵小説的には調べていくと判明していくだけであるが。 |
- 「白バラと長剣と」
宝石 1956.04. |
一九三九年私は英国種痘の創始者ヂェンナアの生地を訪ねることにした。宿を提供してくれたアンダーウッド老夫妻は白バラと長剣にまつわる話をする。クインシー侯夫人アンナは夫を亡くす。喪服に白バラのアンナ。大公は新しい恋人を見付け出し長剣で男の心臓を刺す。その後……。 |
ロマンス。あり得る事ではあるが史実かどうかは不明。 |
- 「往生ばなし」
宝石 1956.06. |
阿弥陀如来の手から糸を引かせて端を握る糸引往生。投身往生。ある上人は念願かない庭の榎で首くくり往生をする事にした。雨に濡れる縄。七日間の念仏のうちに上人は死にたくないと思うようになった。釜たきの郎に縄を取り替えるようにと……。 |
伝承か創作かは不明。風刺味や怪談味はあるが探偵小説味はほぼない。 |
- 「人口脳」
宝石 1956.10. |
私新川太郎は人口脳とあだ名された父の育てられた。父は友人赤木俊平にも問題を出し煙に巻く。私は父の古い友人岩瀬教授の誤りを正す。教授の令嬢綾子。家で会う綾子と父。父の死と書き残された文字……。 |
おとぎ話的な探偵小説。個人的には佳作。人物像とその感性が良い。手がかりや暗号は本格とは言えないが。 |
探偵小説関係雑誌掲載の随筆・評論
- 「ロック大学」
( ロック 1946.10.〜1947.07. ) |
探偵科学講座/毒薬の話/手と足/顏/死/双生児の話/感情的犯人/屍体/変質者 |
- 「おばけ座」
- 「探偵医談」
- 「医博満筆」
- 「トリックによる詐病看破法」
( 探偵作家クラブ会報 1948.05. ) |
聴覚障害詐称の看破法。識色障害詐称の看破法。 |
- 「希望訪問記 横溝正史の巻」
- 「犯罪医学物語(未完)」
( ルック・エンド・ヒヤー 1949.06.〜08. )(国DC※) |
(前書き?)/犯罪は運命か/不思議な犯罪/犯罪と環境/反社会性の性格 |
- 「医家と探偵作家」
( 関西探偵作家クラブ会報 1951.03. ) |
入会。医師としてドイルと小酒井不木のことを紹介。 |
- 「「怪談入門」補遺 医学的な推理コント集」
宝石 1951.08. |
『幻影城』14章「怪談入門」。夢で見た幻想肢の話(「幻想肢」1951.10.のあらすじに近い)。「カマラの歴史」(狼に育てられた少女)。舞踏病の友人の夢。自分とよく似た声を求める夢。 |
- 「探偵小説の寿命」
( 関西探偵作家クラブ会報 1951.10. ) |
昭和初年頃の洋装女性画やドイツ映画の古さ。ギリシア彫刻や仏像の古くなさ。ドイル、ポーの寿命が今なおあるのは探偵小説の寿命をのばす二つの典型。 |
- 「(通信)」
( 探偵作家クラブ会報 1951.11. ) |
大岡昇平「鷹」は推理小説といい得る。 |
- 「一九五一年度自選代表作を訊く(アンケート)」
( 探偵作家クラブ会報 1952.01. ) |
「幻想肢」「墓」。地方在住者の為に会報の充実を。 |
- 「文学的であること 関西探偵小説気狂クラブのことども」
( 関西探偵作家クラブ会報 1952.02. ) |
クラブ員の印象。世間離れしたクラブ。 |
- 「(通信)(2件)」
( 探偵作家クラブ会報 1952.04. ) |
久生十蘭「湖畔」。椿八郎、本間田麻誉氏と同人誌を出す予定。 |
- 「シムノンのこと」
( 関西探偵作家クラブ会報 1952.05. ) |
「天井桟敷の人々」のあまりにもフランス的なこと。よく判るのはイギリスもの。探偵小説ではシムノンが好き。 |
- 「小さい話」
- 「よき友」
- 「探偵小説と医者」
- 「二つの小説」
- 「してやられたー」
( 関西探偵作家クラブ会報 1952.10. ) |
京都の近所の古本屋には探偵小説なし。R書房に洋書、EQMMがずらり。一冊購入、一週間後には全滅。一冊の内容。 |
- 「クロスワード・パズル」
- 「新しい小説」
- 「エンターテェメント」
- 「陣痛期をすぎた探偵小説」
- 「探偵小説の新しいジャンル」
- 「逃避文学としての探偵小説」
( 探偵作家クラブ会報 1953.06. ) |
面白いことが第一条件。Queen's Quorum のサバティニィ Turbulent Tales。 |
- 「二つの寓話」
- 「北村龍一郎氏「魔女を投げた男」について」
- 「(アンケート回答)」
- 「一人の乱歩ふあん――探偵小説の一つのありかた」
黄色の部屋『江戸川乱歩先生 華甲記念文集』 1954.10. |
出身中学の第一回卒業生に乱歩。O校長の乱歩論。初期作品の妖しい魅力。トリックは二次的。日本人的。 |
- 「独り愉しむ」
( 日本探偵作家クラブ関西支部会報 1957.06. ) |
外国人の古書コレクション。探偵小説は老人が暇にまかせて書いても良い。仕事に疲れた時独り愉しむのに恰好の読物。 |
- 「探偵小説よテレビに喰はれるな」
( 日本探偵作家クラブ関西支部会報 1957.12. ) |
ヒッチコック劇場。愉しく楽。「ヒポクラテスへ還れ」、ホームズの時代を超えた愉しさ。読むものとして愉しいものを。 |
- 「関西人・香住さん」
( 日本探偵作家クラブ関西支部会報 1958.05. ) |
テレビで香住作品のない日はないような気がする。毒舌家だが正義派、人柄で人気。 |
- 「知識の錠剤」
( 日本探偵作家クラブ関西支部会報 1959.01. ) |
ドラマ「マンモスタワー」。紙と字でなく知識を得られる遺伝子に似た錠剤。テレビに喰われる。工夫を。 |
- 「新しい探偵小説」
( 日本探偵作家クラブ関西支部会報 1960.02. ) |
個人研究から共同研究へ。合作。手品トリックはもう使用にたえない。殺人でなく長命させることもテーマになり得る。完全犯罪は本人の意思に反した自殺。 |
- 「現代性について 雁の寺を読んで」
( 日本探偵作家クラブ関西支部会報 1961.10. ) |
「雁の寺」の古風な大成。推理小説には現代性。ロマン時代の脱皮。松本清張、組織、社会性。 |
- 「(趣味特集アンケート)」
( 日本探偵作家クラブ関西支部会報 1961.12. ) |
医学の歴史。 |
参考:医学随筆・評論など(抄:一雑誌一件、著書は除く)
- 「徴兵検査時ニ於ケル吃ノ統計的観察」(陸軍二等軍医)
- 「戦線より和田伝へ」
- 「飛行隊兵血液カタラーゼの消長」
( 名古屋帝国大学(博士論文) 1945.11.26 ) |
- 「ペニシリン」
- 「偶然」
- 「療養と刺激と安静」
- 「世界外科医伝」
( 外科 1951.05.,07.,09,11.〜1951.01. ) |
- 「刀圭談叢 Witheringの"An account of the Foxglove"を手にして」
- 「三人の結核殉ヘ者」
- 「ジゲリストヘ授のこと」
- 「ヂゲリストヘ授の近業」
- 「田医物語」
- 「戦後の医史学書」
- 「不老長壽のための十二章(座談会)」
- 「結核の歴史」
- 「京都名医伝」
- 「ヂゲリスト教授の死」
- 「アメリカ及び日本看護婦開拓者リンダ・リチヤード女史について」
( 看護学雑誌 1959.03.〜05.,10. ) |
- 「制癌剤としてのpolysaccharide」
- 「歴史とは何か」
- 「わが国外科に及ぼしたヨーロッパ医学の影響」
( 日本医史学雑誌 1965.11.〜1966.09.(4回) )(国DC) |
- 「ブールハーヴェ生誕300年 ベッドサイド・ティーチングの創始者(グラビア)」
- 「ブールハーヴェ 人と業績」
- 「高野長英 漢洋内景説」阿知波五郎訳
( 『日本の名著25 渡辺崋山・高野長英・工藤平助・本田利明』佐藤昌介責任編集 中央公論社 1972.11.10/1978.09. ) |
- 「看護史随想」
- 「大橋博司「パラケルススの生涯と思想」」
- 「明治初期の医学関係英語辞書の性格」
( 日本英学史学会英学史研究 1979.xx. ) |
- 「 」
- ほか
参考:医学関係著書
- 『結核にいどむ人々』 アテネ新書37 1951.06.25 (国DC※)
- 『目で見る医学史』 吉富製薬バイエル薬品部 1962.03. (国DC※)
- 『展子南郎追悼録』 1962.04.
- 『近代日本外科学の成立 わが国外科に及ぼしたヨーロッパ医学の影響』 日本医史学会 1967.02.15 (国DC※)
- 『ヘルマン・ブールハーヴェ その生涯,思想.わが蘭医学への影響』 緒方書店 1969.04.30 (国DC※)
- 『血液は循環する ハーベイ伝 世界を動かした人びと2』 国土社 1976.04.30
- 『人類医学年表 古今東西対照』三木栄、阿知波五郎 思文閣出版 1981.09.30 (国DC※)
- 『近代日本の医学 西欧医学受容の軌跡』 思文閣出版 1982.06.01 (国DC※)
- 『近代医史学論考 阿知波五郎論文集(上)』 思文閣出版 1986.08.01 (国DC※)
/△「解説」宗田一
- 『医史学点描 阿知波五郎論文集(下)』 思文閣出版 1986.08.01 (国DC※)
/△「解説」宗田一/△「あとがき」阿知波良子
参考文献
- 「『めどうさ』に託した情熱・阿知波五郎」鮎川哲也
EQ 1991.05.
『幻の探偵作家を求めて 完全版(下)』鮎川哲也、日下三蔵編 論創社 2020.05.10
- 黒田様に御教示頂きました。ありがとうございます。
- ほか