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幾瀬勝彬 作品

Since: 2023.10.01
Last Update: 2024.08.18
略年譜 - 小説 - 随筆 - 著書

      幾瀬勝彬(いくせかつあき)略年譜

    1921.08.15(大正10年)  札幌市にて生まれる
    1942.10.  兵役のため早稲田大学中退、土浦航空隊飛行科予備学生、のち横須賀航空隊所属
    1946.xx.〜1953.頃  NHK勤務
    1954.〜1964.xx  ニッポン放送勤務、サスペンス・スリラーやハードボイルド・タッチの作品を執筆したらしいが詳細不明
    1967., 1968.  オール読物推理小説新人賞予選通過
    1970.05.  「盲腸と癌」を推理に掲載
    1971.03.  前年の乱歩賞候補作『死を呼ぶクイズ』(『ベネトナーシュの矢』)刊行
    1971.04.  『北まくら殺人事件』(『声優密室殺人事件』)刊行
    1971.07.  「紙魚の罠」を推理文学に掲載
    1973.10.  『死のマークはX』(『私立医大殺人事件』)刊行
    1995.04.21(平成7年)  死去

    筆名は、幾瀬勝彬、長島勝彬

      (国DC※)は国立国会図書館デジタルコレクション個人送信(ログイン必要)で公開されています(今後非公開になる可能性もあります)



      小説(推理小説・戦記)

  1. 「盲腸と癌」
    推理 1970.05.
     十五年前のラジオ全盛時代、民間放送が誕生して間もない頃、後発のセントラル放送の公開クイズ番組のプロデューサー志水哲夫から盲腸炎の連絡が重森制作部長にあり、若い田島が代理で実施することになった。山上アナウンサーがハガキ応募の大木美子へ電話をかけると男の声がクレームを一方的に言い電話を切られた。総務部長草間修一は東田営業部長からアルバイト解雇での人員不足で起ったと解雇撤回を要求された。草間は社内のアンテナなどから調査していき……。
     トリックを用いた社会派風サラリーマン小説。作者自身の環境と経験が濃厚に反映されているようで興味深い。
  2. 『死を呼ぶクイズ』
    『死を呼ぶクイズ』 春陽文庫(C24-01) 1971.03.15
     CSMの常務疋田弘之の自殺死体が発見された。彼はセントラル・テレビからクイズ番組の八百長が暴露されて左遷されていた。暴露したのは塩谷大三郎から証言を得た東都新報の白方真紀子で、その後も拾った写真とメモから銀座のクラブのマダム藤森勢以子との情事も記事にしていた。真紀子に座光寺正策の部屋を紹介したウエイトレス千野麻子は疋田とビデオ装置に関することも話す。 市来清一郎と名取隆康の新案と疋田、勢以子とライバル会社、漏洩、疋田と共にCSMへ移動した芳村豊彦の話からの真紀子の記事。塩谷の川浦谷での転落死、久丸教授と名乗る男。八百長で市役所を退職した中沼保夫、八百長を演出したディレクター左爾隆司。番組スポンサーの野城昌也と立石秀則の真鶴道路での事故死。アリバイ。文化部次長籾山、社会部長大日向、各務記者、丸岡記者らの調査。座光寺の密室のガス中毒死と暗号……。
     自殺の動機を追うところから殺害方法、アリバイ(昭和44年10月1日現在)、暗号、密室の謎と社会性を盛り込みながらの力作。意表をつくほどではなく大技ではないがトリックは現実的。動機に関しては一方的な逆恨みとしか思えないところもある。
  3. 『声優密室殺人事件』 (『北まくら殺人事件』)[推理実験室]
    ( 『北まくら殺人事件』 春陽堂書店サン・ポケット・ブックス 1971.04.25 )
    『声優密室殺人事件』 春陽文庫(C24-05) 1977.09.25
     ある雑誌の推理小説募集コンテストで予選は通過するが最終審査で落選するメンバーが集まって出来た推理実験室。呼びかけ人で幹事役の電気メーカー営業係長塚原隆一、民間ラジオ会社制作部員永田明、インテリア・デザイナー城野寛次、外科開業医瀬戸浩一、私大薬学部生薬科助教授鈴村正司、元週刊誌編集者津山悦子。ロダンでの会合で永田は以前関係のあった松本三七子のガス中毒死が事故死とされたことに納得できないでいた。北枕で寝ることは絶対ないという。 鍵は布団にあり密室状態になる。津山と塚原が菊地刑事に話を聞く。三七子は妊娠八ヶ月の子を始末していたという。永田と城野がアパートの持ち主平光さわに話を聞き三七子の父松本剛二に会う。世話になった人に贈るもち米が一人分だけなかったという。劇団十人の会さ佐々川保、堕胎した藤棚産婦人科医、松本剛三、別れた高梨益夫、密室の謎解き。三七子の自殺未遂と藤棚医師から三七子への金銭援助と事務員志水美紀。そして自白メモを残して毒死した死体の発見……。
     密室を扱った作品。密室トリック自体はありふれているが状況設定が良い。グループ各位がそれぞれに合った調査を行うところや些細な事が糸口になるなど比較的細部にわたって考慮されている。良作。著者希望により改題とのことだが個人的には内容に密着した元の題の方が良いと思う。
  4. 「紙魚の罠」
    推理文学 1971.07.
    『13の暗号』渡辺剣次編 講談社 1975.11.08 (国DC※)
     鉢形城址での殺人は時効が成立した。十五年前、保坂良一は瀬木信人からの釣りの誘いで寄居町へ行った。その夜、紙魚の喰った、意味のとれない平仮名二十五文字と端午と書かれていた。保坂は意味があるよう解きはしたが内容はわからない。瀬木の祖先に瀬木丹後がいて埋蔵金かもしれないと……。
     暗号物。暗号部分は解読の手懸りなど良くできた傑作。事件そのものは都合良すぎな設定がされているが。江戸川乱歩「二銭銅貨」に想を得た作品らしい。
  5. 「オパールの女」
    ( 推理 1971.09. )
    『幻の魚殺人事件』 春陽文庫(C24-04) 1977.04.15
     内科医皆美昌之は伊部敏生に狭心症の発作を起こさせる方法を聞く。檜山剛造の死亡診断書を不審に思いながらも書いていた。看護婦大北保子の安楽死に関する質問と薬物学と裁判化学の本の貸出。薬剤師小室圭子の話。派出婦杉本そのの話。息子の隆一、秘書の迫田。大北看護婦の錠剤の粉末化。そして真相は……。
     意外性ある作品。伏線はほぼなく告白によって明らかになるのだが。
  6. 「撃墜作戦」
    ( 小説宝石 1971.12. )
    『幻の魚殺人事件』 春陽文庫(C24-04) 1977.04.15
     自動車セールスマンの隠語で他社から自社の車に買い替えさせるのを撃墜という。芳川光雄はバーバルーンで美奈と由香にゴルフ場帰りに追突されベス自動車から東亜モーターに変えた経緯を話す。東亜モーター多摩営業所の佐崎邦一は全国トップの販売実績をもっていた。追従する横池昇二と入社したばかりの秋村孝司。佐崎の成績の秘密は赤いファイルにあった。脇谷事務所の脇谷鉄郎、田村、寺本、苑田郁子。佐崎は……。
     熾烈なセールス競争の話。一種の企業スパイ小説ともいえる。売上によるマージン収入に大きな差があるとはいえ、現代ではそこまでやるなら独立してもと思わなくもない。
  7. 「密封された寝室」
    ( 別冊小説宝石 1971.12. )
    『幻の魚殺人事件』 春陽文庫(C24-04) 1977.04.15
    クイズ版 『新トリック・ゲーム』山村正夫編 日本文芸社 1976.01.
     週刊ヤングの記者津山康介と太刀川良治は歌手曙さぎりの自殺に疑念を感じ編集次長大野木宏のもと調査取材をすることになった。マンションの寝室はドアの上下が粘着テープで目張りされていて一酸化炭素中毒死していた。遺書のような詩。やがて住谷克彦のDJ番組、番組台本ライター鳴海伍朗が浮かび上がってくるがアリバイがあり……。
     密室の謎とアリバイを扱った作品。共にそれほどでもないトリックではあるが、アリバイの作為の発覚は専門的ではあるがおもしろいものがある。『新トリック・ゲーム』に収録の同題作品はトリック部を中心にクイズ形式にしたもの。
  8. 「死の骨」
    ( 別冊小説宝石 1972.04.(奥付3月) )
     『遠い殺意』の原型作品。登場人物、筋などほぼ同じ。
     『遠い殺意』を先に読んだため、あっさり手懸りを得ているように感じる。サスペンス味は薄い。
  9. 「ババ抜き」
    ( 別冊小説宝石 1972.06.(奥付5月) )
    『女子大生殺害事件』 春陽文庫(C24-02) 1976.12.10
     シナリオ・ライター平岡順児は結婚した娘美帆のこともあり警視庁捜査係刑事門馬市造と碁をうち惨敗、門馬老人は睡眠薬に関する事件を話す。杉林文房具店のおかみさんとめ子が睡眠薬を飲んでフラフラの状態になっているのを長男弘一郎の元看護婦の新妻苑江が見つけた。住込み店員タミ子やとめ子や弘一郎は何回となくあったこととして心配ないという。手塚医師はヒステリーだという。二ヶ月後、とめ子は死んだ。嫁と姑の仲が険悪だったことや専門知識を持っていたことから門馬は疑いを持ち調査する……。
     トリックを用いた嫁と姑間に関する話。唐突に近いが最後のオチは意外性がある。
  10. 「謎のウイニング・ボール」
    ( 小説CLUB増刊 1972.08. )
    『女子大生殺害事件』 春陽文庫(C24-02) 1976.12.10
     オリオンズのオーナーだった永田雅一がオールスター戦で少年による始球式のアイディアのもとになった中沢火不二雄の話を思い出していた。昭和三十五年、太平洋野球連盟の会長だった中沢はウイニングボールを川上が速球でスタンドに投げ込んだことを永田に語る。中日の西沢選手の引退と行方不明、昭和三十一年三月二十五日の巨人・中日のダブルヘッダー、別所投げ打球はセカンド内藤がとり川上に送球、川上はウイニングボールを黒眼鏡の男に投げた。越智アナウンサーは不審に思い各選手に聞いていくと……。
     プロ野球実在の人物を登場させた少し不審に思うできごとを解明していく虚実とりまぜた話。実在の人物とそれらしい性格というのがミソか。
  11. 「夏風邪をひく女」 [鈴村正司]
    推理文学 1972.09.
    『幻の魚殺人事件』 春陽文庫(C24-04) 1977.04.15
     環境破壊を撮っていたカメラマン弘川光也はR放送局時代の相沢京子と出会いマンションまで送っていった。友人のデザイナーが写真を撮ってくれる人を捜しているという。翌朝、恭子は引き合わせるのでマンションに来て欲しいというが留守だった。翌日弘川は新聞で京子が絞殺されていたのを姉夫婦谷山英子と竜作が発見。カメラマンが容疑者になっていることを知る。S大薬学科鈴村正司に相談し警察に出頭、鈴村は刑事から現場の状況を聞く。京子は突然風邪をひいたようだという。現場付近を調べた鈴村は……。
     現在では周知だが当時はあまり知られていないことが手がかりとなる。密室殺人かと思われる要素もあるが最初から意図されていないようで鍵の記述は不十分。計画もリスクが大きすぎる気がしないでもない。
  12. 「死の時計」
    ( 小説CLUB増刊 1972.11. )
    『幻の魚殺人事件』 春陽文庫(C24-04) 1977.04.15
     作詞伊部二朗、作曲水野ひろし、ディレクター山野井隆、歌手青山美沙での川の抒情シリーズがゆっくり着実にヒットしていた。伊部の家に毎晩八時半に時を刻む音と男の声で十月二十八日午前零時という電話がかかってくるようになった。相談された山野井と水野。その夜、伊部は水野から同じような電話がかかってくるという吉坂順助のことを聞いて会いに行く。ラバウルで一緒だった吉坂、その日時に自決した高森少尉。遺族は引っ越し、松川司令は一年前交通事故で死亡したという。山野井は古市刑事に相談し……。
     謎の電話の意図をめぐる話。あまり上手い方法とは思えない。謎は謎のままの方が効果あるような。
  13. 「孤独な詭計」
    ( 小説宝石 1973.01. )
    ( 『復讐墓参 鉄道推理ベスト集成3』鮎川哲也編 徳間書店トクマノベルス 1977.09. )
    『幻の魚殺人事件』 春陽文庫(C24-04) 1977.04.15
    『レールは囁く トラベル・ミステリー5』鮎川哲也編 徳間文庫(134-07) 1983.06.15 (国DC※)
     杏医薬品株式会社大泉研究所で研究内容の漏洩事件が二件起きていた。Yグループである八代隆之、青村恒彦、西脇浩司、沢木洋子は制ガン剤の研究をしていた。八代は一人息子をガンで亡くし妻も狭心症で死んでいた。八代の死体が千葉の手賀沼の水辺で発見された。八代は前々日急に名古屋の姉夫婦に会いに行くことになり、翌日東山動物園と名古屋城に行き帰りの新幹線車中へは青村が電話をかけていた。死亡推定時間はその新幹線乗車中にあたっていた。やがて研究所員の塩野大二郎が……。
     新幹線電話に関するトリックがあるが謎が全て解明されるわけではない。時代によって仕組みも異なる。動機もわかるような、わからないような感じ。
  14. 「晴天乱気流 展開と解決」
    ( 小説宝石 1973.04. )
    『戦慄の蒼空 航空ミステリー傑作集』中島河太郎編 WILD BOOKS 1976.08.30
     「謎の発生」黒木曜之助:水原亜紀の夫恭二はフリーライターで河滝友三郎の依頼調査の後、サンフランシスコ発ホノルル経由の新日空便に乗っていたがウェーク島付近で消息を断った。機内にはマフィアのジュゼッペ・サレルノと尾行中のFBI職員がいた。恭二と友人でもある警視庁捜査第二課長高沢四郎はサレルノ監視の予定だったが飛行機事故を調べることになる。
     「展開と解決」幾瀬勝彬:恭二からの手紙が亜紀に届く。内容は、依頼の背景は、そして飛行機は……。
     前半はスケールの大きな陰謀に巻き込まれるような感じで悪くはない。後半の真相は盲点をつくようで面白い。但し、繋がりがどうも悪く感じられる。無関係な事が多かったり伏線が不十分だったり、なにより人物像が別人のようだったりする。
  15. 「三月が招いた死」
    ( 小説CLUB 1973.04. )(国DC※)
    『犯人当て傑作選 競作シリーズ2』中島河太郎編 サンポウノベルス(018) 1973.09.25
    『女子大生殺害事件』 春陽文庫(C24-02) 1976.12.10
     谷沢美樹は世話好きのL大学附属病院薬局の薬剤師だった。ホーム・バスを買ってからアパートの隣の部屋のP大二年皆川朋代を誘い仲良くなる。キスのあと、口臭、狂う生理日、風見淑男医師の助言、薬。死体の発見……。
     作者コメントでの合鍵の件もありトリック・クイズ小説に近い。トリック自体は大したことはないが異常に気付くところはやや面白い。
  16. 「幻の魚殺人事件」
    ( 小説CLUB増刊 1973.05. )
    『幻の魚殺人事件』 春陽文庫(C24-04) 1977.04.15
    『釣りミステリーベスト集成』山村正夫編 徳間書店トクマノベルス 1978.04.10 (国DC※)
    ( 『釣りの不思議 集成日本の釣り文学7』伊藤桂一編 作品社 1996.06. )
     真山則夫は釣りの会で知ったダムの余水吐けの水たまりに幻の魚ともよばれるヤマメ釣りに早朝出かけた。コンクリートの穴で津田英治の死体を発見する。穴場は会のメンバーしか知らない。栃沢は朝顔の開花する様子を写真にとっていた。笹井刑事はカメラを貸した室谷、フィルムを購入し現像したカメラ店に聞いていく。園芸に趣味があったとは思えない栃沢に対して笹井刑事、望月啓二は……。
     アリバイ崩し作品。知っているかどうかという所もあるが、可能性を消去していくのはうまい。
  17. 『遠い殺意』
    ( 『遠い殺意』 産報ノベルス 1973.07.20 )
    『遠い殺意』 春陽文庫(C24-03) 1977.02.25
     西北大学心理学助教授の光本春吾は教え子だった外村笙子から婚約者の川北克己が行方不明になったと知らせがあった。東朝新聞社会部記者保川卓二は高間隆平が高崎で轢き逃げに合いヌーメア通信隊と言い残したことと復員船で一人の男が消えたことを伝える。克己は父弥吉がラバウルから復員、ある時から突然神経症になり三つの言葉を口走るようになり自殺した理由を探ろうとしていた。 戦友名簿から前日は及川秀也と吉田昌之を訪れ、当日は西角順一郎と藤木恒夫と天田洋遵と時間があれば高間隆平に会う予定だったという。保川は三人に会い話を聞く。光本と笙子は弥吉が神経症になったきっかけを調べる。合わない時間、神楽坂駅、洋遵の様子、カニの意味、社会部坂巻大介の応援と調査、そして克己は……。
     サスペンス小説。戦争の悲惨さと行方不明の謎などを解明していく過程が主。最後の暗号のような部分は強引すぎる。
  18. 「緑の毒」
    ( 小説CLUB増刊 1973.08. )
    『女子大生殺害事件』 春陽文庫(C24-02) 1976.12.10
     三隅洋一郎は毎日の犬のサブを連れて散歩に出かけていた。コジュケイの臭いを追ったサブが茂みの中で男の絞殺死体を発見した。三隅は前日有給休暇で秩父のくし人形を見に行っていたこと、妹に有線電話をかけたこと、茂みにはいろいろな行為のあとがあることを川添刑事に伝える。被害者は三隅の母が万引きの疑いをかけられたスーパーの元店員で万引きをネタに恐喝をしていた他の店員もいて逮捕されていた。川添刑事は三隅に疑いを持ち……。
     ひねりを効かせた作品。有線電話の件はあまりの展開に驚き。あくまでたまにではあるが、このような作品もアリといえばアリかも。
  19. 「話を売る男」
    ( 別冊小説宝石 1973.08.(奥付7月) )
     早朝に新聞配達少年が浮浪者の死体を見つける。M市愛林病院院長杉ノ目泰生は警察署の依頼で変死体をみに行く。死因は心筋梗塞。迎えに来たA署から転勤してきた糸山刑事は死者安兵衛を知っていた。杉ノ目も前日に心臓発作で苦しんでいたのを助けて診断していた。安兵衛は話を売る男を探していたという……。
     意外な結末の作品。伏線はほぼないが題名は面白い。
  20. 『私立医大殺人事件』 (『死のマークはX』)[推理実験室]
    ( 『死のマークはX』 広済堂こだまブック 1973.10.15 )
    『私立医大殺人事件』 春陽文庫(C24-06) 1977.11.25
     推理実験室、幹事役の営業係長塚原隆一、ラジオ局プロデューサー永田明、外科開業医瀬戸浩、インテリア・デザイナー城野寛次、私大薬学部生薬科助教授鈴村正司、主婦津山悦子。ロダンでの会合で瀬戸は東光大学医学部の片品岑子を連れてきた。スポーツ万能で人気のあった吉住拓志がグラウンド下の雑木林で頭を幅の広い鈍器で殴られ殺されていた。右手は土の上にXを書き交点に五本指を立てていた。 ダイイング・メッセージとしてのブレーン・ストーミング。鈴木は東光大学薬学部裁判化学助教授大隈哲哉に聞く。吉住の同級生山北澄夫と妻沼良介と食事中スキー部の合宿でのお化け大会でペアとなった石原真佐子からかすれた声で打ち合わせ中止の連絡が入っていた。姓名ニックネームでの調査。暗闇での殺害方法などの検討。そして石原真佐子が、そしてまた……。…。
     ダイイング・メッセージを捻ったもので意外な犯人でもあり凶器の謎でもある。謎は結局死者だけが知っている状態だったりする部分もある。本格とは言い難くアンフェアと思う部分も。メンバーに即した調査は上手い。その他薬物関係やXの悲劇への挑戦など面白い部分が多々ある。個人的には題名は元の方がよかったように思う。
  21. 「満ちたりた疑惑」
    ( 小説宝石 1973.11. )
    『女子大生殺害事件』 春陽文庫(C24-02) 1976.12.10
     T市にマヤ美容院を開業した松代美也は高校教師の夫久夫と二女を設けていたが妊娠恐怖症になるなど夫婦の関係がうまくいかなくなっていた。二人は努力するがやがて美也は疑惑を抱くようになる。結婚十年目に左ハンドルのワーゲンを贈り……。
     官能ミステリー。観察力は良いとしてもさすがにそれだけでは邪推でしかない。また結末は意表を突かれるが実際に効果があるのかどうかはわからない。
  22. 「金塊迷走曲」
    ( 小説CLUB増刊 1973.11. )
    『女子大生殺害事件』 春陽文庫(C24-02) 1976.12.10
    ( 『戦慄の旅路』中島河太郎編 文華新書 1977.04.25 )
     炭火ステーキハウスを開業した田尻大三郎と内縁の妻の矢村由香。田尻は木炭に金が埋まっていたのを発見する。炭火の仕入先である甲州方面に金鉱があると益富温泉をベースに炭焼き小屋をまわって調べることにした。とある炭焼き小屋で……。
     金鉱探査行。オチの推測はつくが二人の過程や熊などやや面白い。
  23. 「神風特攻第一号」
    ( 小説宝石 1974.05. )
    『凶悪の空路 航空ミステリー傑作集』中島河太郎編 WILD BOOKS 1977.01.15
    ( 『神風特攻第一号』 光風社 1977.08.15 )(国DC※)
    『神風特攻第一号』 光風社文庫(い-02-01) 1995.05.10
     土浦航空隊第十一期飛行科の生き残り十四人の会合の折、久納好孚のことを書くように言われる。神風特攻第一号は関行男大尉が定説となっているが久納は四日前に実行していた。なぜなのだろうか。
     戦史の謎を調査、推測していく話。条件や思惑もあり謎は謎のままであるのは仕方がない。
  24. 「陰をつくる女」
    ( 小説CLUB増刊 1974.05. )
  25. 「われ不沈艦を発見す」
    ( 小説宝石 1974.08. )
    ( 『神風特攻第一号』 光風社 1977.08.15 )(国DC※)
    『神風特攻第一号』 光風社文庫(い-02-01) 1995.05.10
     昭和十六年十二月二日、プリンス・オブ・ウェールスとレパルスがシンガポールのレクター軍港に到着したとの発表があった。シンガポール襲撃のためマレー上陸作戦。英二戦艦の出航とサイゴン基地から飛び立ち索敵にあたる牧野分隊。見つからない。帆足少尉は潜水艦が見失った地点から推測し……。
     飛行機乗りの活躍を描いた戦記。
  26. 「黒い手紙」
    ( 推理文学 1974.09. )
     刑事宛の殺人目撃の手紙。
     一種の暗号ショート・ショート。最後の一文の意味がわからない。
  27. 「零戦山本五十六に殉ず」
    ( 小説宝石 1975.01. )
    ( 『神風特攻第一号』 光風社 1977.08.15 )(国DC※)
    『神風特攻第一号』 光風社文庫(い-02-01) 1995.05.10
     昭和十八年四月十八日、連合艦隊司令長官山本五十六大将の乗った長官機がブーゲンビル島で撃墜された。護衛戦闘機隊隊長森崎中尉らはブイン基地に着き報告。自決を防ぐためにも日高上飛曹が行動予定が洩れた事の調査を依頼する。宮野大尉が調べた暗号電文、そして……。
     任務が履行できなかった飛行機乗りの話。行動が洩れた謎は戦後に明らかになったとのこと。
  28. 「マカッサルの空を染めて」
    ( 小説宝石 1975.08. )
    ( 『神風特攻第一号』 光風社 1977.08.15 )(国DC※)
    『神風特攻第一号』 光風社文庫(い-02-01) 1995.05.10
     インドネシアのセレベス島ウジュン・パンダン市の海岸の文字がセメントで塗りつぶされた石碑が取り壊されるのを防ぐため移設されようとしている。マカッサル海軍飛行場には固定脚でスピードの遅いの九七艦攻一機しか残っていなかった。敵の偵察機は飛行し、ついに民家の密集地帯に爆弾が落された。木野注意と真鍋二飛曹は決死の覚悟で……。
     現地の青年の言葉を受けた軍人である飛行機乗りの話。
  29. 「女子大生殺害事件」 [兵俊明]
    ( 別冊小説クラブ 1975.10. )
    『女子大生殺害事件』 春陽文庫(C24-02) 1976.12.10
     推理作家郁野明彦は中華民国行政院新聞局の招きで日本推理作家六名にうちの一人として台湾を訪問した。案内役の一人兵俊明に実際の事件も推理して犯人を探し出せると言われ郁野は全然違うと話す。T市で女子大生松井美也が入浴中に絞殺されていたのを知人の脇坂と警官が発見。井原清人が撮ったお天気ネコとるり菊の写真。容疑者の芳川朋夫と生方あずさ。兵俊明はこの事件に対して……。
     本格風な作品だが知らないとわからないトリック小説でもある。確かに唯一の回答かもしれないが情けなさすぎる。
  30. 「風流鬼殺害事件」 [兵俊明]
    ( 別冊小説クラブ 1975.12. )
    『女子大生殺害事件』 春陽文庫(C24-02) 1976.12.10
     推理作家郁野明彦はT署捜査係北詰吾朗刑事から雑木林で絞殺されていた平原良作、夢露が句集に残した俳句に関して相談を受ける。関係にあった女性とその関係者は、花村百合子と夫の秀人、呉田史織と夫の英司、望月よしみと夫の靖一、香取麻紀と父の友久と恋人の長谷良夫。百合子と史織は平原主催の俳句雑誌でライバルでもあった。長谷には旧友の警察官を池袋から羽田に送っていた。小池義信夫妻と共に郁野は妻隆子と台湾に行くことになり兵俊明に再会する。事件の事を聞いた兵俊明は……。
     暗号のようなものとトリックを解明する作品。俳句は捻りすぎ。トリックは単純で危険度が高い。最後のオチには感心。
  31. 「死句発句」
    推理文学 1976.02.
    『ワンダー暗号ランド パズルつき・暗号推理小説傑作選』長田順行編 講談社文庫(な-27-01) 1986.07.15 (国DC※)
     昭和の一茶といわれた剣崎孤浪が失踪十五年たってアパートの一室で死んでいた。残されていた孤浪らしくない四つの俳句が記された紙片……。
     暗号物の一種で凝った良作。
  32. 「海と空の熱走 人間魚雷“回天”の周辺」
    ( カッパまがじん2号 1976.09. )
    ( 『神風特攻第一号』 光風社 1977.08.15 )(国DC※)
    『神風特攻第一号』 光風社文庫(い-02-01) 1995.05.10
     海軍飛行科予備学生出身で中日新聞航空部次長の沖昌隆は取材飛行中、終戦直後に佐伯空の命令で呉鎮守府長官海軍中将金沢正夫を乗せた時に突然怒りがわいたのを回想した。なぜだろうと私幾瀬に話す。八月十八日、呉で零式水上偵察機に乗せ横須賀、平生、光市、徳山市沖の島、そして別府へ飛んでいた。別府は芸者遊びをするところでもあった。私が調べていくと……。
     人間魚雷に関する終戦直後の話。些細な謎を調査していく話でもある。
  33. 『遠い墓標』 (『殺しのXマーク』)
    ( 『殺しのXマーク』 ベストブック社ビッグバードノベルズ 1976.11.15 )
    『遠い墓標』 春陽文庫(C24-07) 1978.11.20
     真山周子へおじ河原田宗作から電話があった。名前の上に赤マジックでVと書かれた手紙が届いたという。オティス・ヘイウッド少尉の弟ケネスの妻アイ・ヘイウッドから少尉の問い合わせがあり、戦中ラバウルで少尉を捕虜にしたが内地に輸送途上撃沈されたと答えたという。宗作の死体が東尋坊で発見され確認に宗作の息子太一と周子は新潟空港から小松空港へと向かう。 絞殺死体の両目はえぐられて打ち上げられていた。特用倉庫と書かれたマッチ箱。赤のVマークの意味。香川警部補への対抗意識。郷土料理佐渡の本間亮子。盗難車の発見と持ち主田所絢子と訪問先兵堂玉枝。俊一と塩尻。住田ゆうの話、南方興産での出会い。周子と俊一の八丈島行。豊川での両目をえぐられた死体……。
     アリバイ崩しというより可能な時刻と地点からどのように行動したかを推測する。夫婦探偵ぶりは良い感じ。読者への挑戦の代わりに入れられたクイズにより設定のこだわりが感じられる。著者希望で改題とのことだが個人的には元の方が内容に密着して良いようにも思う。
  34. 「氷壁の賭け」
    ( 月刊小説 1977.01. )
  35. 「華族ママ殺害事件」
    ( 月刊小説 1977.03. )
  36. 「旅は道連れ」 [猪島佳方]
    『名探偵登場』山村正夫編 青樹社 1977.09.25 (国DC※)
     元S高校の教師猪島佳方は卒業生の静岡の小森治朗から相談を受ける。仕事の打ち合わせで父の代りに佐川正之と台湾に行った時、佐川と女性とが写され、その写真に対して二百万円を要求されているという。猪島は新聞広告での返信をして値切るようアドバイスする。その返答が来て猪島は……。
     参加者の名の一字を組み合わせた共通の探偵役とし、ことわざを盛り込んだ書き下ろしアンソロジーの二番目の作品。複数の手懸りがあり、中でも写真の件などは面白い。直接関係ないが、五分前行動の言葉の元が海軍だったとは知らなかった。
  37. 「女の指」
    ( 小説宝石 1977.10. )
     新興住宅地で不規則な間隔で三件の殺人事件が起った。東京近郊K市の雑木林で若い人妻が殺され右手の薬指を切断されていた。伊村刑事は赤いマニュクアの爪と白い指にワグネル事件を思い出す。千葉県S市ではOLが殺され右手中指を切断されいた。埼玉県T市では看護婦が殺され左手藥指を切断されていた。伊村刑事と浅木刑事は共通点から……。
     意外な共通点といえなくもない。ホラー風味を感じる作品。
  38. 「危険なネガ」
    ( 月刊小説 1977.11. )
     フリーのルポライター芝原宏二が駐車場に来ると女がいた。写真を提供する仕事をしているという田川佐紀で男から写真のネガを無理矢理預けられてからヤクザ風の男がうろつくようになったという。芝原は友人笹井に現像してもらう為に預かる。写っていたのは全て分しの田という小料理屋。男を見かけた二人はポルシェをスカGで追いかけるが首都高で消えたように……。
     謎は面白くあるが伏線はほぼなく結末で明かされる。車の消失は意外といえば意外だが驚きはない。
  39. 「海底の密約 阿波丸をめぐる謎(ノンフィクション推理)(中絶)」
    ( 週刊時代→時代(誌名変更) 1979.11.05〜02.20(9回で中絶) )
     交戦国から航行の安全を保障されていた阿波丸が魚雷攻撃を受け沈没、疑惑を解明していく。昭和五十年八月末、推理文学会の会合の後の飲み会で知人に出資先を探している人がいると話したところ、福本和也から台湾に潜航艇で珊瑚の採集を計画している人がいるという。疑問点の回答がないまま代理人という男から連絡があった。(以上、第一回のみ)
     実在の謎を解明していこうという試み。体調不良の為連載9回で中絶とのこと。


  40. 参考「現代ビジネスマン史記(劇画)」 幾瀬勝彬原作、宮谷一彦脚色・画
    ( 別冊宝石 1973.03.〜07.(3回) )
     第一話「謀略の使者」:親会社セントラルテレビ会長の娘婿でミュージック・テープメーカーの立花常務に柿沼という男が訪れてきて未開発市場に関し興洋産業市木社長と沢本専務をとりもつ。同僚の熊切専務に遅れをとっていた時でもあり……。
     第二話「華燭の餌食」:財部商事輸出第一部長黒崎と部下芳村は大河原専務の失脚で左遷となった。芳村はバーの梨江との仲も一時疎遠になる。社長の弔辞の原稿を書くことになり……。
     第三話「キバの装束」:綾子は染井に振られて欧州旅行中に田淵と出会い関係をもつ。田淵は復讐に手をかす。染井の企画したメンズファッションに対し……。
     司馬遷の史記のキャラクター等を73年代の人間にパラフレーズする試みとの事。第一話のみシナリオ幾瀬勝彬、企画・劇画宮谷一彦となっている。第一話は「〓生陸賈伝」との事で、『死を呼ぶクイズ』の一部分をまとめて完結させたもの。第二話は派閥関係でミステリー的要素もあるといえるかも。第三話は少し意外性のある部分もあるが大人の男女間の話。



      随筆・評論

  1. 参考「(社会時評)」
    ( 知性 1955.12. )(国DC※)
  2. 参考「「クイズの王様」をめぐって」
    ( 放送広告会誌 1958.01. )
     ※『ラジオ白書』日本民間放送連盟放送研究所編 岩崎放送出版社 1964.06.15 (国DC※)より
  3. 参考「山岳ドラマ録音記」
    ( ケルン 1959.02. )(国DC※)
  4. 参考「沈黙の山」
    ( エーデルワイス1号(ニッポン放送山とスキーの会) 1961.xx.? )※山と渓谷同人誌欄より
  5. 「推理する姿勢」
    推理文学 1970.10.
     鳥越憲三博士の「神々と天皇のあいだ」の公正で地味で謙虚な姿勢に感銘。「プラス何か」のある作品。推理を骨格とした作品をめざしたい。
  6. 「(内外推理長篇小説ベスト10)(アンケート)」
    推理文学 1971.01.
  7. 「電話番号簿利用法」
    ( 電電ジャーナル 1971.09. )
    ( 『東京の電信電話(下)』 1972.09.30 )(国DC※)
     登場人物の名前、職業に利用。「死を呼ぶクイズ」のウエスというモノも職業別電話簿のおかげ。
  8. 「トリック雑記」
    推理文学 1972.11.
     トリックに対する苦労はすくない。現実に謎があると好奇心で観察し考えてしまう。必然性や使う人物設定などストーリにより苦労する。
  9. 「(近況報告)」
    推理文学 1972.11.
     「ウイニング・ボールの謎」執筆。今後の執筆予定。
  10. 「ソバとウドンと長崎チャンポン」
    ( 地方議会人 1973.02. )(国DC※)
     ソバとウドンとチャンポンの起源の話とフィーリング時代の判断
  11. 「道路と推理小説」
    ( 道路 1973.03. )(国DC※)
     ※『死を呼ぶクイズ』のネタバラシあり。「エジプト十字架の謎」のT字路、道路を利用したアリバイ、事故の起こり易い道路。
  12. 「はじめに(現代ビジネスマン史記(劇画))」
    ( 別冊宝石 1973.03. )
     司馬遷の史記のキャラクター等を73年代の人間にパラフレーズする試み。今回は「〓生陸賈伝」で誰が誰に相当するか推理していただくのも面白いかもしれない。
  13. 参考「ゴルフお手なみ拝見」編集部記者?
    ( 小説宝石 1973.04. )
  14. 「草野唯雄様(手紙論争)」
    推理文学 1973.07.
     推理小説はとは謎の提出とその論理的解明を描くのを目的とした小説である。人間に関わる謎も人間一般ではなく個性を持った個々の人物なら割り切れるのではないか。(草野唯雄の反論では枠にとらわれず「謎と謎ときを追求する文学」としサスペンスは味付けではなく不可欠で時代とともに方向性は変っていく。)
  15. 「私のジンクス(アンケート)」
    推理文学 1973.12.
     部屋の鍵に関して。
  16. 「台湾寸描(短歌)」
    推理文学 1974.05.
     六首。
  17. 「或る作家の周辺3 草野唯雄篇」草野唯雄、高原弘吉、幾瀬勝彬
    推理文学 1974.09.
     理論苦手派?/「女相続人」に触れつつ/推理小説の文学性/続「手紙論争」。幾瀬勝彬はカメラ担当だが実質鼎談。
  18. 「草野唯雄薮睨抄」
    推理文学 1974.09.
     草野唯雄と会った時々のいろいろな印象。
  19. 「推理小説の科学化は可能か」
    推理文学 1974.12.
     前号掲載「推理小説の科学化への道」大内茂男に対する疑問。方法論、科学精神の定義の欠如。細分化専門化深化していて専門外の科学知識があるかは疑問。読者が理解できるかも疑問。正確なデータによる論理的推理と実証という意味のみであれば可能性はある。
  20. 「素顔の台湾」
    ( 道路 1975.01. )(国DC※)
     推理作家協会でと友人とでの二度の訪台時の印象。
  21. 「台湾空の仕官舎」
    ( 白鴎通信 1975.03.15 )
  22. 「乱歩と少年の私(乱歩私感)」
    幻影城増刊「江戸川乱歩の世界」 1975.07.
     小学の頃に借りて読んだ乱歩作品で心に残ったのは「二銭銅貨」。数年前に再読、三つの問題点に気付きアンチテーゼとして「紙魚の罠」を書いた。
  23. 「実作家座談会」幾瀬勝彬、笠原卓、小林久三
    推理文学 1975.10.
     注文の傾向/トリック/批評と実作/受容のされ方/書きたいもの
  24. 「凝縮と拡散(推理小説と探偵小説)」
    推理文学 1976.07.
     探偵小説の衰退は謎解きに凝縮し過ぎた結果ではないだろうか。推理小説はミステリーが包含する内容を導入し拡散していったのではないか。最近の古い探偵小説の復活が若い読者に魅力を感じるのだろう。
  25. 「シンガポールの中国女性(旅の思い出)」
    日本推理作家協会会報 1976.09.
     シンガポールの中国人一家の小工場の妻の日本語。
  26. 「大昔からの道」
    ( 運輸と経済 1976.11. )(国DC※)
     山で道に迷った話。昔の道の想像、生きるための道路。
  27. 「「へび」」
    ( 日本推理作家協会会報 1977.01. )
  28. 「姫街道」
    ( 道路 1977.03. )(国DC※)
     推理小説はリアリティが要求される。『殺しのVマーク』執筆の際の現地調査のようすなど。
  29. 「突然の訃報(藤村正太氏追悼)」
    推理文学 1977.10.
     短歌七首。
  30. 「書けなかった作品四つ(忘れられない一冊、書けなかった作品)(アンケート)」
    推理小説研究 1978.05.
     将来書くかもしれない作品含む。ケネディ暗殺の謎と真相。生きていた神風特攻隊員。盗難アジアを舞台にした作品。地方自治と地震とジャーナリズム。
  31. 「(戌午随想)」
    ( 日本推理作家協会会報 1978.05. )
  32. 「姓探し」
    ( 道路 1978.11. )(国DC※)
     明暦の大火で幾瀬意悦一族は死に絶え寄居町の吉田一郎兵衛忠茂が医者のみ師の幾瀬姓を名乗らせた。血縁以外に幾瀬姓は判明していない。
  33. 「トリック論以前の問題」
    推理文学 1978.12.
     推理小説(本格、パズラー、一部の倒叙)はトリックあり、ないのは推理小説風(サスペンス、スパイ、恐怖、クライム・ノベル)。推理小説がミステリーなのかその一分野なのか、各人各様で使いわけしているように思う。
  34. 「ひつじの楊枝たて」
    ( 日本推理作家協会会報 1979.01. )
  35. 「「Xの悲劇」の毒見再見」
    推理文学 1979.12.
     殺虫剤に含まれるのはニコチンではなく毒性の弱い硫酸ニコチン。
  36. 「東南アジア推理作家会議」
    ( 日本推理作家協会会報 1980.03. )
  37. 「奇形の猿」
    ( 日本推理作家協会会報 1980.06. )
  38. 「「推理文学」と私」
    推理文学 1980.12.
     推理文学で知り合った多くの人々。合評は活発だったわけではない。四十、五十代以上が大部分で熱気がなかったのが残念。
  39. 「八月十五日の憂うつ」
    ( 宝石 1981.09. )
  40. 「鶏窓と鶏助」
    ( 日本推理作家協会会報 1981.09. )
  41. 「(ひとくち書評)(19xx年傑作ミステリーベスト10アンケート)」
    ( 週刊文春 1982.01.07,1983.01.06,1984.01.05,1985.01.03/10,1986.01.02/09,1989.01.05,1990.01.04/11,1991.01.03/10 )
  42. 「コロという犬」
    ( 日本推理作家協会会報 1982.04. )
  43. 「「芝草」のことなど」
    ( 『會津八一全集3』?(月報6) 中央公論社 1982.08.? )
  44. 「亥年の出来事」
    ( 日本推理作家協会会報 1983.01. )
  45. 「子年の思い出」
    ( 日本推理作家協会会報 1984.01. )
  46. 「恐ろしい時代」
    ( 日本推理作家協会会報 1984.07. )
  47. 「神風特別攻撃隊のことなど」
    ( 日本推理作家協会会報 1984.10. )
  48. 「牛今昔」
    ( 日本推理作家協会会報 1985.01. )
  49. 「はじめに」
    ( 『海軍式男の作法22章』 光人社 1985.12.30 )
  50. 「虎の毛皮」
    ( 日本推理作家協会会報 1986.01. )
  51. 「うさぎ」
    ( 日本推理作家協会会報 1987.01. )
  52. 「サバイバルゲーム」
    ( 日本推理作家協会会報 1987.01. )
  53. 「はじめに」
    ( 『秘めたる空戦 三式戦「飛燕」の死闘』松本良男、幾瀬勝彬 編 光人社 1989.04.14 )
     松本良男とは中学同期。手紙などから再構成。
  54. 「(回答者の一言)」
    『大アンケートによる ミステリー・サスペンス洋画ベスト150』文藝春秋編 文春文庫ビジュアル版(V050-09) 1991.09.10
  55. 「五十年前の十二月八日」
    ( 『若き日の大東亜戦争』昭和を語る会編 展転社 1991.12.08 )
     開戦時は学生でただ驚いただけ。当初は勝って当たりまえ、気ままに学生生活をしていた。やがて海軍航空隊でラバウルへ。負けない戦い、日本の存亡を賭けた戦い、日本が存続するための戦いへ。
  56. 「探偵役について」
    ( 日本推理作家協会会報 1995.06. )
     アーロン・エルキンズの人類学者探偵という設定に感心。(追悼掲載号に前年11月の近況ハガキを掲載との事)
  57. その他、詳細な経歴、戦前の長島勝彬名義の作品については「作家たちの足跡」黒田明(新青年趣味24号)にて明かにされています。参照願います。
  58. その他、短歌研究、短歌、俳句などに掲載作があるようですが未調査、省略します。



      著書

  1. 『死を呼ぶクイズ』 春陽文庫(C24-01) 1971.03.15
    『死を呼ぶクイズ』
  2. 『北まくら殺人事件』 春陽堂書店サン・ポケット・ブックス 1971.04.25
    『北まくら殺人事件』
    『声優密室殺人事件』 春陽文庫(C24-05) 1977.09.25
    『声優密室殺人事件』
  3. 『遠い殺意』 産報ノベルス 1973.07.20
    『遠い殺意』/△「あとがき」/△「地味のミステリ」多岐川恭
    『遠い殺意』 春陽文庫(C24-03) 1977.02.25
    『遠い殺意』
  4. 『死のマークはX』 広済堂こだまブック 1973.10.15
    『死のマークはX』
    『私立医大殺人事件』 春陽文庫(C24-06) 1977.11.25
    『私立医大殺人事件』
  5. 『殺しのXマーク』 ベストブック社ビッグバードノベルズ 1976.11.15
    『殺しのXマーク』/△「著者のことば」
    『遠い墓標』 春陽文庫(C24-07) 1978.11.20
    『遠い墓標』
  6. 『女子大生殺害事件』 春陽文庫(C24-02) 1976.12.10
    「女子大生殺害事件」/「風流鬼殺害事件」/「緑の毒」/「満ちたりた疑惑」/「謎のウイニング・ボール」/「三月が招いた死」/「ババ抜き」/「金塊迷走曲」
  7. 『幻の魚殺人事件』 春陽文庫(C24-04) 1977.04.15
    「幻の魚殺人事件」/「オパールの女」/「撃墜作戦」/「夏風邪をひく女」/「密封された寝室」/「死の時計」/「孤独な詭計」
  8. 『神風特攻第一号』 光風社 1977.08.15 (国DC※)
    「神風特攻第一号」/「われ不沈艦を発見す」/「零戦山本五十六に殉ず」/「マカッサルの空を染めて」/「海と空の熱走 人間魚雷“回天”の周辺」
    『神風特攻第一号』 光風社文庫(い-02-01) 1995.05.10
    「神風特攻第一号」/「われ不沈艦を発見す」/「零戦山本五十六に殉ず」/「マカッサルの空を染めて」/「海と空の熱走 人間魚雷“回天”の周辺」


  9. 『海軍式男の作法22章』 光人社 1985.12.30 (国DC※)
    △「はじめに」幾瀬勝彬/
    『海軍式気くばりのすすめ 海軍スマート術に学ぶ』 光人社NF文庫(いN171) 1997.09.
  10. 『秘めたる空戦 三式戦「飛燕」の死闘』松本良男、幾瀬勝彬 編 光人社 1989.04.14
    △「はじめに」幾瀬勝彬/
    『秘めたる空戦 三式戦「飛燕」の死闘』松本良男、幾瀬勝彬 編 光人社NF文庫 1996.09.
    『新装解説版 秘めたる空戦』松本良男、幾瀬勝彬 編 光人社NF文庫(ま1323) 2023.08.20
    『秘めたる空戦』/△「解説」野原茂
    参考 『飛燕独立戦闘隊 103rd.Indep.F.Co.』滝沢聖峰 劇画 大日本絵画MGコミック 1998.06.30



      参考文献

  1. 「戦後推理小説総目録」中島河太郎
    推理小説研究12号 1975.05.30
    推理小説研究13号 1977.12.30
    推理小説研究16号 1980.12.30
  2. 「クラブ・協会編集書籍雑誌一覧」中島河太郎
    推理小説研究20号 1987.12.30
  3. 「戦後推理小説著者別著書目録」山前譲
    推理小説研究21号 1992.06.30
  4. 「「推理文学」総目録」中島河太郎
    推理文学27号 1980.12.10
  5. 『国内戦後ミステリ作家 作品目録 極私的・拾遺集』戸田和光
    『国内戦後ミステリ作家 作品目録 極私的・拾遺集』 戸田和光編 2010.09.29
  6. 『日本ミステリー事典』(村上貴史)
    『日本ミステリー事典』権田萬治監修、新保博久監修 新潮社・新潮選書 2000.02.20
  7. 黒田様、戸田様にも御教示頂きました。ありがとうございます。
  8. 「作家たちの足跡」黒田明
    新青年趣味24号 2024.07.07
  9. ほか



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