Shift_JIS Page
著者別リストへ

海渡英祐 作品

Since: 2025.07.13
Last Update: 2025.07.13
略年譜 - 小説 - 随筆 - 著書
注)このページの短編小説は、戸田氏の「ミステリ書誌の吹きだまり」の「海渡英祐 作品書誌」参照しています。
また氏から教えて頂いた作品、内容を拝見させて頂いた作品もあります。感謝。

長編・少年少女向けを追加し、実話・伝記・歴史考証を分離しています。
なお、同題別作品が2点(「甘い罠」、「空白の時」(一般誌と学習誌))あります。
文庫・単行本収録作品は初出確認をしているわけではありません。若干改稿されている作品もあります。


      海渡英祐(かいとえいすけ)略年譜

    1934.09.24(昭和9年)  東京にて生まれる
    1946.xx.  少年時代を満州で過ごし、終戦一年後に引き揚げ日本(弘前?)に戻る、のち青森高校
    1958.xx.  東京大学法学部在学中に高木彬光の『成吉思汗の秘密』の資料集めを手伝う
    1959.01.  「殺人降誕祭」が掲載される
    1960.xx.  東京大学卒業
    1961.06.  『極東特派員』刊行
    1967.xx.  『伯林―一八八八年』で乱歩賞を受賞
    1968.09.  『影の座標』刊行
    1969.01.  推理作家協会犯人当て朗読で「天国の活人」、のち雑誌掲載
    1971.10.  代表的シリーズの吉田警部補が「動きまわる死体」で登場
    2001.02.  「変貌の時(中絶?)」を掲載、以降不明

    筆名は、海渡英祐

      (国DC※)は国立国会図書館デジタルコレクション個人送信(ログイン必要)で公開されています(今後非公開になる可能性もあります)
      (推協)は日本推理作家協会でインターネット公開されています



      小説・推理クイズ

  1. 「殺人降誕祭」 [雨宮欽治]
    ( 小説倶楽部増刊 1959.01. )
     池沢家のクリスマス・パーティ。シナリオ・ライター池沢勝司の連絡で先代良平からの女中ツネは十字架をかついだ黒川を書斎に通す。妹の女優啓子。カメラマン雨宮欽治、声優藤岡昭一、ストリッパー花村マリ、画家倉田不二夫、桑原恵美子、映画監督内村勇、歌手竹田道雄、俳優宮本茂、振付師大野木芳男。殺されて十字架に磔になっていた勝司。濡れていて死因は水死だった。雪の足跡。消えた黒川……。
     クイズに近い。想像交じりの限定だが罠としては面白いかも。
  2. 「姿を消した女」 [東隆司]
    ( オール読切 1960.01. )
     私立探偵東隆司は森下香代子から姉多加子を探して欲しいと依頼される。多加子はバーの雇われマダムで香代子とは別居し姉妹であることを秘していた。最初の恋人田沢和明、マスター石川憲治、暗黒街のボス大佐賀千蔵。田沢の刺殺死体、大佐賀が殺され……。
     ※のち「白い誘惑」として主人公を変えるなどして改稿
  3. 「グラマー殺人事件」 [雨宮欽治]
    ( 読切特撰集 1960.01. )
     カメラマン雨宮欽治はヌードモデルをしていた荒川マユミからの電話で行くとネグリジェの紐で殺されていた。沢野満夫に貸していた望遠レンズ。マネージャー竹林千造、興行会社社長藤井修二、舞台監督大垣実、踊り子の友人里見綾子。写真に写っていた……。
     クイズに近い。根拠は薄弱すぎる。トリックもありきたり。
  4. 「週末の悪夢」
    ( オール読切 1960.09. )
     北沢邦彦は恋人小林圭子とレストランで食事をしていると圭子は頭に包帯をした男を見て逃げるように送るのを断り帰る。アパート近くで眠らされる邦彦。アパートでの圭子の刺殺死体、駒井と名乗る男が殺し屋大島と間違えたように邦彦を連れ去る。ピストル、繃帯の男、逃亡……。
     巻き込まれ型のサスペンス。偶然が多いような。
  5. 『極東特派員』
    ( 『極東特派員』 東都書房・東都ミステリー 1961.06.18 )(国DC※)
    『極東特派員』 徳間文庫(123-01/か-01-01) 1981.03.15
     僕は日系米国人のUSP記者ケンジ・ブライデンは韓国李承晩に対する暴動を取材し日本に戻った。終戦時、満州で父は自殺、長兄は応集で行方不明、ケンジは米人の養子になっていた。フリーランスのギャビン。ハリー、極東総局長ランバートン、受付柳田晴子。台湾からの留学生陳芳蘭、中国人梁元福と芳蘭との恋仇呉明章。台北新報楊浩然。呉明章が自殺にみせかけて殺されたらしい。呉と親交があった林秦義。周伯成。台湾に戻るという芳蘭との別れ。蒋介石派と台湾独立派と中共。僕ケンジも台湾へ……。
     長編スパイ推理(文庫帯)だが冒険小説。韓国、台湾情勢を舞台に誰がどの派のスパイなのかというような話。伏線はほばなく推理味は薄い。一記者なので大局的な国際政治謀略でもなく史実の新解釈もない。
  6. 「私刑死刑」
    ( 講談倶楽部 1961.09. )
     東京地方裁判所の吉村定男殺害事件の法廷。検事岩城達徳、被告植田登。弁護人井上道夫は酒田昭一警部に一年前の山崎浩一郎殺害事件の被疑者として予断があったのではという。定男の従弟長沢茂明の目撃と登の指紋のついたナイフ。吉村の妻真佐子の証人尋問。自嘲めいた笑いを浮かべる登。判決。自殺……。
     少しひねった作品だが真偽不明。ほぼ想像。
  7. 「茜色の死」
    ( 講談倶楽部 1961.12. )
    ( 読切時代小説 1969.04. )※5
     岡村道子は北崎明彦からと思われる手紙を見て彼の家に出かける。彼の妻緋佐子が軽井沢へ行ったという。緋佐子が殺されていた。明彦は手紙を出しておらず、道子からの手紙で喫茶店へ行っていた。総務部長関口繁男、会計課長安川武、設計部定芳夫。ウイスキーの毒。残業中の停電。道子は緋佐子と同じ茜色の着物を着て……。
     脱力系に近い。最後の理由も理解できない。
  8. 「血ぬられたエロス」 [東隆司]
    ( 特集実話特報 1961.12.11 )※6
     私立探偵東隆司は真田加奈子の家でエロ映画を見せられ、主演女優が妹美佐子だという。夫雄作も妹に手を出したらしい。映画は吉村栄治から入手、たどって大橋俊男、そして古屋の事務所で古屋と美佐子が殺されていた。Y・Sのライター。大橋の親分杉岡義久は書類が美佐子に盗まれていたという……。
     意外なつながりではある。※のち「逆光の影」に改稿。
  9. 『爆風圏』
    ( 『爆風圏』 東京文芸社 1961.12.15 )(国DC※)
    『爆風圏』 文華新書 1977.03.05 (国DC※)
    『爆風圏』 徳間文庫(123-02/か-01-02) 1982.10.15 (国DC※)
     太平洋重工の社員間宮啓介は伯父の専務斎藤徳一郎から退職してスパイとして働くことを依頼される。アメリカからのミサイル導入にライバル会社東海重工側や防衛庁の法王といわれる黒池周造がいる。ある組織も動き出したらしい。帝都ホテル宿泊のジェイムズ・フジカワが組織の一員とのこと。間宮は偽名で宿泊、尾行中にジェイムズは自動車に轢かれ死亡。一緒にいた南村卓也。 運転手鈴木昭一の拐帯事件、ドロシィ夫人の失踪、昔の恋人久美子との出会い。間宮は探偵社の吉富隆も調査を依頼するが素性が漏れているようでもあった。間宮は繋がりを中心に推理調査していく……。
     政財界に繋がるスパイ冒険小説。ハードボイルド風味もあるがバックがあるので該当しない。推理味もあるが、想像でしかない。アクションが主でもない。誰が敵で誰が味方か、人の繋がりなどの展開で読ませる冒険小説といったところだろうか。
  10. 『黄色い白人』
    ( 評 1962.01.〜1963.02.(14回) )
     一九六一年四月、日東新聞パリ特派員の僕篠原恭雄はカメラマンで愛人のリシエンヌがアルジェリアへ行く前夜を過ごす。パストゥール研究所の医師伊崎繁、伊崎の同僚ジルベール、アラブ人看護婦アニス・アル・サーウイ、セネガル人看護婦カマラ・セゼール。アニスが連れた刺されたアラブ人青年を僕と伊崎が助ける。リシエンヌの行方不明、憲兵隊ルノルマン大尉の訪問。 僕は社命でアルジェへ行きリシエンヌを探す。FLNの親仏ベンヘッダ派と反仏ベンベラ派、OASのクーデター、親仏独立を支持するドゴールと仏国組織。商社員栗田圭治。旅行者中林昭子。僕は白人でも黒人でもアラブ人でもなく、各組織に……。
     日本人が名誉白人として扱われ出した頃のどちらの仲間でもあり敵でもある状態でのアルジェリアの内戦、スパイ戦を背景にしたまき込まれ型冒険小説。個人的には主人公などに同意できずつらいものがある。のちの「アルジェに日本人」は別ヴァージョンの短縮作品といえる。
  11. 「二重の罠」 [東隆司]
    ( 別冊週刊漫画TIMES 1962.01.18 )
     私立探偵東隆司のところに沢野昭子が来て、恋人村田健治が轢き逃げしたが死後轢断で殺人容疑を受けているという。被害者の顔はめちゃめちゃで身許はわかっていなかった。村田の車、拳銃所持、亜硝酸反応。東は村田が飲んで出た吉川栄作のところへ行くが旅行中で妻富美代と藤坂国男が応対する。東は矢頭警部に示唆し……。
     少し皮肉な真相にしただけの作品。超人的想像力といえるかもしれない。
  12. 「泥沼の花(夜に生きる1)」 [東隆司]
    ( スリラー街 1962.03.15 )
     私立探偵東隆司のところに名を言わない男が来てバンドマン大野照夫の身元調査を依頼する。杉本和美と彼女のアパートへ行く照夫。非常口にいた坂井緋佐子。和美の絞殺死体。緋佐子は照夫に恋をしていたが父建造は都会議員古屋重彦の息子康明と結婚させたがっていた。鍵がかけられていた洋服箪笥、死亡推定時刻……。
     読切連載第一話。意外な犯人かもしれないが唐突で根拠は薄い。
  13. 「死に賭ける」 [東隆司]
    ( 特集実話特報 1962.03.26 )
     私立探偵東隆司のところに滝本雄作が来て、息子進治がバー・リングの賭博へ行かないように。藤村恭子が進治から手を引くようにしつ欲しいと依頼される。マリを買収し賭博場へ入る。白髪まじりの男、経営者片岡荘一郎、従弟片岡伸次郎、支配人家内実、平田幹夫、荘一郎の妻久枝。藤村恭子が、片岡荘一郎が殺される。東はマリから話を聞いて……。
     唐突な結末と幸運。アクション読物。
  14. 「UとSの谷間」
    ( 中学三年コース 1962.04.〜10.(7回) )※6
     記者関谷康夫は妹香代子に毎月手紙を出す。西ベルリンで出会った東ドイツのハンス少年。九月十三日、東西ベルリンの境界が封鎖された。ハンスから姉マリアンネに渡すよう頼まれた紙包みを持っていくと男が謎の言葉を残して死んだ。オットーとエリックに連れられるが脱出、マリアンネに会う。熱光線を研究しているリヒター博士はナチスの残党に襲われ東ドイツに移っていた。東ベルリンへ入る関谷。ハンス、マリアンネ、軟禁されているリヒター博士、ナチスの残党、統一ドイツ団、東ドイツ秘密警察……。
     国際スパイ小説とあるが、スパイの暗躍に巻き込まれた冒険小説。軽い謎や殺人光線や微笑ましいトリックなど適度に楽しめる作品。
  15. 「赤い弔旗(夜に生きる2)」 [東隆司]
    ( スリラー街 1962.04.14 )
     私立探偵東隆司のところに村野信子が来て、彼氏の労働組合長山本幸治が職場討論の晩に殺されたのを調べて欲しいという。新組合長松島荘一郎、社長の息子吉崎昭一専務、専務秘書中原雅子。三人組に襲われる東。社長吉崎伸明、委員岡田安男、スト……。
     読切連載第二話。唐突で根拠は薄い。
  16. 「殺人幾何学(夜に生きる3)」 [東隆司]
    ( スリラー街 1962.05.03 )
     私立探偵東隆司のところに坂井緋佐子が来て、酒井省吾傷害致傷事件の証人となるよう宮崎明次を説得して欲しいという。宮崎の住居はA棟三〇七号室。C棟三〇七号室での銃の暴発事件。部屋の前にいたB棟三〇六号室の黒坂敏子。宮崎の銃殺死体。C棟三〇七号室の田代弘幸、小野哲夫、B棟三〇七号室の渡辺幹男。東は……。
     読切連載第三話。単純ではあるが、この頃から後の推理クイズ風の作品の特徴が見られるのは興味深い。
  17. 「哀しみの殺意(夜に生きる4)」 [東隆司]
    ( スリラー街 1962.05.17 )※6
     私立探偵東隆司のところに松対鉄男が来て、藤野アケミを隠したと怒って言う。二ヶ月の関西出張の間にアパートからいなくなり、東の世話になると言い残していたらしい。東は松対の話からあたりをつけて住所を得るが松対も知ったらしい。転居先でアケミと池沢久蔵が殺されていた。麻薬に関係していた大西勝次と池沢、池沢の妻康子と岩田貞一。秘書坂井緋佐子も一役かって……。
     読切連載第四話。勘が当ったという感じしかしない。罠も脱力。最後の独白は意味があいまいすぎる。
  18. 「同時死亡」
    ( 推理ストーリー 1962.06. )
    ( 傑作クラブ 1972.11. )
     諸井康夫は糸崎加津子と関係していた。彼の妻澄江は財界大物の本田直道のわがまま末娘。結婚した時には三浦志摩子が自殺していた。義父がアメリカで飛行機事故で死んだ。家に帰ると澄江が殺されていた。友人藤野修一から聞いていた死亡順による遺産の違いを思い出し康夫は加津子としばらく生きていて失踪自殺したように見せかける。義兄健文の提案、私立探偵葛西寅男の出現……。
     どんでん返し風作品。可能性のみ。共犯者がいたのか利用したのかは不明のまま。(※中島リストの傑作クラブ「その死を狙え!」は誤り)
  19. 「炎の決算(夜に生きる5)」 [東隆司]
    ( スリラー街 1962.06.07 )
     私立探偵東隆司のところにペガサスの踊り子吉村和美が来て、荒川修一からと思われる殺人予告状がきたので調べて欲しいという。秘書坂井緋佐子。和美から直ぐ来て欲しいとの電話で行くと絞殺されていた。踊り子仲間の沢野綾子、熱をあげていた古屋康明。和美を見張っていた修一。無くなったライター、舞台監督小森実、古屋重彦。東は……。
     読切連載第五回。唐突だが根拠がないともいえない。
  20. 「十五年後の毒杯」
    ( 講談倶楽部 1962.07. )
    ( 小説倶楽部増刊 1968.02. )(国DC※)
     島原詮造は二号の山口芳美と映画を見る。熊谷武男からの電話、そして金を要求する手紙。彼は十五年前に倉内完治と石渡鉄三を殺害し金を奪っていた。時効まで八日。相手は現れない。時効が成立したと思われた翌日、磯部貞夫警部補が来る。妾宅での面会……。
     どんでん返しのアイデアは良いが伏線がほぼないため意外性は薄い。
  21. 「衛星の谷間」
    ( 読切特撰集増刊 1962.07. )
     米ソの人工衛星打ち上げ競争。公安調査庁特別捜査官吉永篤は上司重村秀昭に話しブール・ホルツ商会を見張り羽田空港へ行く。パリから東京へエリック・ゼーマンはカール・シュレヒトと名乗り入国。元防衛庁の町田公一。長瀬達夫理学博士。ヴィルヘルム・ライナー博士。顔の潰された長瀬博士の死体。グラノヴィッチ博士。CIA。吉永は……。
     間諜小説。日本を舞台にくりひろげられる騙し合い、技術発明者の争奪戦の錯綜した話。
  22. 「祖国喪失」
    宝石 1962.07.
     松本幸一または陳侶伯の名を持つ私は香港スパイ支部のボス、ビリイ・グリーンの下で活動していた。朱徳志が中共諜報陣主要メンバーの張洪明の寝返りの話をもってきて替え玉として王拓生を殺害する。周雲裳、金仲西、抱かれて死んでいった娘……。
     スパイ小説。過去は明確ではなく今ひとつ心情がわからない。
  23. 「地底の戦い」 [進藤邦彦]
    ( 少年クラブ 1962.07. )
     昭和十七年、特務機関員進藤邦彦中尉は坂本大佐の許可を得てフィリピンの米軍とフィリピン軍のいるコレヒドール要塞に単独潜入する。フィリピン人に化けたり手裏剣で……。
     戦時冒険小説。滑稽度は昭和30年代ならではか。
  24. 「あるスパイの恋」
    ( 別冊週刊漫画TIMES 1962.07.17 )
     実話小説。スパイも人間、日本人の男と中国人の女の愛と憎しみのドラマ。昭和12年、上海で日本特務機関員牧野茂信は死んだ兄の代わりに玲蓮から書類を受け取る。昭和17年、シンガポールでスパイとなった玲蓮と再会するが。昭和22年、北京で再会した二人。
     最後についての物語は救出されたスパイの男の口から伝えられたものとのこと。少なくともそれ以前の物語は創作と思われる。
  25. 「揚子江のあらし」 [進藤邦彦]
    ( 少年クラブ 1962.08. )
     昭和十八年、吉野少佐は上海日本軍本部から南京総司令部へ秘密書類を届けようとしていた。小爆発、中国服の男の侵入と銃撃、大爆発。夜、中国娘が呉金明に殺されるところを日本軍人が助けて逆に死にかけているという。現場に向かうが捕らえられてしまう。特務機関員進藤邦彦中尉は……。
     戦時冒険スパイ小説。単純で御都合主義だが探偵小説的要素はある。
  26. 「太陽のきば」
    ( 少年クラブ 1962.09.〜12. )
     公安調査庁特別捜査官坂東英明は横浜山下埠頭でのろいの水を浴びて死ぬ赤毛の男を見る。坂東の妹令子と洋一はS国の元首相スラバヤの息子アルシャを助ける。スラバヤの部下ムラワサ、太陽の牙、さそりの絵。盗み聞きしていた怪人を追いかける坂東英明。罠から逃れる坂東。さらわれた令子とアルシャ、追う洋一。さそり団の首領ジャハラン。太陽の牙を狙うさそり団とブラック=スターとその対立。呪いの水でやられた坂東。子供らを助けるためにスラバヤは、坂東は……。
     冒険スパイ小説。少し駆け足すぎる気も。
  27. 「お次はあなた…」
    ( 別冊週刊漫画TIMES 1962.09.18 )
     推理作家の私はバーで精神病院医師尾坂芳夫という男から完全犯罪の話を聞く。倉井弘治は藤森アケミに去られ、他の男には渡さないと決意する。アケミが移ったバーで誘った男を殺す。青年を殺す。三人目、四人目、五人目。関係性のみられない事件。私が植田警部に話と……。
     題名通りの作品。少し共通項のある無差別殺人と変わらないような。
  28. 「生きている死者」
    ( 推理ストーリー 1962.10. )
    ( 現代小説 1970.04. )※5
     岩井圭治は上司松崎静男と公社経理課だった吉森恭一の分も公金横領の罪を引き受け、刑務所から出て来た。拾った大金、松崎の妻になっていた郁代。金をせびらなくても良くなった岩井は松崎を殺す。しかし翌日、松崎は普段通りだという。岩井は呼び出されて行くと……。
     どんでん返し風作品。出来過ぎで無理があるような。
  29. 「アルジェに日本人」
    ( エロチックミステリー 1962.10. )
     日東新聞パリ特派員毛利準治はテレーズと独立直前のアルジェへの出発の前夜をすごす。ノンフィクション作家ジェローム・マルティノンと同じ飛行機になる。出迎えた弟の商社駐在員明彦。マルティノンから預かった鞄。殺されたマルティノン。荒らされたホテルの部屋とアラブ人の死体。準治は連れ去られ、明彦は……。
     スパイ小説との角書き。隠されたものがあるのかもしれないが、そこまでやるものだろうか。第二次世界大戦の影響があるのかもしれないが。「黄色い白人」の短縮別ヴァージョンともいえる。
  30. 「三分の一の男」
    ( オール読切(小出書房) 1962.10. )※5※6
     エコー・トリオ、バスの柿本満夫、バリトンの赤沢伸明、テノールの大町憲一。二人は憲一を軽視し憲一は二人を嫌っていた。赤沢は大町をゲイ・バーに案内し吉村良二に会わせる。赤沢と良二。憲一の従妹杉原芳美と赤沢。憲一はのどをやられテレビの出演を休むと代理で良二が加わる。良二は憲一に告げ……。
     皮肉な結末となる作品。早いか遅いかだけの違いしかないような。
  31. 「負傷の報酬」
    ( 傑作倶楽部増刊 1962.11. )
  32. 「白いこなをおさえろ! ひみつ捜査官物語」
    ( ぼくら 1962.11. )
     横浜、陳はヘロインを売るため野田に接触、ボス大村と会うが閉じ込められる。部屋の天井近くのパイプからガスが。麻薬とりしまり官の中原茂彦は……。
     簡単な活劇物語。証拠の麻薬の隠し場所は少しだけ意外かも。
  33. 「ピンク色の死体」 [東隆司]
    ( 読切雑誌 1963.01. )
     私立探偵東隆司と社員坂井緋佐子は藤野澄子の訪問を受ける。フィアンセ竹原悠治とともに弔慰電報や裂かれたハートの2のカオドを受取ったという。池山君子と共同で住んでいるアパートへ行くとピンクのネグリジェを着た悠治の刺殺死体があった。下着にピンクの口紅あと。君子と叔父池山久平が帰ってくる。澄子に振られた栗本安夫と須田芳江。竹原に捨てられた宮崎和代。東隆司は……。
     設定は面白くあるが迷彩的なものが解明されていない。解決手法に意外性がないとはいえないが。
  34. 「不運なやつ」
    ( 推理ストーリー 1963.02. )
    ( 傑作クラブ 1972.08. )※5
     私中島登は馬場良作にアリバイ偽証を依頼し内山省一郎を殺害しようとする。彼とはかつて仲間で悪事を働いていた。不運続きの私は彼を強請っていた。内山の妻美佐子にも殺して欲しいと言われる。突然の内山の死。スリが入れたらしい財布も盗み建物を出る。財布の金は偽札で……。
     皮肉な話ではあるが、少々あからさますぎる。
  35. 「透明な罠」 [阪藤潤治]
    ( 推理ストーリー 1963.04. )
     弁護士阪藤潤治は新陽映画専務村越裕史から遺言状の相談を受ける。彼の邸宅でのパーティに招待され、娘真佐子の恋人で医者重村俊也と話している時に裕史が毒殺される。近くにいたのは妻緑川澄子、監督宮原清、俳優滝本雄一郎と湯浅和美、シナリオライター中島重久。毒を入れることができたのは真佐子、俳優落合信三、裕史の従弟丸山昌一、澄子の妹松原泰江、裕史の昔の演劇仲間岸村利之。ほか秘書田代敏夫、女中吉野文代。息子恒彦は海外にいた。真佐子の頼みもあり阪藤と重村が調査する。第二の殺人事件、さらに……。
     衆人環視の中の殺人を扱った作品。偶然に左右されるのが多い。順序も今一つな気がする。
  36. 「赤い痕跡」 [東隆司]
    ( 笑の泉 1963.04. )
     私立探偵東隆司のところに西田芳子が訪ねてきて妹綾子を調査して欲しいという。突然ブルー・ムーンのホステスをやめ遊びまわっているという。経営者田島秀作は密輸に関係しているという噂がある。村瀬和則が綾子を連れ込む。綾子が村瀬の服を着て出て来たところを東が見つけ部屋へ行くと村瀬が殴られ扼殺さえrていた。パンツ一枚にキスマーク。隣の藤森光代、騙された安原伸子、東は……。
     唐突で後出しで偶然の積み重ね。状況の作為も意味不明。
  37. 「殺人ブルース」 [東隆司]
    ( 読切雑誌 1963.06. )
     私立探偵東隆司は堀口秀作社長から吉村美津子がいなくなった調査を頼まれる。妹由紀子も知らないらしい。社長の甥で秘書の伊崎邦夫。根本安彦常務。白レベルのテスト盤のブルースのレコード。身を崩したサッスク奏者村上信也の部屋で美津子は扼殺されていた。山田鉄男。堀口の妻芳子。無くなっていたもの……。
     ほとんど勘としか思えない。意外な要因、理由ではあるかもしれないが。
  38. 「桐と藍」
    ( 宝石 1963.10. )
     昭和十五年、重慶政府と和平交渉の前段階である桐工作で香港澳門で会合されていた。特務機関員峰宏一は汪兆銘の脱出時の保護監視の任務を帯びていた時に藍衣社に襲撃され腹心の曽仲鳴が殺されていた。呉作民の消極的援助で重慶に潜入し、民間人医師陳紹仁に会う。彼は生きた歴史に好奇心を持っていた。蒋・汪雙簧説、宗子文邸で見た……。
     スパイ小説。意義に疑問を持ちながら任務を果たそうとする秘話。医者の根拠が良い感じ。
  39. 「拾われた女」 [阪藤潤治]
    ( 漫画ストーリー 1963.10.12 )
     弁護士の阪藤潤治のところに内村由紀子から電話がかかってきた。裸で服を持ってきて欲しいという。秘書兼フィアンセの村越真佐子とアパートへ行くと社長大杉健吾が絞殺されていた。専務島崎政男の秘書だった由紀子は馘首され、就職口の面接として妻邦江と別居中の社長宅に来て眠らされたという。安原伸治、由紀子の弟道夫、社長の弟知明、道夫の恋人伊沢則子……。
     ※のち「裸の罠」へ改稿。裸の理由や靴べらなどあまりにも根拠が弱すぎる。
  40. 「愛の埋葬(歪んだ絵本)」
    ( 週刊実話特報 1963.10.12 )
     矢坂喬治は妻繁子と愛人柴野秀一を殺そうと決意した。何もない二人、だが繁子の心の中には秀一がいるようだった。新居の地下室を二人が寝られるだけの空間を残して埋め、そこに二人を裸で入れる。次に、そして最後に……。
     読切連載第一話。狂った感性の狂った行為の話。
  41. 「赤い喪章(歪んだ絵本)」
    ( 週刊実話特報 1963.10.19 )
     杉岡明彦は麻薬を隠したとして岩本らにリンチに会い殺される。恋人小森澄子は死体を確認する。谷藤圭次、沢野滋雄……。
     読切連載第二話。狂った恐怖を与える作品。
  42. 「生体解剖(歪んだ絵本)」
    ( 週刊実話特報 1963.10.26 )
     菅原卓治は片岡恒弘が復讐で彼を生体解剖するももと恐れていた。卓治は恒弘にコンプレックスを感じていた。塚本泰子が恒弘と結婚すると聞き二人の仲を裂く。恒弘は……。
     読切連載第三話。最後の場面は良くわからない。妄想と偶然と意図された現実が混在。
  43. 「空白の時」 [阪藤潤治]
    ( 推理ストーリー 1963.11. )
     弁護士阪藤潤治が国選弁護人をしている法廷の傍聴に山崎憲治がきて、赤沢登のオリオン商会出した融通手形が北野昭一に責任者が代わり潰れて損害を出したことで相談される。阪藤と山崎が赤沢のアパートへ行くと山崎の伯父清水厳太郎社長の娘暁美が殴られ気絶、赤沢が扼殺されていた。赤沢と関係のある鳥井芳子が、松田満男が来る。葉巻、無くなったマッチ箱。小料理屋のおかみ安藤球江、親同士が暁美と結婚させたがっていた中谷哲也、専務倉本勇造、阪藤の秘書村越真佐子。清水厳太郎が殺され……。
     かすかな手懸りとアリバイを用いた作品。のち「赤と青の殺人」にも流用。
  44. 「逃亡者(歪んだ絵本)」
    ( 週刊実話特報 1963.11.02 )
     外国の秘密諜報組織を裏切り、自分のアパートで男を殺したSは警察と組織に追われていた。密航を手配した時刻まであと三時間。由紀子、タクシー運転手、サラリーマン風の男、斡旋業者……。
     読切連載第四話。妄想によるサスペンス風作品。
  45. 「疑惑の淵(歪んだ絵本)」
    ( 週刊実話特報 1963.11.09 )
     岡本綾子は木原圭司と結婚した。結婚式をめちゃめちゃにするという池野光子。綾子が前夜、光子を訪問すると殺されていた。残されていた圭司のネクタイピン。見知らぬ訪問客……。
     読切連載第五話。疑惑の恐怖の話。解決されれば済むのだが。
  46. 「青い悪夢(歪んだ絵本)」
    ( 週刊実話特報 1963.11.16 )
     中学三年の吉岡実は岸本則子を思う。札付きの旧友町田洋一に二中の野口の女を自由にするのに三かさせられるが萎縮していた。則子と会い、実は……。
     読切連載第六話。艶話。誰がどこまでやったか明瞭ではない。
  47. 「白鳥の歌(歪んだ絵本)」
    ( 週刊実話特報 1963.11.23 )
     プロデューサー根本和明は演出家島村圭介に連れられ変という名のバーへ行くと見事な歌を歌う女がいた。藤野香代子でミュージカル主演女優に選ばれたが一幕目は散々なできだったが恋人石井登が死んだと聞いて、そしてその後……。
     読切連載第七話。芸というものは、というような話ではある。
  48. 「友情の殺意(歪んだ絵本)」
    ( 週刊実話特報 1963.11.30 )
     富山宏明は橋本恭子と結婚し、課長昇進の内示も受けた。帰りに津田文雄と会う。彼は宏明の命の恩人とでもいう人だったが、宏明は恭子を思い、婚約直前の津田に使い込みをするように仕向け、刑務所から出たところだった。幸福と不幸、帰宅すると……。
     読切連載第八話。エゴで短絡的過ぎる歪んだ話。
  49. 「愛の執念(歪んだ絵本)」
    ( 週刊実話特報 1963.12.07 )
     弁護士瀬川達雄は国選弁護人として石田修治に話を聞く。彼は六年前に逃げた村上真理子を殺してはいないという。クラブに現れた落ちぶれた真理子を修治はいかさまで勝たせる。プライドの高い彼女。郵便受けの金、死に際の告発……。
     読切連載最終話。不確実すぎるので咄嗟の思い付きなのだろうか。気持ち的には普通にあり得る範囲。
  50. 「卵で殺せ」 (「罠」)
    ( 別冊読切傑作集 1966.01. )
    ( 傑作クラブ 1970.04. )※5
     吉村泰子はキャバレー・リズで相手をしている男が後藤恵子の大阪の時ににげてきた宮川修造だといってマネージャー飯沼節夫へ早退を伝えるように頼まれる。泰子が恵子の部屋へ行くと卵とチーズを握って殺されていた。直後に来た記者笠原孝一。恵子の知り合い森田長治、ライバル中崎マユミ、飯沼の妻喜代子。泰子と笠原は探偵のように……。
     ダイイングメッセージ風だが、脱力系。人物の正体は常識では考えられない意外性があるかも。
  51. 「真珠とヘロイン」 (「殺人直行便」)[石塚利彦]
    ( 大衆小説 1966.05. )
    ( 『地獄への直行便』 トクマノベルズ 1979.11.10 )
     麻薬課河本登部長刑事が林誠らによって麻薬中毒、接触していた相手の安田が心臓麻痺で死んだ。警視庁外事課石塚利彦は林誠を追う事と安田と関係し密輸していた山口博に接触するため香港へ行く。飛行機で知り合った従兄が行方不明の近藤加奈子、領事館員北崎書記官、香港張亮昭警部補、張の妹翠晧。加奈子と林誠、山口の死、石塚の危機……。
     香港を舞台とした麻薬組織との対決譚。心臓麻痺の手段はある意味笑える。
  52. 「赤い黄金」 [石塚利彦]
    ( 大衆小説 1966.09. )
    ( 読切時代小説 1970.02. )※5
    ( 『地獄への直行便』 トクマノベルズ 1979.11.10 )
     贋ドルに関係していたジェイムズ・オコンナーが殺された。警視庁外事課石塚利彦はオコンナーの友人の日系米人トーマス・イシヅカとして囮捜査をする。中華料理店主人劉徳生、オコンナーの友人野津秀夫、妻アリス、秘書ドナルド・マーティン、不良外人カータ・ハリスン、西原マユミ。ハリスンの死。アリスからの電話……。
     007風な作品。相手が小物すぎるが女性は良い感じかも。
  53. 「狂熱の海」 (「竜神丸伝奇」)
    ( 読切文庫 1966.10. )
    ( 読切雑誌 1970.12. )
     一六二〇年代、船長加代、弟彦次郎、按針正吾、医者玄庵らが乗る八幡船竜神丸はイギリス人ヒューを助けマニラ近郊で降ろす。献上品として総督に謁見した加代は総督の娘マリヤに鞭うたれる。新式銃器を得ようとし、囚われていたヒューを助け、イギリス海賊の襲撃のなか脱出。二人は再び総督府へ、竜神丸は……。
     のち「南海胡蝶陣(中絶?)」で大幅変更長編化しようとしていたと思われる。国際時代アクションとあるが恋愛ロマンス風作品。
  54. 「ピンクの鍵」 [矢野玲子]
    ( 別冊読切傑作集 1966.12. )
    ( 現代小説 1970.07. )※5
     兄貞夫が警視庁捜査一課警部である矢野玲子は北山泰代が画家遠山玄一の子が出来たと相談される。翌日、玲子が遠山のマンションへ行くと玄一とモデル小林由利子が部屋の前にいて、中で泰代が殺されていた。赤やピンクの絵具と口紅で塗られた部屋。泰代の妹桂子、泰代の以前つきあっていた西尾俊二。化粧品の入っていた紙袋。玲子は……。
     推測ではあるが手懸りはそれなりにある。※後に少女向け「ルージュは知っていた」の状況設定を利用、別手懸りで別解決としている。
  55. 「天国の密使」 [石塚利彦]
    ( 大衆小説 1967.03. )
    ( 『地獄への直行便』 トクマノベルズ 1979.11.10 )
     警視庁外事課石塚利彦はファビーニのガス中毒死現場から密輸ダイヤを見つける。密輸関係者中山靖夫の事故死、似ているところから石塚は中山になりすましてベイルートへ行く。坂口秀昭助教授、接触してきたハビシャン、パラダイスへの案内役アニス、香港支部の杉岡、なりすましを指摘され……。
     007風でパラダイスな作品。偶然が多すぎるが波乱万丈でもある。秘密兵器のチャチさは笑える。
  56. 「女の罠」 (「淫らな罠」)[矢野玲子]
    ( 別冊読切傑作集 1967.06. )
    ( 現代小説 1970.11. )
     矢野玲子の父貞雄は捜査一課の警部で父娘二人の家庭だった。友人中原宏子が常務石川武夫に襲われ逃げてきたがハンドバッグを忘れ一緒に取りに行って欲しいという。行くと石川は客間で殺されていた。電話をかけていたバーのマダム西村芳江、呼ばれた秘書塚本進。寝室での発見、ネクタイ、密告電話。玲子は宏子の婚約者佐野和彦を訪れる。玲子は……。
     根拠は薄弱すぎる。罠をしかけて当たったという感じ。
  57. 「ゼロの幻」 [石塚利彦]
    ( 大衆小説 1967.07. )
    ( 現代小説 1970.07. )※5
    ( 『地獄への直行便』 トクマノベルズ 1979.11.10 )
     警視庁外事課石塚利彦はFBIからきた日本に立ち寄る可能性のある者のリストを見る。LSD教ともいえるネオ・アメリカン教会側近のアーサー・ホルバーグが来日するので警戒するようにという手紙を受け取る。石塚はリチャード・土田、ラルフ・ケント、マリオン・ワイルダー、佐野伸子とLSDを試す。伸子の挙動。ホルバーグの来日講演会での伸子殺害未遂……。
     LSDの描写は良いが、犯行は墓穴を掘っているだけで意味がないような。
  58. 『伯林―一八八八年』
    ( 『伯林―一八八八年』 講談社 1967.08.20 )(国DC※)
    ( 『伯林―一八八八年』 講談社ロマン・ブックス 1969.10.04 )
    ( 『都筑道夫・海渡英祐・森村誠一』 講談社現代推理小説大系17 1973.01.08 )(国DC※)
    『伯林―一八八八年』 講談社文庫(AX027/AX17-01) 1975.06.15
    ( 『伯林―一八八八年/次郎長開化事件簿』 講談社文庫大衆文学館(か-05-01) 1997.10.20 )
    『伯林―一八八八年/高層の死角』 講談社文庫江戸川乱歩賞全集7 1999.09.15
     伯林留学中の森林太郎(森鴎外)は北里柴三郎とビスマルクを乗せた馬車に近づく社会主義者が捕らえられたのを見ていた。友人岡本修治と踊り子ぺルタ、林太郎とエリス。閨秀詩人クララ・ヴァルターとの出会い。アパートでのクララの首吊り。密室状態であったが殺人だと主張する岡本。ベルンハイム伯爵を暗示するメモ。西園寺公望全権大使、村瀬康彦書記官、福島安正武官。クララの招待で伯爵のシムメル・シュロス城へ行く。 伯爵令嬢アンナ、執事ハンス・グールベ、秘書ヨハン・クラウス、村瀬、ロシアのセルゲイ・アレクサンドロヴィッチ・スミールノフ、イギリスのトーマス・ブレーク卿、フランス大使館のベルナール夫妻、フォン・マンゴルト将軍。遅れてルードルフ大尉。社会主義者の捜索。伯爵の別邸への退出。吹雪。ブレーク卿の退出。ミューラーとビスマルクの登場。銃声とクララの悲鳴。別邸の密室での伯爵の銃殺、鍵穴に詰め込まれた布、足跡のない雪の上。ベッカー警視、カール、岡本。クララとの別れ。林太郎は帰国の船上で……。
     密室を扱っているがそれ自体は斬新なトリックではない。密室の理由にはある程度説得力があるがその場その時でなければならないというわけではなさそう。一部後出し、状況証拠的で確定とまでは言い難いが本格推理小説といえる。史実と空想を混然とさせた傑作といえる。
  59. 「女の清算」
    ( 別冊読切雑誌 1967.09. )
    ( 現代小説 1972.08. )※5
     津村敏夫は石川泰子と関係していた。使い込みをしていた彼はさらに現金を奪って逃亡する計画だった。泰子は課長大野信治とも関係していた。妻珠代は系列会社の社長の娘。泰子は信治に敏夫のアパートへ行くよう頼む。敏夫が殺される。信治のところへ私立探偵の森本が現われ珠代の依頼で尾行していたと恐喝する。泰子は第三の男を、そして最後に……。
     男との関係が清算されていく話。割り切り方が凄い。
  60. 「閉じた視覚」 [阪藤潤治]
    ( 推理ストーリー 1967.09. )
    ( 現代小説 1972.11. )
     松井加奈子は妻子ある須田孝一と不倫関係にあった。加奈子は別居中の妻恵子と秘書稲垣悟郎を見かける。加奈子の勤務先社長は孝一の弟貞夫で同僚池谷浩子が婚約したという。加奈子は同僚岸本実にプロポーズされる。孝一のマンションで来客があり暗室に隠れると孝一が殺された。鍵穴から見た犯人の一部、ハンカチ、脅迫電話、弁護士阪藤潤治……。
     意外な犯人というほどでもないが少し犯人にとって都合が良すぎる。発見が早ければ意味がないような。
  61. 「狂った終幕」
    ( ニュース特報 1967.09.27 )
     杉本省治は吉野久代をうとましく思っていた。彼女は友人和子の誘いで行ったときに初体験したという。省治は小宮康子を大切にしていた。夜道で見た康子の姿、踏切に飛び込み死んだ康子。省治は女が一緒だったと聞き、石井宏子に、岡田志郎に……。
     短絡的な青年の話。
  62. 「ウマい発見」
    ( 漫画読本 1967.10. )
    『ホシは誰だ?』 文藝春秋社 1980.05.20 (国DC※)
    『ホシは誰だ? 犯人あて推理アンソロジー』文藝春秋編 文春文庫(217-07/編-03-01) 1984.03.25 (国DC※)
     増沢哲也は松浦道子と競馬に熱中していた。渋谷で待ち合わせるが道子は会社都合で遅くなる。場外馬券場で道子の兄圭一の依頼分も含めて馬券を買う。同僚の藤井義夫と西村阿佐子と圭一の関係。夕方哲也と道子が圭一のマンションへ行くと圭一が殺されていた。犯行時間を思わせる声、ダイイングメッセージ……。
     推理クイズ。状況はその通りだが根拠なく飛躍しすぎ。
  63. 「脅迫者」
    ( 小説宝石 1967.11. )
     笹倉綾子は同僚野本和代、吉田康子らの冷笑とわれみの中、清水孝一課長によばれ、塚尾孝治部長、石井由昭課長、刑事に会う。杉岡征雄が宇都宮で轢き逃げにあって死んだという。多額の金、しかし横領し逃亡するには少なすぎる。綾子は共犯を疑われる。残された状袋の処分、征雄の名の誕生日カード、脅迫。征雄の妹美佐子。征雄と同じ課の寺田泰治。襲われる綾子……。
     意外な動機といえるかもしれない。偶然を用いてではあるが。
  64. 「喪失の日」
    ( 推理界 1967.12. )
     石川伸昭は軍属として上海に来ていた。かつて付き合った香蘭の娘の楊香淑。怪人物木崎武彦、森本茂少佐と劉小姐。薔薇苑の部屋での石川と森本少佐の会談。張敏仲と劉小姐。爆発、そして停電した部屋での木崎のばらばら死体。支配人岡林愡吉。木崎は香淑を迎える予定だったという。宮下中尉の説。ショートさせた銅板片、深皿。病床の石川に森本少佐は語る……。
     機械的な物を用いているのは珍しい。最後は、そのものとまでは予測できなかった。
  65. 「最後の嬌笑」
    ( 別冊読切雑誌 1967.12. )
     中井志郎は社長沢口恒夫の後妻房子と沢口殺害の計画をたてる。志郎は森山和美と関係をもち使い込み書類を会社から盗むからとアリバイを頼む。強盗と見せかけた殺害。共同経営者だった息子の野本幸雄、房子の義理の子俊一。第一の逆転、第二の逆転、最後に……。
     二転三転する話。ある意味、何でもアリといえそう。
  66. 「殺意の花束」 [石塚利彦]
    ( 大衆小説 1968.01. )
    ( 『地獄への直行便』 トクマノベルズ 1979.11.10 )
     警視庁外事課石塚利彦は植村副総監の伴でICPO、パリへ行く。野村由美子と知り合う。画家小畑健三の殺害現場にシャール警部補と行く。花束の爆弾。美術愛好家マルタン、リネットと監禁される石塚。由美子と再び捕らえられる石塚。隠された絵……。
     さすがに隠し場所には無理があるような。組織の対応方法の理由もよくわからない。
  67. 「謀略の背景」
    ( 別冊小説新潮 1968.01. )
    ( 『種族同盟 現代ミステリー傑作選1 策謀・黒いユーモア編』日本推理作家協会編 カッパ・ノベルス(N152) 1969.01.06 )
    『海渡英祐自選短編傑作集』 読売新聞社 1976.09.10 (国DC※)
    『殺人カセット最新版 日本ミステリー傑作選(1)』日本推理作家協会編 徳間文庫(125-01) 1981.04.15 (国DC※)
    『突込んだ首』 徳間文庫(か-01-15) 1990.04.15
     昭和十三年、上海に戻りヨシコ劉淑如と会っていた特務機関員石崎邦男は翌日上司野田猛中佐から漢口に潜入し国民党の張徳全の暗殺を命じられた。トラックを奪い潜入、陳文敏の案内で張将軍側近の徐承元に接触。情報を得る。徐は湯宋義が怪しみ始めているという。張の部屋に潜入したが捕らえられてしまう。徐は石崎を逃がそうと……。
     スパイ小説。意外な結末、背景といえる作品。人の命が軽かった時代の話だが、単純に作戦としての有効性は疑問がある。
  68. 「空白の起点」 [阪藤潤治]
    ( 推理ストーリー 1968.02. )
     僕、弁護士阪藤潤治のところに大東商事の岩田直司が来て出張中に妻悦子を見張ってほしいという。隣のアパートで婚約者真佐子と書記西野志郎と共に見張る。男の乗ったタクシーの迎え、尾行失敗、帰宅。従兄で大東商事の専務近藤昭一が悦子の死体を発見。部下大橋康夫と六号室島本卓也、三号室吉本恵子と幸子。阪藤は……。
     読者への挑戦作品。不審を感じた点は今ではあてはまらない。かなり綱渡りの犯行。
  69. 「冷えた焔」
    ( 時 1968.02. )
     磯辺俊一はパリからブエノスアイレスへ行くが新聞記者の弟昭二の迎えがなかった。パロヴィアのサンロペス市で行方不明になったという。俊一は宿泊先のホテルへ行く。革命詩人サベリアの『焔の世界』。案内兼通訳だったマリア。キューバのゲリラ指揮者グベロの死。昭二の死隊。無くなっていたフィルム……。
     南米架空国を舞台にした革命ゲリラを取材しようとした新聞記者の死の謎。フィルムのありかや真相は推理小説風。
  70. 「ジレンマの交錯」
    ( 別冊小説新潮 1968.04. )
    ( 『忍びよる影』 光風社出版 1983.06.25 )(国DC※)
    『忍びよる影』 徳間文庫(123-10/か-01-10) 1987.09.15 (国DC※)
     私深田浩一は同僚で金貸しもしている森下幸子に別れ話を持ち出すが逆に脅される。北野澄子との結婚話、ライバルの松原尚彦。吉村悦子を車の中で眠らせアリバイの証言者とし、幸子を殺害しようとするが何者かに眠らされ、気付くと幸子は絞殺されていた。いなくなった悦子。現場の遺留品。私は松原と……。
     皮肉な結末となる話。遺留品の件もあり、最後までうまくいったとは考えにくい。
  71. 「花曇りの女」
    ( 旅 1968.05. )
    ( 『戦慄の旅路』中島河太郎編 文華新書 1977.04.25 )
     吉村弘は出張で石沢圭治課長から切符を受け取り青森への急行第三十和田へ乗り込んだ。寝台の下の佐川由利子と知り合い再会を約束する。合浦公園で由利子は弘前の義兄に夫として会って欲しいという。浅虫温泉での一夜、弘前城の桜。由利子は去っていく……。
     旅での出会いを生かした作品。ロマンある意外と良作かも。
  72. 「六甲に消えた夢」
    ( ニュース特報 1968.07.24 )
     フリーのカメラマン沢野邦夫は倉本江美子を誘って六甲へ行く。店の客の村井昭治と妻を見かける。夜、江美子は戻らず車で転落死したと警察が来る。焼けて顏のわからない死体。ホテルで見かけた二人……。
     ※のち「死の帰郷」として会津に舞台を変えて大幅改稿。顏のない死体のバリエーション。
  73. 「殺人デザイン」
    ( 推理ストーリー 1968.08. )
    ( 傑作クラブ 1973.04. )※5
     デザイン会社所長島本久雄は中井弘美と共謀して妻多津子を殺す計画をたてる。客の大野伸治からの電話でアリバイを作る計画。親交ある北崎啓介の店を出て自宅へ行くと多津子は既に死んでいた。電話の応対を済ませ事務所に戻ると弘美もまた。島本は自動車を走らせ……。
     組み合わせどんでん返し風作品。サスペンスはあるが偶然狙い通りになっただけのような。
  74. 「奈落の底」
    ( 小説倶楽部増刊 1968.08. )(国DC※)
     私は記憶を失っていた。熱海の別荘風の家で杉野綾子が絞殺されていて、私は崖から転落したらしい。電機会社のサラリーマン安川恭二で上司の中垣庫一郎と恋人吉村志津子が迎えに来た。映画館で、同僚の赤沢伸明とバーでの出来事。一卵性双生児倉本敬一……。
     双生児と記憶喪失を結び付けた話。無理がありすぎるような気がする。
  75. 「悪夢の構図」
    ( 推理界 1968.08. )
     使い込みで起訴猶予みなった杉岡志郎はかつての恋人雪子と再会し関係をもつ。夫の篠田修一は雪子を所有物として扱っているという。志郎に易者が告げる。志郎に惚れている場末のバーの野本照美。志郎は篠田殺害を決意し修一と弟啓二を確認。篠田家で帰宅したところを殺害、そして照美が殺されていたのを見つける。その後志郎は由紀子と会い……。
     アリバイを利用したどんでん返し作品。その動機で殺人はとても考えられない。
  76. 『影の座標』
    ( 『影の座標』 講談社 1968.09.28 )(国DC※)
    ( 『影の座標』 講談社ロマン・ブックス 1977.10.14 )(国DC※)
    『影の座標』 講談社文庫(AX187/AX17-02) 1980.11.15 (国DC※)
     エラリー・レーンこと調査課の雨宮敏行とワトソンの私稲垣昭彦は光和化学社長関根俊吾から娘光子の夫岸田博失踪の調査を依頼された。NK剤の産業スパイ関連だろうか。光子の妹の和子、つきあっている佐伯達也、養子を解消し退職した会計士川河村久信。秘書北山卓治、技術部で最後に会っていた小林幹夫、解雇され社長を恨んでいた荒木進。雨宮の父の猛雄元警部、妹宏子、捜査一課の利根警部。帰宅後の失踪と判明、速達の警告状。金使いが荒かった小林の絞殺死体。寿司の折詰、記念品のライター。さらに車を使った絞殺未遂事件。雨宮と私は……。
     本格推理小説。かなり考えられているが、可能性が低いというだけで排除されていたり、ライターの指紋や寿司のネタや電話の声など細部は甘い。ヒントの伏線は面白くもあり上手い。
  77. 「演技の報酬」
    ( 問題小説 1968.11. )
    『喰いちがった結末』 光文社文庫(か-18-01) 1988.02.20
     竹中久雄と康江夫婦は倦怠期でラブホテルへ行く事になった。久雄は使い込みをしていた。また川口伸子と関係がある。伸子は大塚栄一を誘ってアブホテルへ。二人を心中に偽装して殺害する計画だったが……。
     倒叙。展開は面白いが結末は少し無理があるような。それこそ死なば諸共ではないかと。
  78. 「赤い夜」
    ( 小説club 1969.01. )(国DC※)
    ( 現代小説 1971.12. )※5
     津村俊一は麻薬捜査の刑事で組織に潜入していた。大西武雄の奴隷状態のアケミと関係をもつ。取引現場を押さえるためテープレコーダーをしかけ、1803との言葉を得る。アケミは、そして津村は……。
     やりすぎた捜査の話。暗号もどきも八十パーセントの確率すらないような。
  79. 「灰色の炎」
    ( アサヒ芸能問題小説 1969.01. )
     石井悦子は金子恵美と婚約した落合尚彦に逃げられ、彼の友人佐々木治郎と面当て的につきあっていた。気があるらしい宮原浩一、渡辺信夫課長、同僚関根佳子。大学時代から付き合って阿蘇の噴火口に飛び込んだと聞いていた村田恒男との写真が届いた。誕生祝いのチョコレートの小包。郵便受けの紙片。尚彦の従妹浜野則子が毒入りチョコレートを食べる。宮原と会いに行くが来なかった紙片の主。落合のアパートへ行くと尚彦が殺されていた。その場にいた佐々木。猥本筆写、悦子への罠……。
     意外な犯人といえそうだが、動機や背景はかなり脱力。結末は夢物語。
  80. 「暗殺二重奏」 [石塚利彦]
    ( 大衆小説 1969.02. )
    ( 『地獄への直行便』 トクマノベルズ 1979.11.10 )
     警視庁外事課石塚利彦は中東の革命評議会議長カシムの非公式来日で自身を暗殺の囮として裏切者を見つけ出す事を依頼される。謎の女、秘書サラ、ナハル経済担当顧問、スリマン大佐、カディル筆頭書記官、バドウル、外交官風男、サングラスの男。石塚は後をつけるが捕まり拷問を受ける。ユキコの合流、影武者、銃撃戦、裏切者……。
     敵味方混沌としたどんでん返し的作品。誰が裏切者でもおかしくなく、暗殺ならもっと簡単にできそう。
  81. 「ころげ落ちた電話」 [井上和明、秀一]
    ( 中学三年コース 1969.02. )※6
     井上和明は川野文夫の部屋でプラモデルの作成を見ていた。クラスメイト令子の姉西田洋子が来て帰る。家には姉の道子だけ。宝くじのことで電話をかけるが話し中。兄の秀一が帰ると川野から電話で悲鳴とすごい音がした。二人がかけつけると川野は殴られて刺殺されたいた。ころげ落ちていた電話、塗装途中のプラモ、畳の上の二という字。同僚の訪問者山口雄二郎、隣二号室の岡本弘とライター、一度訪れた木原修一。秀一は……。
     クイズとしても根拠が薄弱すぎる。第三者が全く排除されていない。
  82. 「無実の罪」
    ( 週刊サンケイ 1969.02.17 )
     大穴を当てたと思ったが馬券が違っていた西岡志郎は杉原由利子に会う。二年前に塚本道雄殺害犯として西岡は逮捕され証拠不十分で無罪になって以来不運だった。同じ夜、由利子はひき逃げにあい大怪我をしていた。吉野修二の目撃、島村康子といたアリバイ、現場の血痕と毛髪。由利子は……。
     どんでん返しのためだけのようでかなり無理を感じる。競馬は出会いの場のみ。
  83. 「怪盗すいすい」
    ( 小説club 1969.03. )(国DC※)
     江戸、骨董商垂木屋新兵衛は目明し源八と手代直助に泥棒から盗む怪盗すいすいと疑われていた。まぼろしの三次の再来か、上総屋惣右衛門が手に入れた仏像が手文庫の中から消えて中は濡れていた。小僧仙吉、七化けのおもん。惣右衛門の妾お藤、久兵衛、松吉、六助。元の持主の伊勢屋甚左衛門の妾腹の子伊蔵。新兵衛は上総屋を訪れ……。
     怪盗物で準備がどう生かされるかが面白い。謎自体はミステリー的にはアンフェア。
  84. 「雨に鳴るベル」 [井上和明、秀一]
    ( 中学三年コース 1969.03. )※6
    ( 中学一年コース増刊 1973.02. )※5
     井上和明と姉の道子は兄の信也の運転でドライブするが雨の中でガス欠。車の中で雨宿りをしていると先の家が留守のようで訪問した男を車に誘うが帰ってこなかった。社会部記者の兄秀一はその家で石川健治が殺され和明たちが玄関を見ていたと知る。訪問客杉山良夫、同僚北村昭二、旅行外出中だった雪子、隣の吉野則男。目覚まし時計のベルの音と壊れていた時計、煙草、葉書……。
     ゼンマイ式の目覚まし時計、種類もあるようで構造が今ひとつ不明。電話など偶然すぎる。
  85. 「四角関係」
    ( オール読物 1969.05. )
     寺田卓郎は従兄横井利夫を殺した。利夫の妻佐和子と共謀して。映画館の女性の卒倒、染谷由美のアパートの訪問、駅でのトラブル、横井宅での死体発見。しかし計画は……。
     倒叙風作品。唐突に近いが最後は意表をつかれた。良作かも。
  86. 「天国の活人」
    ( 推理界 1969.05. )
    『海渡英祐自選短編傑作集』 読売新聞社 1976.09.10 (国DC※)
    『突込んだ首』 徳間文庫(か-01-15) 1990.04.15
     わたしユリコ・ベルモンは天国に来てテストを受けることになった。ガイド役はジェイムズ・ボンド。頭の後ろの金の輪の中から頭をたたくと活人になるという。名前の入った輪は活人になった経過時間により色が変わる。嘘の可能性がある時は赤くなる。邸宅に入るとオーギュスト・デュパン、既に来ていたドルリイ・レーン、家の中の様子、フレント警部、明智小五郎。ブラウン神父。消えたレーンとホームズの輪。わたしは隣家で五六冊のシェイクスピア全集とレーンの輪を見つける。わたしは……。
     推理作家協会新年会での犯人探しのときの作品。仮想舞台、仮想条件と限定されているので他の可能性はほとんど考慮する必要がなく比較的単純に限定できる作品。
  87. 「光のわな」
    ( 中学三年コース 1969.05.〜07. )※6
     阪本修一は父貞雄の会社へ届け物をした後、関口久美子の家へ行く。途中で見た点滅するアパートの部屋の明かり。久美子の部屋から見えた父らしい男の出入り。石川則子の悲鳴、吉沢武部長が来て山岡良夫の部屋へ入ると絞殺されていた。せんたくバサミとロウソク、S・Sとあるクツべら。隣の野村正彦の留守だったという証言。山岡良夫宛の手紙。修一は姉の弘子から父が警察に行っていると聞いて父の友人の原田弁護士に相談し……。
     偶然で不確実すぎる。男女観など今となっては時代を感じる。
  88. 「香港二十四時」
    ( 小説club 1969.06. )(国DC※)
     商社支店長だった萩本篤は香港で劉香淑に夢中になり、陳仲西の密輸に関係したり会社の金を使い込んで逃亡したりしていた。張徳志にスパイの手先として雇われ楊洪全と接触する。田村敏夫は密輸組織に追われていた。妹由美は身代わりの男を探すようにいわれていて萩本と出会う。銃撃、逃亡、安息。萩本は依頼をすまし……。
     異国での暗黒街哀話とでもいうような話。敏夫の目論見違いに少し面白いところがある。
  89. 「紅の喪章」
    ( 推理ストーリー 1969.06. )
    ( 現代小説 1973.03. )※5
     北崎裕子は久村恒夫殺害を疑われていたがアリバイがあった。久村は靖子と離婚し裕子と結婚するつもりだった。靖子と弁護士中井政雄が訪問すると薄暗がりで行為の最中、時間を置いて行くと久村が殺されていた。久村の従弟佐山啓一は大学の時の仲間長岡卓也に話を聞いたりするが該当しそうな女はいない。裕子の無実の証明、佐山は……。
     意外な真相ともいえるが、低確率の賭けがあたったという印象。
  90. 「ミスタ・ヤマ」
    ( 問題小説 1969.08. )
    『海渡英祐自選短編傑作集』 読売新聞社 1976.09.10 (国DC※)
    『趣味の犯罪華麗な殺し』 トクマノベルズ 1985.04.30 (国DC※)
    『突込んだ首』 徳間文庫(か-01-15) 1990.04.15
     昭和九年秋、私川崎弘治はニューヨークでサムとイカサマをしたのを大陸横断鉄道で博打ばかりやっていたとミスタ・ヤマに見られた。見逃す条件でカジノの案内を頼まれる。アスター・ホテルの一階上のローラとの関係。カジノでのローラと別居中の夫アラン・バークレィ、プロデューサーのマイルズ・グレイム、弁護士ピーター・ライアン。夜、ローラの部屋に行くと部屋の前でバークレィとライアンに会う。ローラは鍵がかかっていた部屋て絞殺されていた。疑われた私を救うためミスタ・ヤマは……。
     トップ・クラスのギャンブラーという意味が効いた作品。密室の動機としては悪くない。密室化に関してはまず無理、または大穴を狙うギャンブラーとしか思えない。
  91. 「見えない犯人」
    ( 中学三年コース増刊 1969.08. )※6
     軽井沢の別荘に来た宮本邦夫と妹の真弓。邦夫は隣の別荘の今村香代子と親しくなる。香代子別荘には姉の由紀子、いとこ松野信治と島田実、おじいさん、女中がいた。由紀子を追いまわしていて行方不明になった姿の見えなくなる薬を研究していた山崎政一からの手紙。途中で消えた足あと。弁護士の藤山良昭、見え隠れする謎の男。窓とドア見張る人達の中、政一を見たという香代子。殺人予告の手紙……。
     透明人間的な設定は面白いが、脱力。無理で意味もないような。
  92. 「甘い罠」
    ( 小説club 1969.12. )(国DC※)
     梅田久夫は山本弘子と関係している。それまで付き合っていた姉芳子は交通事故で顏と足を傷つけてから性格も変っていた。バーのマユミをくどく。和代と部長石沢貞行。帰るとポケットから落ちた鍵とマユミの名と場所の紙。行くと芳子が殺されていた。出たところで弘子と会いアリバイを作る。和代へかかってきた電話。鍵の罠……。
     想像で終わる話。罠は成功するとは思えない。
  93. 「「わたくし」は犯人」 (「わたし」は犯人)
    ( 読物専科 1969.12. )
    ( 『二冊の同じ本 最新ミステリー選集1 愛憎編』日本推理作家協会編 カッパノベルス 1971.07.30 )
    ( 『閉塞回路』 立風書房 1976.01.15 )
    『海渡英祐自選短編傑作集』 読売新聞社 1976.09.10 (国DC※)
    『閉塞回路』 集英社文庫(138-A) 1981.11.25 (国DC※)
    ( 『犯罪フルコース 日本ベストミステリー選集(1)』日本推理作家協会編 光文社文庫(に-06-01) 1987.06.20 )
    『有栖川有栖の本格ミステリ・ライブラリー』有栖川有栖編 角川文庫(あ-26-05) 2001.08.25
     小村美枝子のノート、ホームズ賞応募のためのプロット。AをB子が絞殺する計画をたてアリバイ偽装する。ほぼその通りに秋山義行が出張から帰宅した時に康子が殺されているのが見つかった。石森宏警部は遺留品から小村美枝子を取り調べる。プロットノートの発見、しかし酔って記憶があいまいな証言をしていた美枝子は思い出したようにアリバイを提示して……。
     アリバイ物集収録。小さなトリックの相乗効果、作中作で効果を出している作品。唯一容疑者の安全性に疑問があるが、賭けの部分もあるのでこの形式なら納得できる範囲内。
  94. 「黒い収穫」
    ( 推理 1970.01. )
     岩淵博道の秘書近藤良介は選挙で別居中の岩淵の妻を誘い出す使命に失敗した。岩淵は前回同じ党の竹野荘吾に破れていた。怪文書、買収、脅迫、サクラ……。
     告白小説。選挙の裏工作の話。確かに拮抗している時には有効な策であるかもしれないが。
  95. 「逆光の影」
    ( 小説club 1970.03. )(国DC※)
     ルポライター真田圭司はブルーフィルムに出ていた竹原美奈子が北村栄治の元から突然消えた女だという事で調べる。勤めていた店のマダム沢野昭子、良人俊作。フィルムの制作所の男女の死体、暴力団組長、真田は……。
     ※「血ぬられたエロス」の改稿作品。暗黒街の者との対決話。強すぎる。
  96. 「他山の石」 (改稿後「大穴の秋」)
    ( 問題小説 1970.03. )
    『海渡英祐自選短編傑作集』 読売新聞社 1976.09.10 (国DC※)
    『突込んだ首』 徳間文庫(か-01-15) 1990.04.15
     杉岡宏一は潔癖症の妻道子と保存していた競馬新聞で喧嘩となった。競馬チャンピオンという企画に当選し余った有馬記念の指定席を昔の女北崎芳美に渡す。夫の北崎武は中小企業経営者で金繰りに困っているらしい。当日、宏一は指定席に知らない男がいて穴をあてていたのを見る。会社同僚吉村康代の話、飲み屋ひさごの常連の倉本雄介との話で北崎武が競馬場の帰りに自殺したという話を聞く。北崎の甥の篠原昇二、刑事、芳美、道子の留守に……。
     最後が効いている作品。アリバイ物でもあるがトリック自体は単純。
  97. 「「希望」の死」
    ( 推理文学 1970.04. )
     惑星探査艦隊マゼランの二〇三号は地球に似た惑星を見つける。キムラ、アリエフ、ジェルモン、スミス。確認後に着陸、地震によって骨にヒビの入ったアリエフ、電子バリアを張って区域を隔離、チンパンジーのイヴの様子。スミスの絞殺死体、イヴの射殺、ジェルモンとスミスの死……。
     SFミステリー。推理ではなく未知の謎ほ方が近い。科学性はほぼ無い。当時としては珍しいアイデアだったかも知れないが今となっては使い古された感もする。
  98. 「白い誘惑」
    ( 読切時代小説 1970.05. )
     私立探偵谷口進治は森本香代子から姉多加子を探して欲しいと依頼される。多加子はバーの雇われマダムで香代子とは別居し姉妹であることを秘していた。最初の恋人田沢良明、隣室の倉田芳美、マスター石川秀夫、暗黒街のボス大塚千蔵。田沢の刺殺死体、大塚が殺され……。
     暗黒街の麻薬関係での対決話。ボスがあっさり殺されるとは。(※中島リストの「灰色の罠」は誤り)※「姿を消した女」の改稿作品
  99. 「白い死角」
    ( 中学三年コース 1970.05.〜08. )※6
     戸田和明が藤村加代子と夜に会っている時に不良と思われ注意される。いなくなった和明のいとこ野口清子を探しに和明ががけ下の研究所へ行く途中、研究所員の石津信夫に会う。眠らされた清子、宮本良一の絞殺死体。研究所には永井豊、宮本良一研究室主任、森下弘、助手小島芳江がいただけで、宮本は帰ったと二人の守衛は言う。狙われた和明と加代子、建物から消えた男。密室で殺された永井の友人池田昭二……。
     不可能と思われる状況の作品。それだけに限定し易いかも。似た作品に「細長い密室」がある。
  100. 「第三の賭け」
    ( 小説サンデー毎日 1970.06. )
    『謀殺の系譜 江戸川乱歩賞作家集団ミステリー傑作選2』 サンケイノベルス 1972.08.30
     西塚浩子は一人でダービーに行く事になった。昨年は谷口隆之、小山達夫と行った。義兄の信一は足を骨折して小山に馬券を頼んでいた。信一の恋人に吉村和美がいた。浩子は抽籤馬に自分を重ねる。当てた信一、一足先に帰った小山。浩子と隆之が行くと信一は絞殺されていた。コップの破片、血で示された騎手名。今年浩子は……。
     可能性のある想像でしかない話。または競馬だけでなく人生も賭けた勝者と敗者の話といえるかも。
  101. 「強制列車」
    ( 推理界 1970.07. )
    『趣味の犯罪華麗な殺し』 トクマノベルズ 1985.04.30 (国DC※)
     私城戸登と友人沢口志郎はチェスの相手だった。彼の前の彼女で付き合っている岸本真利子も伝言で彼のマンションへ行くと、今の彼女竹村房子が戸口にいた。沢口の絞殺死体、ツークッワンク(強制列車)となるチェスの盤面、チェス仲間関根則夫の電話ベッドの下にあったルックの駒……。
     思い付きのみのような感じ。ほぼ唐突ではあるが最後のドンデン返しは意表をつかれる。
  102. 「夏の断点」 [坂本利彦]
    ( 問題小説 1970.08. )
    『三つの部屋の九つの謎』 トクマノベルズ 1983.01.31 (国DC※)
    『津軽ミステリー傑作選』 河出文庫(209-A) 1987.08.04 (国DC※)
     東邦テレビ御対面番組の相手を見つけ出す仕事をしている坂本利彦は石崎慎也の対面相手として文化祭で相手をした長井啓子を探す。友人村上進介、森田恒雄、北沢澄子。慎也が大学三年の時に何かあったらしい。坂本もその頃十和田で西沢友子と名乗った女性とも思い出があった。坂本は澄子と出身地へと行き……。
     隠された過去をあばいていく話。必然性は感じられないが青春ということで。
  103. 参考(出題者)「(殺人トリックをあばけ)(2題)」
    ( 中学一年コース 1970.09. )※6
     「ホシはどこから?」吉田警部の前方で銃殺/「毒薬はどこから?」吉田警部の気付き
     クイズ。
  104. 「甘い罠」
    ( 推理 1970.09. )
    ( 『事件は場所を選ばない』 光風社ノベルス 1984.06.15 )(国DC※)
    『事件は場所を選ばない』 徳間文庫(123-14/か-01-14) 1989.07.15
     永井周二はバクチ等で給料袋が直ぐに軽くなっていた。兄昇一の妻富美子からの電話。富美子の代わりに現れたマユミという女。八王子のホテル、富美子の死体。脱出し帰宅。妻伸子。高級コールガールの死、青年社員杉森、アリバイ工作。賭け……。
     男女関係が錯綜して何でもアリのような作品。サスペンス味が強い。
  105. 「空白の時」
    ( 高3コース 1970.09. )※6
     中井道子は恋人でいとこの恒彦が熱海で崖から落ちたと聞いて行くと記憶喪失症だった。殺されていた牧田健作の別荘風の家に近くだった。ポケットにあった熱海の家の地図とゴーゴークラブのマッチ。アルバイト仲間の吉沢の話。やくざ風の男の話。道子は……。
     探偵小説としてはありがちな話。※「奈落の底」の改稿版で同題の「空白の時」は別作品。
  106. 「偽りの再会」 [坂本利彦]
    ( 問題小説 1970.12. )
    ( 『閉塞回路』 立風書房 1976.01.15 )
    『恐怖の大空 航空ミステリー傑作集』 KKワールドフォトプレス・WILD BOOKS 1976.04.30
    『閉塞回路』 集英社文庫(138-A) 1981.11.25 (国DC※)
    『三つの部屋の九つの謎』 トクマノベルズ 1983.01.31 (国DC※)
     東邦テレビ御対面番組の相手を見つけ出す仕事をしている坂本利彦は緒方久子の願いでもあり尾関健介を探すために金沢へ向かった。急遽呼び戻されることになり北陸一号で帰京する。野村に引継ぎ彼は羽田から小松へ飛んだ。羽田で見かけた尾関、駐車場で殺されていた久子のマネージャー飯田益夫。尾関は約束の時間に野村と打ち合わせができていた。尾関本人が羽田にいたのなら戻れるはずはないのだが……。
     アリバイ物集収録。時刻表トリックを利用した作品。あまり意味がないような。どちらかといえば、自作解説のウラ話が面白い。
  107. 『無印の本命』
    ( 『無印の本命』 立風書房 1970.12.25 )
    ( 『無印の本命』 グリーン・アロー・ブックス 1975.11.15 )
    『無印の本命』 徳間文庫(123-03/か-01-03) 1983.04.15 (国DC※)
     ※スピードシンボリの雄姿を背景に描く本格競馬小説(カバー作品紹介より抜粋)。往年の名馬の雄姿を背景に描く男の闘い!(帯より)。昭和四十一年秋の天皇賞に三友商事社員の伊崎稔と浜村敏夫、伊崎の恋人門脇礼子が来ていた。競馬通の桐原との出会い。伊崎は令子が三友重工専務の娘だと知る。菊花賞で京都に向かう伊崎は笹野宏美と知り合う。ナスノコトブキ、スピードシンボリ。有馬記念。浜村らのグループ買い、富田のノミ屋。ダービー。桐原の孫。北海道転勤、礼子との仲。長沢支店長の依頼と橘産業秘書宏美。そして賭け……。
     馬券の購入と結果記録に人生をからませた作品。データに基づいているわけでもなく、厩舎などの裏事情もない。最後のみ大博打か。ノミ屋にダメージを与えるところがトリッキーといえなくもない。
  108. 「肌色の影」
    ( 推理 1971.01. )
    ( 『罠のなかの七人』 立風書房 1976.08.15 )
     塚田修一は社長矢頭満夫を爬虫類のように思っていた。先代社長の息子の常務沢野志郎。塚田と矢頭の妻珠江は矢頭を殺そうと計画する。矢頭の息子昭一。塚田の従妹清水由紀子、弁護士の兄徹也。塚田は経理課の岡野圭子を誘い眠らせている間に犯行を行おうとして殺害したが何者かに殴られる。鍵、電話の呼び出し、第二の第三の殺人、記された文字。塚田はついに……。
     倒叙風のどんでん返し作品。真相は想像のみ。
  109. 「龍切手の殺人」
    ( 中学三年コース 1971.02. )※5※6
     松村光夫はいとこのカメラマン戸川真一とホテルに切手コレクター佐田を取材、帰りに真一の後輩岡本に会う。雪子との結婚を雪子のおじで岡本の会社の社長佐田に反対されているという。雑誌のカメランという怪しい竹井。マンションへ戻った戸田と光夫のところにかかってきた電話。佐田が殺され龍切手は盗まれていた……。
     手がかりの一つは全く意味をなしていない。似た作品に「お熱いのはダメ」がある。
  110. 「拝啓・経理部長……」
    ( オール読物 1971.03. )
    ( 『罠のなかの七人』 立風書房 1976.08.15 )
    『罠のなかの八人』 集英社文庫(138-D) 1984.04.25 (国DC※)
     経理部長久保義夫は会社の金を不正流用しているとの無実の脅迫状を受け取った。ただ、秘書課の奥村智子との情事は事実だった。経理部員の吉岡信彦、課長古田省治、牧野進介社長の甥山崎和久、社長の娘である妻貞子。脅迫状により行ったアパートで吉岡が殺されていた。不正流用の犯人は彼だったようだ。智子は……。
     意外な関係といったところだろうか。根拠は弱すぎて疑惑のままで終わる。
  111. 「殺人もあるでよ」
    ( 推理 1971.04. )
    ( 『事件は場所を選ばない』 光風社ノベルス 1984.06.15 )(国DC※)
    『事件は場所を選ばない』 徳間文庫(123-14/か-01-14) 1989.07.15
     広告代理店勤務の深見和夫、部長山室志郎、転任してきたばかりの田村昭二、アジア自動車宣伝室長市谷文隆の毒舌。銀座のクラブでの接待、ママの堀三江。東邦テレビプロデューサー笹尾章一、CMに出ている西沢ナオミ。深見と市谷の部下吉川登紀子とマネージャー樋口進がナオミの死体をマンションで見つける。そして会議の休憩中にエレベーターで市谷が槍に刺され……。
     エレベーターの殺人は少し凝っている。解決は推測混じりであるが。懐かCMのキャッチコピーは今となれば楽しい。
  112. 「見知らぬ恋人」
    ( オール読物 1971.04. )
    『殺意の構図 江戸川乱歩賞作家集団ミステリー傑作選』中島河太郎編 サンケイノベルス 1972.06.
    ( 『罠のなかの七人』 立風書房 1976.08.15 )
    『罠のなかの八人』 集英社文庫(138-D) 1984.04.25 (国DC※)
     箱根山中で野津利夫と思われる男が車で転落死していた。深山荘には野津に呼び出された同じ会社の松島江美子と彼女を追って鎌田浩一が来ていた。クロロホルムの痕跡、会社の金の使い込みと拐帯。現金は発見されていない。沢井部長刑事の江美子への聴取。野津と名乗る男の江美子の訪問。二人しか知らない事を知っている。整形し別人の顔になったという。部長刑事や知人は彼を認識できていないらしく……。
     意外な結末ではある。邪道どころか違法ではなかろうか。普通は成功するとも思えない。
  113. 「もう一人のわたし」
    ( 別冊小説宝石 1971.06. )
    『喰いちがった結末』 光文社文庫(か-18-01) 1988.02.20
     篠原佐和子は小出俊彦に振られて、後藤特許事務所を辞めた。喫茶店で男に誘われ、飲み、気づいた時はマンションの部屋で見知らぬ男が殺されていた。デスクに飾ってあった彼女の写真を持ち出してマンションを出ると、学生時代の友人厚子に出会い近所で時々見かけていたというが……。
     二重人格ではなく臨機応変。意外な結末となる話ではあるが、やや唐突感は否めない。
  114. 「極秘情報」 [栗本章治]
    ( 小説サンデー毎日 1971.07. )
    ( 『パドックの残影』 立風書房 1974.06.20 )
     競馬記者栗本章治は情報網を持ち買い専門の馬主室口励造の世話になっている阪井加世子がママになっているスナック三冠馬へ行く。弟圭介と元馬主藤川武夫と元馬丁上島健三が発行していり会員制情報紙SS競馬特報。室口の秘書後藤利夫、事務所での藤川の殴殺死体、万年筆型のswヤープペン……。
     事件自体は単純。情報網の方が気になる。
  115. 「原色の背徳」
    ( 別冊週刊大衆 1971.08. )
     岩岡浩一は弟祥二がチェンマイ奥地で行方不明になった事で新東硝子の人事部長高田から話を聞く。同時に津村和夫もバンコクからチェンマイに戻り行方不明になっていて、妹清子を紹介される。祥二のフィアンセ沢野則子。チェンマイでの後藤、スラポンの話。生真面目な祥二と適度に遊んでいた津村。写真と聖書。現地の女性……。
     ビジネスマン哀話というような内容。真相は想像。
  116. 「完全なる殺人」
    ( 北国新聞夕刊 1971.08.14 )
     大庭敏夫の妻栄子はYという署名の脅迫状を受け取る。かつて野本康彦が使い込みをして共犯にされかねない栄子は不利な証言をし、野本は服役していた。敏夫は心臓の弱い栄子をショック死させようと……。
     少し出来過ぎの感がある。具体的には予期できないような。
  117. 「動きまわる死体」 [吉田警部補]
    ( 問題小説 1971.10. )
    『おかしな死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 トクマノベルズ 1974.12.25
    『犯罪エリート集団 日本代表ミステリー選集(2)』中島河太郎編、権田萬治編 角川文庫(緑410-02) 1975.09.30
    『おかしな死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 徳間文庫(123-04/か-01-04) 1983.10.15 (国DC※)
     警視庁捜査一課吉田茂警部補、佐藤富作部長刑事、田中角兵衛刑事、福田刑事。死体が消えた。上用賀の空家で社長寺島信久、発見者は秘書下川由利子。八幡山で車の中、発見者は従弟笹尾均治。通報中に消えたという。高井戸の寺島の家のガレージで、発見者は離婚協議中の和恵夫人と弁護士片倉典俊。愛人野口泰代、私設秘書種村孝一の話。吉田警部補は……。
     キャラ設定を主としたユーモア推理。犯人側が自滅するではなく、ある点に気づきはったりで追い詰める。移動する死体の設定は面白い。
  118. 「影の追跡」
    ( 推理 1971.10. )
    ( 『忍びよる影』 光風社出版 1983.06.25 )(国DC※)
    『忍びよる影』 徳間文庫(123-10/か-01-10) 1987.09.15 (国DC※)
     有坂道代が夫幹男の為に従姉新井貞子のところへ資金を融通してもらいに訪問すると、福修社からの小包に血のついた亡夫新井欣一のナイフが届いた。電話。貞子は妹里見節子の夫の私立探偵の省治に相談する。欣一の弟の牧野啓二は遺産を狙っていた。後輩の谷田徹。用心の為に道代夫妻が一緒に暮らすがシェパードのアトラスが毒死される。電話と背後の音楽。音楽喫茶。そして道代が絞殺され……。
     冒頭部のみ主観でその後中心人物が変わるのが気になる。フェアなのかアンフェアなのか、意外性の為に無理しすぎているように思われる。
  119. 「炎の傷痕」
    ( オール読物 1971.10. )
     推理小説作家山戸圭介、親友のカメラマン坂口直昭。今井輝子からの電話。弟恒夫の顏に硫酸をあびた絞殺死体。杉岡和美、岩田伸治、小堀道子。数字の書かれた紙片。「炎の傷痕」の清書原稿。その通りに事件は起こり輝子の夫達也が殺され硫酸をあびていた。山戸は……。
     比較的容易に真相は推測できる。まわりくどい方法の理由はよくわからないが。
  120. 「幸運の女神」
    ( 週刊特ダネ 1971.10.07 )
     西岡卓治は会社の金を使い込み競馬で取り戻そうとしていた。吉野三枝子に声をかけられ、それから適中させていく。一夜を共にし翌日も。幸運の女神である彼女は……。
     競馬場での一つの物語。女性の心理はよくわからないところもあるが後味は悪くない。
  121. 「慎重すぎた男」
    ( 週刊特ダネ 1971.11.18 )
     坂口司郎は新聞記事を読んで現金投げ込みを計画する。かつて誘拐して得た金の一部を配り、給料に一枚を加えて届け出た。番号が控えられている様子はなかった。坂口は
     倒叙作品。そこまで調べるとは思えないがどうだろう。一万円札の価値が今と違うのは確かだが。
  122. 「下痢をした死体」 (「くたばれ密室」)[吉田警部補]
    ( 問題小説 1971.12. )
    『おかしな死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 トクマノベルズ 1974.12.25
    『おかしな死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 徳間文庫(123-04/か-01-04) 1983.10.15 (国DC※)
     写真家金子敏文がマンションのスタジオで殺害されていた。隣は引っ越しで子供が騒いでおり出入り時間は限定される。残されていたハンドバッグと靴。発見者は弟子の栗原良弘。栗原と会っていた雑誌記者の高見浩子、モデルの西村マユミ、広告代理店で写真依頼主の渡辺哲夫。減っていたウイスキー、無くなったマユミの手帳、減ったトイレットペーパー、そしてカメラの中の写真の現像。吉田警部補は……。
     ユーモア推理。犯人の可能性を除外していくが、決定的でもなく偶然要素が多すぎる。証拠がないからという事ではあるが。
  123. 「怪獣の好きな死体」 (「ポケットの中の殺人」)[吉田警部補]
    ( 推理 1972.01. )
    『おかしな死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 トクマノベルズ 1974.12.25
    『おかしな死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 徳間文庫(123-04/か-01-04) 1983.10.15 (国DC※)
     星雲プロダクション入社一週間の竹内信治が殺された。怪獣図鑑はダイイングメッセージか。発見者は社員船戸欣二と杉野妙子。近くで怪獣らしき者を見たという。専務大西定夫の勧めで入社していた。定夫と典子夫妻、アマチュアマジシャンの医者栗田彰の話。アリギラ星人がビルの事務所に現れ大西定夫を殺害、アリバイを確認する。女優村上節子、常務坪井晋也。学生時代のゴジ研の山口恵子への脅迫電話。メンバーは大西、竹内、船戸の兄貞一、故深見、パリにいる長谷川、途中退会の小谷司郎。船戸貞一の行方不明で吉田警部補は……。
     ユーモア推理。アリバイ作りもかなり綱渡り。最初の殺人では動機自体が無いように思える被害者というのが効果的。
  124. 「赤と青の殺人」
    ( 小説ジュニア 1972.02. )
     藤井由美子は森田道子の運転する車で道子の兄昭彦が冬山で転落死した山を見に行った。昭彦は由美子の姉和佐子と婚約していたが最近の姉は男と遊びあるいていた。冬山の同行者で無事だった岡野久夫と山崎健治。帰りに寄ったスナック雲の安川弘は父藤井敬一に岡野の住所を教えたという。岡野の家に行くと秘書の浜村圭介と山崎がいて佐和子が殴られ気絶、岡野が殺されていた。消えたマッチ箱……。
     問題編と解決編の分離構成。成功確率が高いと思えない計画。手がかりも後出しに近いし強引。※「空白の時」(推理ストーリー)の流用作品
  125. 「裸の罠」
    ( 週刊特ダネ 1972.03.02 )
     塚田和則にかつての恋人西原美津子から電話がかかってきた。妹宏子の服一式を持ってきて欲しいという。マンションへ行くと裸で洋服箪笥に鍵がかけられていた。専務松井克也の住居で、彼は殺されていた。美津子は専務から金を盗んだ疑いをかけられたりしていた。恋人佐山信一、転職の世話をするという吉村課長。個人秘書の依頼で阪本良作に会いに行くと専務の住居で眠らされたという。塚田は……。
     ※「拾われた女」の改稿作品。状況としては面白くはあるが、ライターの指紋や鍵のことなど明確でない部分が多い。ラストも悪くないが警察でも簡単に解決できそう。
  126. 「苦い蜜」
    ( 推理 1972.04. )
     公認会計士の私藤田は吉村道明から、河合浩二から不倫で脅迫されていて人間ドックに入るので代わりに会って欲しいと頼まれる。藤田は桜井江美子と関係を持っていた。江美子は使い込みをした河合と恋人同志だった。江美子の瀧本繁夫との縁談、姉佐和子からの電話、睡眠薬に気付き寝たふりをする藤田。藤田は河合が殺されているのを見つけ……。
     どんでん返し風の作品。指摘は後出し。
  127. 「気まぐれな馬」 [栗本章治]
    ( 小説サンデー毎日 1972.05. )
    ( 『パドックの残影』 立風書房 1974.06.20 )
    ( 『本命 競馬ミステリー傑作選』石川喬司編 カッパノベルス 1976.01. )
    『本命 競馬ミステリー傑作選』石川喬司編 徳間文庫(218-04) 1985.03.15 (国DC※)
     東洋スポーツの競馬記者栗本章治は中山競馬場にいた。島内厩舎のアサアケの敗因がいろいろ憶測されていた。厩務員松浦実、調教師島内、娘朝子、騎手中原利也、栗本の同僚永井修、馬主高畑。厩舎からの帰りに永井が車の中で絞殺されていた。朝子を送ってきたのだが忘れ物がなくなっていた。栗本は不正行為に気付き……。
     不正行為の謎が主眼で殺人はおまけのような作品。確かにわかり難そう。
  128. 「酔っぱらった死体」 [吉田警部補]
    ( 問題小説 1972.06. )
    ( 『推理小説代表作選集 1973推理小説年鑑』日本推理作家協会編 講談社 1973.04.24 )(国DC※)
    ( 『おかしな死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 トクマノベルズ 1974.12.25 )
    『殺しの一品料理 ミステリー傑作選(8)』日本推理作家協会編 講談社文庫(AX099/AX01-08/に-06-08) 1978.04.15
    『おかしな死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 徳間文庫(123-04/か-01-04) 1983.10.15 (国DC※)
    小説新潮増刊 1990.07.
     上石神井のアパートで中根義男が殺されていた。ウイスキーを六本分浴びていた。発見者はバー花園ホステス西崎朱美。ママの宮口織江と共に関係があったらしい。織江のパトロンは三輪志郎。従兄の美粧堂社員宇山岡。朱美の話では洋服が変わっているらしい。新聞配達人の話。吉田警部補は証言を得ようと……。
     ユーモア推理で説得力もある。ウイスキーの種類とこじつけは面白い。
  129. 「免罪符」
    ( オール読物 1972.06. )
    『海渡英祐自選短編傑作集』 読売新聞社 1976.09.10 (国DC※)
    『突込んだ首』 徳間文庫(か-01-15) 1990.04.15
     弁護士の私は親の代から深尾家の顧問弁護士だった。惣治が亡くなり先妻の子で歴史学者貞一と後妻の子で事業を継いだ栄二の遺産争い、間に入る妾の子真利子。私は真利子に頼まれ伊豆の別荘に行く。庭の真利子に声をかけると別荘の中から大きな物音がし、窓から見ると貞一が長いロープで絞殺されていた。階段上から本棚と共に落ちてきたらしい。空いた窓、書きかけの原稿。近くのホテルにいた栄二と惣治の弟信也、栄二と関係のあった小松悠子、野田警部。指紋と二人の遺書……。
     密室ということだが密室にはなっていない。犯人特定の条件は良いが犯人の計画は杜撰。個人的に動機は理解不能。
  130. 「殺人超能力」
    ( 別冊小説宝石 1972.06. )
    ( 『閉塞回路』 立風書房 1976.01.15 )
    『閉塞回路』 集英社文庫(138-A) 1981.11.25 (国DC※)
     私岩村隆夫は過去三度、殺害した夢を見た翌日に同じように死んでいた経験があり、また社長長原克夫を殺す夢を見た。長原の妻冴子、従弟の専務吉井俊宏、可愛がられていた矢口正昭。私は警部橋本秀雄で岩村が飛び込んできた。岩村は警察宿直室にいた。岩村が殺され……。
     アリバイ物集収録。設定は面白いが個人的に嫌いなパターンで終わっている。
  131. 「ルージュは知っていた」
    ( 小説ジュニア 1972.06. )
     高校生山崎玲子は美奈子おばさんと会う。社長井沢文雄と結婚したが彼のもとから逃げ出していた。好きな人がいるという。美奈子の友人岡村邦代は井沢が美奈子の行方をしつこく聞いてくるという。玲子が絵の先生浅倉卓也のアトリエへ行くと美奈子が殺されていた。口紅と絵具でぬりつけられた室内。美奈子に振られた浜口浩、モデル池原恵子。玲子は違和感を感じ……。
     問題編と解決編の分離構成。部屋の理由だけはわかるが他は理解不能。多少絞り込めるだけとしか思えない。※「ピンクの鍵」の状況設定と同じだが別手懸り別解決作品。
  132. 「ガラスの迷路」
    ( 推理 1972.07. )
     私、弁護士敏明は従妹深田悠子に弱い。敏明の同乗した悠子の車が細工されていてブレーキが効かなかった。悠子は殺されそうになったのは四度目だという。夫徹、私の後輩佐原和彦、徹が毒殺された。間違ってころされたという。徹の愛人だったとの噂の吉村邦代、秘書沢本康夫。ウイスキー……。
     安易に推測できる話で解決はされない。
  133. 「マクベスの妻」
    ( オール読物 1972.09. )
     県会議員の私早坂は保守党衆議院議員田島宗治の娘則子と関係をもっていた。同じ党のライバル藤岡。則子から借りていた車の盗難。田島が離れで殺されていた。後妻邦代、則子、弟修治、秘書竹内芳雄。近所で見つかった車、遺書、手紙……。
     アリバイもの。女性に良い味を出しているところがある。
  134. 「死の帰郷」
    ( 推理増刊 1972.09. )
     カメラマン岩原卓也はホステス西塚由美子から撮影旅行に妻として同行し故郷盛岡へ行って欲しいと頼まれる。会津若松。店の客だという瀬口浩治と女。親友沢井秀夫と会っている間、岩原は車を由美子に貸す。自動車転落事故と姿をとどめない毒死後の焼死体。同郷の瀬口と珠代、由美子の兄勇作。盛岡での珠代の失踪……。
     ※「六甲に消えた夢」の改稿作品。顔のない死体の変形。最後の場面は意味不明。解決も想像。
  135. 「大外れの犯罪」
    ( pocketパンチOH! 1972.10. )
    ( 『罠のなかの七人』 立風書房 1976.08.15 )
    『罠のなかの八人』 集英社文庫(138-D) 1984.04.25 (国DC※)
     僕根本は園部銀子から金を借りていた。恋人の一人の寺沢真利子が用事があり遅れるがアパートで待っていて欲しいという。訪ねてきた内山静夫。専務のお嬢さんとの話があり、銀子とも付き合っていた。手帳に書かれた宝くじ一等当選番号と夕刊に載っていた番号が一致。根本は券を手に入れるために内山を眠らせ鍵を入手。行ってみるとそこは……。
     皮肉な結末の話。確かに主人公としては裏目に出たという感じではある。
  136. 「消えた凶器」
    『あなたは挑戦者 犯人捜し』中島河太郎編 青樹社 1972.10.
    『あなたは名探偵 MYSTERY PUZZLE』中島河太郎編 青樹社・BIG BOOKS 1985.03.10 (国DC※)
     野口保造は命を狙われていると思い秘書大西冴子に毒の調査を頼む。二階で保造は殴殺された。妻鈴江、息子文夫、娘美枝子、その恋人で従兄の発見者の杉本弘、ばあやトヨ。冴子は棒状のもので探られる影絵のような場面を目撃していたが凶器は見当たらない……。
     クイズ。あまりにも状況設定がクイズの為のものになり過ぎている。ヒントも易しすぎる。
  137. 「二の字の四人」
    『あなたは挑戦者 犯人捜し』中島河太郎編 青樹社 1972.10.
    『あなたは名探偵 MYSTERY PUZZLE』中島河太郎編 青樹社・BIG BOOKS 1985.03.10 (国DC※)
     西沢哲也は松浦道子と競馬に熱中していた。渋谷で待ち合わせるが道子は会社都合で遅くなる。兄圭一は友人新村次郎が競馬場へ行くというので馬券を依頼する。また津村和子にも依頼する。同僚の手塚攻二と河合咲子。哲也と道子が圭一のマンションへ行くと圭一が殺されていた。ニの字のダイイングメッセージ……。
     クイズ。設定は「うまい発見」とほぼ同じ。各人の状況とダイイングメッセージが異なる。
  138. 「焔の陰画」
    ( 小説サンデー毎日 1972.11. )
    ( 『忍びよる影』 光風社出版 1983.06.25 )(国DC※)
    『忍びよる影』 徳間文庫(123-10/か-01-10) 1987.09.15 (国DC※)
     佐川裕子は市役所職員倉本信夫と情事の最中に夫の市会議員佐川隆之に踏み込まれて殺害してしまう。二人は相談の上、裕子は石井春美と会いアリバイを作り、倉本は死体を佐川の車ごと処理する。佐川の秘書篠原実は佐川から電話があったという。佐川の弟秀之も佐川に会ったという。倉本のアパートで。夫は生き返ったのだろうか……。
     意外な結末だが、殺害状況など突発的で無理がありすぎる。結末も証言と矛盾しているような。
  139. 「ひねくれた死」
    ( 小説club増刊 1972.11. )
    『戦慄の意匠 江戸川乱歩賞作家集団ミステリー傑作選3』 サンケイノベルス 1973.06.30
    ( 『罠のなかの七人』 立風書房 1976.08.15 )
    『罠のなかの八人』 集英社文庫(138-D) 1984.04.25 (国DC※)
     井関厚は山辺社長の後妻悦子と関係し、会社の金を使い込んでいた。妻の芳恵とは離婚が成立しそうだった。吉川道夫が交換殺人をもちかけてくる。東興ハウス社長菅野利雄の弟の常務菅野健治を殺すことになり……。
     意外な結末的な作品。細工はある程度考えられているがかなり危険。
  140. 「鏡の中の死」
    ( 問題小説 1972.12. )
    ( 『罠のなかの七人』 立風書房 1976.08.15 )
    『罠のなかの八人』 集英社文庫(138-D) 1984.04.25 (国DC※)
     佐伯達雄は妻須美子と喧嘩するようになっていた。辻野圭介に妻の後をつけるよう依頼する。秘書の垣内慎治。佐伯は変装をして須美子と会う。佐伯に報告する辻野。出張ということで辻野に見張らせ……。
     倒叙。意外な結末ではあるがそれだけ。伏線はない。
  141. 「帰郷」
    ( みちのく 1973.01. )
    『ショート・ミステリー傑作選』日本推理作家協会編 講談社 1978.02.24 (国DC※)
    『57人の見知らぬ乗客 ミステリー傑作選・特別編(4)』日本推理作家協会編 講談社文庫(に-06-26) 1992.05.15
     佐川義夫は青森行きはつかり二号で高校の同級生だった玲子に会う。二人は浅虫温泉に泊まり……。
     偶然が偶然の結果となる話。
  142. 「白い影の殺人」
    ( 高一コース 1973.01.〜03. )※6
     青木幸司は兄の弁護士の圭介と田村秀一の誕生日のパーティーへ行く。着いた時に変な手紙を受け取った秀一。圭介と秀一の妹宏美。秀一の血縁のない妹道子と幸司はカナリアの墓を作る。いとこの堀井定夫、おじ正行、秀一の恋人平岡栄子、秀一の友人岩佐敏彦。秘密の客と会っていたと思われる秀一の部屋で物音がして行くと密室の中で殴殺されていた。窓の外は足跡のない雪、鍵穴に詰め込まれた布。さらに目張りされた部屋でのガス中毒殺人……。
     密室を扱った作品。クイズとして手がかりは悪くないが一部不自然すぎるところも。第二の密室では鍵がよくわからない。余談だがカナリアが可哀想。
  143. 「灰色の賭け」 [栗本章治]
    ( 小説推理 1973.02. )
    ( 『パドックの残影』 立風書房 1974.06.20 )
     有馬記念の本命クロガネオーの調子が良くなかった。騎手倉田和彦、馬主中井達也の息子達也、同じ杉山厩舎の騎手落合武志。加世子のスナック三冠馬の常連赤石恭治、秘書の妹、馬主会を除名された娘で何人もと関係のあるタレント内村栄子、杉山の姪西原江美子。追切りでの倉田の不在。栗本章治が赤石のアパートにいると電話がかかる。二人が栄子のアパートに行くと殺されていた……。
     競馬の八百長とアリバイに関する作品。かなり不確実な計画の気がする。
  144. 「脅迫の背景」
    ( オール読物 1973.02. )
    『海渡英祐自選短編傑作集』 読売新聞社 1976.09.10 (国DC※)
    『突込んだ首』 徳間文庫(か-01-15) 1990.04.15
     日東新聞社会部の中根尚宏に高校時代の仲間だった青木好信の交通事故死記事の切り抜きと飯塚稔の会葬礼状が送られてきた。東北新報の吉岡繁夫に記事掲載紙を見せてもらう。中根、青木、飯塚、金子恭治は谷内恒雄の家で集まった後、強姦した過去の秘密があった。被害者は精文堂の一人娘浅野章子で駆け落ちの待ち合わせ前に襲われ、以降行方不明となっていた。人気作曲家になっていた金子恭治への脅迫状。章子の行方不明を調べていた堀井忠彦、恋人だったという池辺良、電話での密告、絞殺死体、横山警部補の追及、中根は……。
     サスペンス。どのように展開させていくかという作品。犯人当て要素はあるが本格とは言い難い。
  145. 「浮気する死体」 [吉田警部補]
    ( 問題小説 1973.04. )
    『おかしな死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 トクマノベルズ 1974.12.25
    『名探偵13人登場』中島河太郎編 ベストセラー・ノベルズ(N152) 1975.12.05
    『おかしな死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 徳間文庫(123-04/か-01-04) 1983.10.15 (国DC※)
     寝室に実業家尾関恒夫と女が毒死していた。女は三十分から一時間後に死亡したという。発見者は開業医峯村繁之と実弟の山根栄治。別居中の美代子夫人の依頼で訪問。一度目は情事の最中で出直し、時間をおいて再訪問して発見。死体は桑原常務夫人康子だが情事相手は別人だったという。青木雪江の証言では康子ではなく寺西喜子を見かけたという彼女の証言から吉田警部補は……。
     ユーモア推理で意外性もある。鍵穴から見えた光景は気になるが。
  146. 「輪舞の果て」
    ( アサヒ芸能 1973.05.03 )
     山口島根県境の大刈峠で女の全裸死体が発見された。素顔の植田由美子だった。中崎宏子が小倉駅へ送り沢本繁夫と会う予定だったという。吉岡志郎ら多くの男と関係があった。高校時代の恋人だった田島信也は新聞記事の写真を見る。変ってしまった由美子。信也の恋人森下利恵は……。
     犯人の独白。そこまでして、と思わないでもない。最近の事件にヒントを得たフィクションとの編集部コメントあり。
  147. 「閉塞回路」
    ( オール読物 1973.06. )
    ( 『閉塞回路』 立風書房 1976.01.15 )
    『閉塞回路』 集英社文庫(138-A) 1981.11.25 (国DC※)
     田所徹雄が目覚めると倉岡悦子という以前三か月ほぼ会社にいた女性がストッキングを首に巻いて死んでいた。前夜は常務山根義男、妹亜佐子の夫の営業部長柴野謙司、殺された妻佳代の兄の医師中西豊と飲んで正体を無くしていた。田所は前夜のようすを聞き、向井啓子のところに行くと殺されていた。田所は悦子の友人浦川宏子に出会い……。
     アリバイ物集収録。アリバイ奪取の作品。あっさり書かれているが間男の関係性が意外すぎる。また田所の活動は読めないと思う。
  148. 「気まぐれな死体」 [吉田警部補]
    ( 小説推理 1973.08. )
    ( 『推理小説代表作選集 1974推理小説年鑑』日本推理作家協会編 講談社 1974.05.20 )(国DC※)
    ( 『おかしな死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 トクマノベルズ 1974.12.25 )
    『犯罪ショッピング ミステリー傑作選(9)』日本推理作家協会編 講談社文庫(AX130/AX01-09/に-06-09) 1979.03.15
    『おかしな死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 徳間文庫(123-04/か-01-04) 1983.10.15 (国DC※)
     旅行代理店経営者本間俊一がマンション六畳間で囲碁の対局再現場面で情事写真がまかれた状態で殺されていた。黒石が二個なく、一個は死体が握り一個は寝室の乱れたシーツにあった。発見者は広告代理店田代六郎、俊一の秘書重村昭子、愛人の一人末岡邦江。写真が無くなっていたタレントの小池冴子、弟の本間宏二、出版社写真部佐山敏夫らの聴取。吉田警部補は……。
     ユーモア推理。状況が錯綜していて設定と特定はなかなか面白い。気まぐれというより忙しい死体という印象。
  149. 「紅の襞」
    ( 別冊小説宝石 1973.08. )
    ( 『閉塞回路』 立風書房 1976.01.15 )
    『閉塞回路』 集英社文庫(138-A) 1981.11.25 (国DC※)
     月刊誌編集赤石公一は推理小説新人賞佳作作品を穴埋めに採用し評判も悪くなかった。塚本弘治と弁護士河合秀一から名誉棄損の電話が入り会うことになった。平野徹郎が絞殺され、小説では塚本と平野の妻千津子が共謀して殺害されたことになっていた。作者は林田継夫で妻悠子は平野の妹にあたる。そして塚本が……。
     アリバイ物集収録。今では普通に考えられる手法。藪蛇としか思えない。
  150. 「青ひげの妻」
    ( 山形新聞 1973.08.19 )
     交番にいる田村と岩崎の前に歌いながら現れる青髭浅井績夫の最後の女本庄繁子。最初の妻の両親の交通事故死と妻のカス中毒死。二番目の妻の行方不明。次の彼女は毒死。繁子ともう一人の女と付き合っていた浅井はその女を殺して逃亡、そして……。
     少し捻った作品。話としてはありがちだが。
  151. 「影を愛した私」
    ( 問題小説 1973.09. )
    ( 『罠のなかの七人』 立風書房 1976.08.15 )
    『罠のなかの八人』 集英社文庫(138-D) 1984.04.25 (国DC※)
     私野口久子は救急病院に運ばれていた。車が転落し男は顔と手が焼けていた。私はバーで知り合った篠原康夫と温泉宿へ行く途中だった。上田警部補、篠崎の妻の繁子、歯科医寺島。横領していた篠原と私が替え玉を用意し……。
     気付くきっかけは良いとしても、いわゆる顔のない死体の一バリエーションでしかない。
  152. 「一人で二人」 [加藤刑事]
    ( オール読物 1973.09. )
    『殺人ファンタジア 加藤刑事夢想捜査録』 トクマノベルズ 1975.10.10
    『仮面の告発 加藤刑事夢想捜査録』 集英社文庫(138-B) 1982.11.25
     銀座精美堂、夜三階の社長室で石塚健作社長が殺され娘真紀子の結婚相手阪口俊夫は眠らされていた。発見者は店員笹本良彦で倉田貞雄と共に商用での付き合い後、報告に寄ったという。裏口からしか入れず、警備員岡村武と野沢修治は誰も入ったものはいないという。真紀子の話、渡辺秀男専務、真紀子の従兄妹木原滋、秘書関根恭子の話。現場で眠っていた阪口の犯行か。私加藤一郎はある事に思い当たり……。
     一種の密室状態での事件。出入りの方法、手掛かりは納得。
  153. 「古都に消える」
    ( アサヒ芸能 1973.09.13 )
     出版社カメラ部員野崎邦夫は従妹道子が行方不明になったと同僚吉村珠美から連絡を受ける。土曜日に郷里弘前に似た鎌倉で尾越敏雄と会い他にも用事があると言っていた。箱根で道子の扼殺死体が発見される。尾越と別れたという時間、大井駅で朝見かけたという佐伯達彦課長。尾越に渡した金と……。
     想像から警察が捜査して解決という形式。前から準備でもおかしくない。最近の事件にヒントを得たフィクションとの編集部コメントあり。
  154. 「禁断の時」
    ( 小説宝石 1973.11. )
    ( 『事件は場所を選ばない』 光風社ノベルス 1984.06.15 )(国DC※)
    『事件は場所を選ばない』 徳間文庫(123-14/か-01-14) 1989.07.15
     唐沢啓子は克彦と付き合っていたが叔父恒雄に犯され結婚していたが克彦との仲も復活していた。恒雄の留守に忍んでくることになっていたが会社の問題で毛利宏明弁護士が、別れた前妻靖子が来る。そして恒雄が戻ってきて啓子は寝室に入れられ。物音と声で書斎へ行くと恒雄が殺されていた……。
     機会があったのは誰かということだが、被害者の行動は予測不能なのでたまたまという事だろうか。密室でもなくトリックともいえないトリックの為の設定だろうか。
  155. 「瓜二つの男」
    ( 週刊小説 1973.11.09 )
     折原律子は芸能プロダクション専務曽根繁夫からプロポーズされていた。売れっ子浦川亜紀の夫の社長市村史郎は隠されていた双生児だという牧田と会う。芸能記者北野弘司の話。律子は亜紀からの途中で切れた電話で行くと亜紀が殺されていた。偽電話で呼び出されていた付人森口良江、市村に似た男……。
     脱力系に近い。意味があるように思えないし他者が発見する可能性もある。
  156. 「告発の輪舞」
    ( 別冊小説宝石 1973.12. )
    『海渡英祐自選短編傑作集』 読売新聞社 1976.09.10 (国DC※)
    『突込んだ首』 徳間文庫(か-01-15) 1990.04.15
     元警部で定年退職した私塚原耕作は昔の隣人岩村武雄の勧めで別荘へ行くことになった。先妻の子岩村慎一、脅しの手紙を受け取った後妻の子岩村敬二。別荘番野崎トク、死んだ娘の澄子と同じ位の年齢のトクの娘美津子、小島真紀、岩村の親類藤木信子。朝、真紀が鍵のかかった部屋で扼殺されていた。道路が不通。夜中に信子を見た慎一だが信子は敬二の部屋に行くといなかったという。死体移動、錯誤による殺人か。私は美津子に話をして……。
     循環しての告発は面白い。閉ざされた山荘とも言い難く、密室とも言い難い。捻りを効かせた作品である事は間違いないのだが拍子抜け感もしてしまう。
  157. 「慰藉料取立て業」
    ( 小説サンデー毎日 1973.12. )
     田島史郎は桜庭俊子と朝まで情事をもつ。訪日米人を案内し帰宅すると慰謝料取立て業者からの手製封筒が届いていた。払うか死か、応じなかった男を殺すので新聞で確認するようにと書かれていた。それ以前の消印。結婚予定の西野理恵、紹介した長谷川智夫。俊子の婚約者湯浅輝雄。呼び出されたアパートでの中井静江の絞殺死体。義兄松尾徹也、森田美奈子。田島は……。
     封筒のトリックは面白い。関係が多すぎて自業自得としか思えない。
  158. 「迷いこんだ死体」 [吉田警部補]
    ( 小説推理 1973.12.〜1974.01. )
    『おかしな死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 トクマノベルズ 1974.12.25
    『おかしな死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 徳間文庫(123-04/か-01-04) 1983.10.15 (国DC※)
     新星電機宣伝部の資料室で社員でない男が裸になって殺されていた。発見時いたのは課長丸太光雄、土屋恭治、北村和彦、その後岡部博之が帰社し東京プランニング中川佐和子の弟の節夫と判明。守衛岩井勇は女性が入ったが出てきていないという。新星電機で節夫を知っていたのは岡部と小坂茂子のみ。北村は茂子に、茂子は節夫に惹かれていたらしい。トイレの物置から見つかった女の衣装、吉田警部補は…。
     ユーモア推理。犯人の絞り込みは無理矢理。そこがこのシリーズの特徴でもあるが。
  159. 「臭い仲」
    ( 問題小説 1974.01. )
    ( 『東経139度線 ベスト・ミステリー1』日本推理作家協会編 カッパノベルス 1974.08.15 )
    ( 『事件は場所を選ばない』 光風社ノベルス 1984.06.15 )(国DC※)
    『喰いちがった結末』 光文社文庫(か-18-01) 1988.02.20
    ( 『裏切りのパレード 日本ベストミステリー選集(4)』日本推理作家協会編 光文社文庫(に-06-04) 1989.01.20 )
    『事件は場所を選ばない』 徳間文庫(123-14/か-01-14) 1989.07.15
     谷田弘子が会社の六階のトイレに行くと宮本彰子を人質に立てこもった石崎恒夫に呼び止められて要求を伝えさせられた。辞めさせられた原因の一つの倉岡政夫を呼び謝罪と誠意をみせること。元実力者の故桑野の娘である妻和美と浮気相手堀内を連れて来ること。社長、赤松部長、倉岡課長は慰謝料を用意する。和美の行方はわからない。警察に通報、マンションの前にいた安藤修治。和美に死体が見つかる。江口警部は……。
     ややトリッキーな話。警察に通報しなかったら別の流れになるのだろうか。解決部は後出し。
  160. 「出馬表は語る」 [栗本章治]
    ( 『パドックの残影』 立風書房 1974.06.20 )
     東洋スポーツ競馬記者栗本章治は朝子からの依頼で村越道子と会う。福島で勝利したブルーリボンの馬主の兄裕史、姉澄子、道子の恋人西沢昌三、西沢の従姉のデザイナー湯浅和美、澄子のフィアンセで医者の木塚信治、叔父村越利之、田代敏夫、津川茂子、小島雄一、騎手進藤良介が参加したパーティ。和美の毒死。目薬の瓶。疑われる西沢。裕史の毒死。電池が外れて止まった置時計、麻雀牌、分析を記載した新聞……。
     書き下ろし。第二の事件では同様の作品が以前に存在する。
  161. 「大穴の秋」 (「他山の石」改稿)[栗本章治]
    ( 『パドックの残影』 立風書房 1974.06.20 )
     杉岡宏一は潔癖症の妻良子と喧嘩。競馬チャンピオンという企画に当選し余った有馬記念の指定席を昔の女北崎珠代に渡す。夫の北崎武は中小企業経営者で金繰りに困っているらしい。当日、宏一は指定席に知らない男がいて穴を当てたのを見る。会社同僚吉村康代の話、競馬記者栗本章治との話で北崎武が競馬場の帰りに自殺したという話を聞き事情を打ち明ける。北崎の甥の飯塚昇二、外れ馬券、毒……。
     最後が効いている作品。「他山の石」を栗本章治ものに改稿した作品。
  162. 「惚れ薬」
    ( 週刊朝日増刊 1974.04.30 )
     私は臆病で引っ込み思案、弟昭二ははプレーボーイ。私は弟の女悠子に惚れ、弟は惚れ薬をくれる。効果を確認し悠子に用い……。
     ショートコント。オチのひねりは悪くないが薬は不自然。
  163. 「青鬚の妻」 [加藤刑事]
    ( オール読物 1974.05. )
    『殺人ファンタジア 加藤刑事夢想捜査録』 トクマノベルズ 1975.10.10
    『死の国のアリス 続・加藤刑事夢想捜査録』 集英社文庫(138-C) 1983.07.25 (国DC※)
     私加藤一郎が本庁捜査一課に配属されて間もない頃の迷宮事件。三年前、従兄桑村澄雄の家で宗田浩と青鬚の話になった。浩の話では遠縁の堀川恒子が夫利行が青鬚ではないかと疑っているという。今岡孝子の交通事故死、長沢真紀のガス中毒死、前妻の病死。恒子は別居する事になった。大崎久美子が殺され金庫から宝石が奪われていた。発見者は弟竹内敏夫。堀川利行と付き合っていたという。堀川恒子からの封筒が見つかり聴取すると時計の細工という話が……。
     なぜ三年後に。迷宮事件は疑わしきは罰せず、というところか。証言が根拠なのが矛盾点をつけそうな気もするが。
  164. 「乾草の中の針」 [栗本省治※]
    ( 小説推理 1974.06. )
     木曜日、東洋スポーツ競馬記者栗本省治は日本経済賞での本命、深沢厩舎のサンダイヤルの追切りを見る。騎手有田弘司、競馬ジャーナルの津山義夫。栗本の同僚島崎と名乗った男が深沢玲子を誘拐する。一緒にいた篠原江美子。競馬解説者岡崎康彦。馬丁根本実と寺西忠男。深沢への誘拐犯からの電話。八百長の要求。岡村の従兄妹。前騎手能勢達三。玲子の言葉。土曜日、出馬発表と予想記事の指示。日曜日……。
     誘拐での八百長を扱った競馬ミステリー。なぜか『パドックの残影』未収録。省治は章治の誤りか元々なのか『パドックの残影』各編初出は確認していないので不明。ある程度絞られはするが決め手には欠ける。暗号も面白くはあるが無理矢理すぎる。
  165. 「悪霊の家」
    ( 別冊小説宝石 1974.07. )
    ( 『恐怖推理 衝撃ミステリー集』中島河太郎編 ベストセラー・ノベルズ 1975.10.05 )
    ( 『事件は場所を選ばない』 光風社ノベルス 1984.06.15 )(国DC※)
    『事件は場所を選ばない』 徳間文庫(123-14/か-01-14) 1989.07.15
     推理作家山戸圭介はオカルトの討論番組に出てプロデューサー根本良則のもつ悪霊の家で一人で夜を明かす評論家坂口昭夫の立ち合いをする事になった。参加者はほかに山戸の妻冴子、翻訳家緒形俊雄、オカルト研究家横塚晉治、根本の従妹菅野悦子。鍵と封印された礼拝堂の扉、翌朝屋外で根本の墜落した死体が、中で坂口の裸での首吊り死体が見つかり……。
     推理クイズ風作品。密室とはいえないし除外理由が明確でなく一つの可能性でしかないように思われる。従って状況設定の理由もよくわからない。
  166. 「仰天した死体」 [吉田警部補]
    ( 問題小説 1974.09. )
    『おかしな死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 トクマノベルズ 1974.12.25
    『おかしな死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 徳間文庫(123-04/か-01-04) 1983.10.15 (国DC※)
     雨の中、古井戸の前で佐伯美和子が心臓麻痺で死んでいた。怪奇映画の撮影舞台の為に美術の北山俊男が廃屋を借りていた。屋内に美和子に似た水島ミカをモデルにした人形も用意されていたが濡れていた。美和子の恋仲であった浦部達郎、友人の植松隆、美和子の元同僚宮原清子と四人で美和子を肝試しの決闘で仲直りさせようと計画されたものだった。それぞれのアリバイから吉田警部補は……。
     ユーモア推理。演出過多で墓穴を掘ったのか。犯行も危険すぎるしひらめきの解決も残念。
  167. 「帰らざる彼」
    ( オール読物 1974.10. )
    ( 『閉塞回路』 立風書房 1976.01.15 )
    『閉塞回路』 集英社文庫(138-A) 1981.11.25 (国DC※)
     私島崎はアメリカ勤務で恵子と疎遠になり、倉本昭二と結婚した。私は賭けゴルフにのめりこみ退職。倉本と再開した私は笹井司郎を交えてゴルフをした後コンペに誘われる。第一組は昭三と笹井と須山と私、第二組は浜田とフィアンセ小林真利子と須山夫人泰代。恵子は怪我、昭二の兄宏一は体調不良で別荘に残った。第四ホール、恵子が甲賀という男から至急連絡の伝言を伝えに来て昭二は一時抜けたが戻ってこなかった。そして魔の森で昭二の死体が見つかり……。
     アリバイ物集収録。しかしかなり広義なアリバイ物でかなり危険な計画。
  168. 「醜いアヒルの子」 (「万引の報酬」)[加藤刑事]
    ( 小説新潮 1974.11. )
    『殺人ファンタジア 加藤刑事夢想捜査録』 トクマノベルズ 1975.10.10
    『死の国のアリス 続・加藤刑事夢想捜査録』 集英社文庫(138-C) 1983.07.25 (国DC※)
     私加藤一郎は新宿文進堂で「醜いアヒルの子」を万引きし店員に見つかった女性を見かけた。大東化学研究員黒田照子が殺された。発見者は高校同期の山根康夫と佐竹澄江。研究所の唐沢良弘に振られたらしい。ライヴァルは津崎恭子。書店員の話では、産業スパイに尾行されていてわざと捕まったという話だったが……。
     なぜ万引きか、かなり危険な行為。事後処理も必要なはず。夢想、思い付きで気付くシリーズではあるが。
  169. 「シンデレラの靴」 (「シンデレラの死」)[加藤刑事]
    ( オール読物 1974.11. )
    『殺人ファンタジア 加藤刑事夢想捜査録』 トクマノベルズ 1975.10.10
    『死の国のアリス 続・加藤刑事夢想捜査録』 集英社文庫(138-C) 1983.07.25 (国DC※)
     千歳船橋西方の公園でドレス姿、片足にもハイヒールの藤枝淑子が殺されていた。発見者は同僚で振られた前岡俊夫。姉友子とは別居、淑子は従弟の浪人生室井修治と田園調布の兄一家の海外出張留守宅に住み、公園の入り口にあった車を使っていた。淑子は青年重役の宮寺政彦に見染められて誕生パーティーに出席、帰宅する必要があるとの事で帰ったという。田園調布の公園で殺害されたか昏睡させられた可能性もでてきた。上司西本課長の聴取、無くなった片方のハイヒールを追う加藤一郎……。
     なぜ片足だけなのか、積極的かどうかは別にして普通は証拠入手で捜すとは思うが。無理にシンデレラになぞらえすぎと思えなくもない。
  170. 「虎穴の死者」
    ( 小説推理 1975.01. )
    『趣味の犯罪華麗な殺し』 トクマノベルズ 1985.04.30 (国DC※)
     僕落合和彦の親戚の殿村恭一は切手蒐集家で物々しい家に女中の岡野トクと住んでいた。秘書役の北原智子、取材で訪問した僕とカメラマン坂口貞夫、助手北原。書斎の恭一。一度家を出て戻った僕と智子は帰宅したトクと恭一が殺されていたのを見つける。恭一の弟の進二、切手商吉沢繁男、コレクター仲間津山卓也……。
     コレクターの話は面白くはある。アリバイに関しては悪くない。
  171. 「女王さまの死」
    ( 週刊テレビファン 1975.02.07〜28 )
  172. 「情事のパズル」
    ( 小説club増刊 1975.03. )
    ( 『忍びよる影』 光風社出版 1983.06.25 )(国DC※)
    『趣味の犯罪華麗な殺し』 トクマノベルズ 1985.04.30 (国DC※)
     小出俊夫は同級生だった藤田克彦と会い、彼の従妹の笠井典子と再会する。妻の良子に内緒で俊夫と典子は会う。出張で留守になるという事で笠井の家へ行った二人は笠井の死体を見つける。近くに住む笠井の部下山根政雄、弟の慎二。端のなくなっていたジグソーパズルとナイフ……。
     ジグソーパズルを完成させる時間が問題になるアリバイに関する作品。かなり際どそう。
  173. 「初夢の騎士」
    ( 『推理ゲーム あなたもAクラス探偵だ!』山村正夫編 双葉社 1975.03.10 )
     中崎安子は四人の男からプロポーズされていた。東山、南村、西田、北野。彼女はヨーロッパの王女ななり、捕らえられた夢を見た。夢の中で彼女は意中の人に救い出される。それは……。
     クイズ。除外の仕方など甘すぎるが夢でもあるので。
  174. 「ケーキの好きな死体」 [吉田警部補]
    ( 問題小説 1975.04. )
    ( 『ふざけた死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 トクマノベルズ 1977.07.10 )
    『ふざけた死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 徳間文庫(123-05/か-01-05) 1984.04.15 (国DC※)
     細川康子と北野和美が同居するアパートで康子の顔がケーキで覆いつくされて殺されていた。発見者は彼女の恋人相馬滋夫。彼女に弁護士からの電話連絡があるとのことだった。電話の受話器は外されていた。ケーキは和美が買ってきていたもので彼女は関根志郎と一緒にいた。吉田茂警部補はケーキの意味を……。
     面白い理由なのは確か。時間が関係するのだろうが別の安全な方法もあったような。
  175. 「大喰らいの死体」 [吉田警部補]
    ( 小説club増刊 1975.05. )
    『海渡英祐自選短編傑作集』 読売新聞社 1976.09.10 (国DC※)
    ( 『ふざけた死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 トクマノベルズ 1977.07.10 )
    『ふざけた死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 徳間文庫(123-05/か-01-05) 1984.04.15 (国DC※)
     元相撲取りの社長原島忠男が毒殺されて保安官の人形のバッジを握っていた。発見者は社員室口清と隣家の本間ウメ。忠男の妻の専務幸子は千葉の親類の家へ行っていた。忠男は同じ恐妻家の大関俊郎と競馬に行き、帰宅後に松月庵から出前をとっていた。バー白樺の本間夏代、忠男と関係のあった小林悠子。吉田警部補は……。
     ダイイングメッセージ。匂いには気付かなかったのか、動機が疑問などあるが記述などは気が配られている。
  176. 「フランス人形の死」 [加藤刑事]
    ( 別冊小説宝石 1975.06. )
    『殺人ファンタジア 加藤刑事夢想捜査録』 トクマノベルズ 1975.10.10
    『死の国のアリス 続・加藤刑事夢想捜査録』 集英社文庫(138-C) 1983.07.25 (国DC※)
     小池由紀子が殺された。首が折られたフランス人形。ブランディグラスと「貝殻の音」進藤俊之の謹呈著名本が畳の上に落ちていた。発見者は従兄で東都新聞文化部記者の村井昭彦。夫小池滋夫の話では河村光代に身上相談され帰宅が遅くなったという。友人森田則子の話では橋本昇と進藤にサインを貰ってくれるように本を渡したというが見つからない。進藤俊之の話では新文芸の山中という人から会いたいと電話ががあったが現れなかったとういう。私加藤一郎は仮説を進め……。
     なぜ人形の首が折られていたか、でもあるが独善的解釈で意味をなさない。謹呈著名本とカバーの関係もよくわからない。他の本からカバーを掛け直したのだろうか。
  177. 「ドンファンの衣裳」 [加藤刑事]
    ( 別冊問題小説 1975.07. )
    『殺人ファンタジア 加藤刑事夢想捜査録』 トクマノベルズ 1975.10.10
    『死の国のアリス 続・加藤刑事夢想捜査録』 集英社文庫(138-C) 1983.07.25 (国DC※)
     マンションでシナリオライター山本武と称する男が殺されていた。隠れ家らしく本名を示すものが無くなっていた。発見者は隣の吉沢弘治と令子兄妹。捜索願から泰明物産常務矢野敏雄と判明。妻矢野佳子、家庭教師小川伸夫の話。ドン・ファンのレコードジャケット、従妹石崎久美の写真。加藤一郎は前日から帰宅していなかった事から調べていくと……。
     なぜ身元を隠したか。隠れ家自体は不思議でもないが当時としてはほとんどなかったのだろうか。
  178. 「ふしだらな死体」 [吉田警部補]
    ( 別冊小説club 1975.08. )
    ( 『ふざけた死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 トクマノベルズ 1977.07.10 )
    『ふざけた死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 徳間文庫(123-05/か-01-05) 1984.04.15 (国DC※)
     下宿アパート二階の島岡直道の部屋の押し入れから元下宿住人の岩村珠美の死体が出てきた。島村は夕方から外出し恋人浜口宏子と帰宅し発見。宏子は訪れて留守の時に外から男女を見たというが新谷と確認した時は誰もいなかった。珠美は夕方一階の石巻久夫の部屋にいた。その後は小柳栄子といた。新谷はフィアンセ内藤良恵と会っていた。武田浩三は兄と共にいた。吉田警部補は調査を命じ……。
     少し複雑になったアリバイ物。タイムテーブルが必要かも。
  179. 「死の国のアリス」 [加藤刑事]
    ( 小説推理 1975.08. )
    『殺人ファンタジア 加藤刑事夢想捜査録』 トクマノベルズ 1975.10.10
    『推理小説代表作選集 1976推理小説年鑑』日本推理作家協会編 講談社 1976.04.24 (国DC※)
    『どんでん返し ミステリー傑作選(11)』日本推理作家協会編 講談社文庫(AX196/AX01-11/に-06-11) 1981.03.15
    『死の国のアリス 続・加藤刑事夢想捜査録』 集英社文庫(138-C) 1983.07.25 (国DC※)
    『不思議の国のアリス・ミステリー傑作選』 河出文庫(218-A) 1988.07.04
     翻訳家でもある不二大学英文科教授曾根孝雄がおかしな配置の書斎で殺されていた。隣の鏡のある寝室では大学一年の田辺澄子が殺されていて不思議の国/鏡の国のアリスの本と共にトランプのカードが撒かれていた。犯行時間は二〜五時間差と推定。発見者は奇術の師匠藤岡吉宏と大学助手小堀俊昭。娘真理子はパリに留学中、美和子夫人は結婚式披露宴で留守、弟の義雄は女とドライブしていたという。澄子の友人秋山稔の話では澄子は二度教授宅へ行ったことになる。加藤一郎はトランプを調べていて……。
     なぜカードがまかれていたか。広義的には某作品のヴァリエーションといえなくもない。根拠は後出しに近くなるが想像可能な範囲か。
  180. 「死を告げるメロディ」
    ( 中三時代 1975.09. )
     中学三年の里見玲子は転校した杉本弘がシェパードを連れているのに出会った。夏期講習で叔母阪田和美のいとこ安井芳子宅に泊っているという。芳子の亡くなった夫安井道夫の会社をクビにされた黒川修治から脅迫されているらしい。秘書だった和美が泊りにくる。血のついたナイフの入った小包、葬送行進曲の電話、シェパードの毒殺。和美のフィアンセ牧村伸介、安井の友人中原邦男、音楽喫茶タクト、玲子の兄の新聞記者敬一。葬送行進曲の電話でタクトへ行き戻ると和美が殺されていた……。
     手懸りは良いとして、動機が弱すぎるのと脅迫者に関してが謎。クイズの為だけの作品。似た作品に「的はずれの脅迫」がある。
  181. 「密室のワンちゃん」 [早瀬邦彦]
    ( 別冊問題小説 1975.10. )
    ( 『美女が八人死体が七つ 早瀬邦彦ずっこけ探偵録』 トクマノベルズ 1978.12.10 )
     義兄の岩崎法律事務所の調査を受けている早瀬邦彦は沢口裕美から犬のスヌーピーがいなくなり、犬嫌いの祖父杉岡健作の遺言書の発表に立ち会って欲しいと頼まれる。健作の甥の北村信也と中井泰男、秘書堀田利夫、ばあや森ウメ。犬小屋に残っていた新聞紙。物音で書斎へ行くと密室で健作が絞殺されていた。書斎にいた犬……。
     脱意力系作品。こじつけが過ぎる。
  182. 「ゼツリンな死体」 [吉田警部補]
    ( 別冊小説club 1975.11. )
    ( 『ふざけた死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 トクマノベルズ 1977.07.10 )
    『ふざけた死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 徳間文庫(123-05/か-01-05) 1984.04.15 (国DC※)
     不動産会社社長中崎繁夫が自宅ソファの後ろで絞殺されていた。別のソファの後ろには眠らされていたバーのママ志村美紀。和室には眠らされていた事務員弘田恵子。二階には大野令子の衣装。発見者は従弟で共同経営者の寺沢圭治。別居中の妻道代の証言。繁夫は令子と関係し、その後美紀のマンションへ行き抜け出し、美紀は気付いて繁夫宅へ行き眠らされたらしい。無くなったマッチ。吉田警部補は……。
     偶然が複雑にしているアリバイ物か。計画的なのか事後工作なのか、マッチが置いてあった理由などはよくわからない。
  183. 「仮面の告発」 [加藤刑事]
    ( オール読物 1976.01. )
    『海渡英祐自選短編傑作集』 読売新聞社 1976.09.10 (国DC※)
    『仮面の告発 加藤刑事夢想捜査録』 集英社文庫(138-B) 1982.11.25 (国DC※)
     女子大の大学院生牧村志津子がマンションで毒殺されていた。発見者は同郷の島野恒夫で、前日彼女を送っていた。前日の服は見当たらなかった。叔父吉岡進介への聴取で瀬口義彦教授と志津子の間を告発する教授の娘松浦則子からと思われる手紙が届いていたことを知り則子を訪問する。私加藤一郎刑事に一つの考えが浮かび……。
     なぜ服がないのか。他の可能性を排除しているわけではなく思い付きが当たっていたという事で夢想か。勿論、手掛かりとなる記述はあるので不要な記述は書かれていないといえばその通りではある。
  184. 「ネコかぶりのネコ」 (「ネコかぶりの猫」)[早瀬邦彦]
    ( 問題小説 1976.01. )
    ( 『美女が八人死体が七つ 早瀬邦彦ずっこけ探偵録』 トクマノベルズ 1978.12.10 )
    ( 『猫が見ていた 猫ミステリー傑作選』中島河太郎編 廣済堂ブルーブックス 1981.09. )
    『名探偵が八人』日本ペンクラブ編、都筑道夫選 集英社文庫(085-AA/つ-04-14) 1984.08.25 (国DC※)
    『猫が見ていた 猫ミステリー傑作選』中島河太郎編 廣済堂文庫(な-02-01) 1986.08.10
     義兄の岩崎法律事務所からの依頼調査をしている早瀬邦彦は姉昭子の家で幼馴染の小森美和子と会う。叔母の未亡人吉岡峰子の飼い猫がマンションから行方不明になったり殺されたという。二人が行くと峰子の妹島野道子と峰子と結婚を考えている宮川が猫の死体と峰子の死体を発見していた。社員九十九百一、島野克司。早瀬は……。
     既存トリックにひねりを効かせた作品。猫事件など疑問が残る部分もあるが確かに他の可能性は考え難い。
  185. 「小箱の中の死」 [加藤刑事]
    ( 小説サンデー毎日 1976.01. )
    『仮面の告発 加藤刑事夢想捜査録』 集英社文庫(138-B) 1982.11.25 (国DC※)
     マンションで一人暮らしの西田春代が殺害された。宝石箱から盗まれたのは日付の書いてある小石だった。発見者は同じ五階の石原道夫と洋子夫妻。五階の写真スタジオには吉崎敏郎、佐川慎司、殿村栄子がいた。春代は亡くなった栄子の父を知っていたらしい。私加藤一郎刑事は思い付きが当たり石を発見する。春代の甥小島康彦の話では前夫は生きているという……。
     なぜ石があったか。条件を限定するいろいろな設定が良く考えられている。特に石であるという事が。
  186. 「ヘソまがりな死体」 [吉田警部補]
    ( 小説推理 1976.01. )
    ( 『ふざけた死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 トクマノベルズ 1977.07.10 )
    『ふざけた死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 徳間文庫(123-05/か-01-05) 1984.04.15 (国DC※)
     画家奥村道雄がアトリエで喉を切られて死んでいた。横倒しになっていた描きかけの灘朱美をモデルにした絵には赤で八字形に髭が加えられていた。テーブルにはトランプとチップ、灰皿には山のような吸い殻があった。発見者は弟子の花田茂とモデルの灘朱美。ポーカー仲間の八ちゃんこと末広信也、弟の治雄、別れた妻公子。吉田警部補は……。
     ダイイングメッセージ物で着想は面白くはある。筆で書かれたのか違うのか、チップの指紋の有無、などなど不明点が多い。
  187. 「不可解な心中」
    ( 別冊小説宝石 1976.02. )
    ( 『事件は場所を選ばない』 光風社ノベルス 1984.06.15 )(国DC※)
    『事件は場所を選ばない』 徳間文庫(123-14/か-01-14) 1989.07.15
     地方文壇の藤原文雄に旧友落合修宏から推理小説の新人西岡加奈子の取材の便宜をはかって欲しいとのことだった。日曜日、自殺や心中の名所岩屋岬へ行く。一昨年、特別な関係にあったと考えられない心中事件があった。吉村恭治と笠井昭子がドライブしていた目撃証言、岬へ入る道路での証言。篠原は……。
     意外な結末といえる作品。緻密とはいえずある程度ギャンブル性のある展開の結末は上手い。
  188. 「死体だった死体」 [吉田警部補]
    ( 別冊小説club 1976.03. )
     ナガイホールでリハーサル中に死人役の大庭啓介が舞台のベッドの下で絞殺されていた。幽霊としてパントマイム後、ベットの下から裏へ抜ける筈が出てこなかった。劇団主宰者で演出家の桑原道雄、マネージャー平林志郎、代役候補で舞台袖にいた演出助手島田良彦、舞台上にいた安井志穂子と杉山信也と西内和夫、袖にいたもう一人の演出助手石上譲次と野崎朱実。吉田警部補は……。
     さすがに危険すぎる犯行。裏方や照明も皆無ではないはず。クイズとしては良い設定だが。
  189. 「ツキのない死体」 [吉田警部補]
    ( 新評 1976.04. )(国DC※)
    ( 『ふざけた死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 トクマノベルズ 1977.07.10 )
    『ふざけた死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 徳間文庫(123-05/か-01-05) 1984.04.15 (国DC※)
     アパートの杉岡卓治の部屋で毒殺された安岡和夫の事件を調べる。毒はウイスキーの瓶に入っていた。上の階の村上登の部屋で杉岡、安岡、村上、野崎達也が麻雀をしていて、西田政彦、浦川道子が来た。ツキのない安岡は道子と交代して杉岡の部屋へ行っていた。指紋が消されていた瓶、三分の二あったウイスキーが三分の一に。風邪をひいていた吉田警部補は……。
     単純に可能な者というだけのような。また匂いに気付いたり倒さないという保証もないような。
  190. 「就眠儀式」 (「睡眠儀式」)[加藤刑事]
    ( 小説現代 1976.05. )
    『仮面の告発 加藤刑事夢想捜査録』 集英社文庫(138-B) 1982.11.25 (国DC※)
     北原澄子が毒殺された。置かれた品々。日記の最後のページが破られていた。発見者は従兄の内科医尾関弘治。山岡哲夫が心変わりし、殺される夢を何度もみるという事で相談していた。前夜宿泊した姉杉田康子の話。上司の係長吉沢幹男の話。私加藤一郎は一つの可能性に思い当たり……。
     少し危ういところもあるが、考えられた状況設定。失敗しても良いという所がある為か。
  191. 「ピンク・パンティ2」 [早瀬邦彦]
    ( 問題小説 1976.05. )
    ( 『美女が八人死体が七つ 早瀬邦彦ずっこけ探偵録』 トクマノベルズ 1978.12.10 )
     義兄の岩崎法律事務所で進藤恭子からパンティを盗まれると相談があった。マンション四階のバルコニーに干していて、階段の踊場から距離があった。覗かれているらしい向かいのマンションの男ではないかという。二人は罠にかけようとするが無くなっていた。二人が行くと関口欽也が絞殺されていた。荒らされた部屋、北山節子、杉田健男、野崎珠代……。
     ほぼ題名だけ。ほとんど意味のない行為のような。
  192. 『霧の旅路』
    ( 四国新聞ほか 1976.05.30〜1977.03.17 )
    ( 『霧の旅路』 角川書店 1978.04.20 )(国DC※)
    『霧の旅路』 徳間文庫(123-11/か-01-11) 1988.04.15
     伊原加奈子は付き合っていた石崎秀夫に別れを告げられた。偶然出会った曾根啓治は恋人だった園井玲子が死んだという。沢村信也からのプロポーズがあったが気が進まない。玲子は友人野口弘美とその恋人で新聞記者の藤井俊雄と会う。曾根と石崎は高松の同じ高校、石崎と沢村は同じ大学。沢村から玲子は殺され曾根が疑われたが未解決のままだと知る。沢村と加奈子は事情を知っている吉岡伸昭のアパートへ行くと絞殺されていた。 藤井の話ではは玲子が秘書をしていた内山産業は政界と繋がりがあるという。玲子は高松に帰省、神戸に寄って神奈川のモテルで殺されたとういう。曾根は事件の手懸りを得るため吉岡と会っていた。沢村と加奈子の、曾根と加奈子の調査。匿名の手紙と細工された写真。玲子の兄園井繁男への聞き込み。にせ電話。第二の犠牲者。加奈子は疑いながらも曾根と……。
     ロマンス・サスペンス・ミステリー。栗林公園や摩耶山は出てくるが旅情はない。新聞連載と文章によるのかもしれないが、脅威の深刻度も浅く不安というだけなのでサスペンス味は弱い。写真部分のトリックのひねりは良い感じではある。しかし最終的には突いたら偶然に解決されたという印象が強い。
  193. 「たいやきを喰った死体」 [吉田警部補]
    ( 小説推理 1976.06. )
    ( 『ふざけた死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 トクマノベルズ 1977.07.10 )
    『ふざけた死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 徳間文庫(123-05/か-01-05) 1984.04.15 (国DC※)
     清明女子大心理学助教授矢口吉昭がマンションで毒殺された。手には頭と尾を残したたいやきを握っていた。発見者は社会学助教授島村政人。矢口にはフィアンセ磯部安子がいた。たいやきを買って訪れたのは阿部泰子ら三人の女子学生。矢口は宇地清という名でパズルも作成していて編集者に滝信彦がいた。指紋が消されていたペンライト兼ライター兼万年筆。およげたいやき君のレコード。吉田警部補はダイイングメッセージとして……。
     ダイイングメッセージは面白く記述も考えられている。残す方法や残せるかどうかは別にして。
  194. 「ベッドの上のルフラン」
    ( 週刊文春 1976.06.03 )
    『海渡英祐自選短編傑作集』 読売新聞社 1976.09.10 (国DC※)
    『突込んだ首』 徳間文庫(か-01-15) 1990.04.15
     わたしは宏をセックスフレンドとしていた。わたしは父がドアを開けて入ってくるのを待ちこがれている。母は父を裏切り自殺したようだった。ニンフォマニア、持ち物検査、出張という嘘……。
     唐突な結末。「初めから終りまで一度もベッドから降りない官能小説」というテーマに対しては見事だが、テーマを知らなければ単なる意外性のためだけの作品。
  195. 「細長い密室」 [加藤刑事]
    ( 別冊小説新潮 1976.07. )
     芝浦で殺人事件が起こり捜査一課の私加藤一郎、大場主任らが向かう。新旧二つのL字型建物に囲まれた中庭の元ボイラー用建物で備品倉庫のそばで製品開発部長佐伯道雄が殺されていた。管理部次長吉村直樹、守衛島田健作と中川勇造の話。中庭に佐伯が入り直ぐ野崎文代が出て小谷信夫が数分入って出て山沢澄子が発見。他にいた岩本徹治、藤井克也の聴取……。
     密室とはいえないような。たまたまうまくいっただけでかなり無理があるような。似た作遺品に「白い死角」がある。
  196. 「憎らしい絵本」 [早瀬邦彦]
    ( 別冊問題小説 1976.07. )
    ( 『美女が八人死体が七つ 早瀬邦彦ずっこけ探偵録』 トクマノベルズ 1978.12.10 )
     小森美和子の紹介で早瀬邦彦は竹内亜紀に会う。恋人石原卓也のジリオラのサイン本が盗まれ、吉沢慎治と会い不在中に室に入ったのは亜紀だけだという。床にこぼれていたインク。合鍵の作れた松永俊夫、恋人小川芳子。美和子と芳子を訪れると芳子が殺されていた……。
     殺人は普通に警察捜査で解決しそう。絵本はどうなったのか不明。
  197. 「隠れん坊する死体」 [吉田警部補]
    ( 月刊小説 1976.09. )
    ( 『ふざけた死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 トクマノベルズ 1977.07.10 )
    『ふざけた死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 徳間文庫(123-05/か-01-05) 1984.04.15 (国DC※)
     ホテル二階藤の間でアマチュア奇術ミラクル会の会合が始まる前、テーブルクロスで隠されたテーブル下から岩原卓也の死体が見つかった。ボーイ小山和夫とメイド杉村芳子のセッティング、竹井徳治支配人の藤の間の確認、そして佐伯昭子が来て喫茶室へ行く時に岩原を見かける。北沢進介、会長古島義雄、野口正幸、ホテルで編集者と会っていた片桐由香、森山篤郎、昭子が藤の間に入り死体発見となる。吉田警部補はアリバイから……。
     アリバイ物か。披露する奇術が何だったか気になる。入れ替わりや瞬間移動ではなさそうだが。
  198. 「怪盗スーハー登場」 [怪盗スーハー]
    ( 小説現代 1976.10. )
    『三つの部屋の九つの謎』 トクマノベルズ 1983.01.31 (国DC※)
     須藤数馬は恋人橋本葉子が泥棒の疑いをかけられていると聞く。秘書室長野口慎治と次長桜井秀一に頼まれ機密書類と金を常務植村義夫に届けるが状袋の中にそれらは無くなっていた。帰り際の同僚の中沢佐和子、アパートに来た同僚西田吉昭、常務宅。須藤数馬は疑いをはらすべく……。
     容易に推測はつくが確証はない。あてが外れても良いのが怪盗ものの良いところ。
  199. 「恵まれた男」
    ( 小説推理 1976.10. )
     寺沢耕司は村上道夫を誘って飲むが去られバーに行くがママは代わっていて、同期入社の大西徹也は社長の末娘伸子と結婚して出世コースへ。寺沢は大西と総務課の藤岡由紀子との密会を目撃する。寺沢は大西を脅迫し由紀子にも迫る。大西は……。
     サラリーマン小説。単純な他者の出世に対する嫉妬ではあるが一ひねり。
  200. 「その嘘ほんと?」 [早瀬邦彦]
    ( 問題小説 1976.11. )
    ( 『美女が八人死体が七つ 早瀬邦彦ずっこけ探偵録』 トクマノベルズ 1978.12.10 )
     早瀬邦彦はマンションのエレベーターで隣室の今井伸子が悪女で妻帯者山崎達夫に手を出し金を巻き上げたら捨てるという張り紙を見つける。伸子と別居中の山崎の妻浩子の家に行くと毒殺未遂事件が起こっていた。杉村文江とリキュールを飲んだ時は無事、浩子の従兄青野辰雄と飲んだ時に起った。伸子の同僚亀田得治……。
     偶然すぎるのは意図としても、他の可能性もあり過ぎる。
  201. 「笑顔」
    ( カッパまがじん 1976.11. )
    ( 『事件標本室 最新ベスト・ミステリー3』日本推理作家協会編 カッパノベルス 1977.11.25 )(国DC※)
    『悪夢と恋人たち』 徳間書店 1986.04.30 (国DC※)
    ( 『迷宮コンテスト 日本ベストミステリー選集(9)』日本推理作家協会編 光文社文庫(に-06-09) 1990.08.20 )
     私は北陸地方の城下町に転勤になり妻真利子と住む。隣家の糸崎志郎はいつも奇妙な笑いを浮かべている。交通事故で妻綾子と子とで移り住んでいた。綾子は服飾デザイナーで志郎は子守と庭いじりをしていた。綾子がいなくなる。妹野本恭子夫妻の詰問、志郎はビルで……。
     サスペンス小説。思わせぶりな結末。
  202. 「過去から来た女」
    ( 週刊小説 1976.11.01 )
    『悪夢と恋人たち』 徳間書店 1986.04.30 (国DC※)
     カメラマン佐伯達也は中部山岳地帯のホテルのバーで志摩悠子と知り合い、翌日の晩の招待を受ける。執事風の男の運転で古ぼけた洋館へ。女との夜。亡くなったという奥さまと娘。招待したのは実業界を引退した主人だという。佐伯は記憶にある道をたどり……。
     不思議な経験の顛末。その場限りで良いのだろうか。
  203. 「図々しい死体」
    ( 月刊小説 1977.01. )
  204. 「多すぎる罠」
    ( 週刊パーゴルフ 1977.01.11〜02.01 )
    『趣味の犯罪華麗な殺し』 トクマノベルズ 1985.04.30 (国DC※)
     中尾欽也と吉崎幸夫は西川秀司の従妹杉浦圭子を争いゴルフで決闘をする事になった。ばれなければインチキも欺し合いも勝手というルールで。中尾、吉崎、西川、武井良昭でまわる。クラブやボール、キャディに……。
     ゴルフのルールを利用したイカサマ手法あれこれは面白くはあるが意表をつくようなものはないような。
  205. 「凍てつく影」 (「凍てついた影」)
    ( 週刊文春 1977.01.20 )
    『趣味の犯罪華麗な殺し』 トクマノベルズ 1985.04.30 (国DC※)
     競馬専門紙記者立花徹也はペーパー馬主としても馬券でも成績がよくなかった。彼は未勝利戦での八百長を考える。馬主の娘宮内由紀子、騎手藤森祥治。本命は……。
     現代の馬券の種類の豊富さでは通用し難いように思える。
  206. 「ミセス放射能」 [早瀬邦彦]
    ( 問題小説 1977.02. )
    ( 『美女が八人死体が七つ 早瀬邦彦ずっこけ探偵録』 トクマノベルズ 1978.12.10 )
     早瀬邦彦は義兄の岩崎法律事務所に来たキューリー夫人こと木原繁子の話を聞く。夫婦ともに放射能が出ていて合わさると爆発するという夫昭雄。繁子は浮気を疑っていた。岡田、西山康代からの夫の居所を問い合わせる電話。弟耕司、共同経営者の社長浜崎謙治。繁子の電話で後をつけ新宿のホテルへ。耕司と共にホテルの部屋で昭雄の死体を発見。バー・ルナの西山康夫も話で……。
     かなり偶然にたよった犯行で墓穴を掘っただけのような。
  207. 「天分」
    ( カッパまがじん 1977.03. )
    ( 『続・日本傑作推理12選』エラリー・クイーン編 カッパノベルス 1977.09.05 )
    『日本傑作推理12選2』エラリー・クイーン編 光文社文庫(え-02-02) 1986.01.20
     画家伊吹克彦は四年ぶりに東京に帰ると美和子に出会った。彼女は結婚し良彦を連れていた。夫は交通事故で亡くなっていた。彼女は伊吹の子だという。確かに子供の性質は伊吹に似て……。
     サスペンス小説。子供はよくわからないということで。
  208. 「隣りは何を」
    ( 週刊小説 1977.04.15 )
     松浦卓也はアパート隣の石塚恭子と沢本繁夫との盗聴をしていると妻良子を殺す相談をし始めた。繁夫の後をつけその後良子の後をつける。良子は、そして松浦は……。
     どんでん返しを重ねた作品。唐突で無理矢理ではあるが意外性はあるかも。
  209. 「お熱いのはダメ」 [早瀬邦彦]
    ( 問題小説 1977.05. )
    ( 『美女が八人死体が七つ 早瀬邦彦ずっこけ探偵録』 トクマノベルズ 1978.12.10 )
     早瀬邦彦の友人の坂口康夫の結婚披露宴へ行く。相手は雪子だが笹本和則は急な結婚に違和感を抱いていた。初夜、早瀬に坂口から雪子がバスルームから消えたと連絡があった。衣類はそのまま残っていた。坂口の従弟岡野圭治からの電話、間違い電話。坂口の前の相手松浦葉子、雪子の叔父篠原哲郎。メモの数字から八〇七号室柴田俊彦が偽名で怪しい。八〇七号室で全裸の雪子の死体が見つかる。雪子が葉子に言った言葉……。
     不可能状況を作り上げた理由は謎。勘での展開ばかりのような感じもする。似た作品に「龍切手の殺人」がある。
  210. 『白夜の密室 ペテルブルグ1901年』
    ( 野性時代 1977.08. )
    《大幅加筆改稿》
    ( 『白夜の密室 ペテルブルグ1901年』 角川書店 1977.11.30 )(国DC※)
    『白夜の密室 ペテルブルグ1901年』 徳間文庫(か-01-16) 1990.07.15
     一九〇四年日露戦争の旅順港口閉塞作戦で広瀬武夫少佐は戦死、英雄的行為が称えられた。一九〇一年、広瀬は公使館駐在員としてロシアのペテルブルグにいた。新聞記者という肩書で北沢邦彦がロシア海軍の情報を得るために雇われたという。北沢はベルリンで革命活動家イリーナと出会ったが彼女は射殺されていた。広瀬はアリアズナに惹かれていた。アリアズナをめぐり対抗意識をもつミハイロフ大尉。ロシア海軍新造軍艦に関する情報の受け渡しを郊外の革命派セルゲイの家の離れで行うことになった。 向いの料理屋へ着いた広瀬と駐在員加藤大尉とアリアズナ。イリーナの妹のソーニャの案内。現れたミハイロフ。母屋のテラスにセルゲイの妹のヴェーラとレオンチェフ海軍機関部少尉とイリーナ殺害を疑われたデムチンスキー。セルゲイの帰宅と会談の遅れの知らせをを告げる北沢。革命派指導者格のタバコフがセルゲイの絞殺死体の発見。実質監視されていた出入り口、荒らされた部屋、抜け穴の埃で……。
     歴史上の人物を配した国際ロマンスミステリー。密室の謎は既存のバリエーションだが抜け穴や煙突や鍵で謎を高めているのは良い感じ。人物や時代背景的描写(初出は未読だが加筆で比重が増えすぎたのかも)が主眼であろうし良いが諜報活動部分に関しては簡易すぎてやや不満が残る。
  211. 『燃えつきる日々』
    ( 『燃えつきる日々』 講談社 1977.08.12 )(国DC※)
    『燃えつきる日々』 徳間文庫(123-08/か-01-08) 1988.04.15 (国DC※)
     昭和十五年二月、東亜新聞海軍省詰め記者中沢靖彦は叔父で本省勤めの外交官園部博道宅を訪れる。元書生で民政党秘書の佐川修治とは妹輝子と結婚する岩岡の帰国の話などする。園部の娘、ハーフの香代子がニューヨークで出会った三月うさぎこと田村一郎。七月、香代子は傷心のまま帰国。岩岡の帰国、山崎進介の世話をするという。 岩岡を香代子と中沢が訪れると殺されていた。根本少佐の訪問、山崎の憲兵によるアリバイ。鍵、血、燃えカス。輝子の探索。十二月、山崎が殺され藤田が昏睡させられていた。該当時に小道から出てきた人物はいなかった。中沢らは犯人を推理していくが……。
     青春ミステリーとの事だが分別がありすぎ、時代背景もあるが諦観が支配している。事件も小細工する必要性が感じられないし完全に解明されるというわけでもない。執筆当時の作者による戦中の状況批判が主のような作品。
  212. 「野次馬作戦」 [怪盗スーハー]
    ( 小説現代 1977.10. )
    『推理小説代表作選集 1978推理小説年鑑』日本推理作家協会編 講談社 1978.05.24 (国DC※)
    『三つの部屋の九つの謎』 トクマノベルズ 1983.01.31 (国DC※)
    『凶器は狂気 ミステリー傑作選(13)』日本推理作家協会編 講談社文庫(に-06-13) 1983.03.15 (国DC※)
     須藤数馬と橋本葉子は丸高デパートのブルボン王朝展の王冠に目をつける。保管されるのは銀行の地下金庫。新聞社やテレビ局に予告をし、ちょっとした物を盗む。デパートの屋上から王朝展のちらし、その裏には予告文。二人は盗むべく……。
     伏線などもそれなりになあって面白い作品。傑作に近い。賭け要素も怪盗ものならでは。
  213. 「ウマくない本命」 [早瀬邦彦]
    ( 問題小説 1977.11. )
     義兄の法律事務所岩崎秀雄からの依頼で早瀬邦彦は調教師北村真吾の娘恵子い調査を依頼される。天皇賞本命のサダハリオーのカイバ桶に興奮剤が入っていたという。レースに出ない間、レース後でレースそのものには影響はない。厩務員原田健治、吉沢、馬主岡崎、甥で秘書の島野幸司、購入を打診している大森、川崎志郎競馬記者。クラブ梨花で騎手佐竹信男が毒を飲まされ……。
     動機からの推測だが別の動機もありそうな気がする。正式に捜査すれば解明されそう。『ターフの罠』の原型短篇といえそう。
  214. 「堂々めぐり」 (「迷路」)
    ( 週刊小説 1977.11.18 )
    『趣味の犯罪華麗な殺し』 トクマノベルズ 1985.04.30 (国DC※)
     私伊詰孝司(弘治)が目覚めると妻だという恭子がいた。父が死に社長になった山崎だという。会社秘書の佐竹も山崎として対応する。私はマンションから抜け出し保険会社営業所長の友人岡村達也に助けを求める。彼もまた……。
     迷路の島のような終わりのない話。このような作品もアリではあるがあまり好みではない。
  215. 「血と虹と」 [加藤刑事]
    ( 月刊小説 1978.02. )
    『仮面の告発 加藤刑事夢想捜査録』 集英社文庫(138-B) 1982.11.25 (国DC※)
     日記形式。村島芳子といたサロメのイメージに近い伊吹雪子を僕は誘い告白しようとした。小山康夫の話。サロメの七色のヴェールの舞。ミステリィ研究会の杉本卓也の訪問で顧問の滝田助教授は僕の作品をほめていたという。僕の失恋の噂、雪子と岡野助教授の噂。僕は車でホテルに入るのを見かける。雪子に告白するが断られる。やっぱりやろう。と書かれたノートが森口登の下宿で死体と共に見つかった。井関亜紀子も……。
     ノートの内容に関して以外、結末は理解できなかった。密室というわけではないのか。日付の連続性はありえない。
  216. 「青灰色の群像」 (『黎明に吼える』原型中編)
    ( オール読物 1978.04. )
     明治十五年、杉岡良助は会津から東京へ勉学にきて小針重雄に出会い河野広中に紹介される。会津に帰る杉岡は密命を受けて御用結社帝政党に入党。三春の親戚で許嫁のような関係の加代。加代と会っていた安積戦。福島事件。加代の家出、杉岡は再び東京へ……。
     ※のち『黎明に吼える』として長編化。自由党の密偵となる話。
  217. 「寝耳にイヤリング」 [早瀬邦彦]
    ( 問題小説 1978.04. )
    ( 『美女が八人死体が七つ 早瀬邦彦ずっこけ探偵録』 トクマノベルズ 1978.12.10 )
     早瀬邦彦は編集部勤務の従妹啓子を訪れると同業の恋人吉野秀雄と喧嘩の最中だった。真珠のイヤリングの片方だけが送られてきていた。自分の物ではないと否定する啓子。イヤリングは盗まれる。啓子は作家川島宗一郎のところで名前入りのボールペンを忘れた事を思い出し、マンションへ行くと殺されていた。別居中の妻織江、発見者の甥太田稔、訪問したと思われる編集者三谷、前の編集担当者竹村恵子、デザイナー藤井佐和子……。
     あとで思い出してばかりいる。前提も行動も疑問だが筋は通っている。
  218. 「灰色の傾斜」 [加藤刑事]
    ( 小説推理 1978.04. )
    『仮面の告発 加藤刑事夢想捜査録』 集英社文庫(138-B) 1982.11.25 (国DC※)
     数日前にアパートの部屋を借り近所のスナックでバイトを始めた中山弘子が殺された。発見者はマスターの長沢静夫。梨田比佐子で突然新栄商事を退職、身を隠した事が判明。失恋した松野和則、恋人村上芳雄、仲の良かった安原伸子、前の恋人高倉克治。身を隠したのは高倉が殺害された時からだった。残されていたネクタイピン……。
     なぜ急に身を隠そうとしたか。あっさり判明する設定は面白い。それが元でというのも。
  219. 「暗い雨の夜に」
    ( 別冊小説宝石 1978.05. )
    ( 『忍びよる影』 光風社出版 1983.06.25 )(国DC※)
    『忍びよる影』 徳間文庫(123-10/か-01-10) 1987.09.15 (国DC※)
     志村美和子へ手紙が届いた。中身は五ヶ月前の年月日と車のナンバー四桁の数字が書かれていたカードだった。夫敏行の出張中、根本哲也と会った帰りに起こした轢き逃げした日とナンバーに一致する。次の手紙には新聞記事と遺留品とのホテルの広告マッチが。敏行の妹の恭子。社長秘書沼口安雄。金銭要求。行方不明の被害者の恋人黒崎道夫。そして殺人……。
     脅迫部分は良いとしても殺人部分と真相部分は後出しになっている。共犯だけでもその後の見通しは良くないのではなかろうか。
  220. 「分身」
    ( 問題小説 1978.09. )
    『悪夢と恋人たち』 徳間書店 1986.04.30 (国DC※)
     わたしは伊吹啓二と結婚し幸福あった、と伊吹美沙子は西垣和則に文章を見せる。昼間に一度帰ってきた夫、遅くなるといって早く帰って来て電話で出かけた夫。そっくりな別人だろうか。夫で精神科医の啓二。悲劇、そして……。
     思わせぶりな結末の作品。さすがにそれだけでは無謀すぎると思う。
  221. 「真夜中の電話」
    ( 小説推理 1978.09. )
    ( 『忍びよる影』 光風社出版 1983.06.25 )(国DC※)
    『忍びよる影』 徳間文庫(123-10/か-01-10) 1987.09.15 (国DC※)
     女子大の講師須田登は妻澄子と別居中で翻訳をしていると、午前二時にマキコという女性から間違い電話がかかってきた。野崎哲也の紹介で引っ越してくる前の人宛だろうか、前の住人本間弘昭は自殺していた。中沢芳美との浮気。隣の古賀夫人利恵子。二年前の西原真紀子の自殺。助けられるのは先生だけ……。
     電話に関する小トリック。電話番号が建物に付随していた時代があったかどうかは不明。
  222. 「女の計算」
    ( 週刊小説 1978.09.29 )
     社長岡村繁雄は依頼していないのに浦部探偵事務所から妻弘子の素行調査結果を受け取る。彼女は先妻の子良一もなついていて後妻になっていた。岡村は秘書吉沢道子、デザイナー小宮久美子と関係を持っていた。弘子が会っていた野崎栄一郎、山口和彦……。
     誰が依頼したのかという事ではあろうが、期待する効果、計算は良くわからない。
  223. 「落ちる」
    ( 小説現代 1978.10. )
     西岡信治は別れようとしている守衛の娘杉田伸子に待ち伏せされビルの屋上で話をする事になった。赤ちゃんができた、屋上のドアの鍵を投げ捨て突き落とされたように飛び降りるという。何とか丸め込んだが鍵がなく屋上から出られなくなった。ドアは……。
     ショート・ミステリー。用意だけしておいて結果は運次第ということか。
  224. 『黎明に吼える』
    ( 公明新聞 1978.10.01〜1980.03.09 )
    ( 『黎明に吼える』 トクマノベルズ 1981.10.31 )(国DC※)
     明治十五年、杉岡良助は会津から東京へ勉学にきて野崎真治、伊吹格之介の娘早苗、自由党の小針重雄、吉村正作、河野広中らと出会う。早苗の兄直之の死体、田村信夫や藤井三郎らとの策略。爆発火災、吾助の逮捕、早苗の行方不明。会津に帰る杉岡は河野広中の密命を受けて御用結社帝政党に入党する。三春の親戚の藤野敬太郎、信次郎、許嫁のような関係の加代。加代と会っていた安積戦。県令三島、岩下三春警察署長。そして福島事件へ。加代の家出、杉岡は再び東京へ……。
     ※「青灰色の群像」の長編化作品(早苗に関する部分が新規に追加)。自由民権運動、福島事件を軸に密偵と青春をからませた作品。但し主人公は巻き込まれて翻弄されるだけとしか感じられない。
  225. 「泥棒三重奏」 [怪盗スーハー]
    ( オール読物 1978.11. )
    ( 『殺人貸借表 現代ベスト・ミステリー3』日本推理作家協会編 カッパノベルス 1980.11.01 )(国DC※)
    『三つの部屋の九つの謎』 トクマノベルズ 1983.01.31 (国DC※)
    ( 『失踪ストリート 日本ベストミステリー選集(12)』日本推理作家協会編 光文社文庫(に-06-12) 1991.08.20 )
     葉子は高校の同級生の岡村芳美に会い彼女のマンションへ行く。荒された部屋、芳美は以前勤めていた篠原病院長の息子篠原伸夫からの手紙が狙われたという。弟で画家の徹也が交通事故との偽電話で出かけたという。葉子から相談を受けた数馬は……。
     少しだけ捻ったところもあるが簡単に推測できそう。但しそれ以外の可能性も多くありそう。
  226. 「まだ眠らない」
    ( 月刊小説 1978.11. )
    ( 『忍びよる影』 光風社出版 1983.06.25 )(国DC※)
    『忍びよる影』 徳間文庫(123-10/か-01-10) 1987.09.15 (国DC※)
     由起子が杉山和彦と夢のような結婚式をあげて一ヶ月半、自動車が崖から落ちて死んだ。殺されたようでもある。吉野圭治と共同で起こした会社。結婚前、和彦に傷を負わせた男とその後に来た大学時代の友人という西沢秀雄。無くなったという会社の書類。和彦と出会った時に公園にいた女性。泥棒。愛の形見……。
     結末はやや意外性がありおもしろい。隠し場所も確かに見つけにくいかもしれない。
  227. 『曠野燃ゆ』
    ( 丸 1979.01.〜07.,09〜1981.04.(27回) )
     昭和十一年上海。特務工作員牧村邦彦中尉は周仁慶との連絡時に妹玲蓮が来て兄が襲われ家で会いたがっているという。行くと殺されていた。残された謎の言葉。襲われる邦彦と玲蓮。ナイトクラブ・キャンドルのローザ、金持ちの道楽息子陳励生、アメリカ人ウォーレンとサンダース。連れ去られる励生と邦彦、そして玲蓮。脱出、玲蓮の行方不明。ホテル・ドラゴン二一三号室。 反共反日の宗永泰の秘書ナンシー張とウォーレンを介して知り彼女を助ける。玲蓮との関係、脅迫。永泰のまい瑰庭園と別棟、秘密書類、秘書呉宗武。キャンドルでの騒動。そしてナンシーから届いた宗永泰のパーティーの招待状……。
     スパイ冒険ロマン小説。国民党の国共合作賛成派、反対派、共産党派、日米英独、コミンテルンと入り乱れ何でもアリの様相。出だしのみ「あるスパイの恋」と登場人物は似た名前で同じ内容。その後も構想されていたかもしれない。
  228. 「ラヴ・ゲーム」
    ( 問題小説 1979.03. )
    『趣味の犯罪華麗な殺し』 トクマノベルズ 1985.04.30 (国DC※)
     私石野は友人志村富雄から妻和美を誘惑してくれと頼まれる。離婚の手切金を値切るためだという。私と和美はテニス・クラブで再開してから付き合っていた。志村の裏をかくべく川口邦子を抱き込む。志村は脅迫するように再度現場を押さえようと私に芝居を強要する。裏をかくべく……。
     騙し合いの話。二回目は少し無理があるような。
  229. 「失われた夜」
    ( 微笑 1979.03.10 )
     わたし中岡玲子は処女の時だけある予知能力を失くし郷里からの帰りに事故にあい部分的に記憶を失った。赤沢伸彦、白石重夫、青野弘治、誰が相手だったのか……。
     懸賞犯人探し小説5。単純には三択で推測はつくが、想像を交えれば他の可能性もあり断定はできない。
  230. 「夜の感触」
    ( 週刊小説増刊 1979.04.19 )
     玲子は雑誌編集者シュザンヌの従兄フランス貴族ピエールと結婚し館に入る。彼の母、執事アンドレ。明かりを消した夜の行為、開かずの間、双生児の兄弟……。
     サスペンス風作品。違いに対する反応は不明のまま。
  231. 「盗まれたクマ」 [怪盗スーハー]
    ( 小説現代 1979.05. )
    『三つの部屋の九つの謎』 トクマノベルズ 1983.01.31 (国DC※)
     須藤数馬と葉子は探偵事務所を開いた。依頼人津田商事社長津田啓介は社長室から娘の形見の縫いぐるみクマが盗まれたという。専務松崎辰也、秘書吉川道子、今村健夫が帰りに持ち出した形跡はなかった。津田の妻宏子と密会していた男。数馬は社長室に泊まり込み……。
     意図が良くわからない所もあり、他の可能性もありそう。
  232. 「風が吹けば……」 (「風が吹けば」)
    ( 小説推理 1979.06. )
    『悪夢と恋人たち』 徳間書店 1986.04.30 (国DC※)
     僕松村は会社の宮内由紀子とのことを妄想する。妻の栄子が男と歩いている。映画館で忘れ物を得て沼口芳美に届ける。金持ちの伯父の養子になるのに婚約者として会って欲しいという。ホテルで見かけるもう一人の養子候補。意識を失い……。
     妄想と夢と現実が混在する話。
  233. 「三人の女スパイ」
    ( 微笑 1979.06.30 )
     おれジェームズ本田はジュネーブで東側のスパイに通じている女工作員を釣ろうとしていた。机の下、靴の踵にマイクロフィルムを隠す。ジョゼット・フェリス、キャサリン・ハワード、エイコ・ムラオカ、盗んだのは……。
     懸賞犯人探し小説12。正直くだらなさすぎる。餌としてもお粗末。
  234. 「情熱」
    ( オール読物 1979.07. )
    『悪夢と恋人たち』 徳間書店 1986.04.30 (国DC※)
     私島村信彦は転任してきた東北の街で関根珠子を見かけた。学生時代パリで出会い同棲、日本でも。嫉妬で殺そうとした時事故で入院。その後、そして法廷で……。
     因縁話。情熱があるのだかないのだか。
  235. 「砂塵と黒点」 [殿村義彦]
    ( 問題小説 1979.07. )
    ( 『謀略の大地』 徳間書店 1980.11.30 )(国DC※)
    『謀略の大地』 徳間文庫(123-09/か-01-09) 1987.02.15 (国DC※)
     昭和十年、憲兵将校の陸軍大尉殿村の出迎えを幼年学校からの同期の新聞記者伊関和雄は奉天で受ける。殿村は奉天特務機関長土肥原少将の命令で熱河省承徳へ行方不明の楊尚全を探す命令を受ける。同行は通訳の西口弘則と吉岡貞男憲兵伍長。愛人徐麗華の聴取、そして殺された。烏城子を示す紙片。楊の運転手の死体。烏城子の馬賊のもとへ乗り込んだ殿村一行は……。
     謀略の謎と意外な結末はあるが、歴史背景と冒険小説的色彩が強い。
  236. 「執念の色彩」
    ( 週刊小説 1979.08.03 )
     恭子にかつての恋人松村徹也との写真が送られてきた。彼は少々おかしくなって二年半前に自殺したと思われていた。写真は二人の友人田浦克司がとったもので恭子は相談する。男と親しくなると離れていくこともあり恭子は克司と付き合うようになる。向かいのマンション、尾行される二人、松村の妹伸子……。
     サスペンス小説。簡単に想像はできるが解決はされない。
  237. 「四番打者が消えた!」
    ( 別冊小説宝石 1979.09. )
     夏の甲子園、準々決勝で勝った東北の北稜高校。監督牧村哲夫、部長石原吉則、マネージャー高島和雄、サード四番打者武田伸宏、新聞部員山内良彦。勝因は武田に負うところが大きい。準決勝の朝、武田は転校して離れ離れになった恋人堀由紀子と出かけたらしく戻ってこない。山内は従妹麻美と探す。由紀子の兄。出生の秘密、叔父矢沢卓治の家、父と別れた母弘子、殺人死体、監禁……。
     タイミリミットに対するサスペンス。視点により青春冒険小説風でもある。謎と殺人事件はほぼ想像のみ。
  238. 「噛みつく扉」 [怪盗スーハー]
    ( 小説現代 1979.10. )
    ( 『推理小説代表作選集 1980推理小説年鑑』日本推理作家協会編 講談社 1980.05.30 )(国DC※)
    『三つの部屋の九つの謎』 トクマノベルズ 1983.01.31 (国DC※)
    『殺しのパフォーマンス ミステリー傑作選(15)』日本推理作家協会編 講談社文庫(に-06-15) 1985.03.15 (国DC※)
     須藤数馬は腕に怪我をした女性を助ける。ピラニアに咬まれたらしい森川美和子は戸田繁男のマンションからワニとピラニアの水槽を盗んで欲しいと依頼する。数馬と葉子はその依頼を引受け……。
     他の水槽など気になる点も残る。あり得ることではあるが偶然を肯定しているところも気になる。
  239. 「雪と鮮血」 [殿村義彦]
    ( 問題小説 1979.10. )
    ( 『謀略の大地』 徳間書店 1980.11.30 )(国DC※)
    『謀略の大地』 徳間文庫(123-09/か-01-09) 1987.02.15 (国DC※)
     昭和十一年、東京に戻った憲兵将校殿村は西田税に会う。かつて愛した文子の弟谷井克治を尾行すると大佐と会ったようだ。二・二六事件、西田の逮捕。谷井の心中死体……。
     ミステリー的要素はほとんどない。二・二六事件の筆者的時代解釈が主か。
  240. 「満点以上」
    ( オール読物 1979.11. )
    『悪夢と恋人たち』 徳間書店 1986.04.30 (国DC※)
     青年実業家石岡は友人中田の紹介で知った女優千倉明子と再婚した。初婚の宏美はおとなしいだけの女だった。明子は気持ちを読み取る利口な女だったがわざと知らん顔をしているというので離婚に。明子従妹で付人の平井道子と結婚。満点以上なのだが……。
     男の我儘と男女の騙し合いのような話。
  241. 『二十の二倍』
    ( 小説推理 1979.11.〜1980.03. )
    ( 『二十の二倍』 フタバノベルス 1981.03.25 )
    『二十の二倍』 徳間文庫(123-07/か-01-07) 1986.03.15 (国DC※)
     吉沢安芸雄は1939年生まれの四十歳で妻子がある。学生時代の仲間で脚本家の藤井、連れだという石崎恭子と会う。彼女から相談したいと言われて学生時代のこと、藤井を脅迫しているらしい大塚のことを話す。安保闘争のデモ、リーダー格の大塚、河田、岡村、島野、吉沢、遠山由美、松浦宏子、別グループの望月、不参加の藤井。由美が負傷し、その後殺害された。 恋人だった大塚の精神異常と失踪。事件は迷宮入りになっていた。吉沢と恭子が藤井のマンションへ行くと毒死していた。日常からの脱却もあり探偵をすることになった吉沢は弁護士望月の墜死の発見者にもなる。大塚と名乗る男からの脅迫電話、毒入り菓子、二十年前の事件の真相と現在の事件は……。
     学生運動に参加した中年の日常からの一時脱却の探偵譚。冒頭で中年の自殺の増加の記事があるのが意味深。ホームビデオデッキが普及し始めた頃だと思うが、オープンリールをカセットテープに写し換えられるというのが特定製品なのかやや謎。
  242. 「上海曼陀羅」 [殿村義彦]
    ( 問題小説 1980.01. )
    ( 『謀略の大地』 徳間書店 1980.11.30 )(国DC※)
    『謀略の大地』 徳間文庫(123-09/か-01-09) 1987.02.15 (国DC※)
     昭和十二年春、憲兵将校殿村は上海に派遣された。塚田大尉と接触、共産党から寝返った金祥三を使い、標的は蒋介石に近く反共の呉昌生。助手は陳玲英。呉を伯父にもつ親日派として知られる郭永銘に接触しする。金に命じた共産党員の死体、手引きで侵入したパーティーで殿村は……。
     国民党、共産党、日本、と二重スパイや裏切りを含め誰がどのグループなのか、というのがメインか。
  243. 「おんなと風と」
    ( 小説club 1980.01. )(国DC※)
     東洋スポーツ競馬記者岡田宗昭はツキが落ちていた。倉内マユミと一夜を過ごし有馬記念で手堅いイカズチオーに不安があると彼女は漏らす。馬主の息子西崎達雄、夕刊ニホン阪本卓也、騎手篠崎、浦川調教師。有馬記念の結果、そして……。
     競馬風俗小説。
  244. 「引伸した真実」 [関口則子]
    ( オール読物 1980.02. )
    『三つの部屋の九つの謎』 トクマノベルズ 1983.01.31 (国DC※)
     カメラマン関口則子は恋人の鑑識技官の岡崎克彦に神社とマンションとが写った写真を見せる。そのマンションで女性が殺されていた。盗まれた写真に写っていた日常的な風景……。
     墓穴を掘っているところは別にして、手懸りは面白い着想かも。
  245. 『積木の壁』
    ( 週刊小説 1980.02.22〜06.27 )
    ( 『積木の壁』 ジョイノベルス 1981.01.25 )(国DC※)
    『積木の壁』 徳間文庫(123-06/か-01-06) 1985.05.15 (国DC※)
     岩岡圭介は丸高商事が東栄物産に吸収合併された時に独立して企業コンサルタントを開業していた。残留組には北沢常務と山崎徹也と笹本紀子、整理組には倉田専務と阪井秀雄。合併の裏には政界にコネのある村越隆が関係していたらしい。岩岡は恋人のような関係の紀子から不良外人ポール・ブライアンを示唆される。 岩岡は紀子がアパートで殺されていたのを発見、スペードのクイーンとマッチ箱に入った鍵を見つける。発見したすぐ後に来た丸高商事の須川邦彦。紀子の妹の明子から預かる紀子の手帳。助手の沼口道子。篠原警部補。アラディンの梨枝。元同僚の大橋綾子。梨枝の死。行方不明のポールと関係のあるタッカー。合併劇の裏を探っていくうちに……。
     意外な犯人ではあるが推理味は薄く、文系サラリーマンのあこがれでもあったような企業から独立したアウトロー的な男を描いた冒険小説に近い。
  246. 「硝煙の夏」 [殿村義彦]
    ( 問題小説 1980.05. )
    ( 『謀略の大地』 徳間書店 1980.11.30 )(国DC※)
    『謀略の大地』 徳間文庫(123-09/か-01-09) 1987.02.15 (国DC※)
     昭和十二年夏、北平(北京)特務機関長松井から藤田秀夫の調査を命じられた。歴史研究会の活動目的がはっきりしない。藤田から情婦沢井恭子こと楊雲裳へ、そして趙願堅へ渡った赤い表紙の本。郊外の道場を案内される。趙の襲撃、殿村は道場へ侵入し……。
     調査対象の男はどの陣営で活動目的は、というような話。陰謀、冒険小説に近い。
  247. 「執念」
    ( オール読物 1980.07. )
    『悪夢と恋人たち』 徳間書店 1986.04.30 (国DC※)
     作家貝浦進介のところへ親友盛田の紹介で藤村裕子が訪ねてきた。推理小説の原稿を預かり読むが解決部はなかった。貝浦は大学の時に付き合っていた中川久子の作品を盗用していた。悠子は貝浦を案内して……。
     奇妙な話というべきだろうか、意図がよくわからない。また動機は何とでもなりそうだが。
  248. 「屍臭の街」 (「廃墟の街」)[殿村義彦]
    ( 問題小説 1980.07. )
    ( 『謀略の大地』 徳間書店 1980.11.30 )(国DC※)
    『謀略の大地』 徳間文庫(123-09/か-01-09) 1987.02.15 (国DC※)
     昭和十三年、南京で秩序維持の任務にあたっていた。飯塚上等兵が至近距離から拳銃で殺害されていた。中隊長倉本勇治との面談。歩哨も同じように殺害された。参謀山内繁男との面談。長沢芳雄少尉も同様に殺害された。姑娘呉雪娥。状態から殿村は……。
     このシリーズで一番ミステリー的要素が強い。背景となる南京大虐殺も投降捕虜などの郊外での虐殺は遺憾ながら事実のようだが、市街地での無差別な虐殺の真偽は不明。皆無とはいえないので誇張されすぎの感はある。
  249. 「透明な仮面」
    ( 小説推理 1980.08. )
    『罠のなかの八人』 集英社文庫(138-D) 1984.04.25 (国DC※)
     私森内志郎はマンモス団地の中をカメラを手に歩いていた。遊園地のそばのベンチの女性に声をかける。彼女北崎佐和子の部屋で終わった時に男が入ってきて争い、男は血を流して倒れる。死体の処理。脅迫……。
     意外な展開と結末ではある作品。一部を伏せた叙述トリックともいえる。
  250. 「むし暑いゲーム」
    ( 別冊小説宝石 1980.09. )
     西原和子の家に集まった浦部伸夫と妻美奈子と従兄志村悦郎。怪談の代わりに森田良彦を芝居で怖がらせようと計画する。美奈子は結婚前に森田と付き合ったことがあり浦部はライバル視していた。和子も付き合ったことがあった。芝居では和子が森田を連れて、浴室で死体が発見され覆面の男に和子と森田が閉じ込められるというものだったが……。
     どんでん返しのみの作品。女心もそれぞれで良くわからないという事だろうか。
  251. 「白い壁赤い影」 [殿村義彦]
    ( 問題小説 1980.09. )
    ( 『謀略の大地』 徳間書店 1980.11.30 )(国DC※)
    『謀略の大地』 徳間文庫(123-09/か-01-09) 1987.02.15 (国DC※)
     昭和十四年、殿部村は哈爾浜に転任していた。満州国警保険局分室の溝口武とソ連のスパイ網の摘発が任務だった。ソ連内に諜報網を組織し日本側に協力していたウラノフが殺されていた。娘のソフィア、暗黒街の若い親玉オリョール、羽振りの良い岡崎中尉。二人は岡崎の後をつけ、女を追って暗黒街でもある大観園へ。葬儀屋店主の銃殺。そして呼びfだしの手紙……。
     馬賊は出てこないがソ連側と逃れているロシア人とが関係する。ロマンス小説に近い。戦中など類似の話は他にもあり、第三者的描写なので独自色も薄い。
  252. 「離ればなれの殺人」
    ( 小説現代 1980.11. )
     藤井由紀子の日記から、B美術館で倉敷で会った山根俊彦と再会、捜査一課警部補だった。社長弟重岡信二からのプロポーズ。妻玲子のいる社長敬一との関係。同僚島本、日画会の森川克也。社長宅で敬一の死体と切り裂かれた絵を見つける。信二はフランス。警察小説風の展開、担当の北村茂雄警部の話。帝国ホテルでの殺人、貧弱なスーツケースの中味、死体は柏木荘の画家安原義則。離ればなれの展開。パズラー風の解決……。
     二つの事件が交錯する作品。一点の手懸りも現代では通用しないような。
  253. 「そして冷たい北風が」
    ( 週刊小説 1988.11.28 )
    ( 『推理小説代表作選集 1981推理小説年鑑』日本推理作家協会編 講談社 1981.06.25 )(国DC※)
    ( 『故意・悪意・殺意』日本推理作家協会編 講談社文庫(に-06-16) 1986.04.15 )(国DC※)
     私立探偵になった私佐伯道雄に松本署から電話が入る。元捜査一課の同僚、現社長の磯部志郎がホテルで死んだということでかつて愛した一年の命の彼の妻良子彼の娘礼子と松本へ。恋人岡崎信也の見送り。佐伯の名で泊っていた磯部。専務内山義夫、秘書島本繁昭、元秘書倉田美代子。旅行案内書、地図、テープレコーダー……。
     調査していくと、という話で初老の哀切さが感じられる。
  254. 「幸運な男」
    ( オール読物 1980.12. )
    ( 『生首コンテスト 現代ミステリー傑作選(上)』日本推理作家協会編 カッパノベルス 1984.01.15 )
    『喰いちがった結末』 光文社文庫(か-18-01) 1988.02.20
    ( 『戦慄のプログラム 日本ベストミステリー選集(13)』日本推理作家協会編 光文社文庫(に-06-13) 1992.02.20 )
     久保敬司は面倒臭いことが嫌い、だが幸運な男だった。妻直子が留守の時にガス中毒にならずにすんだり、酒瓶の毒を飲まずにすんだり。今度は部下の木下安恵と飲み、直子が浮気しているという。近所で飲み直して帰る時……。
     偶然であっても幸運な男という事で気にならなくなってしまう。皮肉な結末も良い感じ。
  255. 「夜はまどいの時」
    ( 週刊小説増刊 1981.02.05 )
     私園田悠子は妻子ある津村俊也と関係したが別れ平井和彦と関係しプロポーズされる。学生時代の松浦明雄と再会し関係をもちプロポーズされる。どちらを選ぶか、その時……。
     艶話。官能小説風でもあるがそこまであからさまでない。
  256. 「一人ぼっちの夜」
    ( 小説推理 1981.04. )
     岡野宏子は恋人ができた中川友雄と別れて一人アパートに住んでいた。送られてきた破れた写真、無言電話。前の住人吉沢邦代は恋人松浦繁夫が使い込みをして自殺、郷里に帰っていった。宏子は中川を疑い連絡をとる。隣の西島久子は宏子を邦代と間違えているのでないかという。宏子は……。
     推測でしかない。別の協力者がいるかどうかは不明。
  257. 「そそっかしい女」
    ( 小説推理 1981.07. )
     私の若い妻はそそっかしくてミスをよくする。マスタードを酢にといたものを飲んだり、ガスの元栓を閉めて開けたり……。
     ショートショート。オチは唐突だが意外性はあるかも。
  258. 「窓からの刺激」
    ( 週刊小説 1981.08.14 )
     野田宏二は急死した兄清一のマンションに移ってきた。状袋に入っていた女の写真。女は向かいのマンションの藤村美奈子だった。覗きをやめられなくなった宏二は……。
     艶話。少し異常性があるだけ。
  259. 「暑くて冷たい夜」 [関口則子]
    ( 別冊小説宝石 1981.09. )
    『三つの部屋の九つの謎』 トクマノベルズ 1983.01.31 (国DC※)
     フリーカメラマン関口則子に仕事を廻してまらっているグラフィック・デザイナーの安原昭一、出版社編集者の弟信二、昭一のオフィスの木原江美子、アシスタント山根哲雄。信二からの伝言で昭一のマンションに電話をかけるが留守番電話だった。返電はうめき声で切れた。再び留守番電話。信二と駆けつけると昭一は殴殺されていた……。
     当時としては比較的新しい機械や機能だったかもしれない。今では当たり前すぎるが。
  260. 「夢という糧」
    ( 出会い 1981.10. )
     道子は同じ会社の吉岡が近所のアパートに越して来て以来気になっていた。いつも帰宅して自室に閉じこもっている吉岡。道子の父は発明狂で母に苦労をかけていた。吉岡は……。
     ショートショート。よくわかる事ではあるが、希望的に過ぎる。
  261. 「星のある男」 [次郎長、五郎]
    ( 週刊小説 1981.10.09 )
    ( 『次郎長開化事件簿』 実業之日本社 1985.01.30 )(国DC※)
    『次郎長開化事件簿』 徳間文庫(123-13/か-01-13) 1989.03.15
    『伯林―一八八八年/次郎長開化事件簿』 講談社文庫大衆文学館(か-05-01) 1997.10.20
     清水の次郎長が明治天皇行脚に同行する山岡鉄舟と会うために静岡に来た。物々しい警備の中、山田屋に泊ると、切られて瀕死の亀吉が夜空の一角を差し賽を投げて死んだ。その場を見ていた天田五郎。大政は安藤一家に聞き最後に会っていたのは鬼頭長兵衛という……。
     ダイイングメッセージだが強引。その後も強引だが杞憂であればそれで良いことでもあり、たまたま合っていたというところか。舞台が明治初期というのは味わい深い。
  262. 「つかめない尻尾」
    ( 小説宝石 1982.02. )
    『喰いちがった結末』 光文社文庫(か-18-01) 1988.02.20
     牧村義雄は帝国ホテルで従弟西岡俊郎と会う前に妻美奈子らしい女を見かけた。秘書桑野啓二らしい男も見かけている。一週間後、秘書内山光子は弁護士小島秀一と会った時に美奈子と似た人を見かけたという。義雄は私立探偵に調査を依頼したが……。
     意表をつかれる繋がりではある。かなり危険な作為だが殺人などではないので成功しなくとも問題ないというところか。
  263. 「汚点」
    ( 小説新潮 1982.03. )
    『悪夢と恋人たち』 徳間書店 1986.04.30 (国DC※)
    『人殺しは飽きてしまった 現代ミステリー傑作選』中島河太郎編、権田萬治編 角川文庫(緑410-14/な-07-02) 1989.02.10
     銀行員の木塚典子は転勤してきた笹井昭彦が気になっていた。心を閉ざしつきあいも悪い。支店長大沢鎮雄、同僚山口政夫。金曜夜の笹井の泥酔とワイシャツの汚点。月曜日朝の様子。昼前に他行員小谷良恵が殺されているのが発見された。横領を指示した男がいたらしい。刑事の典子の父の話を聞いて典子は……。
     犯罪に関する疑惑を調べる話。偶然も多く真相は最後に語られる。題名は巧い。
  264. 「川岸の女」 [次郎長、五郎]
    ( 週刊小説 1982.03.12 )
    ( 『次郎長開化事件簿』 実業之日本社 1985.01.30 )(国DC※)
    『次郎長開化事件簿』 徳間文庫(123-13/か-01-13) 1989.03.15
    『伯林―一八八八年/次郎長開化事件簿』 講談社文庫大衆文学館(か-05-01) 1997.10.20
     母と妹を捜して次郎長のもとに寄宿することになった天田五郎。大黒屋庄兵衛が寮に住まわせていたお豊と少し気のふれたお袖がいると増川の仙右衛門。言い寄る佐吉。実の母娘ではないらしい。官吏根本進吾。襲われるお袖、お豊の死体を見つけた五郎だが知らせに行き戻ると無くなっていた。大黒屋の寮の火事跡から出てきたお豊の死体、溺死していたお袖。五郎は……。
     一見理詰めのようだが条件に合う容疑者は多数いるはず。
  265. 「古疵」
    ( オール読物 1982.05. )
     僕は二年前に別れた玲子から相談を受けた。二人の情事の写真が送られ脅迫電話がかかってきたという。二人とも誰にも入手する機会がなかっとは断言できない。電話を待機する二人。金の受け渡し場所に来なかった脅迫者。金額のつり上げ……。
     推測でしかないが後に明らかになりそう。
  266. 「横文字破り」 [次郎長、五郎]
    ( 週刊小説 1982.05.07 )
    ( 『次郎長開化事件簿』 実業之日本社 1985.01.30 )(国DC※)
    『次郎長開化事件簿』 徳間文庫(123-13/か-01-13) 1989.03.15
    『伯林―一八八八年/次郎長開化事件簿』 講談社文庫大衆文学館(か-05-01) 1997.10.20
     医者山田昌斉の書生秀太郎が書物を受け取りに波止場へ来て、帰りに殺された。書物の切れ端にFHの文字が。秀太郎は刀鍛冶安之助の娘お糸と相愛だったが福田屋平七が借金の肩に妾にしようとしていた。安に弟子入りしていたが追い出された友蔵。安之助の自害。五郎と次郎長は……。
     ダイイングメッセージを扱った作品。メッセージ自体は面白い。ただ特定は勘でしかない。
  267. 「かたい絆」
    ( 問題小説 1982.06. )
     吉沢玲子は浦部邦夫と密会を重ねていた。浦部の兄の家を利用しようと行くと出張のはずの夫徹也が殴殺されていた。浦部が死体を吉沢の家に運び玲子は従姉北村芳美を訪れ一緒に死体を発見することにした。会社の松井和彦の話、徹也から依頼されていたという女探偵の話。玲子は……。
     今ひとつ動機がはっきりしない。絆というためなのだろうか。足取り捜査で解決しそう。
  268. 「通り雨の死」 [次郎長、五郎]
    ( 週刊小説 1982.07.30 )
    ( 『次郎長開化事件簿』 実業之日本社 1985.01.30 )(国DC※)
    『次郎長開化事件簿』 徳間文庫(123-13/か-01-13) 1989.03.15
     お糸が世話になっていた常磐津の師匠文字春が蚊帳の中で殺されていた。雷雨が止み家に戻ったお市が見つけ知らせて戻ると遠州屋の隠居が。伊勢屋の若旦那、侍くずれの岡村勇次郎。後家おちかを遠州屋の隠居や雨宿り中だった小僧が見かけていた。次郎長と五郎は……。
     時間に関する作品。小僧の時間の描写は時代的におもしろい。作為の意図は全く意味不明。
  269. 『咸臨丸風雲録』
    ( 小説現代 1982.07.〜1983.01. )
    ( 『咸臨丸風雲録』 講談社ノベルス 1983.03.05 )(国DC※)
     一八五九年、渡航準備中の勝麟太郎、福沢諭吉、ジョン万次郎。水夫久次郎が殺されWhの紙片があった。咸臨丸出帆前夜に殴られた水夫。航海途上の幽霊騒ぎ。食料と水の減少。再び幽霊騒ぎ。消えた男。福沢諭吉の推理……。
     咸臨丸の航海に謎をからませた作品。謎自体は複雑ではないが当時の状況と雰囲気が感じられる。
  270. 「蒼白い誘惑」
    ( 小説宝石 1982.08. )
    『罠のなかの八人』 集英社文庫(138-D) 1984.04.25 (国DC※)
     英文学助教授の塚本弘昭はかつての教え子で人妻の笹井澄子と付き合っていた。荒川河川敷ゴルフ場での情事を写真にとられ脅迫状を受け取る。呼び出されたゴルフ場で近所で父の仏文教授塚本義雄のかつての教え子で人妻の小島由美子が殺されていた。刑事の来訪……。
     冒頭部の似ているというのがどのように展開し結末をつけるかというような話。推理味も意外性もほとんどない。
  271. 「夏の終わり」
    ( 小説推理 1982.09. )
    ( 『事件は場所を選ばない』 光風社ノベルス 1984.06.15 )(国DC※)
    『事件は場所を選ばない』 徳間文庫(123-14/か-01-14) 1989.07.15
     私篠原和彦はゴルフ場で従兄の沢田徹也に志村夫妻を紹介されたところ以前家庭教師をした北崎由起子だった。河口湖の別荘地、週末に志村道夫は来れないという。徹也と友人杉山信治がゴルフをしに来るという。別荘地で見つかった道夫の死体……。
     アリバイに関する作品。明確な結末ではなく可能性の高い推測。
  272. 「光と影の街」 [次郎長]
    ( 週刊小説 1982.10.22 )
    ( 『次郎長開化事件簿』 実業之日本社 1985.01.30 )(国DC※)
    『次郎長開化事件簿』 徳間文庫(123-13/か-01-13) 1989.03.15
     横浜に来た次郎長は以前世話になったという矢崎信治と連れの吉沢直助という若者に東京の案内をされることになった。二人は次郎長らと同じ宿をとり、吉沢は酔って暴れポリスに連行された。吉沢は仲間に知らせるといって出ていくが殺された。次郎長は……。
     巻き込まれた事件で天田五郎は登場しない。簡単なトリックを用いているが特にやりすぎ以降の部分は必然性が感じられない。
  273. 「消えた名画 リュパン対まぼろしの怪盗」
    ( BRUTUS 1982.12.15〜1983.01.15 )
     ジム・バーネットの隠された物語を発見した。ミレイユ・ダルザック手記より。伯父のワトーの絵がすり替えられたことでバーネット探偵社を訪問する。隣室でセザンヌを模写していたタロー、外でスケッチしていたサブロー、反対の隣室にいたダルザックと秘書ラザール・トリュフォード。絵を買う為に見に来たスタドラーとですり替えが判明。盗めても持ち出せない……。
     謎は単純だがリュパンと実在の日本人画家と思われる人物をからませた点は面白い。
  274. 「迷い獅子」 [次郎長]
    ( 週刊小説 1983.04.22 )
    ( 『次郎長開化事件簿』 実業之日本社 1985.01.30 )(国DC※)
    『次郎長開化事件簿』 徳間文庫(123-13/か-01-13) 1989.03.15
     次郎長は奇術の松風斎東天一座の様子見の帰りに新門辰の身内富蔵に会う。五郎の帰還。西洋奇術の西華の手伝いで舞台に上がった富蔵、終わると舞台の袖に引っ込みその後殺されていた。次郎長と五郎は……。
     一見時間的な不可能犯罪。死体が発見された状況などによるので意図不明。終りも仁義に欠けるように思われる。
  275. 「灰色の叫び」
    ( 別冊小説宝石 1983.05. )
     わたし紀子は宏美からわたしの従兄で宏美の恋人の画家藤井信也の様子がおかしくなったので一緒に会って欲しいと頼まれる。脅迫されているらしく、アデール、メガフォンなどの言葉を口にするという。別れた画家吉沢友彦、パリで関係をもった倉田文雄。信也のマンションへ行くと殺されていた。ダイイング・メッセージと思われるムンクの叫び。信也とパリで一緒だった岡野健治、岩下志郎。わたしは……。
     ダイイング・メッセージもの。クイーンにあやかろうとしたようだが、前提条件自体限定されておらず想像にすぎない。犯人の行動も不可解。思いつきは悪くないのだが。
  276. 「喰いちがった結末」
    ( 小説現代 1983.07. )
    『喰いちがった結末』 光文社文庫(か-18-01) 1988.02.20
     若い女性が心中はかり一人死ぬ、という記事による競作(海渡英祐、佐野洋、岡嶋二人、石沢英太郎、都筑道夫)。真利子は医者で夫の信久から胃潰瘍だと言われる。癌ではないだろうか。死後に看護婦安田邦代が院長夫人になるのは許せない。レズとして邦代と心中しようと計画する。邦代は心中で自分だけ生き残る事を考えている。信久は……。
     皮肉な結果となる話。冒頭で結末がわかっているので展開がある程度予測できてしまうのが少しつらい。
  277. 「大政の幽霊」 [次郎長、五郎]
    ( 週刊小説 1983.10.07 )
    ( 『次郎長開化事件簿』 実業之日本社 1985.01.30 )(国DC※)
    『次郎長開化事件簿』 徳間文庫(123-13/か-01-13) 1989.03.15
    『伯林―一八八八年/次郎長開化事件簿』 講談社文庫大衆文学館(か-05-01) 1997.10.20
     大政の死。天田五郎は次郎長の養子となり富士の裾野の開墾を監督することになった。五郎の補佐役お相撲常は大政の幽霊を見たという噂の話をする見たのは久助と辰造、その後にお松。見つかった崖下の常の死体。次郎長が開墾地に来て……。
     幽霊話の意図は意表をつかれるが、それはリスクが大きい割にあまり成功するとは思えないからでもある。
  278. 「引き裂かれた死」 [裏窓コンビ]
    ( 小説推理 1983.11. )
    ( 『トラブル・ハニムーン』 フタバノベルス 1985.08.10 )(国DC※)
    『トラブル・ハニムーン』 徳間文庫(123-12/か-01-12) 1988.11.15
     阪東重夫は右足首の骨にひびが入りマンションの八階の自宅ベッドで過ごしていた。向かいのマンションの一人暮らしの女性の部屋がのぞける。その女性はフィアンセ岡理沙子(理左子)の友人谷口弘美で部屋に侵入されているので見張って欲しいという。合鍵は蒸発した元彼野崎辰治が持っている可能性があるという。重夫は侵入者を見たが理沙子はマンションから出るのを見かけられなかった。落書きと写真の盗難……。
     ヒッチコック「裏窓」を軸にした作品。謎自体は簡単に推測できるうちの一つだが明かされる動機はやや意外かもしれない。
  279. 「あなたの赤ちゃん」
    ( 小説新潮 1983.12. )
    『悪夢と恋人たち』 徳間書店 1986.04.30 (国DC※)
     伊沢安彦が由美子を連れてマンションへ帰ると入口に赤ん坊を連れた女が待っていた。親友岡村伸夫の悪戯でもないらしい。画家中野達治の個展で似た女藤野圭子と会うが否定する。彼女は……。
     ある意味男女間の賭けのような話。どのような結末にでも出来そう。
  280. 「遥かなる旅(6枚の証拠写真から)」
    ( 婦人公論増刊 1983.12. )
     私が小料理に入り長崎の花月の話をしていると坂本龍馬に詳しい男がいた。私は男を自宅に招くと課題小説の六枚の写真を見て話す。日航機事故で身許不明者がいて、アタッシュ・ケースに龍馬の本、聖書、病院の袋、戦後の新聞コピー、イミテーションの宝石が入っていた。身元不明者は戦後直ぐの頃に男の父の病院の前で殴られて健忘症になった男だったという。その男はその後……。
     グラビア課題小説。出題:三好徹、写真1:終戦後の闇市風景、2:坂本龍馬、3:羽田沖日航機事故、4:注射器・薬包・注射用ゴムバンド、5:バイブル、6:胸のひらいたカクテルドレス・赤い唇・ダイヤのネックレス・指にダイヤ。他の作は「シシター・コンプレックス」伴野朗、「ベル」大沢在昌。
  281. 「パリの災難」 [裏窓コンビ]
    ( 小説推理 1984.02. )
    ( 『トラブル・ハニムーン』 フタバノベルス 1985.08.10 )(国DC※)
    『トラブル・ハニムーン』 徳間文庫(123-12/か-01-12) 1988.11.15
     阪東重夫と理沙子は新婚旅行でパリに来ていた。新婚旅行で来ていた高山道子は夫和彦が電話を受けて外出し戻って来ないという。パスポートを持って来るように電話があり道子は出かけ、重夫と理沙子は見守る。現れた男、相談する男。レストランでの待ち合わせ、和彦の受け取り、弟伸彦のアパートへ行く指示……。
     冒険小説風作品。示談成立後の計画なのだろうか。想像結末にも不自然さは残る。
  282. 「次郎長入獄」 [次郎長]
    ( 週刊小説 1984.02.25 )
    ( 『次郎長開化事件簿』 実業之日本社 1985.01.30 )(国DC※)
    『次郎長開化事件簿』 徳間文庫(123-13/か-01-13) 1989.03.15
    『伯林―一八八八年/次郎長開化事件簿』 講談社文庫大衆文学館(か-05-01) 1997.10.20
     県令が変わり自由民権運動弾圧の影響もあり次郎長が懲役と罰金の処分を受けた。養子になっていた五郎に対する反発も多い。五郎は襲われ……。
     ほとんど推理小説的要素はない。襲った人物に対しても根拠が薄弱すぎる。
  283. 「やきもち実験室」
    ( 別冊小説現代 1984.04. )
    『悪夢と恋人たち』 徳間書店 1986.04.30 (国DC※)
     吉村秀雄は北崎玲子との結婚がのびて倦怠期になっていた。取引先秘書の原田佐和子と天秤にかける。玲子が愛想をつかすように酔ったふりをして玲子に男と親しく歩いていたという作り話をする。従妹の関根邦子と何かあったように見せる。玲子は……。
     男女の結婚に対する気持ちの話。話としてはありがち。
  284. 「取られた鳥」 [裏窓コンビ]
    ( 小説推理 1984.05. )
    ( 『トラブル・ハニムーン』 フタバノベルス 1985.08.10 )(国DC※)
    『トラブル・ハニムーン』 徳間文庫(123-12/か-01-12) 1988.11.15
     阪東重夫と理沙子が開業したトラブル・コンサルタントSRBを開業して最初のお客、西沢昭子は思い出の幸運のペンダントが盗まれ取り戻したいという。誕生会に参加したのは橋本良彦、石倉信也、吉村由美、町田啓子。昭子のところにはペンダントに関する怪電話もかかってきたという。三人に話を聞き、残る石倉は殺されていた。その後ペンダントは……。
     一点の矛盾から想像する話。真相は不明のまま。
  285. 「恥さらしな死」
    ( 小説宝石 1984.06. )
    『喰いちがった結末』 光文社文庫(か-18-01) 1988.02.20
     私と妻滋子に滋子の兄今井達夫が死んだと由紀夫人から電話があった。車でかけつけると由紀は妹明美のところで腹上死、心臓麻痺で死亡したという。自宅で死亡したということに取り繕うように頼まれ……。
     移動させるリスクは大きいと思われるが、醜聞回避の方が優先ということだろうか。少しだけ気になる。
  286. 「蛍とんで」 [次郎長]
    ( 週刊小説 1984.07.27 )
    ( 『次郎長開化事件簿』 実業之日本社 1985.01.30 )(国DC※)
    『次郎長開化事件簿』 徳間文庫(123-13/か-01-13) 1989.03.15
    『伯林―一八八八年/次郎長開化事件簿』 講談社文庫大衆文学館(か-05-01) 1997.10.20
     次郎長の恩人山岡鉄舟の死。鉄舟が購入していた久能寺を再建しようと杉本重三郎が次郎長に面会する。末広のお光、杉本と彦造の喧嘩。雲水から次郎長への久能寺で人が死んでいるから来るようにとの伝言。自害ということになったが……。
     意外な真相ということだろうが根拠が薄弱すぎる。
  287. 「赤い恐怖」 [裏窓コンビ]
    ( 小説推理 1984.08. )
    ( 『トラブル・ハニムーン』 フタバノベルス 1985.08.10 )(国DC※)
    『トラブル・ハニムーン』 徳間文庫(123-12/か-01-12) 1988.11.15
     阪東重夫と理沙子がトラブル・コンサルタントSRBを開業して三ヶ月。依頼人は島崎敏之で先妻宏子と自殺のあった家を購入、離婚し香代子と結婚して住んでいた。血に神経質で血の色も嫌っていた香代子への嫌がらせが敏之の留守中に発生していて力になって欲しいとのことだった。宏子は岡田修司との関係で離婚、今は杉内伸男と付き合っていた。香代子からの連絡で行くと……。
     回りくどすぎる計画。普通に仕向ければ良いだけのように思える。
  288. 「カーテンの影」 [裏窓コンビ]
    ( 小説推理 1984.11. )
    ( 『トラブル・ハニムーン』 フタバノベルス 1985.08.10 )(国DC※)
    『トラブル・ハニムーン』 徳間文庫(123-12/か-01-12) 1988.11.15
     阪東重夫と理沙子のトラブル・コンサルタントSRBに来たのは大学の卒業生安原則子。夫の安原信明が一ヶ月前から突然人が変わったようになったという。三週間前から田島という男と女から電話がかかってきていた。一昨日、東松山の柏木荘6号室へ行くと夫の秘密がわかるとのことで出かけた。窓から夫の姿が見えたが部屋にはいなかった。昨日の電話で夫は誰かと会うらしい。重夫と理沙子は待ち合わせ場所で女性を見かけるが荷物を残し席を外した後戻ってこなかった。柏木荘の調査、則子からの連絡で柏木荘へ行くと……。
     結末は可能性のある想像のみ。そもそもどこまでが嘘でどこまでが真実かの想定範囲違いで解釈は多数ある。
  289. 「多面体のあなた」
    ( 婦人公論増刊 1984.11. )
    ( 『恐怖の変奏曲 最新傑作ミステリー(下)』日本推理作家協会編 カッパノベルス 1986.12.25 )(国DC※)
    『喰いちがった結末』 光文社文庫(か-18-01) 1988.02.20
    ( 『偽装シンドローム 日本ベストミステリー選集(18)』日本推理作家協会編 光文社文庫(に-06-18) 1994.05.20 )
     私立探偵吉沢志郎から恋人の戸塚佳子の身上調査報告を受け取った法律事務所勤務の藤村則昭。心当たりはない。英語教師の岡林、佳子の後輩の事務員杉浦晴美、佳子の同僚の小島道夫、倉内常務、そしてキザでヤクザっぽい男らの関係が……。
     手がかりも結末も想定の範囲だが、特に最後はユーモアを感じさせる終わり方をしているのが良い味をだしている。
  290. 「知らなすぎる女」 [裏窓コンビ]
    ( 小説推理 1985.02. )
    ( 『トラブル・ハニムーン』 フタバノベルス 1985.08.10 )(国DC※)
    『トラブル・ハニムーン』 徳間文庫(123-12/か-01-12) 1988.11.15
     阪東重夫と理沙子は友人の華族の末裔城戸正典からクリスマス・パーティへ招待された。婚約者河村恭子ともに手紙や電話での嫌がらせを受けているという。多少疑えるのは幼馴染の宮寺佳恵と恭子の従兄小島幸雄と元秘書松井美和子。パーティーは宮寺佳恵、山口俊司、中原信子、園田良昭と妻澄子、小島幸雄。家宝のネックレスの披露、松井美和子の訪問と出されていた結婚届、そしてネックレスの消失……。
     想像でしかない結末。婚姻届けはやや突飛で悪くはない。一時的に見つからない隠し場所は山のようにありそう、その時に持ち出すのは困難だとしても。
  291. 「戌辰の華」 [辰五郎]
    ( 問題小説 1985.03. )
    ( 『辰五郎維新事件帖』 徳間書店 1989.06. )
    『新門辰五郎事件帖』 徳間文庫(か-01-17) 1993.09.15
    ( 『新門辰五郎事件帖(上)』 埼玉福祉会 1999.10.20 )
     慶応四年、辰五郎は徳川慶喜に馬印を届け江戸に戻った。覆面をした三人組が押し入ったという文字栄、浪人安井の死体。勝海舟の依頼。三本の横線……。
     幕末の一挿話といった話。推理小説風謎はあっても推理小説的要素はほぼない。
  292. 「南海胡蝶陣(中絶?)」 (「呂宋の夜襲」「鮮血の旗」「鮫と胡蝶」)
    ( 週刊小説 1985.03.08,08.30,1986.05.02 )
     17世紀後半、鎖国などで帰国できない日本人船乗りらがいた。竜神丸の頭胡蝶斎、按針正之助、玄庵らは欧州諸国の船や装備の遅れに対し加代を手引きにルソンのスペイン総督の館を襲う。帰途彼らは英国人ヒューを助け、島に戻ると集落は英国船に占拠されていた。彼らは姫を奪還すべく……。
     冒険活劇小説。「竜神丸伝奇」の大幅変更長編化版を予定していたと思われる。その1では連作の個別作品ともみなせるが、その2と3は上下に相当しているのでまとめて通しタイトルとしています。
  293. 「最後の告白」 [裏窓コンビ]
    ( 小説推理 1985.05. )
    ( 『トラブル・ハニムーン』 フタバノベルス 1985.08.10 )(国DC※)
    『トラブル・ハニムーン』 徳間文庫(123-12/か-01-12) 1988.11.15
     理沙子が留守の時に阪東重夫は高校時代の友人でテレビ局のプロデューサー杉森久夫からトラブル解決の依頼があった。タレント渡辺圭介は医者の娘鈴木悦子と婚約中だが会ったこともない売れていないタレント藤野栄子から子供ができ婚約不履行で訴えると言われているという。重夫は杉森から話を聞いてサロン・バーで圭介も合流する。悦子からの電話、店を出たところでの栄子との問答、芝居としても栄子の意図はわからない。帰宅後、圭介から自宅で栄子が毒死していたという電話があり……。
     あり得るといえばあり得る計画。その後にはなるだろうが鍵や指紋や毒物入手などで通常捜査でも疑問点が出そう。シリーズ最後と事件との関係性は上手い。
  294. 「戦艦「三笠」設計図」
    ( 別冊小説宝石 1985.09. )
    ( 『推理小説代表作選集 1986推理小説年鑑』日本推理作家協会編 講談社 1986.05.26 )(国DC※)
    『日本版ホームズ贋作展覧会(上)』 河出文庫(233-A) 1990.04.04
    『殺人はお好き? ミステリー傑作選(21)』日本推理作家協会編 講談社文庫(に-06-23) 1991.04.15
     私の祖父の遺品の中にワトソンの原稿があった。一八九九年春、ホームズは日本海軍技師の山崎正彦の訪問を受ける。ヴィッカース社に発注した戦艦三笠の設計変更部分の設計図が無くなったという。ニューカッスルから列車でロンドン、財部大尉からのメッセージで下宿へ。甥の森田利男と会い一緒に行く。下宿の娘スーザン、財部大尉来訪、切り裂かれた鞄……。
     ホームズ物のパスティッシュ。他の可能性の排除もされていて単純ではあるが丁寧な作り。佳作。
  295. 「的はずれの脅迫」
    ( 日刊スポーツ 1986.04.01〜15(15回) )
     推理作家小宮和彦が恋人柏木由香といる時に島崎涼子から相談の電話がかかってきた。涼子は友人のイラストレーター関根伸治の紹介で知ったアクセサリー店主だった。葬送行進曲の電話、香奠袋、黒枠の写真、何かがついたシネと彫られた彫刻刀。同居中の従妹育代と藤井哲也、育代の良人原口利男、自殺した岡田の妹佳美。店にいろという電話。涼子に似た育代の死体……。
     懸賞金付き推理小説第3弾。矛盾はわかるが主犯とはならないような。似た作品に「死を告げるメロディ」がある。
  296. 「砕かれたランプ」
    ( 日刊スポーツ 1986.07.01〜15(15回) )
     明治十八年、朝野新聞の記者西塚信介を訪れた従妹伊沢久子。内務省高官の久子の父武則に斬奸状が来ていて会って欲しいという。書生岡の八郎、叔父義之、桜井敏夫医学士。炸裂音、離れから物の砕ける音、消えたランプ。前庭の信介と久子と桜井、裏門にいた女中お光。ポリスが裏門から出て来たと民権派書生村上清吉を捕らえていた。刺殺されていた武則、現場に落ちていた短刀と拳銃。雪江夫人おトヨ婆さん。砕かれたランプ……。
     懸賞金付き推理小説第9弾。明治時代だから成立する一見不可能に見える事件。現代的には単純。
  297. 「紅蓮の女」 [辰五郎]
    ( 問題小説 1986.09. )
    ( 『辰五郎維新事件帖』 徳間書店 1989.06. )
    『新門辰五郎事件帖』 徳間文庫(か-01-17) 1993.09.15
    ( 『新門辰五郎事件帖(上)』 埼玉福祉会 1999.10.20 )
     明治元年、辰五郎は徳川慶喜と共に駿府へ移ってきていた。火事、記憶喪失の娘おふじ。お篠と男の焼死体。医者山崎良斎、目明し庄吉、御用盗一味、父親、そしておふじは、雇われ侍は……。
     偶然により謎が深まる話。どこまで計画されていたのか予定外だったのかはよくわからない。
  298. 「毛向けの芒」 [辰五郎]
    ( 問題小説 1986.12. )
    ( 『辰五郎維新事件帖』 徳間書店 1989.06. )
    『新門辰五郎事件帖』 徳間文庫(か-01-17) 1993.09.15
    ( 『新門辰五郎事件帖(上)』 埼玉福祉会 1999.10.20 )
     駿府の新門辰五郎は慶喜の用心藤本正之進の依頼で慶喜に仕える若侍大庭直介の行方を調べることになった。気のふれたお光。直介と民代との心中に見える死体が見つかった。背には芒がのっていた。二人の父は仲たがいをしていた。勤番組河合義三郎、山岡鉄舟からの書状。小僧の目撃談……。
     芒の謎は明快ではなく、たまたまという事だろうか。
  299. 「廓の狐」 [辰五郎]
    ( 問題小説 1987.05. )
    ( 『辰五郎維新事件帖』 徳間書店 1989.06. )
    『新門辰五郎事件帖』 徳間文庫(か-01-17) 1993.09.15
    ( 『新門辰五郎事件帖(上)』 埼玉福祉会 1999.10.20 )
     駿府の伝馬町遊廓は明治元年から二年足らずの短命だった。辰五郎一家の若い衆の宗助は伝馬町の女狐に会ったという。銭はとらず、目隠しをして連れられ、戻されるという。目明しの庄吉が女狐らしい女と男の死骸が見つかり、宗助の手拭もあったいう。宗助の身柄は伝馬町を縄張りとする徳造に預けられる。女の身元を調べる辰五郎。宗助の話を聞いた辰五郎は……。
     勘と想像、ある意味賭けでの解決。
  300. 「杜若の札」 [有沢敬介]
    ( 小説現代増刊 1987.07. )
    ( 『推理小説代表作選集 1988推理小説年鑑』日本推理作家協会編 講談社 1988.05.25 )(国DC※)
    『あざやかな結末 ミステリー傑作選(23)』日本推理作家協会編 講談社文庫(に-06-27) 1992.10.15
    『俥に乗った幽霊』 光文社文庫(か-18-03) 1992.10.20
    『短歌殺人事件 31音律のラビリンス』齋藤愼爾編 光文社文庫(さ-17-02) 2003.04.20
    『謎(9) スペシャル・ブレンド・ミステリー』日本推理作家協会編、綾辻行人選 講談社文庫(に-06-79) 2014.09.12
     明治二十九年、伯父の東洋日報社主有沢信造の命で洋行して帰国したばかりの有沢敬介。探訪から受取った原稿を軟派主任安原潮風に渡すのを仕事にしていた。潮風は脚色して面白い物語にするのを得意としていた。伊勢屋に特別に誂えさせた花札。友人中条五郎の訪問。探訪徳次郎が発見した死体を記事にし潮風宅へ行くと花札が散乱し潮風は杜若の札を握って殺されていた。不在だった女中お清、うろついていた川村ソメ、探訪谷口佐吉……。
     ダイイングメッセージ。科学黎明期の時代とその時代の雰囲気は良い感じ。
  301. 「神隠し夢隠し」 [辰五郎]
    ( 問題小説 1987.09. )
    ( 『辰五郎維新事件帖』 徳間書店 1989.06. )
    『新門辰五郎事件帖』 徳間文庫(か-01-17) 1993.09.15
    ( 『新門辰五郎事件帖(下)』 埼玉福祉会 1999.10.20 )
     一家の若者新吉が辰五郎に知恵を借りたいという。袋物店井筒屋の勘当になった富太郎と妹お美代の共のお紋。男に念力でいつでも呼び寄せられると言われたお紋。連れ去られたが人違いと言われた。お美代が目的らしい。弟の幸次郎の仲介で井筒屋の警戒をする。お美代の消失。数字が書かれた紙片。辰五郎は……。
     念力と神隠しと暗号と、盛り込みすぎでどうも考えていることが良くわからない。
  302. 「俥に乗った幽霊」 [有沢敬介]
    ( 別冊小説宝石 1987.12. )
    ( 『紫陽花の殺意 ミステリー・ベストセレクション1』日本推理作家協会編 カッパノベルス 1989.06. )
    『俥に乗った幽霊』 光文社文庫(か-18-03) 1992.10.20
    ( 『疑惑のシンフォニー 日本ベストミステリー選集(19)』日本推理作家協会編 光文社文庫(に-06-19) 1994.07.20 )
     明治二十九年、東洋日報の軟派主任となった有沢敬介のもとへ娘が手紙を持ってきた。官吏藤井武則の甥で書生の藤井信三に対する中傷だった。敬介が訪問すると信三は寄席へ行って留守、帰途に見掛けた気絶していた車夫は女の幽霊を乗せたという。神田川に浮んでいた女の死体。帯、首のあと、俥……。
     それなりに手懸りや発想の転換がある。しかし推測や偶然によるところも多い。
  303. 「華やかな孤独」 [須崎]
    ( 小説NON 1988.02. )
     私、東洋スポーツの記者須崎はカメラマン西野和夫と東京イーグルスの投手沢口敏行の自主トレの取材で伊豆の山奥に来た。トレーナー河合修治、日東テレビ評論家の柏木邦雄とカメラマン、ゴシップ記者岩井、球団職員小島吉昭、桜井由美、妻栄子。ジョギングコース途中での沢口の帽子をかぶった河合の死体……。
     やや強引で特定できるわけでもない。迷彩ばかりが目立つ。
  304. 「望郷三番叟」 [辰五郎]
    ( 問題小説 1988.03. )
    ( 『辰五郎維新事件帖』 徳間書店 1989.06. )
    『新門辰五郎事件帖』 徳間文庫(か-01-17) 1993.09.15
    ( 『新門辰五郎事件帖(下)』 埼玉福祉会 1999.10.20 )
    『闇の旋風 問題小説傑作選5捕物帳篇』徳間文庫編集部編 徳間文庫(と-16-05) 2000.01.15
     辰五郎は静岡で芝居小屋玉川座を開いた。お信は江戸から旗本林田敬之助と流れてきて林田は姿を消していた。玉川座へ江戸払いになった市川源三郎の出演に対する脅迫の投げ文があった。源三郎と白蛇のお粂、女房を斬り捨てた溝口宏之進、女の兄の大野雄平。新門一家の警戒の中、吉見屋で殺されているのを源三郎に使いにだされて戻った下男吾助が発見。辰五郎は……。
     某有名海外作品のトリックを流用。芝居の意図が今一つわからない。
  305. 「逆風のランナー」 [須崎]
    ( 小説推理 1988.03. )
     私、東洋スポーツの記者須崎は陸上長距離女子の新星磯村和子の取材で地方県庁所在地に来た。駅伝県チームのコーチ岡崎繁夫、そして和子へのインタビュー。腹違いの兄で中学の教師だった原田進一に鍛えられたが過酷なトレーニングで生徒を死亡させていた。喫茶店からの帰りに和子が誘拐される。同僚杉山芳美、総務の北川徹也、先輩高井志郎、中学同級生岩野敏男。岩野が殺され……。
     想像の真相。実際の捜査では簡単に真偽が判明しそう。
  306. 「立志編異聞」 [辰五郎]
    ( 問題小説 1988.08. )
    ( 『辰五郎維新事件帖』 徳間書店 1989.06. )
    『新門辰五郎事件帖』 徳間文庫(か-01-17) 1993.09.15
    ( 『新門辰五郎事件帖(下)』 埼玉福祉会 1999.10.20 )
     雨の静岡の町外れ、辰五郎一行は頭を殴られたらしい男の死体を発見した。静岡学問所の中村敬宇の弟子小堀尚三郎で、「西国立志篇」の訳の一部が無くなっていた。尚三郎に陥れられた亀井鉄之助、中村の不興をかう原因を作った平岡道太、尚三郎の弟誠四郎、駿府病院の医師成瀬宋伯と娘静江。草稿の発見をを依頼された辰五郎は……。
     意外な犯人といえないこともない。特定には無理がありすぎるが。
  307. 「聞こえない電話」
    ( 小説City 1988.06. )
     西沢美佳は妻栄子と別居している社長岩村昌治と関係していた。栄子が来るという電話でマンションから出るが忘れ物をして電話をするが出ない。友人塚田幸恵からぼ電話、物音とともに切れた岩村からの電話。美佳がマンションへ行くとドアの前で岩村の従弟岡野健雄と上司河合昭彦と会う。岩村の絞殺死体。電話をかけるはずのない栄子……。
     電話を利用した作品。作為が過ぎるような。
  308. 「裏返しの殺人」
    ( 小説NON 1988.11. )
    ( 『推理小説代表作選集 1989推理小説年鑑』日本推理作家協会編 講談社 1989.05.29 )(国DC※)
    ( 『誰がための殺人 ミステリー傑作選(25)』日本推理作家協会編 講談社文庫(に-06-29) 1989.05. )
     北川宏子は岡田繁夫と関係をもっていた。繁夫は妻和代との離婚が成立していた。従姉島村由美が野島信治との不倫が見つかり夫の島村徹也にころされると逃げてきた。繁夫が泊まる時、由美は野島に会い、繁夫は会社の竹沢に呼ばれて出かけ、宏子は徹也に由美の説得を頼まれれる。戻ると毒死していた由美。ジャックダニエル、カクテル……。
     想像にすぎない。真実としてもお粗末。
  309. 「密室の線香」 [有沢敬介]
    ( 小説宝石 1989.01. )
    『俥に乗った幽霊』 光文社文庫(か-18-03) 1992.10.20
     明治三十年、東洋日報の軟派主任有沢敬介は歌舞伎座で活動写真を見、英文学者の関口良雄に森本周平法学博士と令嬢尚子を紹介される。尚子が社に訪れてきて敬介に相談する。玄関に忌中の札が貼られ線香が立てられるという。博士の助手島田俊次郎、学生大野辰治、女中ミネ。書斎からの物音、倒れたランプ、線香、殺害されていた森本博士……。
     密室事件。たまたまなったという事か、意図はよくわからない。
  310. 「告別の舞」 [辰五郎]
    ( 問題小説増刊 1989.01. )
    ( 『辰五郎維新事件帖』 徳間書店 1989.06. )
    『新門辰五郎事件帖』 徳間文庫(か-01-17) 1993.09.15
    ( 『新門辰五郎事件帖(下)』 埼玉福祉会 1999.10.20 )
     東京へ戻った辰五郎は浅草奥山で松本喜三郎作の木製人形展西国三十三所観音霊験記」を開いた。弟子の定吉、塾を開いている杉原青酔、清水寺熊野を見る柳橋藝者染奴、和泉屋の由造、由造を探していた元目明しの子分俊六。矢場女お幾。熊野は染奴に似ていて由造の親は人形でもと俊六を通して打診していた。夜、俊六が熊野像と抱き合うように殺されていた。辰五郎は……。
     ある意味意外な真相。普通に考えれば避けるはず。
  311. 「死の軌跡」 [須崎]
    ( 小説推理 1989.01. )
     私、東洋スポーツの記者須崎はドラフトの有力候補の外野手中村章司と左腕投手野沢泰夫の取材で仙台に来た。ホテルで会ったジャガーズのスカウト石塚伸宏。取材後ジャガーズのスカウト島内哲郎に会う。夜、元同僚岡田宗利の話では昼に島内を山形で見かけたという。隠し玉となる選手が秋田山形新庄にいるのかも。石塚の絞殺死体、山形の実家に帰っていた夫人妙子。駆け引き……。
     不審点があるというだけで明確ではない。ドラフトの裏話としては良いかも。
  312. 「からくり崩し」 [弥平治]
    ( 問題小説 1989.09. )
    『札差弥平治事件帖』 徳間書店 1998.04.30
     御蔵前瓦町の札差大口屋弥平治は後の黙阿弥二代目河竹新七と里野思庵、芸者の小勝と小春とで山谷の料亭八百善へ。若旦那風の男が武士に斬られようとするところを助ける。翌々日、その若旦那風の男が殺されていた。手代の幸三郎を調べに行かせ……。
     意外な犯人といえなくもない。しかし断定できるわけではない。
  313. 「二度目の溺死」 [有沢敬介]
    ( 別冊小説宝石 1989.09. )
    『俥に乗った幽霊』 光文社文庫(か-18-03) 1992.10.20
     明治三十年、東洋日報の軟派主任有沢敬介は、隅田川花火での両国橋転落事故の探訪からの報告のなかで稲葉屋の若旦那常太郎が菊村の座敷を中座し行方不明、翌日夜更けに濡れねずみで帰ってきた話を聞く。転落し、一時記憶がなくなったらしい。主人夫妻は若旦那に水難の相が出ていて水天宮を信仰していた。再び常太郎の失踪、その後……。
     実際の事件を取り入れた話。なぜ、というところが主かも。
  314. 「乱菊の庭」 [有沢敬介]
    ( 小説宝石増刊 1989.12. )
    『俥に乗った幽霊』 光文社文庫(か-18-03) 1992.10.20
     明治三十年、東洋日報の軟派主任有沢敬介は森本尚子と団子坂の菊人形を見る。尚子の友人の大蔵省役人鈴木秀之の娘康江と会う。翌日、鈴木家屋敷の裏庭で裸の男が死んでいたという知らせが入り、康子の知人だと言って訪問、秀之や康子に話を聞く。枯葉や菊の花におおわれた死体。書生里見、女中お豊、康子の婚約者竹内哲也。死体の身元判明、警察の見込み……。
     異常な死体の状況の一解釈。他の可能性も無数にありそう。
  315. 「花の散りぎわ」 [弥平治]
    ( 問題小説 1990.04. )
    『札差弥平治事件帖』 徳間書店 1998.04.30
     札差大口屋弥平治と河竹新七は向島山本屋の桜餅を食べに行く。娘のおとよ。人入れ稼業相模屋八兵衛。帰りにおとよに会う。弟の良吉を探して女の死体を見つけたという。散乱した桜餅、握られた桜の葉。中間宗五郎、侍望月兵馬、幼馴染延造……。
     ダイイング・メッセージ。強引に過ぎる気も。
  316. 「吐き出した餌」 [有沢敬介]
    ( 別冊小説宝石 1990.12. )
    『俥に乗った幽霊』 光文社文庫(か-18-03) 1992.10.20
     明治三十年、東洋日報の軟派主任有沢敬介は森本尚子と浅草公園に行き掏摸に会う。知り合った元目明しの石田重吉。訪問すると山城屋からの相談ごとで出かけるところだった。山城屋の主人庄兵衛が酉の市から帰った夜に三時間ほど姿が消えた。翌日妾宅お藤のところに行った彼は再び姿を消した。盗まれた漬物石……。
     事件自体は大したことはないが動機が意外といえば意外。中途半端すぎる気がする。
  317. 「嵐の遺物」 [有沢敬介]
    ( 小説宝石 1991.03. )
    『俥に乗った幽霊』 光文社文庫(か-18-03) 1992.10.20
     明治三十一年、東洋日報の軟派主任有沢敬介が嵐の夜、社に残っていると桑野ユキが記者見習い吉井辰男を訪ねてきた。引越し途中で行方不明になった彼女の良人と手伝いにきた吉井。敬介とユキが引越し先へ行くと吉井が現れる。途中で喧嘩別れしたという。その後荷物は質屋のところで見つかるが大八車と桑野は見つからない。翌朝桑野は……。
     奇妙な状況の話。今一つ行動が理解できない。
  318. 「絡みあったJ」
    ( 歴史読本増刊 1991.09. )(国DC※)
     昭和十四年拾月、山岸敏夫は参謀本部第二部長樋口季一郎から哈爾浜特務機関へ転出を命じられた。ユダヤ難民の受け入れに奔走したカウフマンを通じ反ソ的ユダヤ人にソ連国内諜報網を組織するJ計画だという。大連特務機関長安江仙弘、ユダヤ人実業家ジェイコブ・ドレクスラー、秘書タニア。実務担当アル・シュワーツ。憲兵大尉森田。書斎でのジェイコブの銃殺死体……。
     創作戦時スパイ小説。計画案としてはあったのかもしれない。
  319. 「潰れた青い実」 [弥平治]
    ( 問題小説 1991.11. )
    『札差弥平治事件帖』 徳間書店 1998.04.30
     札差大口屋弥平治は浅草で履物屋清水屋の娘お栄とはぐれたというお加代と会う。清水屋徳右衛門は来ていないという。踊りの師匠藤間芳奴、弟由松。手代の惣吉とお加代が寮に戻るとお栄は絞殺されていた。お栄の謎の行動……。
     推測の域を出ないと思われるが、結末はつけている。
  320. 「銀座の三度笠」 [有沢敬介]
    ( 小説宝石 1992.03. )
    『俥に乗った幽霊』 光文社文庫(か-18-03) 1992.10.20
     明治三十一年、東洋日報の軟派主任有沢敬介は森本尚子と銀座を歩いていた。三度笠におかめの面をつけたが社の隣の河合商会に入っていった。一時間後、副支配人小坂徹郎と定吉が女が倒れているのを見て医者をよんだが女は消えていたという。女は小坂のなじみの小料理屋の娘お俊としで小坂は社長河合有作の娘との縁談があった。その後、小坂の家で兄夫婦が帰宅するとお俊の死体があったという……。
     奇妙すぎる状況の話。幽霊が普通に信じられていた時代ということかもしれないが。
  321. 『出囃子が死を招く』
    ( 『出囃子が死を招く』 光文社文庫(か-18-02) 1992.08.20
     明治二十三年、黎明新聞の記者奥田信治は浅草凌雲閣を取材、後の宴席では東都日報の石原邦夫のフランス公使勤務の父康之助が崖から転落死したという知らせが入る。翌日通夜で邦夫の妹香代を紹介される。転落死に疑念があるという。康之助の妹のお直、妾のお芳、その弟噺家今々亭小新三。日本橋伊沢屋の娘美恵と邦夫。美恵の父利兵衛は康之助の兄にあたる。 今々亭小新三の噺、伊沢屋の小梅の寮での盗難未遂事件。伊沢家では利兵衛の死後、惣吉の病死、啓作の行方不明で番頭の辰造が采配していた。辰造と会うため銀座の事務所へ行く邦夫と信治。鍵穴から見えた机に刺さった刀。書生島崎とドアを破って入ると辰造の死体が。毒殺のようだった。鍵がかかった部屋での殺人となると……。
     古典名作推理小説を混ぜ合わせてそれらの発表前の明治初期に舞台を設定したような作品。謎が全て解明されるわけでもない。
  322. 「誉れある自殺」 [有沢敬介]
    ( 別冊小説宝石 1992.09. )
     明治三十六年、藤村操が華厳の滝で投身自殺していた。東洋日報の軟派主任有沢敬介は結婚後五年がたって一男一女がいた。尚子に相談しに来ていた磯村澄江の許嫁松原邦彦が靖国神社で服毒自殺した。遺書には対露強硬論が書かれていた。同夜、武勇談小説家黒川嵐岳の義理の娘黒川小夜が服毒自殺していた。有沢敬介は……。
     当時の状況を謎に取り入れた作品。真相解明は勘でしかない。
  323. 「妖刀の誘い」 [弥平治]
    ( 問題小説 1992.11. )
    『札差弥平治事件帖』 徳間書店 1998.04.30
     札差大口屋弥平治は倉田屋伊左衛門から伜の勇次郎が持ってきたという風変りな絵を見る。その後勇次郎は夢遊病のようになり、絵が無くなっていた。翌朝、勇次郎は斬殺されていた。雪に残された血。兄昌太郎、善吉、巳之助、女中お袖。侍……。
     推測でしかないような。謎の侍を登場させたかっただけのようにも思える。
  324. 「消えた女たち」 [有沢敬介]
    ( 別冊小説宝石 1993.05. )
     明治三十六年、路面電車が開通。東洋日報の若手記者中山徹也は向いの席の娘に一目惚れした。隣の女性の昏倒、介抱する娘、娘の風呂敷包みを拾う中山、職人風の男島本勇吉が進藤秀雄医学士のところへ連れていく。書生風の男。野口トクを残し娘はいつの間にかいなくなる。風呂敷包みから娘はノブコだとわかる。有沢敬介は中山から話を聞く。トクは馬車に乗せられ退院、行方を探す内縁の夫桜井伝造。お貞の話……。
     聞き込みをして状況把握が推測できた話。発端は悪くはないのだが。
  325. 「梨園柵模様」 [弥平治]
    ( 問題小説 1993.07. )
    『札差弥平治事件帖』 徳間書店 1998.04.30
     札差大口屋弥平治に川清で河竹新七が相談をもちかける。女将お秀が言うには、店前の杉の枝から一升桝が落ちて手塚屋嘉右衛門が濡れる、材木屋山辰の座席に石が投げられる、八代目団十郎宛の文箱に三匹の青蛙が仕掛けられていたという。女形坂東志うかも話に加わる。父七代目海老蔵と八代目。翌々日、楽屋を出た団十郎が黒子に襲われ……。
     いたずらの真意、ふと考えたことが真相のようで。
  326. 「露探の背景」 [有沢敬介]
    ( 小説宝石 1993.08. )
     明治三十七年、日露戦争、広瀬中佐の死。東洋日報の社会部部長有沢敬介は岡野義夫から佐伯克司が露探との密告投書を受け取る。山崎文雄次長は顔を知っていることから会いに行く。岡野の兄正彦は海軍士官、義夫は西沢商会勤務で西沢貞造の娘妙子と一緒になり後をつぐという話もある。佐伯は以前満洲にいて義夫と交際があり西沢とも顔見知りらしい。社会主義的な島村慎助と妙子。西沢が銃殺され……。
     当時の世相を反映した作品。事件そのものは無理があるような。
  327. 「折られた藁」 [有沢敬介]
    ( 別冊小説宝石 1993.12. )
     明治三十七年、未だ旅順陥落せず。若手記者中山徹也が女教師小谷晴代を有沢敬介に引き合わせに来た。口論していたのは霊や遠くの人の声をよび出す市女の北山ミネは私利私欲か救いとなるか。晴代は婦人記者希望もあってミネの家を見張り出入りした人に話を聞く。人妻、人敗の女性、ポリス、一度立ち去り戻ると人影が。ミネと関係のある木塚庄平が来てミネの死体を発見する。有沢敬介は晴代の話から……。
     事件そのものは一つの可能性のみ。最後の態度は個人的には納得し難い。
  328. 「手拭と号外」 [有沢敬介]
    ( 小説宝石 1994.09. )
     明治三十八年、奉天陥落。東洋日報若手社会部記者小田俊治は遠縁の伊関正道を訪問する。伊関は硬派記者で開戦慎重論、早期講和を主張していて、健康上の理由として黎明新聞を退社していた。小田は陥落の号外に対する談話と娘美奈に会う為だったが留守。二度目は美奈が帰宅していて一緒に伊関の死体を発見。袂にあった手拭、血のついた号外。言い争っていた野木順、村上武則。有沢敬介は話を聞いて……。
     軽いダイイングメッセージとアリバイ。可能性のみ。
  329. 「風の中の孤影」 [弥平治]
    ( 問題小説増刊 1994.12. )
    『札差弥平治事件帖』 徳間書店 1998.04.30
     札差大口屋弥平治と河竹新七は深川洲崎十万坪へ寄って木場の材木商春木屋隠居を訪れる。孫の清之助の文と絵の見きわめを頼む。嫌がらせを受けてもいるらしい。隠居の世話をしているお仙、腹違いの弟安之助、宮大工の娘お悦、お悦につきまとう虎吉、手代長八。清之助が十万坪で死体で見つかり持ち出した広重の絵がなくなっていた……。
     推測の域を出ない。謎の人物を登場させたかっただけのようにも思える。
  330. 『ターフの罠』
    ( 『ターフの罠』 日文ノベルス 1995.07.25 )
     日東スポーツ佐伯俊彦は従妹小宮信子にワンダーボーイ馬主北村慎吾の娘恵子を紹介される。騎手岩岡浩昭の腹痛、北村の秘書飯塚繁夫、情報精通者黒崎敏郎、出走予定のない時期の興奮剤投与。北村の出資しているスナック「由」、ママ由紀、調教助手浅井健三、ホステス谷口弘美、黒崎の関係する専門誌記者安川利男、馬主関本泰久。弘美に呼び出され行くと彼女が毒殺されていた。恵子も呼ばれていた。その後も実害のない事件が続く……。
     「ウマくない本命」の主人公を変更し長編化した作品。殺人の状況とロマンスと競馬の背景は大幅に違うが。
  331. 「〓(イスカ)の嘴」 [弥平治]
    ( 問題小説 1996.09. )
    『札差弥平治事件帖』 徳間書店 1998.04.30
     札差大口屋弥平治は和泉屋吉兵衛から息子善之助の様子がおかしいとの相談を受ける。夜出かけて翌日帰ってきたがその間の記憶がないという。同じような事がもう一度。易者悠斎は前世に因縁のあった女に会うだろうという。二つ黒子のお靜。河竹新七が調べつと兄甚介と仲間の銀蔵の事を知る。三度の外出、三人の死体……。
     単なる想像。安易すぎるように思える。
  332. 「夜明け前の闇」 [弥平治]
    ( 問題小説 1998.03. )
    『札差弥平治事件帖』 徳間書店 1998.04.30
     ペリー来訪。札差大口屋弥平治は武士に金を貸すのも危険だが非常時に無視も出来ないと考える。質屋三島屋の若旦那辰之助に会う。黒船を追い払わなければならないという。浪人の伊沢に従う辰之助。弥平治は河竹新七と芝口橋膳に辰之助と馴染みのお染を呼んで一席設ける。弥平治はその後……。
     時代が変わろうとする頃の話。さすがに当時としては飛躍しすぎの気もする。本作品を最後に執筆を止める計画であったとしたら、心情を吐露した作品といえるかもしれない。
  333. 「変貌の時(中絶?)」
    ( 問題小説 2001.02. )
     (前編のみ)文久元年、各国の公使館や領事館が設置されていた。四月、芝田町九丁目の海岸で撲殺死体が見つかった。目明し伊豆屋左平。被害者弥兵衛の息子二人。
     (前編のみ)時代背景と事件発生のみ。既存シリーズの続編かどうかも不明。



      実話、歴史読物、伝記、歴史考証など

  1. 「赤いヘロイン」
    ( 別冊週刊漫画TIMES 1961.11.16 )
     事件秘話。吉永篤は九竜で紫珠を代理とした組織を裏切った宋仲明と会う。麻薬Gメン坂本秀雄は神戸で密輸王王清波の主要グループ員張亮昭を追い詰めるが赤い数表の本を燃やし自殺される。香港で、新大阪ホテルで、そして……。
     実名は使用していない、日時など曖昧にしているとの注記あり。実事件を元にした創作かもしれない。
  2. 「人間爆弾」
    ( 別冊週刊漫画TIMES 1962.01.04 )
     事件ストーリイ。サンフランシスコからニューヨークに向ったダグラス機が空中爆発した。プエルトリコ人ウイルマーとヒロシ・トミザワが偽名らしかった。榊原弘明は妻真佐子の兄川崎圭治が商社をやめアメリカへ向かうと打ち明けられるが詳細は話せないという。弘明は音信不通の圭治がヒロシ・トミザワらしいと推定されてアメリカへ行って調べると……。
     実事件を元にした創作かもしれない。
  3. 「白い悪魔たち (対決 その世にも奇妙な物語)」
    ( 高一コース 1966.06. )
     一九六四年七月米国、公民権法成立。FBIとKKKとの対決。逮捕しても陪審員裁判で無罪になるなど。
     「事件読物特集 対決 その世にも奇妙な物語」の分担の中の一編。ほかは「狂気の戦場|北沢三郎、「ウィーンに死す」中薗英助
  4. 「二つの邪馬台国―女王国は畿内にある」
    『謎の女王国 古代史への挑戦』推理史話会 新人物往来社 1969.06.01
     証人・魏志倭人伝/弁護側の主調・畿内説/檢事側の反論・九州説/裁判官は思案する/私の判決。伝聞資料を排すと一行は九州の出先機関までしかいかなかった、行けなかった。
  5. 「そして火は燃える(国際事件推理)E・ケネディ同乗女秘書水死事件」
    ( 小説宝石 1969.11. )
     チャパキディック事件。ジョン・F・ケネディの弟エドワード・ケネディ上院議員がチャパキディック島でのパーティーからコペクニと車で抜け出し橋から転落、エドワードは助かるが通報せずコペクニの死体が発見された。残されたハンドバッグと時間の謎と三人が同乗していたということから一つのお話を想像する。
  6. 「革命を呼んだ詐欺師―カリオストロとジャンヌ・ド・ラ・モット」
    ( 野性時代 1977.11. )
    『激流に生きる 歴史のなかの異分子たち』 角川書店 1980.09.10 (国DC※)
     ロアン枢機卿、カリオストロ、ジャンヌ・ド・ラ・モットがからんでのマリー・アントワネット王妃の首飾り事件。
  7. 「一人ぼっちの革命―世紀の二重スパイ、アゼーフ」
    ( 野性時代 1978.02. )
    『激流に生きる 歴史のなかの異分子たち』 角川書店 1980.09.10 (国DC※)
     ロシア革命時代の二重スパイ、イェヴノ・アゼーフ。国外脱出しドイツで学校に入り密偵となる。社会革命同盟、S・R戦闘団。内務大臣プレーヴェ、セルゲイ大公の暗殺。警察庁長官ロブーヒンの辞任。ブルーツェフの告発。
  8. 「黒いナポレオン―ハイチの黒人皇帝、アンリ・クリストフ」
    ( 野性時代 1978.04. )
    『激流に生きる 歴史のなかの異分子たち』 角川書店 1980.09.10 (国DC※)
     ハイチの黒人アンリは自由を買い戻しマリー・ルイーズと結婚。フランス本国でのナポレオン、イギリスやスペイン。黒人指導者のトゥサン。アンリは王位についてラフェリエール城を建てる。
  9. 「王女と娼婦の間―東洋のマタハリ、川島芳子」
    ( 野性時代 1978.07. )
    『激流に生きる 歴史のなかの異分子たち』 角川書店 1980.09.10 (国DC※)
     川島芳子に信州で北沢志郎は出会う。彼女は粛親王家の第十四王女で川島浪速の養女になっていた。山家に失恋。男になりたい。挙兵で戦死したパプユアップ。千九三一年、北沢は上海で彼女と出会う。特務機関田中隆吉。安国軍金司令官となる。戦後。※北沢志郎は創作人物とのこと。
  10. 「陽光と冷雨―利己主義者バイロンの死」
    ( 野性時代 1978.11. )
    『激流に生きる 歴史のなかの異分子たち』 角川書店 1980.09.10 (国DC※)
     詩人バイロン。ギリシア独立運動。キャロライン、アナベラ、オーガスタ、クレアなど。
  11. 「悪夢との闘争―大指揮者フルトヴェングラーの悲劇」
    ( 野性時代 1979.03. )
    『激流に生きる 歴史のなかの異分子たち』 角川書店 1980.09.10 (国DC※)
     フルトベングラーは自己陶酔して指揮をする。ベルリンフィル常任指揮者。ユダヤ人の血をひくブルーノ・ワルターの事件。各種報道。政治に対する無知、己に対する過信。辞任。ゲッペルスの策謀。トスカニーニ。祖国を捨てられない彼。復帰。ナチ同調者とみなされる。芸術と政治。
  12. 「追込みマイ・ウェイ」
    ( 問題小説 1984.02. )
     ミスターシービーで三冠を達成した機種吉永正人と後妻みち子との出会いから結婚、三冠達成までの物語。



      随筆、評論など(自著のあとがき・解説・序文などは除く)(競馬・ゴルフ関係などは除く)

  1. 「三つの肖像(高木彬光の周囲)」
    宝石 1962.02.
     グルマンの肖像。お遊さまの肖像。情熱家の肖像。
  2. 「丸正告発裁判」
    ( ヒッチコックマガジン 1962.02. )
  3. 「(はがき随想・冬の愉しみ・特集)」
    日本探偵作家クラブ会報 1962.02.
     玉突き、ステレオ、馬鹿話。
  4. 「スパイ小説の歴史」
    ( ヒッチコックマガジン 1962.12. )
  5. 「再び、神津恭介を…(座談会)」飛鳥高、大内茂男、海渡英祐
    別冊宝石 1963.07.
  6. 「(無題)(今年やり残したこと(アンケート))」
    ( 日本推理作家協会会報 1963.12. )
  7. 「南部樹未子さんへ」
    別冊宝石 1964.02.
     不在クラブの時。快女子。執念深さ。女流という言葉に誇りを。
  8. 「師弟」
    ( 新婦人 1967.09. )(国DC※)
     乱歩賞受賞決定後高木彬光先生宅へ。だめだが少し勉強する気があればと言われる。先生の二三の愚作を面前でけなしたのが起きに召したらしい。筆名命名は先生。遠慮のない師弟。
  9. 「情熱と執念を(乱歩賞受賞の言葉)」
    ( 日本推理作家協会会報 1967.09. )(推協)
     嬉しいと同時に、これからが問題。情熱と執念を自分のものにし、推理小説に新分野をひらくために努力していきたい。
  10. 「探偵森鴎外の誕生」
    ( 推理界 1967.11. )
     『伯林―一八八八年』は科学捜査の進歩で古い時代を考えた、鴎外、ドイツ。新人の強みでバクチを打った。
  11. 「推理小説の十大問題 探偵」
    推理小説研究 1970.08.
     名探偵の失業。リアリズム、本格推理小説の衰退、トリックからプロット、凡人探偵。驚天動地の新しいトリックは過酷な要求。ユニークな探偵。名探偵の良さを認めながら使いこなせないジレンマ。
  12. 「カーの時代もの」
    推理文学 1970.10.
     カーの時代ものは『夜歩く』から二十年後に増える。冒険時代小説から時代推理小説。現代物に失望を感じたのだろうか。
  13. 「(内外推理長篇小説ベスト10)(アンケート)」
    推理文学 1971.01.
  14. 「D・カー小論」
    推理文学 1971.04.
     ベスト10にカーが一作もなかった。不可能に挑戦したトリック。オカルティズムではなく歴史趣味。など。
  15. 「(海外ミステリ・アンケート集)(アンケート)」
    ( 創元推理コーナー 1971.05. )
  16. 「エラリークィーン論」
    推理文学 1971.10.
     手がかりの作家。トリックは弱い。ものの謎から人間の謎。統一癖。袋小路。論理の大切さ。
  17. 「趣味と推理小説 競馬」
    ( 推理小説研究 1972.09. )
  18. 「熱情の爆発」
    ( 『能面殺人事件・肌色の仮面』高木彬光(月報) 光文社・高木彬光長編推理小説全集5 1972.12.05 )
  19. 「感覚の盲点」
    ( 歴史読本 1983.02. )
     歴史ものの小説を書いていて困るのはこまごまとした疑問が生じたとき。本を探すのも容易ではない。当時の感覚、言葉、味覚、音、雷、重さなど難しい。大化の改新の頃の話は断念。ストーリーは嘘でも背景事実はゆがめてはならない。
  20. 「チェスタートン論」
    推理文学 1973.05.
     真似のし難いチェスタートン。論理の展開、飛躍の面白さ。ドイル流もミステリィに限界。チェスタトンの話術の秘密。情景描写、ユーモア、逆説。
  21. 「解説(『人蟻』)」
    『人蟻』高木彬光 角川文庫(緑338-01) 1973.05.30
     神津恭介引退後の社会派と本格の長所を取り入れた新しいタイプへの記念碑的意味をもつ作品。百谷泉一郎と明子、特別弁護人、与謝野晶子、百谷泉一郎名義作品、など。
  22. 「解説(『成吉思汗の秘密』)」
    『成吉思汗の秘密』高木彬光 角川文庫(緑338-02/た-06-01/た-06-01) 1973.07.10
  23. 「私の顔」
    ( オール読物 1974.01. )
  24. 「快食・快眠・快便」
    ( オール読物 1975.03. )
  25. 「謎と論理 トリックの考察」
    国文学増刊 1975.03.
     推理小説の多様性。謎の提起、論理的思考の展開、意外な解決。トリックを必要としない謎。探偵に仕掛けるトリックと読者に仕掛けるトリック。手がかり中心のミステリイ。論理のトリック。
  26. 「解説(『やぶにらみの時計』)」
    『やぶにらみの時計』都筑道夫 中公文庫(A060) 1975.07.10
     二人称、表現、小道具。独自世界を構築する作家。江戸っ子。論理のアクロバット。その他の諸作品。
  27. 「解説(『仮面法廷』)」
    『仮面法廷』和久峻三 講談社文庫(AX030/AX19-01) 1975.09.15
     法律はあまり楽しい学問ではない。法は非文学的、法の世界は有効な手段。法廷・法律ものは法律家出身が多い。和久作品にはジャーナリスト的感覚も随所にある。それが佐賀潜と異なる点か。
  28. 「(無題)」
    ( 『わが一高時代の犯罪』高木彬光(カバー) 立風書房・高木彬光名探偵全集1 1975.07.10 )
  29. 「引出しの中」
    ( 小説新潮 1976.11. )
  30. 「論理のトリック」
    ( 創 1977.08. )
     好きな名探偵はブラウン神父。論理的思考の展開での論理のトリック。
  31. 「生活感覚」
    ( 季刊芸術 1977.10. )(国DC※)
     十年前の昭和三十六年作品の再刊。十年前は高級品として書いたガス・ライター、代表的だった外車の名、胸ポケットの万年筆。世相風俗の移り変わりで誤解される恐れがある。どうすれば良いかよくわからない。
  32. 「(リレー随筆)」
    ( 小説club 1978.02. )
  33. 「作品準備のためのメモ」
    推理小説研究 1978.05.
     創作ノートは作らない。書きながら考える。『伯林―一八八八年』『燃えつきる日々』『白夜の密室』は下調べのノートで年表や資料の索引など。調べ魔的、むだな事が好き。
  34. 「山野辺進君へ」
    幻影城 1978.08.
     どこから来た何者でどこへ行くのか。現代的都会的洗練されている。『伯林』文庫版表紙。鳥、乗物、土。
  35. 「評論家としての乱歩」
    ( 『探偵小説四十年(下) 江戸川乱歩全集21』 講談社 1979.08.20 )
  36. 「名探偵リュパン」
    『名探偵読本7 怪盗ルパン』 パシフィカ 1979.06.15
     怪盗であり名探偵。ミステリの原点は冒頭の謎と意外な解決。個人的目的で直感的。解決を理論付ける必要はない。天才型探偵の連作短編はうまい趣向。
  37. 「(第25回江戸川乱歩賞選評)」
    ( 日本推理作家協会会報 1979.08. )(推協)
     各候補作寸評。『プラハからの道化たち』を一位に推した。
  38. 「偉大な凡人探偵 『八つ墓村』考」
    ( 『名探偵読本8 金田一耕助』 パシフィカ 1979.11.12 )(国DC※)
     『八つ墓村』の金田一耕助論は扱いにくい。手記形式、平凡なタイプの名探偵。
  39. 「ギョエテとは……」
    ( 日本推理作家協会会報 1980.06. )
  40. 「進境を見せた井沢氏(第26回江戸川乱歩賞選評)」
    ( 日本推理作家協会会報 1980.08. )(推協)
     五年前に比し長足の進歩。他候補作寸感。
  41. 「大味小味」
    ルパン 1981.01.
     読んだ限りでは最近は大味なフォーサイスを代表とするサスペンス、小味なブラウン・メッグスなど人物設定がしっかりしている作品群。雄大で派手で味わい深いのは『syクール・ボーイ閣下』あたりか。
  42. 「解説(『退職刑事2』)」
    『退職刑事2』都筑道夫 徳間文庫(103-02/つ-01-02) 1981.03.15
  43. 「ヴァーサ号博物館」
    ( 歴史読本 1981.07. )
  44. 「第三回小説推理新人賞選考座談会」藤原審爾、生島治郎、海渡英祐
    ( 小説推理 1981.08. )
  45. 「偶然の選択」
    ( 現代 1981.09. )
     偶然による好き嫌い。女の子、天婦羅そば。小説評価、絵画。
  46. 「風景の引き算」
    ( 別册文藝春秋 1981.10. )
  47. 「C・ウィルコックス氏の印象」
    ( 日本推理作家協会会報 1982.02. )
  48. 「コーヒー・ブレイク」
    ( 小説club 1982.04. )(国DC※)
     「海舟語録」冒頭「氷川のおとずれ」にコーヒ常用とある。明治、効用、好み、戦時中。
  49. 「誤植はこわい」
    ( 小説club 1983.07. )(国DC※)
     「ためになる」を「だめになる」とパンフレット。roseとnose。脱字。大きいと見落とす。名前。電報。
  50. 「推理小説批評の問題点(座談会)」権田萬治、佐野洋、都筑道夫、中島河太郎、海渡英祐(司会)
    ( 推理小説研究 1983.09. )
  51. 「怪談・安宅丸」
    ( 歴史読本 1984.08. )
     一六三四年、豪華船の安宅丸完成、実用性に乏しく繋留、泣き叫ぶ声が聞こえたという。解体、大老の死。印象的な豪華船の最後。
  52. 「カラーの夢」
    ( 小説club 1985.08. )(国DC※)
     少年期から青年期はカラー版が多かった。落ちる夢、恋人が落ちる夢、のぼる夢、宙を浮かぶ夢。大学卒業後夢はあまり見なくなった。
  53. 「(とっておきのいい話)」
    ( 不明(週刊文春?) 不明 )
    ( 『とっておきのいい話』週刊文春編集部編 ネスコ 1986.07.30 )(国DC※)
     娘が結婚をしたいと言ったときの真似したい小話、など。
  54. 「若さの特権(ミステリー処女作の頃)」
    ( 小説新潮 1986.08. )
     高木彬光先生のところでアルバイト、習作、雑誌掲載、就職せず競馬場、『極東特派員』。
  55. 「(第33回江戸川乱歩賞選評)」
    ( 日本推理作家協会会報? 1987.xx. )(推協)
     今年は不作。『ターン・ロード』は将来性と欠点の修正で授賞に同意。
  56. 「津軽の四季」
    『津軽ミステリー傑作選』 河出文庫(209-A) 1987.08.04 (国DC※)
     青森高校の時の合浦公園。夏の終り。冬の準備の秋、冬、桜そしてりんごの花。
  57. 「女スパイの艶姿」
    ( 歴史読本 1988.06. )
  58. 「乱歩と私」
    ( 『虫』江戸川乱歩 講談社・江戸川乱歩推理文庫6 1988.06.08 )
  59. 「(第34回江戸川乱歩賞選評)」
    ( 日本推理作家協会会報? 1988.xx. )(推協)
     『白色の残像』は二つの大きな難点があり納得できない。『倒錯のロンド』を高く評価。
  60. 「わが青春交遊録 卵から雛まで」
    ( 小説宝石 1989.03. )
  61. 「小さな小さな旅」
    ( 旅 1990.05. )
  62. 「国際政治とウラ金脈」
    ( 歴史読本 1990.09. )
  63. 「感覚的なこと」
    ( 現代 1990.12. )
  64. 「師匠との出会い」
    ( 『高木彬光の世界』「高木彬光フェア」実行委員会 1992.xx.xx )
  65. 「ちょっと待てよ」
    ( 潮 1993.05. )
  66. 「厄介な固有名詞」
    ( 現代 1995.06. )
  67. 「明治の看護婦さん」
    ( 看護 1995.07. )
  68. 「わが愛しのミステリー映画」
    ( TeLePAL付録 1996.04.20 )
    『ミステリー作家90人のマイ・ベストミステリー映画』テレパル編集部編 小学館文庫(Yん-16-01) 1999.01.01
     第三の男、悪魔のような女、めまい
  69. 「記憶の引金」
    ( 現代 1998.04. )
  70. 「世紀末。」
    ( 潮 1998.10. )
  71. 「『爆風圏』の頃」
    ( 『東青文学散歩』 青森近代文学館 2001.10.05 )
  72. ほか



      競馬・ゴルフ関係と思われるもの(抄)

  1. 「競馬推理教室」
    ( 推理 1971.05.〜、1972.05.,06.ほか? )
  2. 「私のダービー推理大作戦」
    ( サンデー毎日 1971.05.23 )
  3. 「女子プロに挑戦 見せるシングルの(秘)技」
    ( 小説宝石 1975.05. )
  4. 「クールな栄光 ダービー観戦記」
    ( 『蹄跡 昭和50年度』日本中央競馬会優駿編集部編 日本中央競馬会優駿編集部 1976.08.31 )(国DC※)
  5. 「競馬紳士録」
    ( 小説club 1976.05. )(国DC※)
  6. 「メイズイに見たナポレオンの影」
    ( 新評 1976.05. )(国DC※)
  7. 「父内国産馬をヒイキする」
    ( 現代 1977.04. )
  8. 「<記録への挑戦>」
    ( オール読物 1977.09. )
  9. 「マニア作家の「天皇賞の穴馬」」
    ( 週刊ポスト 1980.05.09 )
  10. ほか、多分多数



      著書

  1. 『極東特派員』 東都書房・東都ミステリー 1961.06.18 (国DC※)
    『極東特派員』/△「あとがき」
    『極東特派員』 徳間文庫(123-01/か-01-01) 1981.03.15
    『極東特派員』/△「あとがき」
  2. 『爆風圏』 東京文芸社 1961.12.15 (国DC※)
    『爆風圏』/△「あとがき」
    『爆風圏』 文華新書 1977.03.05 (国DC※)
    『爆風圏』
    『爆風圏』 徳間文庫(123-02/か-01-02) 1982.10.15 (国DC※)
    『爆風圏』/△「解説」都筑道夫
  3. 『伯林―一八八八年』 講談社 1967.08.20 (国DC※)
    △「著者のことば」/『伯林―一八八八年』/△「選考経過報告」
    『伯林―一八八八年』 講談社ロマン・ブックス 1969.10.04
    『伯林―一八八八年』
    『伯林―一八八八年』 講談社文庫(AX027/AX17-01) 1975.06.15
    『伯林―一八八八年』/△「解説」中島河太郎
  4. 『都筑道夫・海渡英祐・森村誠一』 講談社現代推理小説大系17 1973.01.08 (国DC※)
    『三重露出』都筑道夫/『伯林―一八八八年』海渡英祐/『虚構の空路』森村誠一/△「私の推理小説観」海渡英祐/△「解題」中島河太郎/☆「年譜」中島河太郎/月報(「深夜の目撃者(問題編)」藤村正太/「架空索道殺人事件(解答編)」草野唯雄/△「乱歩忌のこと」西東登)
  5. 『伯林―一八八八年/次郎長開化事件簿』 講談社文庫大衆文学館(か-05-01) 1997.10.20
    『伯林―一八八八年』/「星のある男」/「川岸の女」/「横文字破り」/「大政の幽霊」/「次郎長入獄」/「蛍とんで」/△「解説」小椰治宣
  6. 『伯林―一八八八年/高層の死角』 講談社文庫江戸川乱歩賞全集7 1999.09.15
    『伯林―一八八八年』海渡英祐/『高層の死角』森村誠一
  7. 『影の座標』 講談社 1968.09.28 (国DC※)
    『影の座標』
    『影の座標』 講談社ロマン・ブックス 1977.10.14 (国DC※)
    『影の座標』
    『影の座標』 講談社文庫(AX187/AX17-02) 1980.11.15 (国DC※)
    『影の座標』/△「解説」山村正夫
  8. 『無印の本命』 立風書房 1970.12.25
    『無印の本命』
    『無印の本命』 グリーン・アロー・ブックス 1975.11.15
    『無印の本命』
    『無印の本命』 徳間文庫(123-03/か-01-03) 1983.04.15 (国DC※)
    『無印の本命』/△「解説」虫明亜呂無
  9. 『パドックの残影』 立風書房 1974.06.20
    「気まぐれな馬」/「極秘情報」/「出馬表は語る」/「大穴の秋」/「灰色の賭け」/△「あとがき」/△「三拍子そろったユニークさ」中島河太郎
  10. 『おかしな死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 トクマノベルズ 1974.12.25
    「動き回る死体」/「浮気する死体」/「酔っぱらった死体」/「仰天した死体」/「気まぐれな死体」/「下痢をした死体」/「迷いこんだ死体」/「怪獣の好きな死体」/△「あとがき」/△「(作者のことば)」
    『おかしな死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 徳間文庫(123-04/か-01-04) 1983.10.15 (国DC※)
    「動き回る死体」/「浮気する死体」/「酔っぱらった死体」/「仰天した死体」/「気まぐれな死体」/「下痢をした死体」/「迷いこんだ死体」/「怪獣の好きな死体」/△「解説」団春郎
  11. 『殺人ファンタジア 加藤刑事夢想捜査録』 トクマノベルズ 1975.10.10
    「青鬚の妻」/「一人で二人」/「死の国のアリス」/「醜いアヒルの子」/「シンデレラの靴」/「フランス人形の死」/「ドン・ファンの衣装」/△「あとがき」/△「(作者のことば)」
    『死の国のアリス 続・加藤刑事夢想捜査録』 集英社文庫(138-C) 1983.07.25 (国DC※)
    「青鬚の妻」/「死の国のアリス」/「醜いアヒルの子」/「シンデレラの靴」/「フランス人形の死」/「ドン・ファンの衣装」/△「解説」瀬戸川猛資
  12. 『閉塞回路』 立風書房 1976.01.15
    「帰らざる彼」/△「NOTE1」/「殺人超能力」/△「NOTE2」/「偽りの再会」/△「NOTE3」/「紅の襞」/△「NOTE4」/「「わたくし」は犯人」/△「NOTE5」/「閉塞回路」/△「NOTE6」
    『閉塞回路』 集英社文庫(138-A) 1981.11.25 (国DC※)
    「帰らざる彼」/△「NOTE1」/「殺人超能力」/△「NOTE2」/「偽りの再会」/△「NOTE3」/「紅の襞」/△「NOTE4」/「「わたくし」は犯人」/△「NOTE5」/「閉塞回路」/△「NOTE6」/△「解説」権田萬治
  13. 『海渡英祐自選短編傑作集』 読売新聞社 1976.09.10 (国DC※)
    「大喰らいの死体」/「仮面の告発」/「謀略の背景」/「ミスタ・ヤマ」/「「わたくし」は犯人……」/「免罪符」/「他山の石」/「脅迫の背景」/「告発の輪舞」/「ベッドの上のルフラン」/「天国の活人・問題篇・解決篇」/△「作家アルバム/ある日ある時」/△「自作解説/私の推理小説作法 」
    『突込んだ首』 徳間文庫(か-01-15) 1990.04.15
    「謀略の背景」/「ミスタ・ヤマ」/「免罪符」/「他山の石」/「脅迫の背景」/「告発の輪舞」/「ベッドの上のルフラン」/「天国の活人」/△「あとがき」
  14. 『ふざけた死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 トクマノベルズ 1977.07.10
    「ケーキの好きな死体」/「ツキのない死体」/「たいやきを喰った死体」/「ふしだらな死体」/「隠れん坊する死体」/「ゼツリンな死体」/「大喰らいな死体」/「ヘソまがりな死体」/△「あとがき」/△「(作者のことば)」
    『ふざけた死体ども 吉田警部補苦虫捕物帳』 徳間文庫(123-05/か-01-05) 1984.04.15 (国DC※)
    「ケーキの好きな死体」/「ツキのない死体」/「たいやきを喰った死体」/「ふしだらな死体」/「隠れん坊する死体」/「ゼツリンな死体」/「大喰らいな死体」/「ヘソまがりな死体」/△「カイト エイスケ氏の”手品”」団春郎/△「カイト エイスケ氏大いに歩く」団春郎
  15. 『罠のなかの七人』 立風書房 1976.08.15
    「ひねくれた死」/「影を愛したわたし」/「大外れの犯罪」/「拝啓、経理部長……」/「肌色の影」/「鏡の中の死」/「見知らぬ恋人」/△「ミステリィ版フレンチ・ポップス―あとがきにかえて―」
    『罠のなかの八人』 集英社文庫(138-D) 1984.04.25 (国DC※)
    「ひねくれた死」/「影を愛したわたし」/「蒼白い誘惑」/「大外れの犯罪」/「拝啓、経理部長……」/「鏡の中の死」/「透明な仮面」/「見知らぬ恋人」/△「ミステリィ版フレンチ・ポップス―「あとがき」にかえて―」/△「解説」瀬戸川猛資
  16. 『燃えつきる日々』 講談社 1977.08.12 (国DC※)
    『燃えつきる日々』/△「作者附記」/△「著者のことば」/付録(▲「『燃えつきる日々』を書き終えて」海渡英祐、権田萬治)
    『燃えつきる日々』 徳間文庫(123-08/か-01-08) 1988.04.15 (国DC※)
    『燃えつきる日々』/△「解説」権田萬治
  17. 『白夜の密室 ペテルブルグ1901年』 角川書店 1977.11.30 (国DC※)
    『白夜の密室』/△「あとがき」
    『白夜の密室 ペテルブルグ一九○一年』 徳間文庫(か-01-16) 1990.07.15
    『白夜の密室』/△「解説」新保博久
  18. 『霧の旅路』 角川書店 1978.04.20 (国DC※)
    『霧の旅路』/△「あとがき」
    『霧の旅路』 徳間文庫(123-11/か-01-11) 1988.04.15
    『霧の旅路』/△「解説」権田萬治
  19. 『美女が八人死体が七つ 早瀬邦彦ずっこけ探偵録』 トクマノベルズ 1978.12.10
    「密室のワンちゃん」/「ネコかぶりのネコ」/「ピンク・パンティ2」/「憎らしい絵本」/「その嘘ほんと?」/「ミセス放射能」/「寝耳にイヤリング」/「お熱いのはダメ」/△「あとがき」
  20. 『地獄への直行便』 トクマノベルズ 1979.11.10
    「真珠とヘロイン」/「赤い黄金」/「殺意の花束」/「天国の密使」/「ゼロの幻」/「暗殺二重奏」/△「あとがき」
  21. 『激流に生きる 歴史のなかの異分子たち』 角川書店 1980.09.10 (国DC※)
    「革命を呼んだ詐欺師―カリオストロとジャンヌ・ド・ラ・モット」/「黒いナポレオン―ハイチの黒人皇帝、アンリ・クリストフ」/「陽光と冷雨―利己主義者バイロンの死」/「一人ぼっちの革命―世紀の二重スパイ、アゼーフ」/「王女と娼婦の間―東洋のマタハリ、川島芳子」/「悪夢との闘争―大指揮者フルトヴェングラーの悲劇」/△「あとがき」
  22. 『謀略の大地』 徳間書店 1980.11.30 (国DC※)
    「砂塵と黒点」/「雪と鮮血」/「上海曼陀羅」/「硝煙の夏」/「屍臭の街」/「白い壁赤い影」/△「あとがき」
    『謀略の大地』 徳間文庫(123-09/か-01-09) 1987.02.15 (国DC※)
    「砂塵と黒点」/「雪と鮮血」/「上海曼陀羅」/「硝煙の夏」/「屍臭の街」/「白い壁赤い影」/△「解説」大沢在昌
  23. 『積木の壁』 ジョイノベルス 1981.01.25 (国DC※)
    『積木の壁』
    『積木の壁』 徳間文庫(123-06/か-01-06) 1985.05.15 (国DC※)
    『積木の壁』/△「解説―精密機械の休日」永井淳
  24. 『二十の二倍』 フタバノベルス 1981.03.25
    『二十の二倍』
    『二十の二倍』 徳間文庫(123-07/か-01-07) 1986.03.15 (国DC※)
    『二十の二倍』/△「”キラーズ”―私の大事な”殺人者たち”」山野辺進
  25. 『黎明に吼える』 トクマノベルズ 1981.10.31 (国DC※)
    『黎明に吼える』
  26. 『仮面の告発 加藤刑事夢想捜査録』 集英社文庫(138-B) 1982.11.25 (国DC※)
    「仮面の告発」/「小箱の中の死」/「就眠儀式」/「一人で二人」/「灰色の傾斜」/「血と虹と」/△「解説」郷原宏
  27. 『三つの部屋の九つの謎』 トクマノベルズ 1983.01.31 (国DC※)
    「怪盗スーハー登場」/「野次馬作戦」/「泥棒三重奏」/「盗まれたクマ」/「噛みつく扉」/「引伸した真実」/「暑くて冷たい夜」/「偽りの再会」/「夏の断点」
  28. 『咸臨丸風雲録』 講談社ノベルス 1983.03.05 (国DC※)
    『咸臨丸風雲録』/△「著者のことば」
  29. 『忍びよる影』 光風社出版 1983.06.25 (国DC※)
    「まだ眠らない」/「真夜中の電話」/「焔の陰画」/「ジレンマの交錯」/「影の追跡」/「情事のパズル」/「暗い雨の夜に」
    『忍びよる影』 徳間文庫(123-10/か-01-10) 1987.09.15 (国DC※)
    「まだ眠らない」/「真夜中の電話」/「焔の陰画」/「ジレンマの交錯」/「影の追跡」/「暗い雨の夜に」/△「解説」田宮規雄
  30. 『事件は場所を選ばない』 光風社ノベルス 1984.06.15 (国DC※)
    「殺人もあるでよ」/「夏の終わり」/「禁断の時」/「臭い仲」/「不可解な心中」/「甘い罠」/「悪霊の家」
    『事件は場所を選ばない』 徳間文庫(123-14/か-01-14) 1989.07.15
    「殺人もあるでよ」/「夏の終わり」/「禁断の時」/「臭い仲」/「不可解な心中」/「甘い罠」/「悪霊の家」/△「解説」石井冨士弥
  31. 『次郎長開化事件簿』 実業之日本社 1985.01.30 (国DC※)
    「星のある男」/「川岸の女」/「横文字破り」/「通り雨の死」/「光と影の街」/「迷い獅子」/「大政の幽霊」/「次郎長入獄」/「蛍とんで」
    『次郎長開化事件簿』 徳間文庫(123-13/か-01-13) 1989.03.15
    「星のある男」/「川岸の女」/「横文字破り」/「通り雨の死」/「光と影の街」/「迷い獅子」/「大政の幽霊」/「次郎長入獄」/「蛍とんで」/△「解説」石井冨士弥
  32. 『趣味の犯罪華麗な殺し』 トクマノベルズ 1985.04.30 (国DC※)
    △「はじめに」/△「ポーカーと私」/「ミスタ・ヤマ」/△「切手蒐集と私」/「虎穴の死者」/△「ゴルフと私」/「多すぎる罠」/△「ジグソー・パズルと私」/「情事のパズル」/△「競馬と私」/「凍てついた影」/△「チェスと私」/「強制列車」/△「テニスと私」/「ラヴ・ゲーム」/△「迷路と私」/「堂々めぐり」
  33. 『トラブル・ハニムーン』 フタバノベルス 1985.08.10 (国DC※)
    「引き裂かれた写真」/「パリの災難」/「取られた鳥」/「赤い恐怖」/「カーテンの影」/「知らなすぎた女」/「最後の告白」
    『トラブル・ハニムーン』 徳間文庫(123-12/か-01-12) 1988.11.15
    「引き裂かれた写真」/「パリの災難」/「取られた鳥」/「赤い恐怖」/「カーテンの影」/「知らなすぎた女」/「最後の告白」/△「解説」石井冨士弥
  34. 『悪夢と恋人たち』 徳間書店 1986.04.30 (国DC※)
    「満点以上」/「情熱」/「あなたの赤ちゃん」/「執念」/「風が吹けば」/「笑顔」/「過去から来た女」/「分身」/「やきもち実験室」/「汚点」/△「あとがき」
  35. 『喰いちがった結末』 光文社文庫(か-18-01) 1988.02.20
    「多面体のあなた」/「臭い仲」/「演技の報酬」/「幸運な男」/「もう一人のわたし」/「恥さらしな死」/「つかめない尻尾」/「喰いちがった結末」/△「解説」石松愛弘
  36. 『辰五郎維新事件帖』 徳間書店 1989.06.30
    「戊辰の華」/「紅蓮の女」/「手向けの芒」/「廓の狐」/「神隠し夢隠し」/「望郷三番叟」/「立志編異聞」/「告別の舞」
    『新門辰五郎事件帖』 徳間文庫(か-01-17) 1993.09.15
    「プロローグ」/「戊辰の華」/「紅蓮の女」/「手向けの芒」/「廓の狐」/「神隠し夢隠し」/「望郷三番叟」/「立志編異聞」/「告別の舞」/△「解説」清原康正
    『新門辰五郎事件帖(上)』 埼玉福祉会 1999.10.20
    「戊辰の華」/「紅蓮の女」/「手向けの芒」/「廓の狐」
    『新門辰五郎事件帖(下)』 埼玉福祉会 1999.10.20
    「神隠し夢隠し」/「望郷三番叟」/「立志編異聞」/「告別の舞」
  37. 『出囃子が死を招く』 光文社文庫(か-18-02) 1992.08.20
    『出囃子が死を招く』/△「解説」松田忍
  38. 『俥に乗った幽霊』 光文社文庫(か-18-03) 1992.10.20
    「杜若の札」/「俥に乗った幽霊」/「密室の線香」/「二度目の溺死」/「乱菊の庭」/「吐き出した餌」/「嵐の遺物」/「銀座の三度笠」/△「解説」石井冨士弥
  39. 『ターフの罠』 日文ノベルス 1995.07.25
    『ターフの罠』
  40. 『札差弥平治事件帖』 徳間書店 1998.04.30
    「からくり崩し」/「花の散りぎわ」/「潰れた青い実」/「妖刀の誘い」/「梨園柵模様」/「風の中の孤影」/「〓(イスカ)の嘴」/「夜明け前の闇」



      参考文献

  1. Web Site 戸田氏のミステリ書誌の吹きだまりの「海渡英祐短編リスト」
  2. 「おげまるさん編作家別リスト50年代雑誌編」(成田氏の「密室系」)
  3. 「戦後推理小説総目録」中島河太郎
    推理小説研究12号 1975.05.30
    推理小説研究13号 1977.12.30
    推理小説研究16号 1980.12.30
  4. 『国内戦後ミステリ作家 作品目録 極私的・拾遺集』戸田和光
    『国内戦後ミステリ作家 作品目録 極私的・拾遺集』 戸田和光編 2010.09.29
  5. 戸田様に御教示いただきました。ありがとうございます。
  6. 戸田様より内容拝見させていただきました。ありがとうございます。
  7. ほか



入口へ  ←  著者別リストへ  ←  先頭へ
夢現半球