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鷹見緋沙子 作品

Since: 2023.01.29
Last Update: 2023.01.29
略年譜 - 小説 - 随筆 - 著書

      鷹見緋沙子(たかみひさこ)創作略年譜

    1943年(昭和18年)  横浜市にて生まれる
    19xx.xx.  東京女子大中退
    197x年頃  (中島河太郎がプロデュースする)
    1975年現在  神奈川県在住、主婦、(1980年頃は二児の母?)
    1975.04.〜  『わが師はサタン』『死体は二度消えた』『最優秀犯罪賞』刊行
    1980.07.〜  中短編、長編発表再開
    1980.10.  鮎川哲也に目撃談(フィクション)が書かれるが否定
    1983.01.25  (天藤真死去)
    1999.05.05  (中島河太郎死去)
    2000.02.  『日本ミステリー事典』で作者公開
    2000.09.  創元推理文庫の天藤真全集に一長編、一短編、一エッセイ収録
    2008.xx.  (草野唯雄死去)
    2022.02.28  (大谷羊太郎死去)

    筆名は、鷹見緋沙子、(天藤真、草野唯雄、大谷羊太郎)

      (国DC※)は国立国会図書館デジタルコレクション個人送信(ログイン必要)で公開されています(今後非公開になる可能性もあります)



      小説

  1. 『わが師はサタン』 [(興梠警視)]
    ( 『わが師はサタン』 立風書房 1975.04.10 )
    『わが師はサタン』 徳間文庫(110-01) 1980.10.30 (国DC※)
    ( 『わが師はサタン 天藤真推理小説全集11』 創元推理文庫(Mて-01-11) 2000.09.22 )
     北多摩金城学園大学の旧校舎はクラブの部室に使用されていた。マジック研究会のメンバーはリーダー田俊二、高木良介、下村実、吉見京子、林栄子、三川登代。南郷講師にオカルトに詳しい人物明日多郎太を教えられ伊東へ出かける。彼は姿を見せず講義し、まわりで正すことのできることを正すように諭す。第一のターゲットは本間学部長夫人孝子で学内での赤石助教授との不倫など三つの罪状のため研究会の黒ミサの犠牲となる。第二の作戦としてある教授に服従させられた針谷康美に習った催眠術で相手を聞き出そうと計画する。 親友川原三津江にも相手は言わず、尾行して本間教授のようだが確証はなかった。黒ミサでの催眠術による告白の最中、暗闇で康美は殺される。南郷講師に助けを求め警察へ通報、窓からの侵入者はあったようだが黒ミサの手順を知っているかグループの誰かが手引きしない限り暗闇の中を短時間の凶行は無理だと思われる。前日から行方不明だった本間教授の腐乱死体が伊東で見つかり遺留物から殺害犯の疑いが濃厚になった。明日多郎太、南郷講師と頼りにしていたメンバーは本間夫人と取り引きして真相を探ることになり……。
     作者は天藤真。青春推理小説で鷹見緋沙子名義一番の佳作。人を頼り信じる幼さと大人びたところの混在が最後には自分で考えるようになる成長物語でもある。推理小説的にも手掛かりはそれなりにあり、誰が裏切り者かというサスペンスもあり、どんでん返し的な展開も面白い。
  2. 『死体は二度消えた』 [(興梠警視)]
    ( 『死体は二度消えた』 立風書房 1975.06./1980.09.10 )(国DC※)
    『死体は二度消えた』 徳間文庫(110-05) 1985.08.15 (国DC※)
     三英商事社員竹村則久はリアルな推理小説を書くため退社後ビルに改めて忍び込む。古川課長を絞殺する想定で鍵穴から覗くと既に絞殺され奥の資料室に引きずられていく光景を目にする。資料室には誰もいなく死体もなかった。自宅に戻ると古川課長の死体があったが埋める用意をしているうちにまた消えた。古川の失踪は汚職関係で隠れているともみなされた。堀専務派の古川の後は北原課長補佐が継いだかたちになる。古川を尾行していたことも古川夫人由加に知られていた。 望水書房編集者の沖田良樹と恋人の紀美子の勧めで推理世界に載せるに値するデビュー作品のプロットノートを竹村は焼却し目撃したことを取り入れようとする。近所の日比野老人と阿久沢書生に相談しトリックを解明、入れ込んだ作品が掲載された。宮坂律郎の先行自費出版による盗作騒ぎ、引っ越し先での殺人事件。竹村は窮地に陥っていくが……。
     作者は大谷羊太郎。設定とトリックの小説で本格とは言い難い。それなりの伏線描写はあるが解決は後出しであったり自白のようなものだったりする。出来事からくるサスペンスはあるが心理的サスペンスは弱い。
  3. 『最優秀犯罪賞』 [(興梠警視)]
    ( 『最優秀犯罪賞』 立風書房 1975.08. )
    『最優秀犯罪賞』 徳間文庫(110-03) 1982.03.15 (国DC※)
     日亜自動車社長大野耕平がゴルフ場へ行く途中、運転手野瀬秋人は頭を殴られ一時失神、大野は殴られたうえ車ごと燃やされて死亡した。炭鉱離職者四人で切羽会を結成し年一度会うことにしていた古賀順一、森重利雄、堀田秀喜、野見山幸吉。食料品店に押し入り一年、幸吉は死に息子の武が加入、古賀は弟の遺産が手に入ったが癌で余命一年とのことで天誅を加える交換殺人を提案、遺産は優秀度の順に配分譲渡するという。 堀田は不動産会社社長林史郎を愛人萩原光子の住むマンションで首を吊って殺した。武は山井製油所のガソリンタンクを爆破し警備本部に来た社長を銃殺した。第一の事件の担当は団警部、第二は入江警部、第三は石田警部、合同捜査本部長は興梠警視。個人的に怨恨を持つ者はアリバイが成立している。古賀は支払わず姿を隠す。三人は古賀を探す。捜査本部では個人怨恨、交換殺人も視野に入れて捜査、森重と堀田の繋がりを探る。古賀は黒幕の目星をつけて……。
     作者は草野唯雄。社会派と内容紹介文にあるが動機と廃鉱後の調査部分と国への愚痴か。前半の犯行部分は面白いが後半の黒幕探しの絞り方と結末は安易にすぎる。廃鉱での調査が主でそれ以外の無駄な捜査は省いているのであるとは思うが。
  4. 「覆面レクイエム」 [(興梠警視)]
    瑠伯(ルパン) 1980.07.
    『闇からの狙撃者』 徳間文庫(110-02) 1981.06.15 (国DC※)
    ( 『わが師はサタン 天藤真推理小説全集11』 創元推理文庫(Mて-01-11) 2000.09.22 )
     草間由利子が絞殺された。妹日野公子に匿名電話があり警官と発見。由利子は高級売春宿を営んでいた。谷野さつきは正博と離婚前の最後の夜を過ごした朝、それを新聞で見る。藤山益夫の絞殺死体が熱海に流れ着いた。藤山は近所に住む正博の同僚でさつきの売春を正博が知るきっかけにもなっていた。さつきは天尾みち子に誘われメンバーになっていた。妻の姓になっていた正博はさつきの父が失脚したのを機に家屋を手に入れて離婚しようとしていた。盗まれていたメンバーのバインダー、閨のアリバイ……。
     作者は天藤真とのこと。意外な結末といえる作品ではあるが少し強引過ぎる。構成や設定的には面白いところもあるのだが。
  5. 「闇からの狙撃者」 [(興梠警視)]
    瑠伯(ルパン) 1980.10.
    『闇からの狙撃者』 徳間文庫(110-02) 1981.06.15 (国DC※)
     大河原家では土地を売り現金を仏壇に供えていた。戸田(仮名)と荒川(仮名)は強盗に入るが荒川は戸田を刺し逃亡、戸田は逮捕され服役した。相馬登志子は夫武夫の使い込みの代償として専務野崎俊樹に体を許していた。相馬はそれを知り逆に野崎から金を得ていた。谷村専吉は出所し荒川への復讐と強奪金を取り返すよう活動する。 荒川を知っていた藤原君子の住居がわかる。相馬は野崎と関係のある専務秘書天田圭子や藤原君子とも関係があった。谷村が忍び込んだ時、既に君子が殴殺されていて元刑事の中尾に見つかり協力することになる。谷村が銃殺され、野崎は相馬、圭子、登志子を軽井沢の保養所に集め……。
     作者は大谷羊太郎と思われる。幾人かの人物が平行、交錯していく作品だが裏付け捜査をすれば真相は簡単に明白になりそう。短めの文で”〜した”調の文章は大谷の特徴か。出来事日記か粗筋のよう。文庫版だが発言者誤記なども気になる。
  6. 「代理母」
    ルパン 1981.07.
     被告人相沢麻子は船橋で美容院を持っていた。助手募集で来た未亡人の足立はるみは資格を得て隣り町で開業した。当初はお客を融通し合うなどしていた。麻子は子が生めず、夫英徳の子をはるみに生んでもらう事になった。事件ははるみが三人の男に輪姦され流産、その場で写真も撮っていた麻子が男ら実行犯不明のまま強姦の共同正犯として裁判が始まった。罪状否認をしていた麻子は……。
     作者は草野唯雄と天藤真との合作とのこと。やや意外な展開。今は昔だが女の闘いが妙にリアルな気もする。男の影の薄さも。
  7. 『姿なき謀殺者』 (『姿なき演出者』)
    ( 東京タイムズ 1982.10.14〜1983.05.05 )
    『姿なき謀殺者』 トクマノベルズ 1983.06.30
     宮地紀夫は根岸守久が小田切治子と浮気しているのを知り根岸の妻和加子を動揺させ関係を持ち脅迫する計画をたてた。和加子は宮地の窮状を知り狂言強盗を計画するが失敗。共謀して守久を自動車事故に見せかけ殺害する。軽井沢の別荘で保険金の半分を渡すため三人組と思わせる狂言強盗を実施、娘の直美はもてあそばれ和加子は絞殺された。守久の会社は弟の常夫が継いだ。 十年後、フリーの調査員になった直美は別荘の目撃者がいて単独犯だと知る。仕事を回してくれる片切四郎探偵事務所所長との関係をもつ。常夫の悪友持寺君之にも犯される。五千万円の半分を盗まれていた宮地は露顕を怖れながら和加子殺害犯を探ろうとする。直美の祖父正次郎が持っていた守久の遺品からは女性の写真が……。
     作者は大谷羊太郎と思われる。官能サスペンスとのことだが文体や多視点描写でほとんど感じられない。謎と伏線はあるものの後出しや告白による結末で他の可能性の排除はほとんどない。作者がどのように展開させていくかという作品。
  8. 『悪女志願』
    『悪女志願』 徳間文庫(110-04) 1984.10.15 (国DC※)
     銀行員坂下真利子は田沢雄一に金を貢いでいた。借金取りの古木への対応、田沢のマンションでの強姦。不動産会社の水田佐和子は高川洋次に言われ金庫の五千万円を奪う手引きをする。高川と糸井俊則は奪取後佐和子を殺害し造成地に埋めようとしていた。自殺しようとしていた真利子は偶然目撃し五千万円を奪うことに成功する。 田沢に渡そうとするが古木との会話を聞いて疑念を抱き盗聴器をしかける。田沢と古木と強姦した北見の次のターゲットは仲畑良江だった。高川の身許を確認した真利子は糸井と仲間割れをするように仕向ける。北見が死に成果を山分けにしようとする田沢と古木。仲間割れとなり……。
     作者は大谷羊太郎と思われる。文庫書き下ろしのサスペンス小説。伏線はほぼなく意外性の為だけの唐突な結末。風俗ではないが艶歌調からどのように復讐し展開していくかが主。
  9. 『血まみれの救世主』
    『血まみれの救世主』 トクマノベルズ 1985.10.31 (国DC※)
     母朝子の借金で蛭田組組長蛭田壮二の囲われ者になっていた尾山真由美だったが蛭田が狙撃され殺される。対立組織の伊佐浦組の犯行と思われた。朝子はある男に依頼したと言い病死する。縁者がなくなりかたぎになった真由美だが蛭田組の武田幸一に居座られる。朝子に頼まれたという古谷礼一が現れ関東進出を狙っていた白星会とからめて真由美を救う。古谷礼一は真由美に告げ……。
     作者は大谷羊太郎と思われる。官能サスペンスとのことだが羅列の文体で損をしている。擬音や感嘆詞がないのにもある意味驚き。少しトリッキーなところや謎の男といったサスペンスはあるが推理的要素はない。
  10. 『不倫夫人殺人事件』
    『不倫夫人殺人事件』 トクマノベルズ 1986.10.31 (国DC※)
     原木屋製菓は店の商品に毒をいれるとの脅迫に社長が金を支払う。郊外の造成地で受取った男は豪雨の中、立体交差道で金を落し仲間に渡す。辻平千津子は同級生だった井川雪子が戸山直樹と浮気をしているのを知り後をつける。半年後、原木屋製菓は警察に届け出る。高荻昌平と直樹は受け渡し時に車の違いで金を入手できていなかった。直樹は井川武司に目星をつけて雪子に接近していた。雪子が殺され井川は浮気相手をつきとめようとする。昌平と直樹は井川を脅迫する。直樹は千津子に恩を感じていた。千津子は平凡な夫卓郎に内緒で……。
     作者は大谷羊太郎と思われる。官能サスペンスとのことで官能小説的描写は多少ある。時系列が前後したり何人もの心理描写がありサスペンス味は薄い。展開と結末は肩透かしの連続。
  11. 『悪霊に追われる女』
    ( 『悪霊に追われる女』 トクマノベルズ 1987.06.30 )(国DC※)
     平泉順子は夫洋治の出張中に寺西研二とドライブ、帰途の山中で自殺をしようとしていた女性を寺西は轢き殺し死体を隠した。笹森悦也は二人の情事に気付く。死体が見つかる。モーテルでの火事、洋治の浮気、脅迫、笹森の調査。寺西が殺され順子は幽霊を見る。寺西の妻綾子の視線。そして毛布に包まれた死体……。
     作者は大谷羊太郎と思われる。官能サスペンスとのことだが官能的でもなければサスペンスもない。独白を交えた複数の一人称と三人称が混在、文は出来事を羅列した日記調が少なくない。人物的魅力なし。暗示する出来事の記述はあるので想像ではあってもミステリー的要素がないとまでは言えない。確かに粗筋から大幅脚色すれば大量生産のサスペンス・ドラマの元にはなるかもしれない。



      随筆

  1. 「拝復、鮎川哲也様」
    ルパン 1981.01.
    ( 『わが師はサタン 天藤真推理小説全集11』 創元推理文庫(Mて-01-11) 2000.09.22 )
     筆者は天藤真らしい。「緋紗子考」鮎川哲也に対する返信。生年公開の件。男性説に対して。『わが師はサタン』は中島河太郎に見てもらい題名をつけてもらった。既成作家の匿名とは光栄。ルパン編集部を訪ねたことはない。文庫の写真は断った。平凡な女性。※鮎川哲也は後に見たのはフィクションで男性説に対する援護射撃だったと記している。
  2. 「水不足を救った人形」
    ( 小説CLUB 1987.10. )(国DC※)
     筆者は大谷羊太郎と思われる。6月から7月の水不足。カッパ地蔵。高陽親王のからくり人形による水不足解消。推理小説のヒント、遊び心、娯楽小説。 ※個人的には遊び心の意味が私とは根本的に合っていない



      著書

  1. 『わが師はサタン』 立風書房 1975.04.10
    『わが師はサタン』/△「犯人の意外性は申し分ない」森村誠一(カバー)/△「多彩な女流作家の出現」中島河太郎(カバー)
    『わが師はサタン』 徳間文庫(110-01) 1980.10.30 (国DC※)
    『わが師はサタン』/△「解説―「幻の女流作家」鷹見緋沙子」中島河太郎
    『わが師はサタン』 創元推理文庫(Mて-01-11) 2000.09.22
    『わが師はサタン』/「覆面レクイエム」/△「緋沙子考」鮎川哲也/△「拝復、鮎川哲也様」/△「解説」新保博久
  2. 『死体は二度消えた』 立風書房 1975.06./1980.09.10 )(国DC※)
    『死体は二度消えた』/△「(横溝正史のことば)」横溝正史(カバー)
    『死体は二度消えた』 徳間文庫(110-05) 1985.08.15 (国DC※)
    『死体は二度消えた』/△「解説」中島河太郎
  3. 『最優秀犯罪賞』 立風書房 1975.08.
    『最優秀犯罪賞』/△「貴重な可能性」中島河太郎(カバー)
    『最優秀犯罪賞』 徳間文庫(110-03) 1982.03.15 (国DC※)
    『最優秀犯罪賞』/△「解説」中島河太郎
  4. 『闇からの狙撃者』 徳間文庫(110-02) 1981.06.15 (国DC※)
    「闇からの狙撃者」/「覆面レクイエム」/△「解説―幻の作家の最新作」中島河太郎
  5. 『姿なき謀殺者』 トクマノベルズ 1983.06.30
    『姿なき謀殺者』
  6. 『悪女志願』 徳間文庫(110-04) 1984.10.15 (国DC※)
    『悪女志願』/△「解説」中島河太郎
  7. 『血まみれの救世主』 トクマノベルズ 1985.10.31 (国DC※)
    『血まみれの救世主』
  8. 『不倫夫人殺人事件』 トクマノベルズ 1986.10.31 (国DC※)
    『不倫夫人殺人事件』
  9. 『悪霊に追われる女』 トクマノベルズ 1987.06.30 (国DC※)
    『悪霊に追われる女』



      参考文献

  1. 「解説」中島河太郎、「著者紹介」
    徳間文庫各巻
  2. 「鷹見緋沙子」
    『日本ミステリー事典』権田萬治監修、新保博久監修 新潮社 2000.02.20
  3. 「解説」新保博久
    『わが師はサタン 天藤真推理小説全集11』 創元推理文庫(Mて-01-11) 2000.09.22
  4. 「緋沙子考」鮎川哲也
    ルパン 1980.10.
    『本格ミステリーを楽しむ法』鮎川哲也 晶文社 1986.09.20
    『わが師はサタン 天藤真推理小説全集11』 創元推理文庫(Mて-01-11) 2000.09.22
  5. 「幻の作家の正体から批評家待望論まで(対談)」鮎川哲也、土屋隆夫
    ルパン 1981.01.
  6. Web Site 奥木氏の大衆文学資料の「天藤真書籍アート」
  7. ほか



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