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谿渓太郎 作品

Since: 2023.06.18
Last Update: 2024.02.11
略年譜 - 探偵小説 - 随筆 - その他の随筆 - 編書

      谿渓太郎(たにけいたろう)略年譜

    1924.10.10(大正13年)  大阪市にて生まれる。本名谷口純平
    1944.xx.  愛知工業応用化学科卒業
    1944.xx.  文藝首都同人
    194x.xx.  中部日本青年文学会に参加、新樹同人
    1949.12.  「東風荘の殺人」が宝石の百万円コンクールC級で別冊宝石に掲載、最終八篇に残る
    1950.04.  「名探偵ルー女史登場」谷口照子名義が新青年に掲載
    1951.06.  「悪魔の火焔」が探偵クラブ新人賞に当選し掲載
    1954.04.〜07.  CBCラジオのCBC推理クラブの原作担当(『東海の虹 中部日本放送十年史』より)
    1956.xx.  講談社書下ろし長編探偵小説全集に『古蹟の妖術者』が候補作に入る
    1956.xx.  CBC開局記念脚本募集佳作入選
    1957.11.〜  CBCテレビ「健太君の探偵」の脚本など多数執筆
    1958年頃  名古屋探偵作家クラブ理事
    1962.頃  日本放送作家協会中部支部長
    1976.10.  幻影城に「緋の大正琴」を掲載
    20xx頃?(平成xx年頃?)  ※没年未確認(2016年(平成28年)に遺族から脚本アーカイブズへ台本寄贈)

    筆名は、谿渓太郎、(谿溪太郎)、谷口照子

      (国DC※)は国立国会図書館デジタルコレクション個人送信(ログイン必要)で公開されています(今後非公開になる可能性もあります)



      小説

  1. 「三ツ葉谿殺人事件」
    ( 東海自由文藝 1946.12. )
     アルプスの登山口O町の手前で列車事故が起った。私もそれに乗っていて徒歩でO町に向った。女性三人組もまた徒歩で向っていた。友人のO町警察の巡査宮本を訪れる。翌日、松本の本署から戻った宮本は三ツ葉谿で死体が見つかったという。死体は新興タイムズ社長の大竹五郎で粗末な和製カメラには崖上で撮った二枚の写真があった。事故と思われたが私は疑問を持ち現場へ、復旧した汽車の時間を確め、旅館と新興タイムズ掲載の写真に関して問い合わせ……。
     手懸りから論理的に犯人を見つけだそうとする探偵小説。断片的部分からの飛躍や他の可能性の排除は十分とはいえないが、ある種意外な犯人ともいえる。割と良くできた作品。
  2. 「東風荘の殺人」 [宗宮哲]
    別冊宝石 1949.12.
    『ミステリーの愉しみ(2)密室遊戯』鮎川哲也編、島田荘司編 立風書房 1992.02.20
     雀友の私谿は開業医竹中一郎の代議士当選祝賀会の招待を受け故小泉清邸へ行く。東風荘は召使八代を通して洋子に借りたが死んだはずの妹良子が現れ貸すのに反対だったという。洋子は行方がわからなくなっていた。麻雀室で小野源二、荒木一章、大川勝人、谿、竹中、邸側で良子、八代ますみ、中西五郎が残っていた。良子の占い、竹中は退席し隣室へ、停電、悲鳴、密室状態での竹中の刺殺死体、金丸警部の登場、遺言状、宗宮哲弁護士の登場……。
     宝石の百万円コンクールC級(短編部門)で最終八作に選ばれたが入選にはならなかった作品。本格で密室を扱ったもの。密室そのものは鍵の件もあってあまり巧くない。容疑者を除外していくところは良くできている。体言止めの多用など脚本的で物語的には難があるがプロットは佳作。なお、高木彬光への挑戦のようなところも見られる。
  3. 「名探偵ルー女史登場(脚本形式)」谷口照子
    新青年 1950.04.,05.
     第一話:ルー探偵の受難 ジュピー警部が来て女賊ルファンが国外逃亡するという。ルー女史は列車に飛び乗るがルファンの陰謀で列車は……。
     第二話:ユーモラスな知能犯 ジュピー警部が来て宮廷の宝物殿からダイヤが盗まれたという。次いでジャック皇太子が。身代金を払わないなら王妃を誘拐するという。ルー女史は武器を……。
     第一話:ルー女史北極へ行く または―冷凍殺人事件 殺人事件がありジュピー警部とルー女史は北極へ行く。五人の集落で殺されたのは唯一の女ナース。父ローンと隣家のギヤスと長男ヤンチが一緒に食事中に叫び声を聞いていた。次男テーリは親類の家にいた。死体を見て……。
     第二話:東洋人形の秘密 ジュピー警部が来て造幣局から金貨が盗まれたという。女賊ルファンの館前の池には足のないダルマが浮いていた。ルー女史は金貨の隠し場所がわかったと波止場へ……。
     ホルメス探偵に捧ぐ、とある掌編群。ぶっ飛んだ解決が楽しい。ついていけない話もあるが斜め上感が絶妙。
  4. 「雪中鬼」 [宗宮哲]
    ( 妖奇 1951.03. )
     信州S高原、白龍館からの電話で山城警部らが合鍵で部屋を開けると、血まみれの衣服と短刀のみで死体はなかった。谷三枝子と隣室の樋口剛造は友人とのことだが樋口はトランクを持って東京へ帰っていた。翌日、谷底に吾妻三一郎の死体が見つかった。白銀荘には他に谷三枝子と山中正夫の名があった。山中は電報で東京へ帰っていた。警視庁津村警部は山中に電報を打った谷良一から三枝子は妹、吾妻は自殺した姉喜代子の夫だったと聞く。樋口のアパートでも血まみれの衣服と短刀が見つかるが死体はなかった。浅草六区の青年弁護士宗宮哲は……。
     本格といって良いだろうか。やや複雑でそこまでやるかというような作品。勿論、当時としても後追いかもしれないが鑑識などでわかりそうではあるが。スキー跡やトランクの謎や名前に関する事もあり意欲作。佳作とまではいえないが良くできた作品。
  5. 「悪魔の火焔」 [宗宮哲]
    ( 探偵クラブ 1951.06. )
     東京化学の染料合成工場のニトロ・ベンゾールの釜が爆発し、高原進一郎技師が死亡、宮川健作技師らが重傷を負っていた。事故として処理されていた。浅草に法律事務所をもつ宗宮哲はY署の間宮警部を訪れ、計画的殺人だと高原の日記を出す。そこへ宮川が現れ真犯人を知っているという。温度表示、噴出、着火。高原の妹澄江と宮川、宮川の妹みどり、宮川と与志枝。二人の妊娠。完全犯罪……。
     懸賞当選作との事。本格物の事件の概要と解決部分だけで構成されたような作品。伏線としては不十分だが二転三転する真相はよく出来ている。
  6. 「暗黒の階段」
    ( 探偵クラブ 1951.10.〜1952.03.(5回) )
     佐原道子は手紙で別居中の夫芳夫に会いにユナイト座へ行く。二人は個室のロマンスシートで洋画を見ていて道子がトイレへ。廊下にいた謎の男。十四号室に戻り気付くと芳夫が刺殺されていた。残されていたリンゴの皮、支配人中井とリンゴを売ったという安井婆さんの証言、ナイフを売ったという後藤英雄、そして残されていた指紋。道子は逮捕され裁判で死刑を求刑されていた。 十九才の道子の妹松本啓子は姉の無罪を信じ恋人の原田進には告げず調査する。芳夫と愛人が住んでいた大泉の表札の家。キャバレーブラック・ベアを捜しダンサー丸矢マリに会う。チケットを購入した靴磨きの鉄ちゃん。手紙の筆跡……。
     意外な犯人と動機の作品。手懸りもそれなりにある。犯行計画の割に機会が偶然というのが難だがサスペンス味もあり良くできた作品。前回までのあらすじで人名誤記が多い……。
  7. 「名探偵ルー女史の推理」谷口照子
    宝石 1951.11.
     第一話:「可愛い金魚」の事件 国立オペラ劇場でマルグリットが可愛い金魚さんを独唱していると胸を射たれた。支配人はテレビ中継もあって中止に大損害だとルー女史に調査を依頼する。玩具の金魚を見てルー女史は……。
     第二話:写真失恋事件 青年アリウスがルー女史を訪れ、密室状の寝室で彼女の写真がなくなったという。夢で彼女に別れてて欲しいと……。
     第三話:総理大臣殺人事件 ジュピー警部とルー女史が総理大臣官邸前で浮浪者ベンが焼け死んでいるのに出会う。そばにはパンが落ちていた。ルーは総理大臣夫妻に会い……。
     第四話:眼球盗難事件 男爵アカナットがルー女史を訪れ両眼が盗まれたという。妻は若くて美しく……。
     ナンセンスでぶっ飛んだ解決が楽しい掌編群。斜め上感が絶妙。
  8. 「断崖の悪魔」
    ( 中日ウィークリー 1952.01.16 )
     悪魔の知力に打勝つには知力ではいけない。悪魔に勝のは。加久間は大東製薬社長の一人娘秋子と結婚するはずだったが絶交状が届いた。親友の芥川に相談すると偽の診断書が原因で芥川にも絶交を言われる。加久間は芥川が落し入れたと悟り、秋子と結婚した芥川の運転手になり変わる。参謀となった加久間はいよいよ復讐のために……。
     どんでん返しが効いている作品。三年もかけた割には杜撰なような気もしないではない。
  9. 「見えない男」
    ( 中日ウィークリー 1952.01.30 )
     花村は恋仇の竹島をY谿の断崖から突き落とした。N市へ戻った花村は劇団女優の三津子のアパートへ行く。花村を拒む三津子だったが、置いてあった手紙を読むと付き合うようになった。人混みで、喫茶店で、映画館で、三津子は竹島を見る。怨霊か透明人間か……。
     スリラー小説とあるがコントのような作品。最後の見えない男に関する言葉は見事。
  10. 「奇妙なロマンス」
    ( 中日ウィークリー 1952.03.05 )
     老詩人竹中俊介は詩が書けなくなった寂しさをまぎらわすために半生を共にしたステッキと夕暮の散歩をしていた。かつて見たような喫茶店ボヘミアン。マダムは片目が失明した岩切が矢須子に毎晩電話をかけて小説の筋を語っていたが三日ほど前から来なくなったという。竹中は岩切になり代って毎晩電話をかける。七日目、竹中は岩切が死んでいたことを知る。矢須子は、そして竹中は……。
     スリラー小説とあるが奇妙な味の話。老詩人の寂寞感と昔を取り戻したような感じは良い雰囲気。確かに矢須子が謎の女性のままの方が老詩人にとって良いのかもしれない。
  11. 「宝石を貰った女」
    ( 中日ウィークリー 1952.07.09 )
     私が広小路のカフェーの黒衣の女給から聞いた話。黒い背広の男が宝石を貰ってほしいという。持っているのが恐いという。女が受取ると礼を言い出て行く。追うと市電に轢かれそうになった。夜、ビロードに包み小函に入れたはずの宝石が輝き像を見せる。宝石をくれた男と首を絞められている男、盗みを働く男、歴史の数々。宝石のためには。女は……。
     ホラー。超常現象か想像過多か。定番の終わり方だが否定はできない。
  12. 「黒衣の幽霊」
    ( 探偵倶楽部 1952.12. )
     健吉が中華そば屋台のしていると白い手袋の男が亡くなった恋人を探している黒い服の女を見たという。女が来てそばを頼む。次の夜も。落した名刺には波川一夫の文字が。健吉は次の夜、そしてまた次の夜……。
     幽霊の正体実は、という話。探偵小説としてはありふれたトリックの組み合わせ。
  13. 「恐怖の裸女」 [宗宮哲]
    ( トリック 1953.02. )
     私が浅草六区の宗宮哲堀津事務所でカメラに凝りだした彼はモダン・フォト・クラブ幹事長の水田謹二と話していた。ニュー・フォト・マガジン社の故水島青帆の写真作品提供募集。崖から転落した時に青帆が撮ったという小川京子の裸女写真が切られて送られてきた。水田謹二が、青帆の弟で編集部員水島勉が社内で、編集部員井上千絵が盗まれていた。社に京子の弟小川次郎が来て殺される。社にいてアリバイのないのは編集長木谷敏一、水島勉、井上千絵、水田謹二、料亭大波志マダム大橋久子。そして京子の……。
     五人の容疑者の聴取などから犯人を特定していく話。本格に近いところもあるが特定するには不十分だと思われる。
  14. 「悲恋の獅子」
    探偵倶楽部 1953.09.
     泉仙吉はゲールンク猛獣サーカス団に加わり二年になる。彼は最近リーゼ嬢を愛しているのに気付いた。リーゼも愛しているようだった。仙吉がライオンであれば、またはリーゼが人間であれば。熱を出した仙吉はフォン・ブッシュ博士に注射をしてもらい、朝起きたら檻の中にいた。リーゼはいない……。
     怪奇小説。当時としてはまだ珍しかったかもしれないが昨今では珍しくない話。結末部で良く分からなくなる。矛盾なのかまさかの脱力オチなのか。
  15. 「Q病菌患者」
    ( 探偵倶楽部 1955.02. )
     十年前、死んだ私と同じT大医学部卒でQ県R伝染病研究所に勤務していたNは風土病の元であるPB菌の研究をしていた。寮の隣のNの部屋から漏れて来る恍惚の叫び声。女性を連れ込んだとも思えない。彼は報告書を残して……。
     SFといえないこともない。菌の影響力は良いとしても感染経路や繁殖条件がよくわからない。
  16. 「殺人煙草」
    探偵倶楽部 1955.03.
     石本は水原と仲が良かったが火野良子を巡って殺害を企てた。水原殺害に関する十二章。二人はパイプ煙草愛好家だった。ハーフエンドハーフ缶に青酸化合物を混ぜ、水原に届くようにする。二人は旅行で禁煙の賭けをして……。
     異色コントの中の一編。結末は似た者同士、ともいえないようで。
  17. 「終幕殺人事件」
    ( 探偵倶楽部 1955.04. )
    『「探偵倶楽部」傑作選 甦る探偵雑誌7』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-17) 2003.07.20
     立花寛二は戦後、妻のフローレンス・ユキを頼りに本格オペラ「カルメン」で復帰しようとしていた。藤田歌劇団の辻進次郎の共演。ドンホセ役の立花の演技は辻とユキの密会につれ迫力を増していた。最終日、舞台闘牛場セットの裏でユキはジャックナイフで殺された。「アナタ、ダイヤ、ミテ」と言い残して。津村警部に殺害しようとしていたと言う立花。両袖の人々、舞台裏通路と道具方、興行ブローカー兼貴金属商山梨泰造、プロヂューサー水橋。津村警部は……。
     不可能に近い状況下での事件とダイイングメッセージ作品。策を用いる意味は不明ながらダイイングメッセージは捻りが効いていて面白い。
  18. 「目撃者」
    ( 探偵倶楽部 1955.08. )
     私砂岡美代子は夫が来られくなって一人で見ていたオペラを途中で抜けだし港を歩いていた。名刺入れの中の女の写真。二人の男が一人の男を海に投げ込むのを目撃する。茶色の服の男に追われ税関に逃げ込む。家に帰った夫の背広には血が。翌朝の新聞には夫の造船会社社長が殺されたと出ていた。会社乗っ取りの陰謀、警官の来訪、夫からの電話……。
     サスペンスのみの作品。あまりにも説明されずに残された謎が多すぎる。
  19. 「死刑囚」
    探偵倶楽部 1955.09.
     ぼくは主人を殺しその妻と姦通していた大学生として死刑囚になっていた。波田欣三家に住み込み下男のような仕事をして学費をかせいでいた。欣三に豊子夫人との仲を詰問されたがやましいことのないぼくは温室で手伝いを申し出るが断られる。隣接の温室へ行った時、天窓ガラスが落ちて駈けつけると欣三が鎌で殺されていた。豊子夫人と欣三の弟五郎と五郎の友人平田刑事も駈けつけ、ぼくは現行犯として逮捕、死刑判決を受けていた……。
     本格作品。残った可能性が真相と思われるということで。神は知っているという事と救われるかどうかは別だと思う。
  20. 「真昼の喪服」
    ( 探偵倶楽部 1955.11. )
  21. 「追跡者」
    ( オール読切 1956.03. )※6
  22. 「死者の呼ぶベル―心の奥までは欺けない―」
    探偵倶楽部 1956.05.
     久美子はアパートの部屋に戻った。一突きで崖から転げ落ち貨物列車に轢かれた初夫。電話のベル。初夫の声。切る。メトロのマダム房子からの電話。店に初夫が来ているという。生き返ったのか。警察に殺人死体があると電話する。再び房子からの電話。ベルは鳴る……。
     リドルストーリー。被害届が出されていたという可能性もありかも。
  23. 「奇怪な恋仇(ライバル)」
    探偵倶楽部 1956.11.
     菊人形職人の話。水花屋源七が遊女八橋、弟子新吉が佐野治郎左衛門の菊人形を作った。新吉は女房と密通して家を飛び出していた。花の手入れなどで展示場に寝泊りしている時、気になってみると八橋の前に新吉が、そして人形が動き……。
     怪談。人形奇談としてはありがちな話だが菊人形というのは珍しいかも。
  24. 「大きな設計図」
    探偵倶楽部 1957.05.
     蜂谷養二氏は斬新なアイディアと独特の設計で話題のビルを四つ持っていた。五つ目の完成披露の前日、彼は事務室にあてた部屋に入った。建設新聞の城金譲次が来て秘密になっている設計者のことを尋ねる。玉野健次郎はアパートでガズ中毒死していた。他殺で設計図が盗まれたという説もあり……。
     奇想作品というべきか。隠し方トリックの変形作品というべきか。上から見る人の小ささなど妙な味がある。
  25. 「むかえ船」
    ( オール読切 1958.03. )
  26. 「死はベレー帽の下に」
    ( 月刊中京増刊 1958.11. )
  27. 「名探偵ルー女史」谷口照子
    ( 月刊中京増刊 1958.11. )
  28. 「耽綺サロン夜話 緑毛の処女」
    ( 月刊寸鉄 1958.11.〜12.? )
     井神進一郎の話。軍の任務で雲南の龍化江上流に単身潜行した。活動する鉄と緑色の鬼の伝説。天然水銀鉱脈らしく思われ……。(※第一回のみ)
     怪異話? 続きは未見。
  29. 「 」
    ( レクノート 1960.xx.〜12.(福田と隔月交代) )※「名古屋探偵小説史」による
  30. 「耽綺サロン夜話 黒真珠」
    ( 月刊寸鉄 1960.04.〜05.? )
     いつも乳白色と黒色の真珠を指にはめている花井の話。島の小学校に赴任した私は夕暮時に多恵という海女が潜るのを見た。大きな阿古屋貝が……。(※第一回のみ)
     恐ろしい思い出話とのこと。続きは未見。
  31. 「白い灰」
    ( 月刊寸鉄 1960.07.〜 )
     中里敏彦のところに立花小夜子が大須大田産婦人科で堕胎したという無名の手紙が届いた。父から小夜子が映画女優であることで結婚を反対されていた。敏彦と小夜子が大田産婦人科の佐竹俊介医師に聞きにいくと住所氏名は同じだが別人の手術だったという。そしてそのカルテが盗まれる。西沢警部補は殺人事件に関係しているのではないかと……。(※第一回のみ)
     連載探偵小説とのこと。続きは未見。
  32. 「黒豹(掌編)」
    ( 中部日本新聞 1963.02.14 )
     島崎譲二は独身でビニールチューブの成型工場を経営していた。突然、一瞬のうちに消えた全従業員。去年の夏、知多の海水浴場でも似たことがあった。人間が恋しくなり繁華街、デパート、劇場、そして動物園へ……。
     不条理作品だろうか。全くといってよいほどわからない。消えた人は戻らず何事もなかったかのように次の日には別の人々がいる状態なのか、人のいる時間からいない時間に飛ぶのかすらわからない。黒豹が何を意味するのかもわからない。
  33. 「白い悪女」
    ( キャンペーン 1963.10. )※7
     名古屋地裁二号法廷、被告森田真次に島田首席検事は大野三郎殺害の動機を訊問する。今池のボーリング場で木更津奈津と出会い付き合うようになるが奈津は大野三郎とも世話になったということで付き合っていた。大野は上司の部長黒宮龍一を脅してもいた。自由ヶ丘の奈津のアパート、そして……。
     犯罪に至る物語とでもいうのだろうか。関係者が知らないであろう唐突な場面は主観描写部分で違和感を感じてしまう。多分客観映像的なドラマなどでは気にならないだろうが。
  34. 「遊びに来たおもちゃ(絵本?)」谿渓太郎作、安井康二画
    ( 『日本の幼児教育 心の巻(1)』石森延男編 中統教育図書 1972.09. )
  35. 「空とぶ円ばん(絵本?)」谿渓太郎作、北田卓史画
    ( 『日本の幼児教育 心の巻(2)』石森延男編 中統教育図書 1972.09. )
  36. 「緋の大正琴」
    幻影城 1976.10.
     放送作家滝竜介は栄で三村警部に会うが事件らしかった。名物男ベレーのおっさんを見かける。新聞には民謡酒場妻籠路のマダム松井栄子が自宅アパートで刺殺されたとあった。発見者は同級生でクラブシャントンのママ石川美代、アパートの管理人大村源次、近所のタクシー運転手山口一夫。管理人は栄子が出かけるのを見たが戻るのは気付いていなかった。合鍵を持つ宮証券会社課長宮永勝也、前夜会っていた元夫の小西英雄。竜介は大正琴のキイ2456に栄子の指があったのはダイイングメッセージではないかと家元鈴木琴城の助けを借りて……。
     本格とは言い難いし大正琴の謎は無理がありすぎるが、手懸りらしい記述が多くありクイズ的にはまとまっている。容疑者も絞られているので傍証といったところか。名古屋御当地ミステリーで幻影城連載中の岡戸武平がゲスト出演している。
  37. 「たんぽぽの旅」
    ( 『話のこばこ』石森延男編 中統教育図書 1980.xx. )
  38. その他、CBCテレビ双葉十三郎原案「健太君の探偵」53〜56回(27話〜28話)の「林の中の怪人」「アラマンダの呪文」の台本が大阪府立中央図書館国際児童文学館にあるようです
  39. その他、ラジオやテレビ脚本、舞台脚本など多数
  40. 「雨水」道芝 1947.05.「時計の音」道芝 1947.05.(※6による)谷口照子は別人であると思われます。
     内容は、その日暮しを雨水にたとえて、や、時計の音が励ましてくれる、など心象風景を描いた作品。
     根拠は、1)和歌山県日高郡の水棹会の発行で編集にも名を連ねている、同人は寺に集まるなど行事を行っていたらしい(谿谿太郎は当時愛知県在住)、2)女性らしい筆致で「母に叱られて」などあり作風内容も文章も全く異なる、3)(根拠薄弱だが)白露という名で女性らしい俳句も掲載している、です。谷口照子名義はルー女史シリーズしか確認されておらず、あえて変名である女性名を用いる理由はありません。



      探偵小説関係の随筆、評論

  1. 「「呪縛の家」解決篇を読みて(宝石クラブ)」
    宝石 1950.08.
     三月号の挑戦までで二人に絞られた。四月号の再挑戦で一人に暗示されているが断言できるものではない。むしろ逆の方が自然。※翌9月号に高木彬光の返答あり
  2. 「トリックの現実性に関する試論(宝石クラブ)」
    宝石 1950.12.
     探偵小説はトリックの独創性と奇抜さで価値の大半が決まるが現実性も重要になっていると思われる。現実性は紙の上で、言葉の上で可能であれば良いのではないか。リアリズムは人物設定、心理、描写に。
  3. 「探偵小説の心理について(宝石クラブ)」
    宝石 1951.05.
     探偵小説の登場人物の心理描写には制限がある。心理の合理性が必要。合理性と意外性。心理的なトリック。
  4. 「探偵雑誌あれこれ」泉紀久雄、今泉義夫、丘美丈二郎、公家高、古海暉之、白井竜三、千賀幸子、谿渓太郎、新美良男、服部元正、田村良宏(司会)
    ( SRマンスリー 1958.09. )
    ( 『SR Archives Vol.1』 2005.xx. )
  5. 「あとがき」
    ( 月刊中京増刊 1958.11. )
    引用:( 「名古屋探偵小説史」福田祥男 裸形 1964.11. )
     人使いが荒い。比較的のんびりしていた私は一身上の都合で名古屋東京間を幾度も往復。申し訳なかった。
  6. 「名古屋放送界の芭蕉はどこにいる?(名古屋漫筆)」
    中部日本新聞 1963.02.04
     元日に熱田神宮、正月にテレビ塔にのぼる。未完成の町名古屋。放送界では東京が親爺なら大阪は母親、名古屋は息子か娘。名古屋放送芸能人懇話会、テレビタレントセンター、日本放送作家協会。名古屋の作家作品を名古屋の俳優が演じ名古屋の電波により東西に真価をとうのが夢。かつて乱歩が一人の芭蕉を求めたが名古屋放送界の芭蕉はどこに。市民全体の認識と意欲の中にこそ。



      その他の随筆など

  1. 「名古屋の周辺」
    ( 『名古屋漫歩 あなたも〈名古屋通〉になれる』アイ・プランニング、谿渓太郎編 住友グループ 1964.04.01 )※7
  2. 「ウマ嫌」
    ( 月刊寸鉄 1966.01. )
  3. 「(放送作家へのアンケート)」
    ( 『放送作家年鑑1966』 1966.12.10 )(国DC※)
  4. 「旅路の石仏」
    ( 『美濃路の石佛』高木嘉介 岐阜県ユネスコ協会 1977.04.30 )
  5. 「(本文)」
    ( 『名古屋私の散歩道』谿渓太郎ほか 東海財団 1981.03. )
  6. 「全国展開をしたビデオリポータークラブ」高畑恒夫、谿渓太郎
    ( 映画テレビ技術 1984.10. )(国DC※)
  7. 「春には再び鳴き飛び立つ」
    ( 放送作家情報 1985.03. )
  8. 「アイデアと行動の芸人(巻末文)」
    ( 『都々逸 ふれ愛 四十年』柳家小三亀松 北白川書房 1987.12. )※古書情報より
  9. 「自首管理能力の実証を」
    ( 放送作家情報 1997.03. )
  10. その他「文藝首都」「新樹」などに同人参加していたらしいが未確認多数
  11. その他、北野をどりや大和楽、大正琴、星からの招待、河村電器産業社歌の作詞などがあるようです



      編書

  1. 『名古屋漫歩 あなたも〈名古屋通〉になれる』アイ・プランニング、谿渓太郎編 住友グループ 1964.04.01
    「名古屋の周辺」谿渓太郎/ほか
  2. 『名古屋味レーダー』 むさし書房 1970.01.



      参考文献

  1. 「戦後推理小説総目録」中島河太郎
    推理小説研究12号 1975.05.30
  2. 「「探偵倶楽部」作者別作品リスト」
    『「探偵倶楽部」傑作選』ミステリー文学資料館編 光文社文庫 2003.07.20
  3. 『国内戦後ミステリ作家 作品目録 極私的・拾遺集』
    『国内戦後ミステリ作家 作品目録 極私的・拾遺集』 戸田和光編 2010.09.29
  4. 「名古屋探偵小説史」福田祥男
    裸形 1963.04〜1964.11(4回)
  5. 一部は戸田氏に御教示頂きました。
  6. 「探偵作家の足跡」黒田明
    新青年趣味19号 2019.05.05
  7. 一部は黒田氏に御教示、テキスト提供頂きました。
  8. ほか



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夢現半球