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久米康之作品を読む


    久米康之(くめやすゆき)略年譜
1955.11 浜松市で生まれる
197x.xx 浜松西高校卒業
1980.xx 「猫の交差点」を宇宙塵に発表
1983.06 『猫の尻尾も借りてきて』をソノラマ文庫で発表


    「猫の交差点」 (宇宙塵179号 1980.xx.)
    『破局のおすすめ 新「宇宙塵」SF傑作選1』山田正紀ほか(柴野拓美編) 河出文庫 1987.12.04
     猫より美しい女はいない。写真家、竹原純三の信念だ。彼の車のボンネットで仔猫が居眠りしていても追い払うことはしない。「ガロン、いらっしゃい」清楚が女性は子猫を抱き上げると、ゆっくり子猫のひげを引っ張った。逃げていく子猫。「どうしてもガロンを見つけないといけないんです」彼女は行方不明になった猫型の小型核融合炉内蔵ロボットを探しているという。今の時代の人に見つかると帰るべき未来がなくなってしまう時の交差点。二人の猫探しがはじまる。
     声に反応するということでいかに呼びかけるか、という展開よりも二人の想い、殊にその方法を見つけた純三の葛藤からが急転直下。未来から来た状況説明も用意周到。そして、そういう終わり方をするとは。余談ですが、竹原純三の本棚には『幻の女』『ブラウン神父の童心』『猫の舌に釘をうて』『夏への扉』『ボッコちゃん』『タイムマシンのつくり方』……が。(2001.04.26)

    『猫の尻尾も借りてきて』 ソノラマ文庫 1983.06.30

     東林工業中央研究所林研究室の助手、村崎史郎は小電力小型音声認識コンピューター ニタカの開発者だ。彼は東社長の秘書の大野亜弓に言い寄られているが、林の遠縁にあたる研究助手の矢野祥子に想いを寄せている。祥子22歳の誕生日、ニタカに促されてプレゼントを渡すことができたものの、昔からの恋人に会いに行ったと告げられる。さらにその後、祥子が殺されたと連絡が入った。不可解な行動をとった祥子。犯人は見つからない。「タイムマシンがあればなあ」史郎のつぶやきに林は「あるよ」と。秘密裏に製作プロジェクトは進み、ついに過去へとむかう史郎。そこで見たものは。そして事件の真相とは。そして……。
     抒情性はお約束(?)として、とにかく伏線がうまい。時間経過の前後の出来事が全て意味を持ってくる。そればかりでなく、名前や物や言葉にいたるまで、用意周到さは脱帽。1995年の設定ですが、今でも違和感はほとんどない。ワープロうんぬんだけは時代を考えればご愛敬。(2001.04.26)


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