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大阪圭吉 作品

Since: 2023.05.28
Last Update: 2023.05.28
略年譜 - 探偵小説 - 随筆 - 著書
注)このページのリストは、小林氏の小林文庫「大阪圭吉」をベースにしてその後刊行されたものを追加しています。
 創元推理文庫『銀座幽霊』収録の作品リストが増版で更新されていますがこのページのリストは未照合です。
 「大阪圭吉研究」手塚隆幸編への再録は不明で記載していません。
注)小林文庫リストからの更新分はその後の刊行分、自筆作品リスト分の追加のほか以下を追加訂正しています。
 「大いなる沈黙」→「沈黙のおけさ水兵(明朗色頁)」大坂圭吉
 「産旗揚る細倉鉱山」→「増産旗揚る細倉鉱山」1943.07.
 「潜水艦と地底戦士」戦線文庫59号銃後読物版1943.09.
 著書未収録の戦線文庫の戦地版と銃後読物版は目次などによって載っている版を記していますが未記載の版でも掲載されているかもしれません。不明の作品もあります。
注)題名は生前最終の新字対応題名を原則としていますが独断でより一般的に知られていると思われる初出題名も用いています。

      大阪圭吉(おおさかけいきち)略年譜

    1912.03.20(明治45年)  愛知県新城にて生まれる。本名は鈴木福太郎
    1931.03.  日本大学商業学校(夜間)卒業
    1932.10.  「デパートの絞刑吏」が新青年に掲載
    1934.07.  名古屋探偵倶楽部(ぷろふいるにて呼びかけ)が結成され第一回会合に参加
    1934.09.  「とむらい機関車」をぷろふいるに掲載
    1936.06.  『死の快走船』をぷろふいる社より刊行
    1936.07.〜12.  新青年に毎月短篇を6回連続で掲載
    1937.05.  「坑鬼」を改造に掲載
    1941.12.  『海底諜報局』を熊谷書房より刊行
    1942.07.  上京、日本文学報国会勤務
    1943.08.  召集令状により入隊
    1945.07.22(昭和20年)  ルソン島にて戦病死

    筆名は、大阪圭吉、大坂圭吉、岬潮太郎、(坂上蘭吉(投稿))

      (国DC)は国立国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開されています
      (国DC※)は国立国会図書館デジタルコレクション個人送信(ログイン必要)で公開されています(今後非公開になる可能性もあります)
      (青空)は青空文庫でインターネット公開されています
      (小林)は小林文庫 の 大阪圭吉でインターネット公開されています
      (藤原)は藤原編集室「本棚の中の骸骨」の「読物と資料のページ」でインターネット公開されています



      探偵小説、その他の小説

  1. 「デパートの絞刑吏」 [青山喬介]
    ( 新青年 1932.10. )
    ( 『死の快走船』 ぷろふいる社 1936.06.05 )(国DC※)
    幻影城 1976.02.
    『13の凶器』渡辺剣次編 講談社 1976.03.08
    『とむらい機関車』 国書刊行会・探偵クラブ 1992.05.25
    『凶器の蒐集家』鮎川哲也監修、山前譲編 青樹社文庫(あ-01-03) 1996.03.10
    『とむらい機関車』 創元推理文庫(Mお-02-01) 2001.10.26
    ( 『日本ミステリー名作集1』フロンティア文庫編 フロンティア文庫085 2005.05. )
    『甲賀三郎・大阪圭吉 ミステリーレガシー』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-51) 2018.05.20
     新聞記者の私と青山喬介は墜死事件現場であるRデパートへ向かった。従兄弟の司法主任の話では、被害者は宿直員野口達一で一昨日盗まれた真珠の首飾りが近くに落ちていたという。絞殺された後に落されていたこと、擦過傷があることもわかった。青山喬介は屋上を調べ……。
     論理的に解決していく作品。十分とはいえないが他の可能性の排除もされている。題名が上手い。秀作。
  2. 「カンカン虫殺人事件」 [青山喬介]
    ( 新青年 1932.12. )
    ( 妖奇 1949.06. )
    『とむらい機関車』 創元推理文庫(Mお-02-01) 2001.10.26
     青山喬介と私は行方不明となっていたK造船工場所勤務の原田喜三郎と山田源之助のうち原田の惨殺死体が海上に浮かび上がったという事で工場まで来た。死体を見分し犯行現場を、現場から見つかったものを手懸りに青山喬介は……。
     勘が当たったというような解決で絞り込む論理性はほぼない。印象的な題名と場所の設定と死体の現れ方にやや面白味がある。
  3. 「白鮫号の殺人事件」 [青山喬介]
    ( 新青年 1933.07. )
    『とむらい機関車』 創元推理文庫(Mお-02-01) 2001.10.26
     青山喬介と私はキャプテン深谷の死体がは自家用ヨットの白鮫号に曳航されているのが発見された事件を調べるため岬の邸にたどり着いた。邸には夫人と女中の君と下男兼書生の早川、友人黒塚伝次と夫人の弟の洋吉がいた。夫人は深谷の怯えたような言葉を聞いていた。白鮫号を調べる青山喬介。長海松、粘土、泡の跡、チョコレートチューブ、マベ貝、石、鳥喰崎、足跡、アセチリンランプ……。
     後「死の快走船」に改稿。論理的に導き出していく作品。前提条件の誤差や動機は良いとしても作為理由は良くわからないまま。
  4. 「花嫁の塑像」大坂圭吉
    ( 新城文学 1933.07. )
    『沙漠の伏魔殿 大阪圭吉単行本未収録作品集3』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.10.25
     考古学者兜山肇博士は若い妻に死なれて研究に没頭し始めた。重要古物蒐集室のくもり窓越しから見える女人の彫像に美術研究所の生徒が深い愛情を感じていた。彫像は痩せてきた。そして首が……。
     後に「塑像」に改稿されたコント。あとがきを読むまで対比には気付かなかった。
  5. 「氷」
    ( 新城文学 1933.08. )
    『沙漠の伏魔殿 大阪圭吉単行本未収録作品集3』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.10.25
     熱い国の高原から砂漠を爆走する急行列車の車内。娘の望みで父は氷をボーイに求めるが摘んでいなかった。青年は氷を差し出す。二度三度、もうこれ以上は分けてあげられません。父は売ってくれと頼むが……。
     冷たくなる話。砂漠でなければ実話であってもおかしくない気がする。
  6. 「気狂い機関車」 (「気狂ひ機関車」「狂った機関車」)[青山喬介]
    ( 新青年 1934.01. )
    ( 『死の快走船』 ぷろふいる社 1936.06.05 )(国DC※)
    ( 『鉄道推理ベスト集成1』鮎川哲也編 徳間書店トクマノベルス 1976.11.05 )
    『シグナルは消えた トラベル・ミステリー1』鮎川哲也編 徳間文庫(134-03) 1983.02.15
    『とむらい機関車』 国書刊行会・探偵クラブ 1992.05.25
    『とむらい機関車』 創元推理文庫(Mお-02-01) 2001.10.26
    『甲賀三郎・大阪圭吉 ミステリーレガシー』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-51) 2018.05.20
    ( 『狂った機関車 鮎川哲也の選んだベスト鉄道ミステリ』鮎川哲也選、日下三蔵編 中公文庫(あ-94-01) 2021.02.25 )
     青山喬介と私はM警察署の内木司法主任からの急電でW停車場へ向かった。被害者はH機関庫の機関助手で線路と給水所の間で後頭部打撲傷で死んでいた。顕微鏡による調査での凶器推測、血の跡から駅端での第二の刺殺死体の発見。機関手と助手のいない無人の73号タンク機関車は走り続けて行ったらしい。喬介は現場の状況から……。
     現場の様子から犯人の特徴を絞り込んでいくトリック主体の作品。最後の場面と題名は印象的で上手い。個人的にはキートン映画の一場面を思い起こされる。佳作。
  7. 「花束の虫」 [大月対次弁護士]
    ( ぷろふいる 1934.04. )
    ( 『死の快走船』 ぷろふいる社 1936.06.05 )(国DC※)
    『「ぷろふいる」傑作選 幻の探偵雑誌1』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-01) 2000.03.20
    『銀座幽霊』 創元推理文庫(Mお-02-02) 2001.10.26
    『甲賀三郎・大阪圭吉 ミステリーレガシー』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-51) 2018.05.20
     瑪瑙座出資者の岸田直介の怪死の報に大月対次弁護士と秘書の秋田は屏風浦付近の別荘へ行き比露子夫人と警官から話を聞く。小型のトランクを持っていた直介と小柄な男が崖の上で争い突き落としたのを夫人と百姓夫婦が遠目で見ていた。訪問客は総務部長兼脚本家上杉逸二、女優中野藤枝と堀江時子。現場を調べる。足跡、林檎の皮、花束の虫と書かれた紙片。帰京した大月はダンスホールを巡り……。
     錯覚を利用した作品。探偵が何を調べているかという謎も面白い。林檎の皮の件は既存だろうか、初めてのような気がする。
  8. 「なこうど名探偵」 (「なかこうど名探偵」)[大手鴨十]
    ( 新青年 1934.07. )
    ( 『死の快走船』 ぷろふいる社 1936.06.05 )(国DC※)
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
    『甲賀三郎・大阪圭吉 ミステリーレガシー』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-51) 2018.05.20
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     洗濯屋の親方多田音平が呼ばれて大手果菜園を訪れると主人大手鴨十郎がてんかんで死んだという。二十二年下の細君スミは身内に知らせに音平を残して行く。と、鴨十郎は起き上がり死んだまねをした理由を話す。五日前、トマト畑が荒らされた。足跡、ハンカチ、食べ残しのトマト。三日前に再び現れた男。鴨十郎は音平に聞くと……。
     犯人を絞り込んでいく過程と手段は面白い。結末はどうしても違和感がある。
  9. 「塑像」
    ( ぷろふいる 1934.08. )(藤原)
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     考古学者兜山肇博士は若い妻に死なれて研究に没頭し始めた。重要古物蒐集室のくもり窓越しから見える女人の彫像に美術研究所の生徒が深い愛情を感じていた。彫像は痩せてきた。尊敬から疑惑、非難へ。そして首が……。
     設定は上手くオチも効いている。「花嫁の塑像」を原型とするコントで、作者の狙いの部分が強調されている。
  10. 「とむらい機関車」 (「とむらひ機関車」)
    ( ぷろふいる 1934.09. )
    ( 『死の快走船』 ぷろふいる社 1936.06.05 )(国DC※)
    ( 別冊宝石 1956.06. )
    ( 『下り”はつかり”』 光文社カッパノベルス 1975.06.25 )
    『下り「はつかり」 鉄道ミステリー傑作選』鮎川哲也編 光文社文庫(あ-02-03) 1986.06.20
    『日本探偵小説全集12 名作集2』中島河太郎監修 創元推理文庫(400-12/Mん-01-12) 1989.02.03
    『とむらい機関車』 国書刊行会・探偵クラブ 1992.05.25
    『とむらい機関車』 創元推理文庫(Mお-02-01) 2001.10.26
    『甲賀三郎・大阪圭吉 ミステリーレガシー』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-51) 2018.05.20
     機関庫のあるH市に毎年出かける元鉄道員の話。よく轢殺事故を起こすD50・444号の機関手長田泉三と機関助手杉本福太郎は事故後四十九日の間花輪を操縦室にブラ下げる事にした。毎週豚を轢く事三度、安藤巡査の報告ではB町付近で盗まれた豚だという。機関庫主任岩瀬、七原検車所主任、機関庫助役片山が調査をし、四度目。そして片山助役は……。
     どちらかといえば動機の謎が主の物語。設定や構成は細かなところまで良く考えられていて、本格とは言い難いが謎と物語の融和が上手い。秀作。
  11. 「人喰い風呂」 (「人喰ひ風呂」)
    ( 新青年 1934.12. )
    ( 『死の快走船』 ぷろふいる社 1936.06.05 )(国DC※)
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
    『甲賀三郎・大阪圭吉 ミステリーレガシー』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-51) 2018.05.20
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     床屋の金さんは閉店に近い頃に銭湯やなぎ湯に浸っていると、お花ちゃんが女湯の衣服戸棚をみると三人しかいないのに四人分の着物を見つけた。三助の芳公が探すが誰もいない。隣のクスリ屋の後妻お民さんは見た事もない青白い顏の女が湯船にいたという。五日後にもまた同じ事件が起った。主人の甚平に聞く近さんとラジオ屋の時さん。名探偵だったらと残された着物を調べる。しみも窪みもないお花ちゃん……。
     題名は怪奇風だがユーモア探偵小説。勘ではあるが事前描写と手懸りの連想との繋がりの飛躍が面白い。
  12. 「雪解」
    ( ぷろふいる 1935.03. )
    ( 『死の快走船』 ぷろふいる社 1936.06.05 )(国DC※)
    『とむらい機関車』 創元推理文庫(Mお-02-01) 2001.10.26
    『甲賀三郎・大阪圭吉 ミステリーレガシー』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-51) 2018.05.20
     木戸黄太郎は三年、金鉱脈を探して北海道の片倉砂金池に近い温泉旅館鳳鳴館に来た。片倉紋平と娘キエも滞在していて池の氷が解けるのを待って輸入搬送中の機械を導入し池の砂を浚うという。犬塚八郎理学士が発見し買い取ったという。黄太郎は札幌へ行くという片倉を殺害、死体は……。
     オーソドックスな倒叙作品。用語の使用や描写と構成が上手くサスペンスと迫力は感じる。後日譚として博士のその後が気になる。
  13. 「石塀幽霊」 [青山喬介]
    ( 新青年 1935.07. )
    ( 『死の快走船』 ぷろふいる社 1936.06.05 )(国DC※)
    『13の密室』渡辺剣次編 講談社 1975.05.12
    『13の密室』渡辺剣次編 講談社文庫(AX149/わ-04-01) 1979.10.15
    『とむらい機関車』 創元推理文庫(Mお-02-01) 2001.10.26
    『江戸川乱歩と13人の新青年 論理派編』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-29) 2008.01.20
    『甲賀三郎・大阪圭吉 ミステリーレガシー』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-51) 2018.05.20
     真夏の午後、吉田雄太郎君はポストの集配に来た老配達夫に渡したとき、秋森家の石塀に沿った先の表門で白い浴衣を着た二人の男が馳け去るのを見た。門のところには家政婦の戸川そめ子が殺されていて反対側からきた夫の戸川差配人は誰も通らなかったという。枝道は秋森家の勝手口のみ。チンドン屋の知らせで駆けつけた蜂須賀巡査は二組の下駄のあとを見つける。秋森家には辰造、双子の息子宏と実と二人の女中がいた。蜂須賀巡査は疑問を抱き雄太郎に確認、雄太郎は青山喬介に助けを求め……。
     不可思議な謎とその解決の作品。謎は面白く状況設定は良く考えられているが偶然性が強すぎる。老配達夫なら知っていたような気がしないでもない。
  14. 「燈台鬼」 (「灯台鬼」)[東屋三郎]
    ( 新青年 1935.12. )
    ( 『死の快走船』 ぷろふいる社 1936.06.05 )(国DC※)
    ( シュピオ 1937.05. )
    ( 妖奇 1948.12. )
    『鮎川哲也の密室探求』鮎川哲也編 講談社 1977.10.28
    『密室探求 第一集』鮎川哲也編 講談社文庫(あ-19-02) 1983.08.15
    『とむらい機関車』 国書刊行会・探偵クラブ 1992.05.25
    『爬虫館事件 新青年傑作選』 角川ホラー文庫(H800-06) 1998.08.10
    『銀座幽霊』 創元推理文庫(Mお-02-02) 2001.10.26
    『甲賀三郎・大阪圭吉 ミステリーレガシー』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-51) 2018.05.20
     私と水産試験所所長の東屋は汐巻燈台の異変に駈けつけた。燈台には老看守風間丈六と娘のミドリ、友田看守と妻のあき、三田村無線技手、小使い佐野がいた。燈台の閃光間隔に異常があるとの噂も出ていたがついに消えてしまっていた。老看守はガラスの割れる音と機械が毀れるような音、塔の根元での地響き、三田村技手と出会ったという。呻き声、幽霊の声がしたと二人は言う。塔の上では巨大な石がランプを破壊し友田看守の死体に載っていた。グニャグニャした赤い奴が海に飛び込んだのを見たともいう。塔の根元の波打ち際で見つけた綱と紐……。
     怪奇味を帯びた話。音の順序などの整合性は良く考えられているが論理性は薄い。動機もわからなくはないが異常に思える。
  15. 「闖入者」 [大月対次弁護士]
    ( ぷろふいる 1936.01. )
    ( 『人間燈台』 大東亜出版社 1943.04.15 )
    幻影城 1975.06.
    『13の暗号』渡辺剣次編 講談社 1975.11.08
    『とむらい機関車』 国書刊行会・探偵クラブ 1992.05.25
    『銀座幽霊』 創元推理文庫(Mお-02-02) 2001.10.26
     富士山北鹿の岳院荘の二階の東室で洋画家川口亜太郎が打撲による脳震盪で死んでいた。亜太郎は友人金剛蜻治、妻不二と到着後に部屋で写生画を描いていたが残された絵には南室からしか見えるはずのない富士山が描かれていた。蜻治は風呂、不二は南室、別荘番戸田安吉は薪割りで裏にいて、安吉の妻とみは買い出しで外出していた。別荘主津田白亭は大月対次を伴い……。
     ダイイングメッセージとも思われる設定が面白い。トリック自体は知っていた人もいたと思われるが問題視されなかったのだろうか。
  16. 「案山子探偵」 [大手鴨十]
    ( 月刊探偵 1936.05. )
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     流線型かぼちゃと名付けて売り出そうとした大手鴨十だが畑が夜盗に襲われた。足跡から左足に障害があるらしい。女中のおきみは心あたりがないという。鴨十は禁札を立て、案山子を立てた。また荒らされた。近眼らしい。パン屋の親方、活版屋の職人、うどん屋の出前持ち。鴨十は一計をたてる。夜、棍棒を持った男が……。
     犯人を絞っていくユーモア味ある作品。特に掛け合い部分やオチが落語に合っていそう。
  17. 「死の快走船」 [東屋三郎](「白鮫号の殺人事件」[青山喬介]改稿)
    ( 『死の快走船』 ぷろふいる社 1936.06.05 )(国DC※)
    『とむらい機関車』 国書刊行会・探偵クラブ 1992.05.25
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
    『甲賀三郎・大阪圭吉 ミステリーレガシー』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-51) 2018.05.20
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     私と水産試験所の東屋三郎は夫人からの電話で深谷邸にたどり着いた。キャプテン深谷は片足を鱶にもぎとられていたが頭部に殴殺されあともあった。邸には夫人と女中のおきみと下男の早川、友人黒塚伝次と夫人の弟の洋吉がいた。夫人は深谷の怯えたような言葉を聞いていた。白鮫号を調べる東屋三郎。長海松、粘土、泡の跡、体重、マベ貝。鳥喰崎、足跡、アセチリンランプ……。
     「白鮫号の殺人事件」の欠点が解消されている。特に事件の関わり始めと警察との関係が自然になっている。誤差の問題は意表をつかれたといても良い。論理的な展開の話ではある。本格とは言い難いが佳作。
  18. 「三狂人」
    ( 新青年 1936.07. )
    『黄金の書』江戸川乱歩編 まひる書房 1947.06.25
    ( 『短篇集 探偵小説名作全集11』 河出書房 1956.10.25 )(国DC※)
    ( 『昭和前期集 日本推理小説大系6』 東都書房 1961.05.20 )(国DC※)
    ( 高校時代 1961.07. )
    『新青年傑作選 第一巻 推理小説編』中島河太郎編 立風書房 1970.02.25/新装版 1974.12.xx/新々装版 1991.06.10
    ( 『現代推理小説大系8 短編名作集』 講談社 1973.07.08 )
    ( 『大衆文学大系30 短篇(下)』 講談社 1973.10.20 )
    『日本探偵小説全集12 名作集2』中島河太郎監修 創元推理文庫(400-12/Mん-01-12) 1989.02.03
    『とむらい機関車』 国書刊行会・探偵クラブ 1992.05.25
    『銀座幽霊』 創元推理文庫(Mお-02-02) 2001.10.26
     赤沢脳病院は衰退してきて三代目の今では三人の患者と鳥山宇吉老看護人と薬局生兼女中と赤沢院長夫妻だけになっていた。患者は右足で羽目板を叩くトントン、女の着物を着て歌う歌姫、怪我をしたと称して繃帯を巻いている怪我人。朝、裏木戸が開けられ院長と三人の患者がいなくなっていた。外れの土間で脳味噌をとられていた死体。院長は患者に脳味噌を詰め替えなくては、と患者に言っていた。司法主任吉岡警部補ら捜査する。市立精神病院の松永博士の話。やがて歌姫が、怪我人が、そしてトントンが……。
     連続短篇第1話。設定が面白い本格風作品。犯行自体は考えた上で抜けた行動ともとれ、設定と妙に合うようにも思える。どこまで意図されたものだったのだろうか。佳作といえるかどうか簿妙なところ。
  19. 「人間燈台」 (「人間灯台」)
    ( 逓信協会雑誌 1936.07. )(国DC※)
    ( 『人間燈台』 大東亜出版社 1943.04.15 )
    『銀座幽霊』 創元推理文庫(Mお-02-02) 2001.10.26
     老燈台守の話。島の燈台には私と倅政吉と殿村看守夫妻がいたが殿村が対岸の町の病院へ入院し細君は付き添っていた。退院することになり、私は迎えの船を出した。嵐で戻れなくなったが、政吉は一夜を一人で規則正しく燈台の燈を守った。翌日戻ると燈は灯ったまま政吉はどこにもいなかった。五日目、大工道具を入れた袋が二つ無くなっているのがわかった。政吉は……。
     手懸りを得て真相に至る探偵小説的な当時としての美談。あくまでも今の感覚だが、他にも方法がありそうとか念のための確認不足とかを思ってしまう。
  20. 「白妖」 [大月対次弁護士]
    ( 新青年 1936.08. )
    ( 妖奇 1948.06.,07. )
    幻影城 1976.02.
    『とむらい機関車』 国書刊行会・探偵クラブ 1992.05.25
    『銀座幽霊』 創元推理文庫(Mお-02-02) 2001.10.26
    『探偵小説の風景 トラフィック・コレクション(下)』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-34) 2009.09.20
     熱海から十国峠への途中、轢き逃げされた男を見つけて乗せてクーペを追う。十国峠から箱根峠までは有料道路で枝道もない。出札口で重役堀見氏の車が通過したという。箱根峠側は通していないという。堀見氏の別荘へ電話すると車はなく、客が殺されているという。夏川警部補が向かう。別荘には娘の富子、家庭教師のエヴァンス、客の押山英一、別荘番のキヨと敏や母娘がいたという。残されていた凶器のナイフ、消えた車……。
     ナイフの件の伏せ方は舞台設定と共に上手い。車の消失理由は面白くはあるが別の可能性も否定できない。表面上は事件が直に解決した話。
  21. 「あやつり裁判」 (「からくり証人」)[青山喬介]
    ( 新青年 1936.09. )
    ( 『香水夫人』 大東亜出版社 1943.03.15 )
    『あやつり裁判 幻の探偵小説コレクション』鮎川哲也編 晶文社 1988.03.25
    『とむらい機関車』 国書刊行会・探偵クラブ 1992.05.25
    『とむらい機関車』 創元推理文庫(Mお-02-01) 2001.10.26
     裁判所廷丁の話。坂本の家が空巣に入られた事件で洗濯屋の配達夫が公判にかけられていたとき、待合「つぼ半」の女将福田きぬが別の場所で見たと証言し無罪になった。半年後、放火事件で被告がいたという場所にはいなかったと証言し有罪になった。三月後、殺人事件で被告と現場付近でぶつかったと証言。自ら証言すること三度目と知った菱沼弁護士は女将と事件の関係性などを調べるが全くつかめない。青山に相談すると写真を撮るように言われ……。
     連続短篇第3話。意外な展開と結末といえる作品。少々神がかり的、見込みが当たっただけともとれる。題名は上手く、妙にユーモア味が感じられる。
  22. 「銀座幽霊」
    ( 新青年 1936.10. )
    『密室探求 第二集』鮎川哲也編 講談社文庫(あ-19-03) 1984.01.15
    『とむらい機関車』 国書刊行会・探偵クラブ 1992.05.25
    『銀座幽霊』 創元推理文庫(Mお-02-02) 2001.10.26
     カフェ青蘭の向いの恒川煙草店には房枝未亡人と娘の君子、店員の澄子、房枝の情夫達次郎がいた。青蘭の女給たちは二階から房枝が澄子を口説いているのを見る。窓は閉じられ、その後しばらくして人間の倒れる音、電気が消え窓硝子が割れ、血まみれの剃刀を持った女を女給たちは見る。客らが駆けつけると房枝と言って澄子は死んだ。警官が来て調べると房枝は押入れの中で死んでいた。澄子より一時間前に。青蘭の支配人西村は……。
     連続短篇第4話。錯誤を主とした不可能犯罪作品。手掛かりもそれなりにある。トリックと生かす場面設定と最後の余分な一言は面白く佳作といえるがそれのみとも言えて微妙なところ。
  23. 「動かぬ鯨群」 [東屋三郎]
    ( 新青年 1936.11. )
    ( 妖奇 1949.03. )
    宝石 1963.03.
    『とむらい機関車』 国書刊行会・探偵クラブ 1992.05.25
    『銀座幽霊』 創元推理文庫(Mお-02-02) 2001.10.26
     根室の酒場の女の亭主小森安吉は捕鯨船北海丸の砲手で一年前に浸水で沈没した北海丸に乗っていた。丸辰の親爺は仔鯨を撃つ捕鯨船には祟りがあるという。安吉が突然現れ時坊を連れて逃げようという。女が倉庫横に戻ったときには安吉は手銛で殺されていた。同じ岩倉会社の「釧路丸の」と言い「船長だ」と書き残していた。釧路丸は沖合へと消え去っていた。視察に来ていた東屋が事件に乗り出す。釧路丸は数日前まで鬱陵島にいたという。鯨の群を見つけた東屋は……。
     アリバイ物の一種といえそう。題材や舞台や動機は面白く題名も良い。現実的には難しい状態と思えるが。
  24. 「寒の夜晴れ」
    ( 新青年 1936.12. )
    『紅鱒館の惨劇』鮎川哲也編 双葉社 1981.12.10
    『日本探偵小説全集12 名作集2』中島河太郎監修 創元推理文庫(400-12/Mん-01-12) 1989.02.03
    『とむらい機関車』 国書刊行会・探偵クラブ 1992.05.25
    『銀座幽霊』 創元推理文庫(Mお-02-02) 2001.10.26
     私鳩野は北国H市で女学校の国語教師をしていた時、友人に英語教師浅見三四郎がいた。彼が臨時講師で十二月二十五日まで不在、留守宅には妻比露子と一人息子春夫の他に従弟の及川が来ていた。二十四日の寒の夜晴れの時、女学生の美木が凶事を知らせに来た。スキーをつけて駆けつけると比露子と及川が殴殺されて春夫はいなかった。窓の外にはスキーの跡が片杖の跡と共に残されていた。私は跡を追うと原っぱで舞い上がったように消えていた。知らせで来た物理教師の田部井が現場を見て子供の行方を……。
     連続短篇第6話。一見不思議に見える状況から解明していく話。設定は上手いが少し無理があるような。昔の普段履きのスキーならあるいは、とも思わなくもないが。
  25. 「昇降時計」 (「恋慕時計」改題)
    ( 新青年 1937.04. )
    ( 『香水夫人』 大東亜出版社 1943.03.15 )
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     千丸屋デパート玩具売場の宇野球太郎君は四つあるうちの右端のエレベーターの針が103番の黒子嬢の時に地階から屋上へ止まらず動くことに気付いた。15分から30分後に再び無停止がおこる。そしてその間、ところどころの階に止まるが短く扉は開閉していないようだった。宇野球太郎君はそれをメモし……。
     エレバーターを利用するのは意外性が感じられる。ただ時間もかかりずっと見てはいられないかと思う。良くも悪くも時代を感じさせる作品。
  26. 「坑鬼」
    ( 改造 1937.05. )
    ( 『続13の密室』渡辺剣次編 講談社 1976.06.28 )
    『とむらい機関車』 国書刊行会・探偵クラブ 1992.05.25
    『とむらい機関車』 創元推理文庫(Mお-02-01) 2001.10.26
     中越炭礦滝口坑、お品と峯吉夫婦は二人だけの採炭場をもっていた。炭車から飛び下り抱きつくお品。と、炭車は脱線、安全燈が落下、焔が広まった。峯吉が出てこないうちに監督が防火扉を閉める。技師、工手が来る。扉を粘土で塗込める。鎮火の状態の検定に残った丸山技師が炭塊で撲殺された。係長と請願巡査が峯吉の両親とお品とお品の兄岩太郎を聴取する。瓦斯の発生で残った古井工手が殺されたと浅川監督。水飲み場にあった峯吉の安全燈。立山坑の菊池技師が来る。塗込めに関わった浅川監督を囮に、しかし彼もまた。鎮火後の坑道では……。
     逆密室といえる作品。周到な舞台設定と状況設定。伏線や犯人の除外も悪くない。迫力もあり動機も意外性がある。最後の発覚も必然的といえて面白い。トリックなどのオリジナリティを考慮しなければ傑作。
  27. 「水族館異変」
    ( モダン日本 1937.06. )(小林)
    『大阪圭吉作品集成』小林眞編、小野純一編 盛林堂ミステリアス文庫 2013.04.12
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     中学四年の清は何度も水族館に通っていた。パノラマ室での南海美人鮑取りの実況が目当てだった。伊太郎と志摩の後家お鯉が始めた興行で成功して若いお春が加わっていた。伊太郎の小遣い稼ぎ、お春との仲、お鯉が気付き……。
     最後は幻想的な異色作品。さすがに筋を引く程度と思われるが舞台設定は考えられている。
  28. 「唄わぬ時計」 (「唄はぬ時計」)
    ( 新青年 1938.01. )
    ( 『人間燈台』 大東亜出版社 1943.04.15 )
    『悪魔黙示録「新青年」一九三八』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-38) 2011.08.20
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     私は牧と知り合い五日もたっていないのに訪れようとしている。彼は三流の骨董品が好きで謎や秘密を明かす力を持っていた。私は狂った時刻に唄を歌ったり歌わなくなったりした旧式の目醒時計を彼に送って見てもらっていた。彼は隅田アパートで起った殺人事件に関する発見をしたという。細島あきが小田真次と住むようになり、やがて小田の姿が見えなくなり、ホルマリン臭から部屋で屍体が見つかった。凶器などから姿を消したあきが捕えられ有罪判決を受けていた……。
     解決の手懸りとなったのが意表をつく作品。時局の反映度合いが強くなってきているがそれを上手く利用している。
  29. 「情死」
    ( 近代生活 (百貨サーヴィス社) 1938.02. )
  30. 「大百貨注文者」 (「百貨註文主」)[大月対次弁護士]
    ( 新青年増刊 1938.04. )
    ( 『人間燈台』 大東亜出版社 1943.04.15 )
    『銀座幽霊』 創元推理文庫(Mお-02-02) 2001.10.26
     東京ゴム会社社長蒔田幸造宅へ主人の留守中に来て夫人が対応したのはピストルの見本を持ってきた水島銃砲火薬店の番頭、棕櫚繩を届けにきた鍬半商店の番頭、弁護士大月対次、銀座マネキン協会のマネキンガール、大島椿ポマードを届けにきた大島椿製油所の店員、割烹薮常の女将、赤革の短靴を届けにきた靴屋の親爺。帰宅した幸造は頼んでいないという。前日から行方不明の神山秘書が田増が借りていた銀座裏平田ビル二階4号室で殺されていて、新製品の書類が自宅金庫からなくなっていた。薮常に七人が集まることになり、大月は……。
     ユーモア小説調の作品。冒頭と展開とオチは面白いのだが、さすがに注文の意図と実行は難しいかと。
  31. 「トンナイ湖畔の若者」 (「トンナイチャ湖畔の若者」改題)
    ( 新青年増刊 1938.07. )
    ( 『ほがらか夫人』 大都書房 1943.01.15 )(国DC※)
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     明治三十七年の南樺太のトンナイ湖畔。石狩で育った富内村の知古美郎(チコビロ)は落帆村の宋代(ソヨ)と出会う。湖と海が合わさるのホロには函館の佐々木三郎の漁場がある。帆船で来た番頭岩五郎は露西亜と戦争になったといい野幌の越年者と共に引き揚げていった。知古美郎ら漁場の見張りを引き受ける。露西亜の巡察隊が来て徴発していく。スレピコ大尉の無理難題、脅迫、そして……。
     日露戦争から三十年以上たっているので歴史秘話という感じか。現代では差別とプロパガンダ味を感じてしまうが当時としては普通の美談だったと思われる。
  32. 「扮装盗人」
    ( 映画ファン 1938.09. )
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     怪談映画撮影中の撮影所で白装束、数珠、幽霊の鬘が順次盗まれていった。P監督は封切りまで間もないこともあり撮影を強行する。と、盗まれた品が……。
     コント風作品。明確にはならないがあっても不思議ではない。
  33. 「証拠物件」
    ( エス・エス 1938.11. )
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     名誉と態面を尊重する紳士冬山冬介氏が惨憺たる姿で歩いていた。友人に待ち呆けされ帰宅途中に追剥に会ったのだ。現場からむしり取った二人の怪漢のネクタイを見つけ……。
     確かに大事な証拠物件となるひねりの効いた話。
  34. 「三の字旅行会」
    ( 新青年 1939.01. )
    ( 『香水夫人』 大東亜出版社 1943.03.15 )
    『日本探偵小説全集12 名作集2』中島河太郎監修 創元推理文庫(400-12/Mん-01-12) 1989.02.03
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     東京駅赤帽の伝さんは毎日違った婦人が午後三時着の三等車の三両目から三の字が書かれた荷札の手荷物を迎えの男に持たせて降りてくるのに気付いた。やがて伝さんが男に話しかけ尋ねると三枝という娘を亡くした慈善家が東京旅行を提供している三の字旅行会の案内人だという。或る日、改札係の宇利氏が伝さんのところに来て……。
     上手い話。さすがに休日は欲しいところ。
  35. 「求婚広告」 (「求婚廣告」「謹太郎氏の結婚」)
    ( 週刊朝日 1939.01.02 )
    ( 『ほがらか夫人』 大都書房 1943.01.15 )(国DC※)
    『大阪圭吉作品集成』小林眞編、小野純一編 盛林堂ミステリアス文庫 2013.04.12
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     独身の石巻消ゴム商会の石巻謹太郎は結婚しようとし新聞産業広告の求婚広告に目を通すようになった。履歴書を送ると水田静子から写真と手紙が届いた。一度自宅に来てほしいという。当時訪れると広告も手紙も出していないという。二人は丸山丸次郎弁護士に相談に行き……。
     ユーモア探偵小説。状況設定や手懸りの得かたなどよく考えられている。
  36. 「沙漠の伏魔殿」
    ( 奇譚 1939.04. )
    『沙漠の伏魔殿 大阪圭吉単行本未収録作品集3』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.10.25
     蒙古、オボ祭から徳王府への帰途に邦子と二人の支那人を乗せた馬車の輪が壊れ、三人は通りすがりの喇嘛僧の馬車に乗せてもらう。誘拐だと知った娘たちは持ち物や身に付けているものを投げ捨てていく。蒙古軍騎馬兵嗄爾丹が集落へ来ると落とし物が拾われていた。追う騎馬兵だがゴビ砂漠へ入り込む。喇嘛廟に幽閉された三人、拾った服を着ていた侍女、廟主桑達、武装した喇嘛僧と蒙古軍……。
     冒険小説。伏魔殿発見の経緯は探偵小説的。その後の経緯はさすがに無理すぎる。
  37. 「香水夫人」 (「愛情盗難」改題)
    ( 週刊朝日 1939.05.07〜28 )
    ( 『香水夫人』 大東亜出版社 1943.03.15 )
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     宇津君は偶然中学時代の親友の帝都新聞モリ健(森健次)に出会い、酔って芙蓉荘に帰るが三階のところを香水夫人(丹羽あおい)の二階四号室へ入ってしまった。戻ってきた香水夫人は直に出て管理人事務所の小母さんを連れてきて大事な物が入ったケースが盗まれたという。隠れていた宇津君は逃げ出せたが帽子を忘れてしまった。翌日、香水夫人は小母さんに勘違いだったと言い、モリ健と合っていた。女にとって大事なものは愛情と言う叔母さんの娘瑞枝さん。モリ健は盗人になりすまし、宇津君は一階四号室のことを聞いて……。
     ユーモア味ある探偵小説。謎と解決は比較的単純だが、何が盗まれたかというのが興味深い。
  38. 「正札騒動」
    ( 新青年 1939.06. )
    ( 『香水夫人』 大東亜出版社 1943.03.15 )
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     デパート丸菱の家具売り場、母娘は立派な箪笥を買い求める。五十円を出すが百四十円の品、正札が取り替えられていた。304番嬢と売場主任は呆然とする。新婚夫婦が応接セットを求める。正札が取り替えられていた。天神髭氏が応接机を求める。正札が取り替えられていた。304番嬢は警備員牧氏に打ち明けると……。
     いたずらのような事件から思わぬ事が判明する話。ありふれた真相ではあるが、異なる客と店員の反応など構成は面白い。
  39. 「人間氷山」岬潮太郎
    ( 奇譚 1939.07. )
  40. 「花嫁の病気」
    ( 新青年 1939.08. )
    ( 『人間燈台』 大東亜出版社 1943.04.15 )
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     松野君とシナ子さんの新婚生活は円満だったが、松野君はふとシナ子さんの妙な癖に気付いた。月に一度、夫のものをこっそり盗み、見つけられれば黙って白状せず、翌日にはケロリとする。松野君は親友の平田医学士に相談する。松野君がアドバイス通りにすると……。
     コント。戦時らしい結末だが時代によらず効果はありそう。
  41. 「隆鼻術」
    ( 名作 1939.09. )
    『マレーの虎 大阪圭吉単行本未収録作品集2』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.03.28
     丹下瞭太郎夫人高子は結婚前にパラフィン注入で鼻を高くしていたが夫には秘密にしていた。或る日、鼻をぶつけて曲ってしまった。八年前に施術したドクトル牧氏を訪れると三日間の入院と大金が必要だという。翌朝、高子夫人が失踪し誘拐と目されているという新聞記事がでていた。高子夫人は速達を出し……。
     単純だがユーモラスな作品。題材選択が上手いのと瞭太郎の態度も良い味をだしている。
  42. 「懸賞尋ね人」 (「尋人をする女」「尋ね人をする女」改題)
    ( にっぽん 1939.09. )
    ( 戦線文庫11号戦地版 1939.09. )
    ( 『人間燈台』 大東亜出版社 1943.04.15 )
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     やくざ風の男設楽新四郎は妻ナルミと喧嘩し銀座を歩いていると見知らぬ男から会いたがっている人がいると言われる。男を振り切りさらに大学生を振り切って帰宅するとハルミが懸賞尋人の新聞広告を差し出す。三日限りの一千円の懸賞にナルミが美川足助として新四郎を連れて美川福江宅を訪れるが……。
     替玉作戦の結末は銀座の様子との対比もあり意外性を感じてしまう。
  43. 「告知板の女」 (「告知板の謎」)
    ( 新青年 1939.10. )
    ( 『香水夫人』 大東亜出版社 1943.03.15 )
    『大阪圭吉作品集成』小林眞編、小野純一編 盛林堂ミステリアス文庫 2013.04.12
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     銀行員木谷龍太郎君は課長の日曜出張の影響でタイピスト嬢三保子とのはじめての待ち合わせに三時間半も遅れてしまった。M子からK様へ、代々木駅で待つと停車場の掲示板にある。代々木駅に行くと駒込駅で。駒込駅では原宿駅で。原宿駅では万世橋で。万世橋では浜松町で。そして鶴見駅で最後の伝言。しかし妙な数字がある。木谷君は次の場所へと……。
     一種の暗号もの。偶然だからこその面白さがある。ただ心理的に回りくどいことをするとは思えないが。
  44. 「手紙を喰うポスト」 (「手紙を喰ふポスト」「恋のお手柄」改題)
    ( 奇譚 1939.11. )
    ( 『仮面の親日』 大道書房 1943.04.25 )
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     内気な理髪店芙蓉館の時さんは橘理髪店のお澄ちゃんを思って縮尻る。弟子の民公は笑う。時さんは手紙を書きポストへ投函するが切手を貼り忘れた。ポストの周りをうろつく時さん。夜店の古本屋が胡散臭げに見る。翌朝郵便屋を待ってポストの中を改めるが大事な手紙がない。改めて切手を貼って投函し見張っていると……。
     ユーモア味ある作品。舞台設定が良い感じ。題名は改題後の方が絶対に良いと思う。
  45. 「秘密」
    ( 新青年 1940.01. )
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     堤舟子夫人は橋本龍夫からの手紙を受け取る。夫柳作と龍夫が下宿していたところの一人娘が舟子で、龍夫は五年前に満洲へ行き最近戻ったという。やましいことはないが秘密で文通は続く。舟子夫人は止めるにあたり最後に直接会おうと……。
     サスペンスを感じる作品。読みが誤っていたらどうなっていたことやら。
  46. 「寝台車事件」 (「新婚寝台車」改題)
    ( 週刊朝日 1940.01.01. )
    ( 『仮面の親日』 大道書房 1943.04.25 )
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     利根君と月枝さんは新婚旅行で東京から神戸行の寝台列車に乗る。下段に月枝さん、上段に利根君しかとれず顔をみることもできない。向い側には眼鏡の外人とカーキ服の日本人。眠れない利根君は便所に行って戻るとき間違えて女の人の寝台に入りそうになった。なんとか納まったが妙に思い……。
     ほのぼの感があって利根君視点では良い感じ。途中で行方不明になったと思わせたかったのだろうか、意図が今ひとつわからない。
  47. 「慰問文夫人」 (「身代り花嫁」改題)
    ( ユーモアクラブ 1940.02. )
    ( 『ほがらか夫人』 大都書房 1943.01.15 )(国DC※)
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     坂巻稲次郎の奥さん阿佐子夫人は素晴らしい慰問文書き、慰問袋に入れて送られた。兵隊さん水野義夫から礼状が届く。夫人は直接手紙を送る。女学校を出たてのような手紙をやりとりするうちに義夫は帰還することになった。困った夫人は夫に相談し、姪のマチ子に……。
     意外といえば意外なオチ。初出の題名は
  48. 「愛情試験」
    ( にっぽん 1940.03. )
  49. 「花嫁と仮髪」
    ( 週刊朝日 1940.03.03〜24 )
    『花嫁と仮髪 大阪圭吉単行本未収録作品集1』 盛林堂ミステリアス文庫 2018.11.25
     伯爵有坂朋成次男の二郎君と濱田重工業社長鐵造の三女絢子さんの媒酌人沖紋平夫妻による結婚式。披露宴の前、断髪パーマ嫌いの伯爵には内緒で鬘をかぶっていたが少し外している間に無くなっていた。時間をかせぐ紋平。結髪師安田女子からの連絡でかけつける銀座ゴヤ美容院のマダム。特注で代用品もないという。延期で散会となったが小島弁護士令嬢のお嬢さん探偵アザミさんが親友の絢子に会わせて欲しいという。助手織田恒夫と解決に乗り出す。大きな箱を持った人物……。
     五回のうち第四回が欠落して掲載。お嬢さん探偵の活躍部分と思われ残念ではあるがなくても通じる。意外な真相といえる作品。
  50. 「特別代理人」 (「愛情代理人」改題)
    ( 新青年 1940.04. )
    ( 『香水夫人』 大東亜出版社 1943.03.15 )
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     あわて者の長良浩太郎君は奥村ゆき枝から社長松宮隆三郎宛の親展の封を切ってしまった。謹厳実直な社長に情けを求め会いたいという手紙で社長に持っていくことも出来ない。着服してしまおうか。長良浩太郎君は気がとがめてゆき枝と会うことに……。
     ユーモア小説。会いに行くだけなら問題はないと思うのだがその先次第か。
  51. 「盗まぬ掏摸」 [塚本刑事]
    ( キング 1940.04. )
    ( 『人間燈台』 大東亜出版社 1943.04.15 )
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     箱師の地下鉄の健は横浜からの帰り、女のハンドバッグに目をつけた。盗って素早く反対の電車に乗る。中を改めると浩から理恵宛の出征を知らせる手紙と未完成の千人針が入っていた。返さなければ。しつこくつきまとう鬼の塚本刑事。まこうとする健。震災で一家離散し群衆を敵にしてきた健だったが……。
     サスペンスある感動話。戦時中ならではの作品。
  52. 「香水紳士」
    ( 少女の友 1940.05. )
    ( 『ほがらか夫人』 大都書房 1943.01.15 )(国DC※)
    『大阪圭吉作品集成』小林眞編、小野純一編 盛林堂ミステリアス文庫 2013.04.12
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     クルミさんは国府津の叔母さんのところにいるお嫁入りすることになった従姉の信子さんにお祝いの品を渡すために列車に乗った。品川駅でボックスの向いの席に右手をポケットに入れた洋服の紳士が無遠慮に腰かけた。紳士の気味の悪い視線にチューインガムを噛むこともキャラメルも大船のサンドウィッチもあきらめたクルミさん。紳士の右手の指は四本で新聞に載っている男と特徴が……。
     一人称描写で愛らしいサスペンスと機転が効いている心地よい作品。
  53. 「待呆け孃」大下宇陀児、大阪圭吉、(川島順平、蘭郁二郎)
    ( 新青年 1940.06. )
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     課題「女秘書」出題者大下宇陀児による競作。国策重工業の社長に女秘書が退社後に怪行動をしていると投書があった、社長はどうしたか、怪行動とは何か。社長は女秘書ミサ子嬢を尾行する。東京駅の婦人待合室で二時間半ほど待って帰る。相手は現れない。六日目、ミサ子嬢は……。
     怪行動といえば怪行動だが社長も怪しく見られたのではないだろうか。真相も意外といえば意外、怪しいといえば怪しい。
  54. 「刺青のある男」 [塚本刑事]
    ( キング 1940.06. )
    ( 『香水夫人』 大東亜出版社 1943.03.15 )
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     A温泉の旅館で隣り同士になった髭の紳士に眼の鋭い紳士が東京の刺青強盗の話をする。山の手の中流以上の民家に押し入り刺青を見せて脅すという。八軒のうち二軒だけは盗んでいない。塚本刑事は家の付近で着替えると考え、追ってA温泉に来たと話す。髭の紳士は誘いにのって一緒に温泉へ入るが……。
     簡単なトリックが小気味良い。自白だが盗まなかった二軒の謎は想像すらできない。
  55. 「人外神秘境」
    ( 奇譚 1940.06. )
    『沙漠の伏魔殿 大阪圭吉単行本未収録作品集3』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.10.25
     台湾島南部の奥地、現地人のコイツを伴った青年砂金師川島達夫は行方不明の樺山真介博士の娘美智子と博士の後援者だった天岡友彦と共にハラワン蕃社で聞いた光り岩を目指すことになった。友彦は美智子に恋していた。夕立、濁流、百歩蛇。山中に逃げ込んでいたアリマン・ラホアレの蕃社に捕らえられる。頭目の娘サヨンとコイツ、光り岩へと絶壁を登る一行……。
     秘境冒険小説。最後はひとひねりあるが王道に近い作品。
  56. 「怪盗奇談」
    ( 新青年 1940.07. )
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     星川君は酔って帰宅の途中、石塀を乗り越えようとしている男を見つけた。手柄をたててやろう。男は雨戸を外そうとする。勝手口の引窓をあけようとする。湯殿の窓硝子をこじあけようとする。星川君は……。
     コント。オチは予測できる。
  57. 「恐しき時計店」
    ( キング 1940.07. )
    ( 『仮面の親日』 大道書房 1943.04.25 )
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     横浜、岡田君はお願いがあるというポンスン商会の店員勤務の従妹ミドリさんから店の前の喫茶店で話を聞く。ほとんどまかされているが窓飾に並べる時計だけはポンスン氏がするという。ミドリさんは……。
     暗号を用いた防諜小説。ミドリさんの機転が良い感じではあるが、かなり数多くの時計が飾ってありそう。
  58. 「寝言を云う女」 (「寝言を云ふ女」「寝言をいふ女」)
    ( ユーモアクラブ 1940.07. )
    ( 『香水夫人』 大東亜出版社 1943.03.15 )
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     貧乏な小説家の松野君は翡翠荘に引っ越して順調に書いていたがタルミが出来はじめた。隣の端の八号室に寝言を言う女が引っ越してますますうまくいかない。新聞の尋ね人が出ていた。容姿と寝言の癖は同じだ。松野君は映画に連れ出すことに成功し広告先恩田の家へ。帰ってくると友人の宮田君が……。
     意外な展開と結末の作品。唐突ではあるが設定は上手い。
  59. 「愛の先駆車」
    ( キング 1940.09. )
    『花嫁と仮髪 大阪圭吉単行本未収録作品集1』 盛林堂ミステリアス文庫 2018.11.25
     昭和七年八月二十一日、安東から奉天へ匪賊から守るために旅客列車に先行して単行機関車が走っていた。林線路工長、坂井機関士、楊助手、趙助手が乗る機関車が匪賊に襲われ……。
     実際の事件をもとにしたらしい当時の美談。脚色でより映像的な作品になっている。
  60. 「東京第五部隊」 [横川禎介]
    ( 講談倶楽部 1940.10. )
    ( 日本評論(南京) 1941.xx. )※中日文化1941.03.(国DC※)広告より
    ( 『仮面の親日』 大道書房 1943.04.25 )
    『大阪圭吉探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書45 2010.04.30
     帝都劇場の案内ガール春木もと子は小島清子に毎晩人気のケティ岸田のレヴィユー中に居眠りしている怪外国人がいると話す。跡をつけるもと子。メーソン商会のところで逆に捕えられてしまう。地下倉庫には国民防諜協会の横川禎介も捕えられていた。海岸近くの倉庫で二人は助けを求めて……。
     防諜冒険小説。確かに暗号通信手段は上手いかもしれない。受け手は甘すぎる気もするが。
  61. 「金髪美容師」 (「乱れる金髪」改題)[横川禎介]
    ( キング 1940.11. )
    読切講談 1942.08.?
    ( 『人間燈台』 大東亜出版社 1943.04.15 )
    ( 『仮面の親日』 大道書房 1943.04.25 )
    『大阪圭吉探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書45 2010.04.30
     八紘ビル国民防諜会事務所に神主千賀基成と姪比佐子が来て横川禎介に話す。比佐子が大阪のクララ美容院でパーマをかけて東京に来た。クララ美容院は銀座に本店、全国六大都市に支店があり、一回に限りどこででも無料で整髪できるサーヴィス券を発行していた。銀座へ髪を直しに行こうとする比佐子に腹をたてた基成は券をとりあげ……。
     暗号を用いた防諜小説。鍵は笑える。
  62. 「正宗のいる工場」 (「正宗のゐる工場」)
    ( にっぽん 1940.12. )
    ( 『ほがらか夫人』 大都書房 1943.01.15 )(国DC※)
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     東亜自動車蒲田本工場の旋盤工に生島喜代子がいた。発動機組立部の小田松市が大森の貝原の工場へ移るのに際して喜代子を引き抜こうとしていたが喜代子は断る。産業報国青年隊指導者の楠木鉄夫がいるからだろうという。楠木は弁論大会で昭和の正宗と題した演説で正宗と渾名されていた。小田が女工二人といなくなり、噂がたちはじめ……。
     ロマンスある愛国小説。生産者と消費者は背景が違えば現代でも通用する部分もありそう。正宗の設定は「百万人の正宗」でも用いられている。
  63. 「赤いスケート服の娘」 [横川禎介]
    ( 新青年 1941.01. )
    ( 『仮面の親日』 大道書房 1943.04.25 )
    『大阪圭吉探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書45 2010.04.30
     Sホテル地下室のスケートリンク。中二階で白薔薇の造花を挿した一人の外人紳士がリンクを眺めている。赤い服の混血児が滑っている。外人紳士に近づいた男は混血児イレーネについて語る。秘密通信をしているらしい。横川禎介は……。
     暗号を用いた諜報小説。なぜ判明したかという倒叙に近い。
  64. 「仮面の親日」 (「悪魔の地図」改題)[横川禎介]
    ( 冨士 1941.01. )
    ( 『スパイ小説名作集』 三邦出版社・歓喜力行文庫 1941.06.30 )(国DC※)
    ( 『人間燈台』 大東亜出版社 1943.04.15 )
    ( 『仮面の親日』 大道書房 1943.04.25 )
    『大阪圭吉探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書45 2010.04.30
     街頭写真師の蒔田君は東京溌剌写真社を起して銀座を中心に写真を撮り、注文を受けて売っていた。独逸生まれというマディ・ウェルハイムはよく写真に収まり注文してくれていた。松山少年が届けに行くと突然引っ越したという。アパートの小母さんに教えられた勤務先に行くと全く別人だった。国民防諜会事務所に行き、秘書柴田菊子と明石君に相談する。写真の背後に所長横川禎介が……。
     写真に関した防諜小説。繁華街でありその程度でと思わなくもない。
  65. 「九百九十九人針」
    ( 新青年 1941.04. )
    ( 『ほがらか夫人』 大都書房 1943.01.15 )(国DC※)
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     中支蘆山攻略戦の合間の退屈な時、山本上等兵は千人針に個性を見る。やがて分隊の皆が数えるが小野田一等兵のは九百九十九針だった。戦闘が始まるが妹紀代子の作った千人針にこだわりは残っていた。近くの分隊の岩田憲一一等兵が千一針あったと一針を切り取り縫い付ける。友情で結ばれた二人はやがて除隊、帰国して……。
     美談。実際にはありそうもないと思える小説的作品。現代なら千羽鶴というところか。
  66. 「疑問のS」 [横川禎介]
    ( 冨士 1941.04. )
    ( 『仮面の親日』 大道書房 1943.04.25 )
    『大阪圭吉探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書45 2010.04.30
     近畿の田舎から稲葉武平と妹セツ子が新橋で降りると防空演習で暗い中、轟音と紙が舞う怪異に出会った。従兄の島次さんとセツ子は結婚する予定だったが連絡が途切れていた。芳野軒は電車通りに面していたが食中毒事件で奥へ引っ込むことになってしまっい。そこにはボン・ベーカリーができた。店を転業した富公から青山で化物屋敷の噂で森田君が転業しドン・ベーカリーができたという。他にも三軒。五つの店を結ぶとS字が。国民防諜会の横川禎介に相談し……。
     巻き込まれ型で陰謀の謎を解いていく話。効果があるかどうかはわからないが謎の設定と解いていく過程は面白い。ボン、ドン、ダン、サン、ギン・ベーカリーという名前の付け方も気になる。
  67. 「翼賛タクシー」
    ( 週刊朝日 1941.04.01 )
    ( 『ほがらか夫人』 大都書房 1943.01.15 )(国DC※)
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     渥美君と新妻の芙紗子さんは東京から郷里の戸津呂へ四男の出征の送別にかけつけていた。田舎駅からバスが早かったが運行していないという。翼賛タクシーというのを紹介してもらうが自転車の後輪の代わりに箱で覆ったリヤカーという代物。小父さんは漕いで山道を行く。見晴らしの良い風景、春風、翼賛タクシーは……。
     戦時色の強い状況下でのユーモア作品。実際にあったかどうかは知らないが今となってはユニークな車両。のどかな雰囲気で団結して間に合うかどうかというのが対比となるのだろうが緊迫感は感じない。
  68. 「街の潜水夫」 [横川禎介]
    ( 冨士 1941.07. )
    ( 『仮面の親日』 大道書房 1943.04.25 )
    『大阪圭吉探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書45 2010.04.30
     国民防諜会事務所の秘書柴谷菊子と明石君が夜の山の手市街の近くで潜水夫に出会い明石君は小さなスコップで殴られる。お巡りさんと一緒に追うがお寺で消えてしまった。潜水服盗難事件を調べていた横川禎介は連絡を受けて駆けつける。潜水服の男の死、陰謀の解明。横川禎介は首謀者を……。
     陰謀を阻止する冒険談。状況設定は面白い。隠れ場所や首謀者の発見法はやや意外だがさすがに無理そう。潜水服である理由は考えられている。
  69. 「屋形船異変」 [弓太郎]
    ( にっぽん 1941.07. )
  70. 「プラプイ君の大経験」
    ( 新青年 1941.08. )
    ( 『ほがらか夫人』 大都書房 1943.01.15 )(国DC※)
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     タイの留学生ビアン・プラプイ君は単身日本に来た。日本語はわからない。東京ステーションホテルのボーイに助けてもらい間借り希望の新聞広告を出してもらう。神田淡路町の大学生岡本肇が来て妹が日本語の会話相手になるだろうと申し出てきた。プラプイ君は約束の時間を待たず単身岡本宅に向かう。電車に乗って、岡本と書かれた家へ……。
     外国人が見た東京珍道中という趣もある作品。最後は良い感じ。白い着物の意味は私も良くわからない。
  71. 「紅毛特急車」 [横川禎介]
    ( キング 1941.08. )
    ( 『仮面の親日』 大道書房 1943.04.25 )
    『大阪圭吉探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書45 2010.04.30
     国民防諜会事務所の秘書柴谷菊子が隣組常会で東京駅遺失品扱所の清川豊次君から聞いた話を横川禎介に話す。毎日のように出る男女一対の忘れ物、空気枕、日和下駄、懐中鏡、小型毛布、眼鏡、人形などなど。二週間告知し一年保管するという。横川禎介は考えていたが判ったと菊子を伴い東京駅へ……。
     陰謀を未然に阻止する話。着想は面白いが大がかりすぎで暗号は解読表が必要そう。
  72. 「夏芝居四谷怪談」 [弓太郎]
    ( にっぽん 1941.08. )
    ( 『夏芝居四谷怪談 弓太郎捕物帖』 盛林堂ミステリアス文庫 2018.05.06 )
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     中村座の盆興行「東海道四谷怪談」の初日の髪梳きの場、舞台にいるはずのお岩様が奈落に降りて消えた。晩には隠亡堀の場面で同じことが起こった。岡ッ引銀次は車屋の食客の南町奉行所吟味与力筆頭香月三左衛門の長男弓太郎の出馬を乞う。足跡をみつける弓太郎。市村座と森田座桐座、都座、河原崎座……。
     それなりの根拠ある勘で絞り込み謎を解いていく捕物帳。本格物の捕物帳移植作品といえそう。
  73. 「約束」
    ( 戦線文庫35号銃後読物版 1941.09. )
    ( 『ほがらか夫人』 大都書房 1943.01.15 )(国DC※)
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     珠江沿岸、斥候の松永一等水兵が撃たれ木下一等水兵に遺言を残す。身寄りのない松永はふとしたことから慰問袋を受け取り伊藤美津子と文通するようになっていた。松永の死を知らさず帰ったら代わりに遊園地へ連れて行って欲しいという。木下は文通の代返をしていた。やがて帰国し豊島園へ……。
     美談というべきか罪作りな話というか。意外な結末といえなくもないが同時であれば因縁も感じたかも。
  74. 「五人の手古舞娘」 [弓太郎]
    ( にっぽん 1941.09. )
  75. 「空中の散歩者」 [横川禎介]
    ( 冨士 1941.10. )
    ( 『仮面の親日』 大道書房 1943.04.25 )
    『明治・大正・昭和 日米架空戦記集成』長山靖生編 中公文庫(な-52-01) 2003.07.25
    『大阪圭吉探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書45 2010.04.30
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     M百貨店の屋上に係留されていた国債の広告気球が風のまにまに天空さして昇っていく。誰かが索を切ったんだと追いかける気球の番人。印旛沼北で回収するが五日後にまた切られた気球は村山へ。四日後、愛国青年探偵横川禎介は二度目の気球脱走事件の翌日から毎日外出していると話し合っている秘書柴谷菊子と助手明石君。と、また気球の脱走。横川氏は菊子嬢と明石君を呼び出して気球を追う……。
     防諜小説。単純ではあるが考えられている部分もある。最後の副産物はある意味で笑える。
  76. 「千社札奇聞」 [弓太郎]
    ( にっぽん 1941.10. )
  77. 「貧乏籤」大坂圭吉
    ( 戦線文庫37号銃後読物版 1941.11. )※戦線文庫解説
  78. 「沈黙のおけさ水兵(明朗色頁)」大坂圭吉 (「大いなる沈黙」)
    ( 戦線文庫37号銃後読物版 1941.11. )※戦線文庫解説
  79. 「花盗人」 [弓太郎]
    ( にっぽん 1941.11. )
  80. 「ポッケット日記」 (「ポッケット婦人日記」改題)
    ( ユーモアクラブ 1941.12. )
    ( 『人間燈台』 大東亜出版社 1943.04.15 )
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     片桐君は通勤時に駅まで歩くことにした。舗道に落ちていた「ポケット婦人日記」。交番に届けるのは帰宅時にして、移り香にもつられて中を見てしまう。あの人に内緒の節約の数々が……。
     啓蒙小説風な作品。節約に関しては戦時下に関係ないが。偶然すぎるがオチは想像できる。
  81. 「丸を書く女」 [弓太郎]
    ( にっぽん 1941.12. )
    『勤王捕物 丸を書く女』 盛林堂ミステリアス文庫 2020.08.13
     考え込んでいた岡ッ引の銀次は二階から板塀に○を書く黄八丈の怪しい女を目にする。女房おすみに羽織を出させその女を尾行すると天水桶など次々に○を書いていく。やがてもみじ湯に入ったのを見張っていると車屋干次郎宅の掛人香月弓太郎に出会う。弓太郎の教えで……。
     途中までは古典探偵小説にありがちな話を捕物帳に移植したような作品。確かに○印はいろいろと効果的かもしれない。
  82. 『海底諜報局』 [横川禎介]
    ( 『海底諜報局』 熊谷書房 1941.12.15 )(国DC)
    ( くろがね叢書25輯 1944.12. )
    『大阪圭吉探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書45 2010.04.30
     沈没船重慶丸を引き上げようと波切海事工業所の第二更生丸は船長猛川武、岬技師、犬山潜水夫らを乗せて九州西方にいた。犬山が潜ると生きている女がいる、あげてくれと通信があった。犬山は精神に異常をきたしていた。横浜に戻り病院へ送ろうとしたが同乗の水夫松田を途中で下ろし誘拐されてしまう。杉下と袴田が退社するという。混血娘峰マリコの勧誘らしい。松田はマリコの後をつけるが毎日掃部公園に登るだけで手懸りはつかめない。 代わりの潜水夫として犬山の弟勇三が乗ることになったが第二更生丸はスクリュー部をやられて船渠入り延期となる。岬技師は国民防諜会の横川禎介を訪れ調査を依頼する。峰マリコの後をつける横川と秘書柴谷菊子と松田。波止場の調査。捕らえられる菊子……。
     防諜小説。女の謎や暗号通信など探偵小説的要素もあるし冒険小説的要素もありそれなりに面白い。啓蒙的部分は今となっては純粋過ぎて痛々しくも感じられてしまう。
  83. 「ちくてん奇談 勤王捕物」 [弓太郎]
    ( にっぽん 1942.01. )(小林)
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     元旦、京橋で三河屋の亭主に錺屋の亭主に近江屋の番頭に鋳掛屋の亭主に塗師屋の亭主に相模屋の番頭に大工の芳太郎が着物も着ずに姿を消して六日。岡ッ引銀次が蔵前の札差車屋千次郎の掛人香月弓太郎に話す。神田や芝でも起きているという。弓太郎は銀次に調べさせ、待つように言う……。
     知っていることを元にあたりをつける捕物帳。履物はよくわからない。
  84. 「ほがらか夫人」 (「自若夫人」改題)
    ( 新青年 1942.03. )
    ( 『ほがらか夫人』 大都書房 1943.01.15 )(国DC※)
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     金田君は住宅難の折、薫風荘を見つけた。田舎で松枝さんと結婚し新居となった。大柄でコセコセせず、立派に切りまわしていく松枝さんだった。契約条件で出産の場合は移転することとあった。中川さんも細井さんも妊娠したらしい。借家探しをする夫たち。お腹は大きくなりいよいよ……。
     ユーモア小説。予想以上の結果が面白い。
  85. 「ハワイ軍港掃海奇談」
    ( 戦線文庫41号 1942.03. )
  86. 「ジャングルの兵変」
    ( にっぽん 1942.03. )
  87. 『ここに家郷あり』 (『村に医者あり』)
    ( 豊橋同盟新聞 1942.03.31〜08.15 )
    ( 『ここに家郷あり』 新興亜社 1943.04.05 )(国DC)
    『村に医者あり』 盛林堂ミステリアス文庫 2020.10.25
     医者倉松志気太は富橋市から一里離れた故郷青柳村の仁天堂倉松医院に帰ってきた。父が診療困難になり無医村になるのを恐れたのと健康な村にするために。医院では富橋の遠縁の石渡千尋が仕事を手伝っていた。屋敷内に住む家事手伝いのお崎と松太郎の子芳夫。女学校を卒業して戻っていた地主稲垣兵衛の娘矢奈子。役場の定森喜惣と文化部の設立。 人が変わったような千尋の兄信吉の戦場からの帰還と砥鹿神社と富川稲荷。喜惣のところから遁走した豚と青年の治療。青年団有志の神部村への見学行での牛と矢奈子。村会議員洲崎蕗太郎とツベルクリン。幼馴染み三保。追加予算問題。稲垣兵衛への直談判と村長と洲崎蕗太郎。それぞれの道……。
     青春小説。理想を掲げ実現していこうとする。国の為というのが前面に出過ぎているが、地方の田舎の様子に対して医者というのは良い立場かもしれない。
  88. 「マニラの混血娘」
    ( にっぽん 1942.04. )
  89. 「印度洋司令の帽子」
    ( ユーモアクラブ 1942.05. )
  90. 「子は国の宝」
    ( 講談雑誌 1942.05. )
    ( 『ほがらか夫人』 大都書房 1943.01.15 )(国DC※)
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
     十一人の子宝に恵まれた平松さんは一家そろって遊園地に行くことになった。バスに乗る。乗り切れずに別れてしまった。先発隊の奥さんたちは金を持っていない……。
     子は国の宝か鎹かという話。にぎやかでドタバタ調でもある。
  91. 「南の処女林」
    ( にっぽん 1942.05. )
  92. 「スエズ湾の軍艦旗」
    ( 戦線文庫44号戦地版/銃後読物版 1942.06. )※戦線文庫解説/古書情報より/(神奈川近代文学館)(日本近代文学館)
     ※銃後版目次では題と作者がずれて「ニヤイ・ダシマ」大阪圭吉 となっている
  93. 「動く珊瑚礁」
    ( にっぽん 1942.06. )
  94. 「青春停車場」
    ( 講談雑誌 1942.07. )
    『マレーの虎 大阪圭吉単行本未収録作品集2』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.03.28
     娘ばかりの停車場H駅、島田夏枝は赤帽の伝さんの仲介で小田松子とともに売り子をしていた。取り巻くように群がる乗客を残してアイスクリームを傷痍軍人に届ける。M軒主任宮崎から呼ばれていくと客からの苦情だった。夏枝は弁解せず……。
     美談となる好意を受ける話。ところで弁当とアイスクリームは同時に食べるつもりだったのだろうか。
  95. 「東印度の娘」
    ( にっぽん 1942.07. )
  96. 「間諜満州にあり」 [横川禎介]
    ( ますらお 1942.07.? )
    ( 『仮面の親日』 大道書房 1943.04.25 )
    『大阪圭吉探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書45 2010.04.30
     横川禎介は新京から女を追ってハルピンのロシア寺院Y会堂に来た。女は寺院を見ている。横川禎介は暗号に気付く。ホテル・モルデン一四〇。一四〇号室の川並技師は借家を探していて新聞広告に黄仙栄が現れた。家を見て直に契約しホテルを引き払う。荷物を持って行くと別の日本人が引越しの最中だった。ホテルに戻ると横川禎介が……。
     陰謀を防ぐ話。暗号通信の方法は面白いがその後は探偵小説ではよくある内容。家の鍵は少し気になる。
  97. 「アラスカ狐」
    ( 新青年 1942.08. )
    『マレーの虎 大阪圭吉単行本未収録作品集2』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.03.28
     明治三十六年、私と山木は得撫の漁場で働いていた。越年することになり、氷魚捕りで氷上に出たとき、突然陸から海への強風があり、氷が割れて流されてしまった。難破船が接岸して移る。山木が死んでしまう。狐の鳴き声がし、流されていた狐を助けてアリューシャンの鼠島へ着く。原住民アレウト人、流されていた占守島のアイヌ女性シトベニ、アメリカ人……。
     冒険譚。戦時標語や畜生にも劣るという語句を思い浮かべてしまうが賊でも成り立つ話。
  98. 「五つの船渠」
    ( にっぽん 1942.08. )
  99. 「氷河婆さん」
    ( にっぽん 1942.09. )(小林)
    『花嫁と仮髪 大阪圭吉単行本未収録作品集1』 盛林堂ミステリアス文庫 2018.11.25
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     地理学協会の招待でアラスカへ行ったときに出会った氷河婆さんの話を小説に書いて下さい、と話しを聞く。一行六人は聖ミカエルの港町からユーコン河奥地クロンダイク地方の砂金でできた町セルカーにたどり着いた。一行は氷河の視察に行ったとき、洞窟に四十年も住んでいるエスキモーがいた。身の上話を聞くと、エナは採金会社に雇われて行方不明になった父と恋人を追ってきたのだという……。
     自然の情景と執念を感じる作品。圧力は強いと思うが、など思う所はあるが雰囲気は良い感じ。
  100. 「ソロモン海の羽搏き」
    ( 戦線文庫48号 1942.10. )
  101. 「百万人の正宗」 [横川禎介]
    ( 読切講談 1942.12. )
    ( 『仮面の親日』 大道書房 1943.04.25 )
    『大阪圭吉探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書45 2010.04.30
     興亜航空工場旋盤部の野田弘子ら一行は職場の友人の見舞いの時に弘子の兄利吉が頭痛のなずなのに自動車に女を乗せて走り去るのを見る。原大作は弁論大会での昭和の正宗と題した演説で正宗と渾名されていた。大作は利吉を諭そうとする。利吉は女と暮らすようにる。だらしない女ではあるがまめなところもあった。女は利吉を、横川禎介は弘子を訪れ……。
     陰謀を未然に防ぐ話。収集方法と阻止方法には面白いところもある。背景設定などは「正宗のいる工場」と同じだが啓蒙的要素より防諜小説的要素が強い。
  102. 「誓ひの魚雷」
    ( 新国民 1942.12.? )
    ( 刊行不明『誓ひの魚雷』 上崎書店 1943.09. )
  103. 「夜明けの甲板」
    ( 新青年 1943.02. )
    『マレーの虎 大阪圭吉単行本未収録作品集2』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.03.28
     昭和十七年九月、交換船浅間丸は昭南島へ近づきつつあった。ブラソング・キタサンカ青年は甲板上で事務長に聞く。なぜ日本は泰人に親切なのかと。事務長はピブン・ソンクラム泰国首相の話をする……。
     プロパガンダとしかいえない内容ではあるが人権を守っているともいえる。交換条件によるとは思うが。
  104. 「ガダル島総攻撃」大坂圭吉
    ( 戦線文庫54号銃後読物版 1943.04. )※古書情報より(銃後読物版のみ掲載と思われる)/(日本近代文学館)
  105. 「人情馬車」大坂圭吉
    富士 1943.06.
    『花嫁と仮髪 大阪圭吉単行本未収録作品集1』 盛林堂ミステリアス文庫 2018.11.25
     振草街から佐田村までシメさんの豆馬車は娘を乗せて走る。深田七五三吉は南支で一ノ木伍長を助けたあと、手榴弾を投げられ軍馬が身代りになり足の負傷だけで助かっていた。農作業もできず、老いた馬の花の活躍のためにも、一日二往復しかしなくなった独占木炭バスの代わりとして営業していた。娘は佐田村まで行って最終バスで戻りたいという。シメさんは願いをかなえようと……。
     明朗小説。戦時色も薄くシメさんが良い感じもあってメデタシメデタシ。
  106. 「村でたった一枚の結婚服」
    ( 満洲良男 1943.06.? )
  107. 「主なき貯金」
    ( 不明(大政翼賛会) 1943.07.? )
    『沙漠の伏魔殿 大阪圭吉単行本未収録作品集3』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.10.25
    原稿『大阪圭吉 自筆資料集成』 盛林堂ミステリアス文庫 2020.05.06
     老婦人が毎月比露子の窓口に現れて春木秀夫名義で貯金していく。比露子は老婦人と同じ隣組になった。老婦人の身の上は……。
     再録は原稿からのもの。信じていないとも受け取れる。なぜ美談のようにみなされるのか、今一つわからない。
  108. 「挺身」大坂圭吉
    ( 『辻小説集』日本文学報国会編 八紘社杉山書店 1943.07.18 )※復刻版より
     風が強く波が高くむき出しの岩壁に接岸するときに……。
     当時としては美談であろうが成功するとは思えない。
  109. 「明るい街」大坂圭吉
    ( 講談倶楽部 1943.08. )
    『マレーの虎 大阪圭吉単行本未収録作品集2』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.03.28
     銀座通り、電車が急停車する。運転手は自転車の小僧を呼び止める。運転手は車輪のほうを覗き込む……。
     千文字小説とのこと。粋な話といえなくもない。やはり眼が良いのだろうか。
  110. 「門出の靴」大坂圭吉
    ( 新天地 1943.08. )
    『花嫁と仮髪 大阪圭吉単行本未収録作品集1』 盛林堂ミステリアス文庫 2018.11.25
     靴磨きを廃業することになった堀川福次郎君は商売道具である背の高い椅子をリヤカーに乗せて運んでいた。そのまま売り払うつもりだったが一度家に持ち帰る。福次郎君は妻の澄江さんに言う……。
     転職にあたっての心情は共感できる部分もある。狙いがどこまでのものだったかはいろいろ想像できてわからないまま。
  111. 「潜水艦と地底戦士」
    ( 戦線文庫59号銃後読物版 1943.09. )※古書情報(収録内容紹介)より
  112. 「山は微笑む」大坂圭吉
    ( 読切講談 1943.09. )
    『沙漠の伏魔殿 大阪圭吉単行本未収録作品集3』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.10.25
     黄銅鉱山、鑿岩士ハッパの源さんは六合キリハで仙吉を助手として働いていた。三十年来のお盆休みも返上して増産しようとして会社の御機嫌とりとも言われていた。お君ちゃんのような賛成派と六造のような反対派もした。六合キリハに迷い込んだ新米を源さんは叱り仕事をさせる……。
     探偵小説風なところもないことはないが啓蒙小説。挙国一致体制の見本とでもいうべきか。
  113. 「幽霊妻」
    ( 新探偵小説 1947.06. )
    ( 小説推理 1973.02. )
    ( 『怪奇探偵小説集』鮎川哲也編 双葉新書 1976.02.10 )
    『怪奇探偵小説集(1)』鮎川哲也編 双葉ポケット文庫(あ-02-01) 1983.12.25
    『奇想の森 ミステリーの愉しみ1』鮎川哲也編、島田荘司編 立風書房 1991.12.20
    『とむらい機関車』 国書刊行会・探偵クラブ 1992.05.25
    『怪奇探偵小説集1』鮎川哲也編 ハルキ文庫(あ-04-01) 1998.05.18
    『銀座幽霊』 創元推理文庫(Mお-02-02) 2001.10.26
    『「X」傑作選 甦る推理雑誌3』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-13) 2002.12.20
    ( 『日本ミステリー名作集1』フロンティア文庫編 フロンティア文庫085 2005.05. )
    『恐怖ミステリーbest15 こんな幻の傑作が読みたかった!』 コアラブックス 2006.05.30
     下男だった男の話。N専門学校校長平田章次郎は夏枝を離縁し、四日後に夏枝は服毒自殺した。葬儀の三日後に章次郎が墓の近くまで行ったとき真っ青な顏で引き返してきた。容態も良くなくなり、私が学校を休む届の使いに行き、戻ったときには書斎の窓の鉄棒が三本曲げて外されていて章次郎は居間でむごたらしく死んでいた。書斎の窓の外には下駄の跡、香油の髪の毛……。
     意外な真相といえる作品。手懸りからの絞り込みと下男視点なのは面白い。幽霊に足はあるのかないのかという話題はない。
  114. 「マレーの虎(事実小説)」
    『マレーの虎 大阪圭吉単行本未収録作品集2』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.03.28
     大東亜戦争三月前、シンガポール行き列車の最後尾の英人が多く乗った一等車が襲われる。襲ったのはハリマウ王という日本青年が指揮する一隊だった。マレー東岸の港町に谷理髪館の跡取り息子谷豊がいた。昭和七年十一月、排日暴動で妹静子が惨殺され一家は九州に、豊は単身マレーへ渡っていた。陸軍の藤原岩市少佐が来て谷豊に真の男になるよう言う。タイ南部から……。
     昭和17年6月執筆、キング不採用作品。冒険小説ではあるがプロパガンダ色が濃厚すぎる。結末が凱旋といえないところが不採用理由ではないかと勝手に推測。
  115. 「濱田彌兵衛」
    『沙漠の伏魔殿 大阪圭吉単行本未収録作品集3』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.10.25
     寛永四年、長崎に一年前沈没した筈の代官末次平蔵の朱印船福州丸が空荷で戻ってきた。船頭濱田彌兵衛は平蔵に台湾安平の和蘭陀長官ぴいてる・ぬいつの関税要求で積荷は差し押えられてかろうじて帰投したと話す。彌兵衛を迎える平蔵の娘多世。小左衛門が平戸の和蘭陀商館へ調査に行くとぴいてる・ぬいつが江戸に向かったという。天野屋太郎左衛門が江戸へ行き協定は防いだものの幕府は積極策をとらない。彌兵衛らは兵を集め安南丸と呂宋丸で台湾安平へ……。
     昭和15年月執筆、新青年不採用作品。末尾原稿三枚欠。不採用理由が書かれた水谷準からの手紙内容が「あとがきにかえて」に記載されている。確かに歴史小説としても冒険小説としても中途半端な感じがする。どこまで史実かは確認していないが執筆当時の思想を江戸時代初期に託したような作品。
  116. 「軍事郵便(一幕)」
    『沙漠の伏魔殿 大阪圭吉単行本未収録作品集3』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.10.25
     老人は困ったと言いながらポストの口に手を入れようとなどしている。娘が封書を投函して切手の貼り忘れに気付き同じような所作をする。二人は郵便屋を待つ間に手紙の話をする。息子への慰問と知人への悔み状の間違い。三日に一度の慰問の手紙。郵便屋が来て……。
     原稿状態で見つかった創作喜劇台本。微笑ましいコントといった内容。知人宛の手紙とポストを抱えてというのが気になる。所作によっては本当に喜劇的。



      随筆など

  1. 「あとがき(花嫁の塑像)」
    ( 新城文学 1933.07. )
    『沙漠の伏魔殿 大阪圭吉単行本未収録作品集3』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.10.25
     新城文学編輯者からの依頼。アイロニカルなコントラストを描いたコント。只面白く読んで頂ければ。
  2. 「我もし自殺者なりせば」
    ( ぷろふいる 1934.12. )
    『とむらい機関車』 創元推理文庫(Mお-02-01) 2001.10.26
     SF風作品。自殺するなら天国の病院を求めて気球で成層圏へ。そこからの描写、やがて……。
  3. 「小栗さんの印象など」
    ( 探偵文学 1935.10. )(小林)
    『二十世紀鉄仮面 昭和ミステリ秘宝』小栗虫太郎 扶桑社文庫(S04-02) 2001.02.28
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     甲賀三郎が名古屋に立寄った際に小栗虫太郎に紹介すると言われた。上京した時、甲賀宅で会った。杞憂に反し美壮年で剽悍な印象も。健康はすぐれず自身で脈をみていた。話は親しみあふれ能動的で刺戟的だった。数日後、小栗宅へ。『白蟻』に関して。
  4. 「ハガキ回答(推薦の書と三面記事)」
    ( ぷろふいる 1935.12. )(小林)
    『マレーの虎 大阪圭吉単行本未収録作品集2』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.03.28
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     「白蟻」小栗虫太郎と「赤毛のレドメイン一家」フィルポッツ井上良夫訳。一年前に面白い事件記事があったが素材の一部としたく発表できない。
  5. 「ハガキ回答(昭和11年度の探偵文壇に望むことと嘱望される新人)」
    ( 探偵文学 1936.01. )
    『マレーの虎 大阪圭吉単行本未収録作品集2』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.03.28
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     長篇探偵小説時代。多士済々。
  6. 「探偵小説突撃隊」
    ( 月刊探偵 1936.01. )
    『とむらい機関車』 創元推理文庫(Mお-02-01) 2001.10.26
     仮名称、編成、資格、入隊脱退、所在地、資金、機関誌、重複加入、趣旨と目的、合言葉。
  7. 「犯罪時代と探偵小説」
    ( 新愛知 1936.01.27,28 )(小林)
    『マレーの虎 大阪圭吉単行本未収録作品集2』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.03.28
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     犯罪と捜査のイタチゴッコ。犯罪の探偵小説の影響は捜査面にもあり実行は別。探偵小説の情緒的魅力はスリルで臆病な善良な空想的な人でなくては理解できない。探偵小説も犯罪怪奇小説以外に生れようとしている。
  8. 「幻影城の番人」
    ( ぷろふいる 1936.04. )
    『とむらい機関車』 創元推理文庫(Mお-02-01) 2001.10.26
     現実の事件より空想という幻影の城主江戸川乱歩。幻影城の番人ぐらいにはなったつもり。時々外の世界に浮気もする。保険金搾取事件、黒色テロ事件、紙幣抜取事件など探偵小鉄的部分も。探偵小説の現実の犯罪への影響がいわれるが捜査面も同様。探偵小説がなくても犯罪は起こる。
  9. 「お玉杓子の話」大坂圭吉
    ( 探偵文学 1936.04. )
    『とむらい機関車』 創元推理文庫(Mお-02-01) 2001.10.26
     探偵小説は冒頭で大事件が起こるというが、読者が読み進めるうちに感情や情緒の爆発がなければならないのは同じ。結末として主なのは、意外な犯人、奇抜な殺人方法。粉飾やトリックのコンビネーション。文学的技術の獲得。
  10. 「鱒を釣る探偵」
    ( 名古屋釣新聞 1936.04. )
    『花嫁と仮髪 大阪圭吉単行本未収録作品集1』 盛林堂ミステリアス文庫 2018.11.25
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     井上良夫訳「赤毛のレドメイン一家」に感心した。鱒釣りの場面、美しい風景。釣った鱒の半数を放す。釣れたら連続、釣れなかったら忘れてしまう状態だが、太公望の心理が判るような気もした。
  11. 「巻末に」
    ( 『死の快走船』 ぷろふいる社 1936.06.05 )(国DC※)(藤原)
    『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
    『甲賀三郎・大阪圭吉 ミステリーレガシー』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-51) 2018.05.20
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     書き始めて数年。軽便列車は最初の停車場へ。行手に向かって出発しよう。
  12. 「頭のスイッチ―近頃読んだもの」
    ( ぷろふいる 1936.09. )
    『とむらい機関車』 創元推理文庫(Mお-02-01) 2001.10.26
     「悪霊」ドストエフスキー。「死刑前の六時間」ユーゴー。富山房の百科事典、語順や参照や絵での突発的変化、スイッチの入れ替え、飛躍。
  13. 「弓の先生」
    ( 探偵文学 1936.10. )
    『とむらい機関車』 創元推理文庫(Mお-02-01) 2001.10.26
     処女作「デパートの絞刑吏」当時の細かな記憶がない。ポーと航空機を扱った作品からヒント。無性に書きたくなり書いた。弓の先生が始めは当たるが上手くなると苦労を知り悪くなる、情熱を失わなければ本当の当たりになるという。今の私が技術を覚え始めた頃で苦労を避けず突入すべきとき。
  14. 「連続短篇回顧」
    ( ぷろふいる 1937.01. )
    『とむらい機関車』 創元推理文庫(Mお-02-01) 2001.10.26
     ヴァラエティを持たせながら本格物一筋。苦しみの中に二つの仄かな喜び。自身の未熟さが判ったこと、苦闘そのもの。
  15. 「諸家の感想(内外傑作各三篇と感想と希望)」
    ( 探偵春秋 1937.01. )(小林)
    『マレーの虎 大阪圭吉単行本未収録作品集2』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.03.28
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     「人生の阿呆」「二十世紀鉄仮面」「船富家の惨劇」、「ポンスン事件」。清純な気品と真剣味溢れた「人生の阿呆」。書き下ろし長篇出版の実現。
  16. 「海外探偵小説十傑」
    ( 新青年 1937.02. )(小林)
    『日本探偵小説全集12 名作集2』中島河太郎監修 創元推理文庫(400-12/Mん-01-12) 1989.02.03
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     海外長篇探偵小説を傑作順に十篇と一位の寸感。樽、黄色の部屋、アクロイド、(以下略)。樽は構成美、ロマンチシズム、リアリズム。
  17. 「お問合せ(記念号読後感と感想一篇)」
    ( シュピオ 1937.06. )(小林)
    『マレーの虎 大阪圭吉単行本未収録作品集2』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.03.28
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     傑作集自身傑作で甲賀・大下編輯をも期待。「曲芸師」アナトール・フランスの祈り場面が良い。
  18. 「二度と読まない小説」
    ( 新青年増刊 1937.06. )
    『とむらい機関車』 創元推理文庫(Mお-02-01) 2001.10.26
     影響を受けたのは子供の頃に読んだ「宝島」。清新な感受性による鮮やかな印象がある。
  19. 「停車場狂い」 (「停車場狂ひ」)
    ( 旅行サロン 1937.07. )(小林)
    『とむらい機関車』 創元推理文庫(Mお-02-01) 2001.10.26
     一つの癖に何をするわけでもなく停車場へ行く、停車場への旅がある。旅の思い出も停車場。直江津、雪を積んだ貨物列車。東京や新宿より田畑、両国、本屋だが失望も。上野駅に旅を覚える。
  20. 「好意ある督戦隊」
    ( シュピオ 1938.01. )
    『とむらい機関車』 創元推理文庫(Mお-02-01) 2001.10.26
     約半年書かなかった。もやもや感、その後身辺的時間的に。読者の一人に。木々氏が芸術論に対し対蹠的と書かれたが誤解。作家の行動は作品だが主張に近づいた作品は殆んど皆無。督戦隊ともいえる木々氏や他の人々に感謝。
  21. 「ハガキ回答(昭和十二年度の気に入った探偵小説二三とその感想)」
    ( シュピオ 1938.01. )
    『マレーの虎 大阪圭吉単行本未収録作品集2』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.03.28
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     「鉄の舌」「大浦天主堂」。明るく健全で希望を与えてくれる。
  22. 「好きな外国作家と好きな作中人物」
    ( 新青年増刊 1938.02. )
    『マレーの虎 大阪圭吉単行本未収録作品集2』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.03.28
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     感心したり敬服する探偵小説家や作品はあるが好き嫌いは固定しない。印象が鮮烈な作中人物はあるが好きなのは思いださなければならない。
  23. 「おめでたい人間の味覚」
    ( 食通 1938.06. )
    『花嫁と仮髪 大阪圭吉単行本未収録作品集1』 盛林堂ミステリアス文庫 2018.11.25
     魚の戸籍調べ。魚市場の人の話。鯛やおまへん鯛。エビ。うまい活魚。即席料理店うまい筈。
  24. 「名士・メンタルテスト」
    ( 新青年 1938.08. )
    『マレーの虎 大阪圭吉単行本未収録作品集2』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.03.28
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     成吉思汗になった源義経に。以下9問全てに解答。
  25. 「衣か食か住か」
    ( 家(家庭文化住宅雑誌) 1940.11. )
    『沙漠の伏魔殿 大阪圭吉単行本未収録作品集3』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.10.25
     衣食住のうち住居が先決。明るい健全な生活。
  26. 「会員通信(くろがね会に対する希望―或いは感想を求めたハガキの回答文)」
    ( くろがね會報 1941.12. )(小林)
    『沙漠の伏魔殿 大阪圭吉単行本未収録作品集3』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.10.25
     くろがね会に対する希望。海洋に関する啓もう文芸は青年を対象に、長篇が良いと思っている。
  27. 「作者の言葉(海底諜報局)」
    ( 『海底諜報局』 熊谷書房 1941.12.15 )(国DC)(小林)
    『大阪圭吉探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書45 2010.04.30
     対英米戦が開始され秘密戦は地下に潜る。海の護りの慰安読物ではあるが紙の爆弾の一発。
  28. 「作者の言葉(ここに家郷あり)」
    ( 豊橋同盟新聞 1942.03.05 )(小林)
    『村に医者あり』 盛林堂ミステリアス文庫 2020.10.25
     初めての郷土の仕事。地方の仕事に息を抜く作家もいるが、感性は甘くない。誇りと責任をもって良い仕事をした。一緒に明るく楽しく希望と微笑で戦う郷土の新しい姿を眺めてみたい。
  29. 「椰子の実」
    ( くろがね 1942.08. )(小林)
    『沙漠の伏魔殿 大阪圭吉単行本未収録作品集3』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.10.25
     近所の出征中の水兵から椰子の実を貰った。なかなか手をつけられなかったが東京へ出ることになりついに穴をあけた。青臭い果汁、お返しをする番だ。
  30. 「男子出生」大坂圭吉
    ( くろがね 1943.03. )(小林)
    『沙漠の伏魔殿 大阪圭吉単行本未収録作品集3』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.10.25
     単身東京に出てきたが家がみつからず妊娠中の妻と子を呼び寄せられない。やっと見つけた家は畳のサイズも小さく狭かった。田舎と違い大声も出せない。長男をつれての外出、出産、大声で泣く赤ン坊。
  31. 「怒れる山(日立鉱山錬成行)」
    ( 日本学芸新聞 1943.03.15 )
    『花嫁と仮髪 大阪圭吉単行本未収録作品集1』 盛林堂ミステリアス文庫 2018.11.25
    『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     汽車の窓、停車場、鉱山電車の窓から見える巨大な煙突。煙突の下の異様な風景。坑道で闘う人々。手選する乙女たち。熔鉱炉の熱気。錬鉱炉に呑まれる梵鐘。山が海を睨んで怒り戦っているのではないか。
  32. 「増産旗揚る細倉鉱山」
    ( 戦線文庫57号銃後読物版 1943.07. )
  33. 「面舵一ぱい海軍航海学校(黒潮に誓う海軍航海学校)」大坂圭吉
    ( 戦線文庫58号銃後読物版 1943.08. )※(神奈川近代文学館)
  34. 「海を征する少年兵(海軍諸学校めぐり)」
    ( 戦線文庫72-2号増刊海の少年兵 1944.10. )※昭和館より/(神奈川近代文学館)(日本近代文学館)
     海軍軍人は軍人精神の入った船乗りでなければならない。海軍航海学校の奇麗さと躾教育。それぞれの課業場での訓練風景。
  35. 「らくがき帳その二(創作ノート)」「作品(目録)記録帳」「(家族宛手紙)」など
    『大阪圭吉 自筆資料集成』 盛林堂ミステリアス文庫 2020.05.06
     内容省略


  36. 「脱線機関車(訪問記)」無署名
    ( ぷろふいる 1935.12. )(藤原)
    『死の快走船』解題 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
     訪問記。新城の宿屋の息子。汽車好きで話しだすと止まらない。



      著書

  1. 『死の快走船』 ぷろふいる社 1936.06.05 )(国DC※)
    △「序」江戸川乱歩/△「大阪圭吉のユニクさ」甲賀三郎/「死の快走船」/「とむらひ機関車」/「雪解」/「デパートの絞刑吏」/「気狂ひ機関車」/「なかうど名探偵」/「人喰ひ風呂」/「花束の虫」/「石塀幽霊」/「燈台鬼」/△「巻末に」
  2. 『海底諜報局』 熊谷書房 1941.12.15 )(国DC)
    △「作者の言葉」/『海底諜報局』
  3. 『ほがらか夫人』大坂圭吉 大都書房 1943.01.15 )(国DC※)
    「謹太郎氏の結婚」/「慰問文夫人」/「翼賛タクシー」/「香水紳士」/「九百九十九人針」/「約束」/「子は国の宝」/「プラプイ君の大経験」/「ほがらか夫人」/「正宗のゐる工場」/「トンナイ湖畔の若者」
  4. 『香水夫人』 大東亜出版社 1943.03.15
    「香水夫人」/「三の字旅行会」/「告知板の謎」/「からくり証人」/「寝言をいふ女」/「特別代理人」/「正札騒動」/「昇降時計」/「刺青のある男」
  5. 『ここに家郷あり』大坂圭吉 新興亜社 1943.04.05 )(国DC)
    『ここに家郷あり』
  6. 『人間燈台』 大東亜出版社 1943.04.15
    「悪魔の地図」/「乱れる金髪」/「人間燈台」/「百貨註文主」/「闖入者」/「唄はぬ時計」/「盗まぬ掏摸」/「懸賞尋ね人」/「ポッケット日記」/「花嫁の病気」
  7. 『仮面の親日』大坂圭吉 大道書房 1943.04.25
    「仮面の親日」/「百万人の正宗」/「疑問のS」/「金髪美容師」/「紅毛特急車」/「赤いスケート服の娘」/「空中の散歩者」/「街の潜水夫」/「恐ろしき時計店」/「東京第五部隊」/「間諜満州にあり」/「寝台車事件」/「手紙を喰ふポスト」
  8. 『誓ひの魚雷』 上崎書店 1943.09.
    ※刊行不明(印税は支払われており新刊案内の掲載もあるというが現物確認をした記録はないらしい)
  9. 『とむらい機関車』 国書刊行会・探偵クラブ 1992.05.25
    「デパートの絞刑吏」/「死の快走船」/「気狂い機関車」/「とむらい機関車」/「燈台鬼」/「闖入者」/「三狂人」/「白妖」/「あやつり裁判」/「銀座幽霊」/「動かぬ鯨群」/「寒の夜晴れ」/「坑鬼」/「幽霊妻」/△「論理派ミステリーの先駆者」鮎川哲也
  10. 『とむらい機関車』 創元推理文庫(Mお-02-01) 2001.10.26
    「とむらい機関車」/「デパートの絞刑吏」/「カンカン虫殺人事件」/「白鮫号の殺人事件」/「気狂い機関車」/「石塀幽霊」/「あやつり裁判」/「雪解」/「坑鬼」/△「我もし自殺者なりせば」/△「探偵小説突撃隊」/△「幻影城の番人」/△「お玉杓子の話」/△「頭のスイッチ―近頃読んだもの」/△「弓の先生」/△「連続短篇回顧」/△「二度と読まない小説」/△「停車場狂い」/△「好意ある督戦隊」/△「解説」巽昌章
  11. 『銀座幽霊』 創元推理文庫(Mお-02-02) 2001.10.26
    「三狂人」/「銀座幽霊」/「寒の夜晴れ」/「燈台鬼」/「動かぬ鯨群」/「花束の虫」/「闖入者」/「白妖」/「大百貨注文者」/「人間燈台」/「幽霊妻」/△「解説」山前譲/☆「大阪圭吉著作リスト」
  12. 『大阪圭吉探偵小説選』 論創社・論創ミステリ叢書45 2010.04.30
    「東京第五部隊」/「金髪美容師」/「赤いスケート服の娘」/「仮面の親日」/「疑問のS」/「街の潜水夫」/「紅毛特急車」/「空中の散歩者」/△「作者の言葉(海底諜報局)」/『海底諜報局』/「間諜満州にあり」/「百万人の正宗」/△「解題」横井司
  13. 『大阪圭吉作品集成』小林眞編、小野純一編 盛林堂ミステリアス文庫 2013.04.12
    「水族館異変」/「香水紳士」/「求婚廣告」/「告知板の女」/△「大阪圭吉の探偵小説の魅力」森英俊/△「編者あとがき」小野純一/・「大阪圭吉探求掲載誌リスト」
  14. 『死の快走船 ミステリ珍本全集04』 戎光祥出版 2014.07.18
    △「序」江戸川乱歩/△「大阪圭吉のユニクさ」甲賀三郎/「死の快走船」/「なこうど名探偵」/「人喰い風呂」/△「巻末に」/ 「謹太郎氏の結婚」/「慰問文夫人」/「翼賛タクシー」/「香水紳士」/「九百九十九人針」/「約束」/「子は国の宝」/「プラプイ君の大経験」/「ほがらか夫人」/「正宗のいる工場」/「トンナイ湖畔の若者」 /「香水夫人」/「三の字旅行会」/「告知板の謎」/「寝言を云う女」/「特別代理人」/「正札騒動」/「昇降時計」/「刺青のある男」/「唄はぬ時計」/「盗まぬ掏摸」/「懸賞尋ね人」/「ポッケット日記」/「花嫁の病気」/「恐ろしき時計店」/「寝台車事件」/「手紙を喰うポスト」/「塑像」/「案山子探偵」/「水族館異変」/「扮装盗人」/「証拠物件」/「秘密」/「待呆け嬢」/「怪盗奇談」 /△「大阪圭吉論 本格派の鬼」権田萬治/△「人間・大阪圭吉」鮎川哲也/△「理論派ミステリーの先駆者」鮎川哲也/△「編者解題」/日下三蔵/月報4(△「大阪圭吉賛」小林眞/△「古書から眺める大阪圭吉」彩古/△「編集後記」日下三蔵/・「栗田信著作リスト 増補版」)
  15. 『夏芝居四谷怪談 弓太郎捕物帖』 盛林堂ミステリアス文庫 2018.05.06
    「夏芝居四谷怪談」/△「あとがきにかえて」小野純一
  16. 『甲賀三郎・大阪圭吉 ミステリーレガシー』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-51) 2018.05.20
    (甲賀三郎集)/△「序」江戸川乱歩/△「大阪圭吉のユニクさ」甲賀三郎/「死の快走船」/「とむらい機関車」/「雪解」/「デパートの絞刑吏」/「気狂い機関車」/「なこうど名探偵」/「人喰い風呂」/「花束の虫」/「石塀幽霊」/「燈台鬼」/△「巻末に」/△「解説」山前譲
  17. 『花嫁と仮髪 大阪圭吉単行本未収録作品集1』 盛林堂ミステリアス文庫 2018.11.25
    「花嫁と仮髪」/「愛の先駆車」/「北洋物語 氷河婆さん」/「人情馬車」/「明朗小説 門出の靴」/△「おめでたい人間の味覚」/△「怒れる山(日立鉱山錬成行)」/△「鱒を釣る探偵」/△「本格探偵小説のオーパーツ」野地嘉文/△「あとがきにかえて」小野純一
  18. 『マレーの虎 大阪圭吉単行本未収録作品集2』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.03.28
    「隆鼻術」/「事実小説 マレーの虎」/「明朗小説 青春停車場」/「北洋小説 アラスカ狐」/「夜明けの甲板」/「小説千文字 明るい街」/△「ハガキ回答(読者、作者志望者に読ませたき本…)」/△「ハガキ回答(昭和十一年度の探偵文壇に…)」/△「犯罪時代と探偵小説」/△「諸家の感想」/△「ハガキ回答(お問合せ)」/△「ハガキ回答(昭和十二年度の気に入った探偵小説二三とその感想)」/△「好きな外国作家と好きな作中人物」/△「名士メンタルテスト」 /△「戦時下のスケッチブック――大阪圭吉小論」芦辺拓/△「あとがきにかえて」小野純一
  19. 『沙漠の伏魔殿 大阪圭吉単行本未収録作品集3』 盛林堂ミステリアス文庫 2019.10.25
    「花嫁の塑像」/△「あとがき」/「氷」/「沙漠の伏魔殿」/「人外神秘境」/「主なき貯金」/「現代小説 山は微笑む」/「濱田彌兵衛」/「創作喜劇台本 軍事郵便(一幕)」/△「衣か食か住か」/△「会員通信」/△「ここに家郷あり(予告記事)」(豊橋同盟新聞)/△「椰子の実」/△「男子出生」/△「大阪圭吉の居た街、人、風景」高田孝典/△「探偵作家の新しい読まれ方」末永昭二/△「あとがきにかえて」小野純一
  20. 『大阪圭吉 自筆資料集成』 盛林堂ミステリアス文庫 2020.05.06
    △「らくがき帳その二(創作ノート)」/△「作品(目録)記録帳」/「原稿」(「主なき貯金」/「崖の家事件(書き出し)」/「花嫁と仮髪(一部草稿)」/「香水紳士(冒頭草稿)」)/△「仕事メモ」/△「画・書」(『海底諜報局』装丁画/家族宛手紙など)/△「資料編」(活字おこしなど)/△「解説なようなあとがき」小野純一/・「大阪圭吉略年譜」/・「参考資料」
  21. 『死の快走船』 創元推理文庫(Mお-02-03) 2020.08.12
    「死の快走船」/「なこうど名探偵」/「塑像」/「人喰い風呂」/「水族館異変」/「求婚広告」/「三の字旅行会」/「愛情盗難」/「正札騒動」/「告知板の女」/「香水紳士」/「空中の散歩者」/「氷河婆さん」/「夏芝居四谷怪談」/「ちくてん奇談」 /△「小栗さんの印象など」/△「犯罪時代と探偵小説」/△「鱒を釣る探偵」/△「巻末に」/△「怒れる山(日立鉱山錬成行)」/△「ハガキ回答(推薦の書と三面記事)」/△「ハガキ回答(昭和11年度の探偵文壇に)」/△「諸家の感想(内外傑作各三篇と感想と希望)」/△「海外探偵小説十傑」/△「お問合せ(記念号読後感と感想一篇)」/△「ハガキ回答(昭和十二年度の)」/△「好きな外国作家と好きな作中人物」/△「名士・メンタルテスト」/△「解題」藤原編集室/△「幻の探偵作家の足跡をたどって」小野純一
  22. 『勤王捕物 丸を書く女』 盛林堂ミステリアス文庫 2020.08.13
    「勤王捕物 丸を書く女」/△「あとがきにかえて」小野純一
  23. 『村に医者あり』 盛林堂ミステリアス文庫 2020.10.25
    △「作者の言葉」/『村に医者あり(「ここに家郷あり」改題)』/△「聖なる愚人、倉松志氣太―『村に医者あり』解説」杉山淳/△「あとがきにかえて」小野純一



      参考文献※主として小林文庫掲載リスト以降の更新分でかつ著書や収録書の解説などを除いたもの

  1. 「ルソン島に散った本格派・大阪圭吉」鮎川哲也
    幻影城 1975.06.
    『幻の探偵作家を求めて』鮎川哲也 晶文社 1985.10.10
    『幻の探偵作家を求めて 完全版(上)』鮎川哲也、日下三蔵編 論創社 2019.06.20
  2. Web Site 小林文庫 大阪圭吉
  3. Web Site 藤原編集室「本棚の中の骸骨」
  4. 「大阪圭吉著作リスト」
    『銀座幽霊』 創元推理文庫(Mお-02-02) 2001.10.26  ※増版更新版は未確認
  5. 「『戦線文庫』解説」橋本健午
    『戦線文庫』 日本出版社 2005.07.15
  6. 「大阪圭吉略年譜」(小野純一郎)ほか
    『大阪圭吉 自筆資料集成』 盛林堂ミステリアス文庫 2020.05.06
  7. ほか



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