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小舟勝二 作品

Since: 2025.02.16
Last Update: 2025.03.02
略年譜 - 探偵小説 - 随筆・評論
作品小集1(別ページ)

      小舟勝二(こぶねかつじ)略年譜

          1904年頃?(1927年末で来年25の厄年?)東京生まれ、東京育ち
          (後年一時は富士の裾野に住んだらしい)
    1927頃?〜  カバンの販売やビルのリフトマンや郵便局員を勤めたらしい
    1927.05.  新青年に「昇降機」を発表、年鑑に収録される
    1927.05.〜10.  探偵趣味に「ビーストンの研究」を掲載
    1930.04.  猟奇に「扉は語らず」を掲載、猟奇傑作選に収録される
    1930.08.  原作映画「処女入用」公開、北村小松脚本
    1931.03頃(昭和6年)  死去

    筆名は、小舟勝二、小舟生

      (国DC※)は国立国会図書館デジタルコレクション個人送信(ログイン必要)で公開されています(今後非公開になる可能性もあります)
      (青空)は青空文庫でインターネット公開されています
      (夢現)は「小舟勝二 作品小集」で公開しています



      探偵小説

  1. 「昇降機」
    ( 新青年 1927.05. )
    『創作探偵小説選集 一九二七年版』探偵趣味の会編 春陽堂書店 1928.01.01/復刻版 1994.04.10 (国DC※)
    ( 『犯罪都市 モダン都市文学7』川本三郎編 平凡社 1990.09.20 )
     私の友人の昇降機運転手をしている男の話。百貨店の事務所がある裏ビルで橋本運転手は五階から二階へ益田刑事と田中を運んだ。橋本と田中は犯罪を行って利得を得ていた。交代まで数分、窓の外に出ていた橋本は昇降機が動き出すのを見て飛び乗り……。
     スリルのある作品。妙にリアリティを感じる。
  2. 「収穫」
    ( 新青年 1927.09. )(夢現)
     奇妙な経験だった。私は郊外を歩いていて飢えと渇きに歩けなくなった。見すぼらしい洋館から出てきた無精髯の男に救われる。隣室からの声で目覚めて話を聞く。仕事、家宅侵入罪。塩谷が来て隣室の三人にその経緯を話す……。
     会話主体の叙述を生かした話。ビーストン風ではあるが意外性には乏しい。
  3. 「デパアトメント・ストア狂騒曲」
    ( クラク 1927.11.,12. )
    幻影城 1977.01. (夢現)
     東亜デパートで少女の足がエスカレータに挟まれる。接待部長室で休憩中の沢野が駆けつけるが伝票を落してしまう。同僚の松本、元恋人のタイピスト須藤京子、部長片岡。沢野をいつも指名する華客の仏蘭西マダムのグリーヌ。夜、宿直長の計算部主任堀田、副長の柳瀬老人、片岡、元刑事の山崎警備員の時に宝石が盗まれる。逃げ出せないはずの犯人は見つからない。警備長細川、管理責任……。
     ユーモアと風刺が混じった、意外な結末となる作品。
  4. 「「サンプル」の死」
    ( 探偵趣味 1928.03. )(夢現)
     瀧本が元同僚の食料品倉庫部長になっていたサンプルとあだ名されていた林田豊之介を訪れる。部員の浦野定夫が取り次ぎで隣室に入ると棍棒様のもので殴殺されていた。外への扉には錠がかかっていた。伊東屋百貨店刑事部副長の須崎の訊問で浦野は誰も来なかったと言うが犯行は否認。不利な証拠も出てきて……。
     密室を扱った作品。脱力系だがアンチ探偵小説、皮肉を込めた作品である事は確かで逆の逆をいった作品ともいえる。
  5. 「或る百貨店員の話」
    ( 探偵趣味 1928.06. )(夢現)
     K百貨店洋品仕入部の里見啓三は潔癖で貴族とも言われていた。津田の依頼で値引きに来た女売子をあしらう。洋品部長井上からの依頼。売場の手伝いは計算部から廻された進藤という女のさぼりの代わりはイヤだと断る。里見は倉庫へ行き、そして女を相手に……。
     最後は予想通りだが、人物と経過が面白い。
  6. 「国禁の書」
    ( 猟奇 1930.01. )(夢現)
     張基銘は党員で牧野みつ子と同棲し「国禁の書」を翻訳していた。アパート隣室の自称小説作家の里見は興味を抱いていた。趙に会い、党員が検束されたので移動する為戻ると鍵のかかった部屋にみつ子と里見がいた。趙は里見を問い詰める。里見は……。
     手品を見るような作品。ただオチは今ひとつわからない。それがオチなのかも知れないが。
  7. 「613」小舟生
    ( 猟奇 1930.03. )(夢現)
     私は一時から三時と三時から六時とどちらか永いか彼女に聞く。彼女は……。
     意外と常識の盲点をついているかも。
  8. 「扉は語らず(又は二直線の延長に就て)」
    ( 猟奇 1930.04. )
    『「猟奇」傑作選 幻の探偵雑誌6』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-06) 2001.03.20 (青空)
     私は元S百貨店洋家具仕入部員から彼のみが知っているという六年前の装飾工の惨死の真相を聞く。彼は地上六十呎の売場と隣接した倉庫で寝過ごしてしまう。閉店後で倉庫の鍵しかなく外へ出られない。誰かが唱っている……。
     妙な味のある、風が吹けば的な作品。直線は平行だったのか交わったのか。
  9. 「職工良心」
    ( 猟奇 1930.05. )(夢現)
     プリキ印刷職工の猪瀬幸助は有田為造からお礼と転職を条件として機械を停めるように依頼される。猪瀬は職場で実行しようとした時……。
     普通の、アンチプロレタリア的な小説。
  10. 「故意の過失(遺作)」
    ( 猟奇 1931.04. )(夢現)
     私は工場長の姪の過失で起こった大火で火傷した友人を見舞うと、彼は故意にやったと言う。経営の危機にある製缶工場、うやむやな待遇改善要求、一流ダンサーの工場長の姪。出火……。
     サスペンスある、心理に重点を置いた作品。「職工良心」と対になる作品。



      随筆・評論など

  1. 「(投書)」
    ( 新青年 不明 )
  2. 「ビーストンの研究」
    ( 探偵趣味 1927.05.〜10. )
     まえがき/第一稿 ビーストンの探偵劇趣味/第二稿 ビーストン作品の組立/第三稿 ビーストンの表現技巧
  3. 「八月探偵小説壇総評」
    ( 探偵趣味 1927.09. )
     「畳まれた町」国枝史郎、「湖畔劇場」正木不如丘、「赤んぼと半鐘」牧逸馬、「手袋」水谷準、「敗北」甲賀三郎、「隼の藪入り」久山秀子、「血友病」小酒井不木、「恋」渡辺温、「電話を掛ける女」甲賀三郎、「阿修羅地獄」甲賀三郎、「三年の命」横溝正史、「網」瀬下耽、「地の底の精神主義者」小堀甚二、「初夏の晴着」林房雄、「笑ふ楠田匡介」水谷準、「疑問の黒枠」小酒井不木、「水晶の座」牧逸馬、「譚」城昌幸、「老婆二態」XYZ
  4. 「九月創作総評」
    ( 探偵趣味 1927.10. )
     「闇の中の顔」大下宇陀児、「緑ヶ丘事件」松浦美壽一、「五月の微風」古賀龍視、「人肉の腸詰」妹尾アキ夫、「電報」前田次郎、「作品」窪利男、「素敵な素人下宿の話」荒木十三郎、「老婆」XYZ、「青野大五郎の約束」春日野緑、「平野川殺人事件」一条栄子
  5. 「十月創作総評」
    ( 探偵趣味 1927.11. )
     「お白狐様」正木不如丘、「或る自殺者の手記」小酒井不木、「拾った和銅開珍」甲賀三郎、「股から覗く」葛山二郎、「死体蝋燭」小酒井不木、「柘榴病」瀬下耽、「瓶詰奇談」稲垣足穂、「可哀想な姉」渡辺温、「舞馬」牧逸馬、「殺人淫楽」城昌幸、「青い鳥を買ふ話」加宮貴一、「追ひかけられた男の話」水谷準、「菰田村事件」甲賀三郎、「流れ三つ星」角田喜久雄、「廃園挿話」秋本晃之介、「或る検事の遺書」織田清七、「千三ッ」柴田良保、「水宮譚平狂気」小坂正敏、「断崖」龍悠吉
  6. 「(昭和2年度印象に残った作品と希望)(アンケート)」
    ( 探偵趣味 1927.12. )
     発見できず。むしろ絶筆状態にある江戸川氏平林氏の今後に注目。
  7. 「引伸し」
    ( 探偵趣味 1928.01. )
     近況。批評が探偵小説趣味ではなく普通の小説趣味に堕していると甲賀氏は云われたに違いない。探偵小説も芸術小説に通じている。手加減は無用。「夜光珠をめぐる女性」は筋は範とするが心理や生活や会話はひきつけられない。新作家が出て隠遁者が出る。隠遁者から再度現れるのではないかと信じる。
  8. 「拾ひ物」
    ( 探偵趣味 1928.02. )
     まとまったものより雑多な文章と写真に堪能している。ロンドンニュースのホームズが出て来る広告。新青年ではフランツ・ヘルヴィッヒの「貸出図書館」を書いている事。朝日新聞ラジオ欄で歳晩に因んで「探偵小説の夕」をやるというので出かける、来賓休憩室、座談、ラジオドラマ。
  9. 「俺は駄目だ!」
    ( 猟奇 1929.05. )
     探偵小説を書こうとすると苦悩する。訳書で古いものが好きで読み筋を解体などするが纏まらない。松浦美壽一氏は難しいと思っていない。咀嚼不充分ばかり。愚痴こぼし。
  10. 「都会の幻想」小舟生
    ( 猟奇 1930.01. )
     パラマウント「都会の幻想」を場末の映画館で見る。倒叙。昭和四年度の異色作。題名。
  11. 「角田喜久雄に望む」
    ( 猟奇 1930.05. )
     朝日新聞連載「浅草紅団」川端康成の切り抜きを送ろうと計画。角田喜久雄の住んでいた近所。文章と異なり温和な人。角田喜久雄の批評が聞きたかった。
  12. 「鑑定室 四月探偵小説総評」
    ( 猟奇 1930.05. )
     新青年四月号(「正義」浜尾四郎、「すちいる・べいす」阿部知二、「水族館の踊り子」川端康成、「其場の接吻」勝伸枝、「地図にない街」橋本五郎、「電気看板の神経」海野十三、「霧の夜道」葛山二郎)、文芸倶楽部(「鏡面の綱」大下宇陀児、「猟奇の果」江戸川乱歩、「魔像」林不忘、「帯取の池」岡本綺堂、「海外の歌」国枝史郎、「無念流昔話」金澤紫蘭、「恋のサイレン」辰野九紫)、東京日日新聞(「旋風時代」田中貢太郎、「由比正雪」大佛次郎)、
    サンデー毎日(「巷説化島地獄」行友季風)、週刊朝日(「巷説享保図絵」林不忘、「アスファルトの唾」サトウ・ハチロー、「どんどろ心中」佐々木味津三、「最後の夢」城昌幸、「赤爐閣と海のクラブ」)、雄弁(「幽鬼微笑」大瀧鞍馬)、講談倶楽部(「蜘蛛男」江戸川乱歩)、猟奇(「三つの偶然」本田緒生、「黄昏冒険」津志馬宗麿)
  13. 「北村小松氏と語る シナリオに就いて(インタビュー)」
    ( 蒲田 1930.頃 )
     ※未確認だが原作小舟勝三、脚本北村小松の松竹映画「処女入用」(1930.08.公開)に関してと思われる。映画の内容は不良少年が惚れた女が実は女賊だったという話らしい。
  14. 「葛西善蔵の幽霊(絶筆)」
    ( 猟奇 1931.05. )
     葛西善蔵氏とは氏がいた本郷台の旅館の息子と友人だった関係で知り合った。酒を飲んだ時の葛西氏。拵え事を書くな、との言葉などがつきまとっている。



      参考文献

  1. 「「探偵趣味」総目次」「「探偵趣味」作者別作品リスト」山前譲編
    『「探偵趣味」傑作選 幻の探偵雑誌2』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-02) 2000.04.20
    「「猟奇」総目次」「「猟奇」作者別作品リスト」山前譲編
    『「猟奇」傑作選 幻の探偵雑誌6』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-06) 2001.03.20
    「「新青年」作者別作品リスト」山前譲編
    『「新青年」傑作選 幻の探偵雑誌10』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-09) 2002.02.20
  2. 「小舟勝二の辛辣な皮肉」滋岡透
    猟奇 1931.05.
  3. ほか



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