大庭武年(おおばたけとし)略年譜
1904.09.07(明治37年) 浜松にて生まれる
1911.頃 大連に移る
19xx.xx. 早稲田大学第二高等学院文科入学、のち早稲田大学文学部英文科
1928.xx. 卒業、大連に戻る
1928.xx.〜 「青春」を大連新聞に連載
1930.10. 「十三号室の殺人」が新青年の懸賞に入選、掲載
(1932.03. 満州国建国宣言)
1932.xx. 満州国建国運動に参加
1933.06. 「小盗児市場の殺人」を新青年に掲載
1934.xx. 満鉄入社、この頃奉天に移る
1945.08.10(昭和20年) 戦死
筆名は、大庭武年
(国DC※)は国立国会図書館デジタルコレクション個人送信(ログイン必要)で公開されています(今後非公開になる可能性もあります)
(青空)は青空文庫でインターネット公開されています
(幻影城)は探偵小説専門誌「幻影城」と日本の探偵作家たち の 幻影城書庫でインターネット公開されています
(夢現)は「大庭武年 作品小集」で公開しています
探偵小説
- 「十三号室の殺人」 [郷警部]
( 新青年 1930.10. )
幻影城 1977.05.
『迷宮の旅行者 本格推理展覧会』鮎川哲也監修、山前譲編 青樹社文庫(あ-03-08) 1999.10.20
『大庭武年探偵小説選1』 論創社・論創ミステリ叢書21 2006.12.10 |
D市ムーン・ビーチのクイーン・ホテルにドイツ人フリッツとギリシャ人マリヤが宿泊。三階の隣同士の部屋からマリヤはウイリアムが宿泊していた二階の端の十三号室に移る。半日毎に陽気から陰気になるマリヤ。宿泊十三日目にマリヤがピストルで撃たれて死亡、浴室の窓があいていたが後に非常階段ペンキ塗りたてとわかりほぼ密室である事がわかった。フリッツは捕縛される。郷英夫警部が細かな手懸りから真相をつきとめる。 |
戦前の論理的探偵小説として秀逸。トリックに新味がない事や、ややもすると推測できてしまうが為に長らく日の目をみなかっただけではないかと思われる。 |
- 「競馬会前夜―郷警部手記の探偵記録―」 [郷警部]
( 新青年 1930.12. )
『殺意のトリック』鮎川哲也編 双葉社 1979.11.10
『外地探偵小説集 満州篇』藤田知浩編 せらび書房 2003.11.10
『大庭武年探偵小説選1』 論創社・論創ミステリ叢書21 2006.12.10
( 『幻の名探偵』 光文社文庫(み-19-41) 2013.05.20 ) |
D市郊外安田農園の競走馬彗星が騎手戸倉定雄に射殺されたと園主安田善作からの通報があった。私(郷警部)らが到着すると戸倉の屍体も見つかっていた。左手の拳銃、前夜の雨、死の前の行動から馬を射殺してから自殺したとは思えない。善作は前夜、宮部氏らと娘小夜子を混じえた晩餐を、スミノルフとは会談をしていた。戸倉は自殺したようであるが……。 |
競馬ミステリーの先駆け作品。事件、調査、陳述、解決という章題の論理性の強い探偵小説でもある。短すぎて読物としては物足りないがそれを補う構成でまとまっており秀作。 |
- 「曠野に築く夢(中絶)」 [郷警部]
( 満洲日報 1931.03.13〜06.12(74回) )
『曠野に築く夢』(オンデマンド) 大陸書館 2023.05.10 |
亡命者黄宝廷は大連の別荘に姉娘錦蘭、妹娘彩花、執事蕭志亮、雇人劉と趙とコック李と運転手陳と共に住んでいた。四月の夜、ヂョンニイ・スミスと田畔が錦蘭を送り届け、呉雨亭が借金に来ると四発の銃声が。金庫が開けられ、黄が刺殺され、呉と蕭が行方不明になっていた。ホテルで郷警部は部屋にあったのと同じ葉巻とハンカチを持つ伴雍一青年を見かける。姉妹や雇人らの聴取、鑑識結果、十万弗の金塊を持った二人連れの目撃証言。
元ロシア陸軍中尉アレキサンドル・ワシリッチ・スミルノフ、妻オリガ、長子セルゲイ、末子ミハエル。チェリコフ、カチェリーナ、荒鷲団。伴を追って大連に飛行機で来た未亡人山村齋子、機中同乗者植中新一。伴のことを知らせた籾山夫人とヂョンニイ、齋子とヂョンニイ、郷と伴、伴と植中、五十万弗の隠し場所の暗号紙片。哈爾浜の伴と齋子、カチェリーナ、セナトール、ゲ・ペ・ウ、セルゲイら。大連の阿片窟と北平の男譚三秀と青蛾、庄司刑事、蕭志亮、郷警部の推測。大連に戻った伴とカチェリーナ、ヂョンニイと田畔、植中と齋子。 |
探偵、ロマンス、陰謀、政治的要素を含んだ曠野に築く夢を追った人々の話。その後の構想でも暗号の説明はない。背景となる当時の状況は興味深いが中絶となった理由かもしれない。 ※本稿は新聞連載を読んでのコメントですがあやふやだった漢字人名は大陸書館版を参照しています |
- 「旅客機事件」
( 探偵 1931.11. )
『「探偵」傑作選 幻の探偵雑誌9』ミステリー文学資料館編 光文社文庫(み-19-09) 2002.01.20 (青空)
『大庭武年探偵小説選1』 論創社・論創ミステリ叢書21 2006.12.10 |
DからH、K飛行場へ向かう定期航空。池内操縦士、三枝機関士に乗客二人。生糸問屋綿井茂一とR銀行頭取秀岡清五郎。飛行中三枝は客室後部の便所に行くが戻った時から様子がおかしい。P民間飛行場の練習機と挨拶しながら順調にH飛行場に着陸すると、秀岡は血まみれで死んでおり綿井はいなくなっていた。地上を克明に見ていた池内はアリバイが成立するが……。 |
閉鎖空間だが当時の民間飛行機の構造がよくわからないのが難。扉はあるが気密性はないのだろう。偶然も多いが設定、構成、意外性は良い。 |
- 「ポプラ荘の事件」 [郷警部]
( 新青年 1931.12. )
『パズルの王国 ミステリーの愉しみ3』鮎川哲也編、島田荘司編 立風書房 1992.04.20
『大庭武年探偵小説選1』 論創社・論創ミステリ叢書21 2006.12.10 |
D市郊外ポプラ荘で独逸人ゲルハルト博士が憤怒の形相で死亡しているのが見つかった、凶器の拳銃などの物理的証拠は見つからない。弾丸はガス管に当ったらしく一時ガスが充満していたという。郷警部らは隣の日光室の窓ガラスが外れるのを発見。女中浜村よね、美智子夫人、娘ベティ、女中石川光、下男下田啓吉、そして声楽家の相原、浜村三吉の訊問で……。 |
拳銃のトリック自体に新味はないが、手懸りの提示やミスディレクションの出し方は上手い。犯人の誘導も含め論理的説得力のある作品。 |
- 「牧師服の男」 [郷警部]
( 犯罪実話 1932.05. )
EQ 1990.09.
『こんな探偵小説が読みたい』鮎川哲也 晶文社 1992.09.15
( 『七人の警部』山前譲編 広済堂ブルーブックス 1998.04.10 )
『大庭武年探偵小説選1』 論創社・論創ミステリ叢書21 2006.12.10 |
D市、老男爵松井峻之助のアパートを訪れたC市の牧師村上敬吉。義弟の文書では教会に寄付する事になているので受取りにきたのだ。宝石を手放すくらいなら死んだ方がましと松井は言う。ばあや信が牧師の忘れ物を渡しに玄関まで行った時に銃声、松井は死んでいた。薬莢の指紋や煙草の吸殻などから郷警部は真相にせまる。 |
自ら「杜撰な推理」とあるように少し飛躍している。可能性の一つとしての調査と結果であれば問題はないが。幾つもある決定的でない手懸りは面白いものがある。 |
- 「海浜莊の惨劇」 [郷警部]
( 犯罪実話 1933.04. )
『大庭武年探偵小説選1』 論創社・論創ミステリ叢書21 2006.12.10 |
D市から山一つ越えた、廃港となったが風光明媚な町R。テラスで撃たれて死んだジェームス。ローザ夫人の話ではジェームスの弟ヘンリー、甥ジョージ、養女ドローレスそれぞれ動機があるらしい。テラスからは一階の入口の他、階段下は浮桟橋でヘンリーがボートを修理、二階への階段の先の部屋にはジェームスがいた。現場に残されたLiLの文字、足跡、現場にない拳銃と貫通した弾丸。郷警部は英国領事や顧問弁護士の話などから犯人でない人物を除外していく。 |
戦前には類をみない、まさに埋れていた本格探偵小説の手本のような無駄のない作品。物語的に不足というのなら英国領事や顧問弁護士の話を話ではなく物語として入れればよいだけ。名作。 |
- 「小盗児市場の殺人」
( 新青年 1933.06. )
小説推理増刊 1974.08.
幻影城 1977.05. (幻影城)
朱夏 1999.10.
『大庭武年探偵小説選2』 論創社・論創ミステリ叢書22 2007.01.20 |
大連の六月、私が貴金属商でブローチを売り現金を得たところを龍崎に見られてしまった。東京で掏摸をしていた男で、私は強請られていたのから逃げていたのだ。私は彼を都市の泥棒市場とでもいうような場所で葬ろうとしたが……。 |
しょうとるいちば。題名が印象に残る作品。日本人が行くのに危険な場所というのも良い設定。結末はコントに近いが、伏線など構成はしっかりしている。 |
- 「血塗られた海賊船」
( 実話読物 1933.10. ) |
※島崎氏リスト掲載 不詳 |
- 「毒薬自殺綺譚―薬学教室のノオトから」
( 協和 1933.10.15 )
『大庭武年探偵小説選2』 論創社・論創ミステリ叢書22 2007.01.20 |
医学士相良は山田の自殺が不思議で仕方がない。寄生虫の駆除で体の調子も良くなり、職も恋もうまくいったところなのに。 |
誇張もありそうだが薬学の講義でなされる内容をアレンジしたコントであろうか。今となっては調べないとわからない事だが戦前では珍しくなかったのかもしれない。 |
- 「拾った拳銃」
( 新青年 1934.06. )
『大庭武年探偵小説選2』 論創社・論創ミステリ叢書22 2007.01.20 |
従軍記者にならない特派員記者、特種を得る為前線へ。身を守る武器もない。Nは敵の戦死者を掘り出して拳銃を手にする。ある時、一人残って警備することに。 |
コントというべきか、当然の結末というべきか。悲劇にならないのが良いところか。 |
- 「カジノの殺人事件(戯曲)」
( ぷろふいる 1934.08. )
『大庭武年探偵小説選2』 論創社・論創ミステリ叢書22 2007.01.20 |
場所は外国の壮麗な広間。銃声が一発。青年スミスが拳銃を手に、倒れて絶命している老紳士ジョンソンを見て立っている。舞踏室、賭博室、控え室の扉が開き紳士や婦人らが登場。ジョンソンに娘のメリイへの求婚を斥けられたスミス、口論していた旧友のエドワード。撃った場所が違うと指摘する警部。逃亡したスミスの恋敵ロバート。不可能な事情を淘汰していくと。 |
少し複雑でわかり難くい。また理由の一つは人数が多く紳士A〜Pの発言である為かもしれない。実際の劇では見た目で人物の属性が付加されるので問題ないかもしれないが。 |
- 「復讐綺談」
( ぷろふいる 1935.11. )
『大庭武年探偵小説選2』 論創社・論創ミステリ叢書22 2007.01.20 |
M医科大学生理学教室助手の山辺一夫には大学時代に恋人エミ子がいたが津島秀雄に奪われてしまっていた。勉学でも勝てず、二人は結婚。津島は重症となり、医学雑誌の記事を見て山辺は復讐しようとする。 |
今では医学雑誌記事の内容を信じる人はいないだろう。殺害で全く勝てずに終るか、助けて後に勝つのを期すかの葛藤部分は普遍的テーマでもあり良い感じ。 |
- 「コント 彼と保険」
( 満洲日日新聞 1936.01.12 )(夢現) |
彼は子供可愛さに保険に入り……。 |
……。 |
- 「夏の別荘」
- 「歌姫失踪事件」
( ぷろふいる 1937.03. )
『大庭武年探偵小説選2』 論創社・論創ミステリ叢書22 2007.01.20 |
A新聞探訪記者の私、津上純夫は迷宮入りになった歌姫失踪事件の真相、友人峰島一衛の活躍を知っている。黒沢恵子は青髭からの脅迫状を受取っていた。N会館の帰朝リサイタルの帰り、鍵のかかった車から消えていた。後続車両には支配人浅川久輔、パトロン北畠男爵、音楽批評家寒河江譲二が乗って見守っていたのだが。運転手も気付かなかったと証言するが殺されてしまう。峰島は自動車から手懸りを得る。 |
自動車内での失踪事件。モーターボート、飛行機、そして本作が自動車と機械系にも強い事をうかがわせる。意外性を重視した為か物語性を重視した為か、伏線提示しての論理性は劣る。 |
- 「煙館の殺人」
( 旅行満洲 1937.07. )(夢現) |
北平の旅舎を出て歩いていて、姑娘がいると男に案内された先は煙館(アヘン屋)だった。女は宝紅といった。馴れた手つきで炙り転がし捏ねって煙斗にそそぐ。吸う。翌朝私は巡警に起こされる。宝紅は刺殺されていた。扉の鍵は一つで被害者の靴の底にあった。独房に入れられた私は事件とは無関係と主張する。証拠物件を見せてもらい現場を調査すると……。 |
描写と犯人限定過程はある程度論理的でそれなりに面白い。ただ密室ともいえる状況と後出しであるのは肩透かしとも感じる。 |
- 「タンヂーの口紅」 (「シネ・コント 恋愛都市風景 タンヂーの口紅(奉天)」)
( 満洲映画 1938.11. )(国DC※)
『大庭武年探偵小説選2』 論創社・論創ミステリ叢書22 2007.01.20 |
靴の紐を直すときに書類をロードスターに載せた牧山君。姑娘が乗って走り去っていきます。届けにきた姑娘蘭英とひと時を過ごします。塗って下さいません? と渡されたタンヂーの口紅がポケットに。 |
国際都市ならではというエピソードか。ですます調の文と短い文節が軽妙な雰囲気を出している。 |
少女小説
- 「黄金の十字架」
( 令女界 1932.12. )(夢現) |
哈爾賓、露西亜帝国中将だったアレキサンドル夫妻は行倒れていた娘マリアンナを助ける。一人息子のセルゲイは帝政露西亜復活の使命を帯びて出発する。別れ際にセルゲイはマリアンナに黄金の十字架の首飾りを渡す。ゲ・ペ・ウへの密告者を捜し……。 |
亡命ロシア人の悲劇的な話。ありがちな物語を北満洲を舞台にしたもの。 |
- 「胡盧島の乙女」
( 令女界 1935.11. )(夢現) |
小説家の私は旅の途中、廃港となった胡盧島のホテルに泊まった。聞える歌声はソフィアという英吉利生まれの露西亜人少女だった。旅先での恋、沈英という紳士の来訪……。 |
夢の跡という旅情、詩情をを感じる作品。 |
- その他にもあるようですが不明です。
一般小説、戯曲
- 「青春」
( 大連新聞夕刊 1929.07.08〜1929.12.05(130回(129回?)) ) |
硲徹三は大学の夏季休暇で故郷から戻る途中に恋人船原かつ子と会う約束になっていたが来なかった。同人誌『羅甸街』を読む女性、昔馴染みの土屋沓子夫人、新しい下宿、『羅甸街』の仲間達とカフェ・トロイカ。親の監視が強化されたかつ子、二人の逢瀬。引き裂かれる二人……。 |
- 「難破船(戯曲)」
( 協和 1930.04.15 )
『大庭武年探偵小説選2』 論創社・論創ミステリ叢書22 2007.01.20 |
太平洋上の難破船、数十日後の甲板。乗員は三吉、龍蔵、船長、仙太、由松。死を目前にしたそれぞれの心情。 |
- 「三吉積罪物語」
( 満洲日報 1930.05.04〜14 )
『大庭武年探偵小説選2』 論創社・論創ミステリ叢書22 2007.01.20 |
江戸時代末期、三吉は母の死でかたぎになっていた。昔の仲間の六蔵に出会い賭博で借金、お蘭と出会い若旦那を、ふとした事で次々と罪を重ねていく。 |
- 「明けゆく満蒙(中絶)」
( 協和 1930.05.01〜06.01 )
『大庭武年探偵小説選2』 論創社・論創ミステリ叢書22 2007.01.20 |
斉斉哈爾から西北五十里、馬賊雷煥淇らに捕らえられた日本人が譚宣章に処刑される。哈爾浜で植村大尉の死をニーナ・ミハイロヴナ嬢に知らせる荒城秀夫だった。奉天では植村の妹の晴子は穆洵少佐の操縦する飛行機に乗り求婚されている。荒木と会った晴子だが武装警官に捕らえられる。逃げ出した晴子は穆に助けを求める。逃げ出した荒木は芳蘭に匿われる。というところで中絶。 |
- 「港の抒情詩」
( サンデー毎日増刊 1930.05.05 )
『大庭武年探偵小説選2』 論創社・論創ミステリ叢書22 2007.01.20 |
高等商船学校の練習船、篠島は横浜に帰港する。親友松崎の遺品を許嫁だった縫子に渡す。沖は元気づけようとLホテル女王のまゆみを篠島に紹介するがまゆみは本気になっていく。縫子に貿易商の次男との縁談がきていた。愚連隊にからまれ篠崎と沖は追い払うが……。映画化されたとの事。 |
- 「戯曲 張学良」
( 満蒙 1932.04.〜05. ) |
一九二八年六月、奉天城大帥府内の一室での張学良と学銘との会話。九月、奉天の学良別邸での夜会。十月、奉天城総司令部での学良派と楊宇霆派。一九二九年一月、大帥府内の一室での常蔭槐と楊宇霆の銃殺。七月、遼寧城上將軍公署の一室でのロシア領事らとの会見。九月、遼寧城總司令部の会議後。一九三〇年九月、奉天郊外学良邸での会議。十月、奉天ホテルでの祝賀会。十一月、南京での蒋介石と学良との会談。 |
- 「凱歌あがる下に」
- 「故国」
( 満蒙 1933.01. ) |
アメリカ育ちの陳英秀が上海に着く。恋人陳淑芳とのデモ参加。友人黄律発の会社。排日、欧米資本、中国の金持ち。陳英秀は……。 |
- 「戯曲 手紙」
( 協和 1933.01.01 ) |
厳冬の北満の僻陣、斎田上等兵らは戦闘中の思い出や故国の事を話している。藤田一等兵は家を飛び出したきりの母を思い斎田に手紙を書いてくれるように頼む。巡回、銃声……。 |
- 「戯曲 烽火」
( 満蒙 1933.03. ) |
劉明山の貧しき百姓家、劉明山と娘苑香、助けた満州国陸軍上尉范嘉安。中華民国陸軍上尉となった息子の劉景文が現れる。范嘉安を襲う劉景文。建図記念の慶祝会のことを聞く劉景文。密偵。慶祝会の日、劉景文は……。 |
- 「戯曲 清朝終焉」
( 満蒙 1933.06. ) |
一八九一年頃、北京紫禁城内、李鴻章ら。一八九八年頃、北京の離宮頤和園内、西太后と李連英、李鴻章。一八九九年頃、紫禁城内、光緒帝と孝欽皇后(西太后)。一九〇三年頃、北京直隷総督公館、李鴻章の仏前の袁世凱ら。一九〇八年頃、北京紫禁城内、光緒帝亡き後の裕隆皇太后。 |
- 「映画筋書 輝く銃後」
( 協和 1933.06.15 ) |
映画筋書「事変を背景とする満鉄社員の健闘」懸賞入選作。機関士矢橋鎮夫、駅長の父、愛人の綾子。橋梁が爆破され修理列車に乗る矢橋。先駆車に乗る楊恵林。襲撃と楊の死。匪賊の来襲……。 |
- 「戯曲 馬占山」
( 満蒙 1933.07. ) |
創作ファース。パリに滞在中の東洋のナポレオン馬占山。事故を口実に、結果フランスの新聞記者の取材を受ける。紙上に載った記事は……。 |
- 「創作小説 少年」
( 新天地 1934.01. )(国DC※)(夢現) |
秋の夕、中学校の校庭。久保田は飯田に尋ねる、惇公がどうしたって? 恨まれるから。Y・Y・Y……。 |
- 「戯曲 満洲開基」
( 満蒙 1934.03. ) |
伝説。三人の仙女姉妹が舞い降り一人が身ごもる。地上に残り育てられた布庫哩雍順が満洲を統一する。 |
- 「戯曲 蒋介石」
( 満蒙 1934.05. )(国DC※) |
人物伝?三幕。蒋介石の学校の場、北伐演説、孫文の墓前 |
- 「創作小説 子供の顔」
( 新天地 1934.06. )(国DC※)(夢現) |
仁吉がころばそうとしました。仁吉は鞄の中をみせます。仁吉は強いところを見せます。仁吉は扉を閉めただけだと言います。仁吉はRの妹を泣かせます。仁吉は……。 |
- 「戯曲 劉愛護村長」
( 満蒙 1935.01. )(国DC※) |
啓蒙戯曲?三幕計五場。杜景順と相文兄弟が豚を汽車に殺され置き石をしようとするが劉村長に諭される。母が病気で医者が都市から来て助かる。景順が匪賊に殺され相文が隠れ家を見つけ劉村長に相談し……。 |
- 「創作小説 若い情熱」
( 新天地 1935.04. )(国DC※)(夢現) |
姪の美生子が高等女学校を卒業でD市から東京に引き上げる事になった。私は美生子と彼女の兄と中学同窓の学生島、恋人同士の二人から美生子が残れるよう働きかけるよう頼まれた。彼女の母高石未亡人は学生の身分で結婚はさせられないと反対する。あと三年……。 |
- 「戯曲 夜の一幕」
- 「小説 農民」
( 満蒙 1936.11.〜12. )(国DC※) |
プロレタリア? 働いても働いても良くならない。租税に附加税に利子。政府から省縣軍閥地主と加算されていく。それらもまた外国資本へと流れていく。旱魃でも水害でも豊作でも。農民はそれらを知らない。ついに一人になった穆英は売られた妹を買い戻したいと願う。 |
- 「脚本 護れ愛護村旗」
- 「戯曲 共同耕作」
( 観光東亜 1938.06. ) |
啓蒙戯曲?二幕二場。ある鉄道愛護村の警務分所長森巡査を筆頭に農民からの相談事を受けたり少年隊や副業を指導したりしている。匪賊が……。 |
- 「創作小説 売工人(まいくんれん)(中絶?)」
( 新天地 1938.09. )(国DC※) |
プロレタリア? 李萬福は旱魃にやられ、家族を置いて単身満洲への出稼ぎに志願する。線路敷設工事、不自由のない生活だった。だが月に一度の賃金支払日には請負人や大工頭などで減り、生活費、共同生活使用人の賃金が引かれてわずかなものだった。ダイナマイト作業の日……。 ※附記――締切日の都合で中途半端で筆を擱く事をお詫びする、他日中篇に纏める心算である。 |
- 「映画シナリオ 汪兄弟」
- 「部落へゆく道」
随筆など
- 「芸術運動の提唱」
( 大連新聞 1929.06.04〜08(5回) )(夢現) |
大連市民の芸術趣味。音楽、美術、文学、劇。アマチュアの趣味運動を。 |
- 「作者の言葉として(『青春』)」
( 大連新聞 1929.07.07 ) |
一篇の抒情詩を書き綴ってゆきたい。 |
- 「プロ芸術に就て―ほんの偶然的に―」
( 満洲日報 1929.07.25、08.01 )(夢現) |
プロレタリア文芸も芸術はあくまで芸術でなければならない。長い生命をもつものほど尊い。芸術を実用品に。 |
- 「よろこび―金丸君に―」
( 満洲日報 1929.08.08 )(夢現) |
金丸精哉「満蒙の地より母国の友へ送るの書」一等第一席を祝して。 |
- 「『蟹工船』読後に」
( 満洲日報 1929.08.15 )(夢現) |
「蟹工船」は傑作。煽動などではなくありのままを描いた芸術作品。 |
- 「笈摺の旅―季節的随筆―」
( 満洲日報 1929.09.05 )(夢現) |
秋は旅に誘われる。冬の津軽。春の京都。伊豆の温泉場。漂然とした旅。 |
- 「芸術家の生活に就いて論ず」
( 満洲日報 1929.09.12,19 )(夢現) |
芸術家に対して大多数は誤解している。内的外的生活の世界を異にしている。世間的功利主義は最小限。個性的。 |
- 「女性主義者菊池寛氏の検討」
( 満洲日報 1929.11.07. )(夢現) |
氏の長編通俗小説はほとんどヒーローではなくヒロインが中心。時には辛辣だがフェミニスト。 |
- 「文芸同人雑誌の存在理由 北村舞人君に応へて」
( 満洲日報 1929.11.14,21 )(夢現) |
手紙で文芸同人雑誌の存在理由を否定したところ反駁がありそれに対する意見。文壇登竜門としての文芸雑誌は機能していない。 |
- 「アトリエ雑記 北村舞人氏に再び応へる」
( 満洲日報 1929.12.12 )(夢現) |
アイデアリストとリアリストの違い。 |
- 「「青春」の後書」
( 大連新聞 1929.12.12 ) |
一粒種の愛児。回数が延びた、ミス、誤植。最後について。謝辞。 |
- 「昨日を揚棄して明日のシネマへ」
( 満洲日報 1930.03.10,17,21,31 )(夢現) |
シネマは芸術あり得るようになった。自然色、音響フィルムなどと芸術性は関係しない。シネマの明日とは、キノ・キイとアヴァンガルド(前衛)について。 |
- 「文科教室」
( 満洲日報 1930.04.21 )
『大庭武年探偵小説選2』 論創社・論創ミステリ叢書22 2007.01.20 |
W大学の三年間のようす |
- 「北村舞人の詩」
( 満洲日報 1930.04.28 ) |
北村舞人の詩の引用紹介 |
- 「偶成詩集より 再び北村舞人の詩を紹介す」
( 満洲日報 1930.05.26 ) |
北村舞人の詩の引用紹介 |
- 「探偵小説と私」
( 満洲日報 1930.08.11 )
『大庭武年探偵小説選2』 論創社・論創ミステリ叢書22 2007.01.20 |
探偵小説を書いたのは、ファンなのと募集というチャンスと空想力への創作欲。非センチメンタルでスピイデイでエクサイテング。興味本位と芸術性は両立し難い。「黄色い部屋」を読んで病みつきに。物語的探偵小説は大衆小説としては興味的だが真の探偵小説は本格物。目標は純文学で変わらず。通俗小説より探偵小説は何百倍もまし。スマートネスとモダニズムの注入を。 |
- 「何を興味深く読んだか?」
( 書香(満鉄各図書館報)(満鉄大連図書館報) 1931.01. )(国DC※)(夢現) |
小山薫全集、ルイ・フィリップ全集、東支鐡道を中心とする露支勢力の消長 |
- 「作者の言葉(曠野に築く夢)」
( 満洲日報 1931.03.12 )(夢現)
『曠野に築く夢』(オンデマンド) 大陸書館 2023.05.10 |
満州を背景としての注文。新時代の読者の為、本格的大衆小説。 |
- 「「曠野に築く夢」中断に就て」
( 満洲日報 1931.06.13 )
『曠野に築く夢』(オンデマンド) 大陸書館 2023.05.10 |
74回(社の方針で協議して?)で中断。終篇に至る粗筋。 |
- 「何を興味深く読んだか?」
( 書香(満鉄各図書館報)(満鉄大連図書館報) 1932.01. )(国DC※)(夢現) |
怖るべき子供たち、ゴーリキイ全集、北満洲の政治経済的価値 |
- 「馬賊・義賊・その他―満洲犯罪ニュース」
( 犯罪実話 1933.01. )
『大庭武年探偵小説選2』 論創社・論創ミステリ叢書22 2007.01.20 |
四篇の実話。「北満の義賊コルニコフ」護送中に逃亡、悠然と一般人にまぎれ消息不明だったが。「大倉組馬賊事件」工事現場から攫われ身代金を払う、馬賊組織の話とその後。「L子行方不明事件」小学校に帰りに行方不明、誘拐理由も不明のまま。「劉殺し事件」被害者は支那南方政府要人で強盗、偶然隣室の話をM新聞記者が聞いて。大連、旅順市街は凶悪犯罪はほとんどない。捜査に手抜かりなどがなければ捕縛されるから。この稿は「友人島田一男君の示教によるところ大」との事。 |
- 「映画『巴里祭』を語る(未完?)」
( 新天地 1933.06. )(国DC※) |
台本再録 |
- 「亡き父を語る」
( 新天地 1933.08. )(国DC※)
『大庭武年探偵小説選2』 論創社・論創ミステリ叢書22 2007.01.20 |
昭和八年六月、享年六十四歳。大正十三四年頃、大連から資材人員を出しての樺太の製紙工場建設(富士製紙知取工場)。小学校優等生で卒業、村役場、気多製紙会社(社長大川平三郎)、材木商経営、日露戦争後渡満、山葉洋行支店長、独立し土木建築請負。大連ヤマトホテル、正金銀行、税関長官舎を請け負う。感謝を、そして安らかに。 |
- 「満洲国に翹望する映画政策」
( 満蒙 1933.09. )(夢現) |
序説(宣伝手段としての映画の効用/国策遂行手段としての映画)/本論(国営映画製作機関の樹立へ/満洲国映画の製作方法論) |
- 「興味深く読んだ書物」
( 書香(満鉄各図書館報)(満鉄大連図書館報) 1934.02. )(国DC※)(夢現) |
化粧品と口笛 川端康成氏著 ―僕の好きな傾向の文学として愛読せり。 無神論教程 第一部第二部 永田広志氏訳 ―常識としての宗教観をこれ程迄に分り易く説いてくれし書物他になし。 ※全文 |
- 「近頃の感想」
- 「遼西旅行雑記」
- 「大連と探偵小説」
( ぷろふいる 1936.12. )
『大庭武年探偵小説選2』 論創社・論創ミステリ叢書22 2007.01.20 |
大連は内地と変わらない。満人街は猟奇そのもの。この頃は明朗化。探偵小説のネタもなくなりつつある。満州を背景に社会情勢のからんだ国際探偵小説が書けたらと考えている。 |
- 「ハツピイ・エンド要求論その他」
( 満洲映画 1938.04. )(国DC※)(夢現) |
「限りなき前進」良心的作品だが入場料で憂鬱を買う事に。「どん底」のように明日への希望を。東宝制作課長は合理化で採算の取れる作品製作方針との事、日活のように観客に追従ではなく先導を。満映劇場第一回作品に期待。東和商事の努力。「風の中の子供」「五人の斥候兵」。観客を低級扱いする映画企業家こそ低級。 |
- 「内山完造氏を囲み「支那を語る」座談会」内山完造、衛藤利夫、寺田喜次郎、道満謹吾、富岡羊一、石原秋郎、大井二郎、千田萬三、大庭武年、佐藤真美
- 「本に就て 借りた本は返さなくてよいか」
( 満鉄奉天図書館収書月報 1939.07. )(夢現) |
他人に本を貸すと返ってこない。参考資料で購入、読み捨てる為ではない。道徳心のなさ。 |
- 「農村宣伝」
( 満洲グラフ 1939.09. )(夢現) |
愛路宣伝で効果的なのは映画と演劇。映画に対する反応、巡回上映時の匪賊との遭遇など。 |
- 「鉄道愛護団と愛路青少年隊」
( 協和 1939.10.15 )(国DC※)(夢現) |
鉄道愛路運動/愛護団の経緯と活動内容紹介。 |
- 「住めば都か(満洲に住むよろこび)」
( 協和 1940.02.01 )(国DC※)(夢現) |
東海に生まれ満洲の方が住み良いとはいえない。環境に応じて住みよさ、楽しさ、生きがいを発見している。生活することそのものが楽しい。 |
- 「書かない弁」
( 満洲日日新聞 1940.09.01 )
『大庭武年探偵小説選2』 論創社・論創ミステリ叢書22 2007.01.20 |
一年以上沈黙している。依頼に背水の陣で臨むが敗北。編集者にお詫び。 |
- 「ふるさと」
( 満洲日日新聞 1942.09.04 )
『大庭武年探偵小説選2』 論創社・論創ミステリ叢書22 2007.01.20 |
浜松で十歳ぐらいまで育った。富士が見えていた。家は城の直下、祖父は茶畑で茶を摘んでいた。天竜川、遠州灘、浜名湖畔。心の故郷は生まれ故郷。子供たちの時代は世界的な日本人になるのを期待。 |
- 「書かれざる傑作」
( 満洲日日新聞 1943.05.29 )
『大庭武年探偵小説選2』 論創社・論創ミステリ叢書22 2007.01.20 |
七、八年小説を書いていない。この頃、毎日一大長篇を頭の中で描きちらしている。新興階級の家族が中心。父の時代、息子の時代、子供たちの中に次の萌芽が。書かれざる傑作に相違ない。 |
著書
- ( 『昭和十三年版 愛路運動の全貌(パンフレット)』鉄道総局附業局愛路課 南満州鉄道鉄道総局 1938.12. )
- 『護れ愛路旗 愛路文芸集』南満州鉄道鉄道総局附業局愛路課 鉄道総局附業局愛路課 1939.03.
「劉愛護村長」ほか
- ( 『鉄道愛護運動の概要』南満州鉄道鉄道総局附業局愛路課 鉄道総局附業局愛路課 1939.09. )
- 『愛路美談集』 鉄道総局附業局愛路課 1939.10.
※未調査
- 『我等鉄路と共に 愛路美談集 第二輯』 鉄道総局附業局愛路課 1943.xx.
※不詳
- 『興亜国民読本』 満鉄 1944.xx.
※不明(上記と同一の可能性もあり)
- 『大庭武年探偵小説選1』 論創社・論創ミステリ叢書21 2006.12.10
「十三号室の殺人」/「競馬会前夜―郷警部手記の探偵記録―」/「ポプラ荘の事件」/「牧師服の男」/「海浜莊の惨劇」/「旅客機事件」/△「解題」横井司
- 『大庭武年探偵小説選2』 論創社・論創ミステリ叢書22 2007.01.20
「小盗児市場の殺人」/「毒薬自殺綺譚」/「拾った拳銃」/「カジノの殺人事件」/「復讐綺談」/「歌姫失踪事件」/「タンヂーの口紅」/「難破船」/「三吉積罪物語」/「港の抒情詩」/「明けゆく満蒙」/△「文科教室」/△「探偵小説と私」/△「馬賊・義賊・その他」/△「亡き父を語る」/△「大連と探偵小説」/△「書かない弁」/△「ふるさと」/△「書かれざる傑作」/△「解題」横井司
- 『曠野に築く夢』(オンデマンド) 大陸書館 2023.05.10
△「作者の言葉」/「曠野に築く夢(中絶)」/△「曠野に築く夢 中断に就て」
参考文献
- 「大庭武年作品集について」島崎博
幻影城 1977.05.
- 「草原に消えた郷警部・大庭武年」鮎川哲也
EQ 1990.09.
『こんな探偵小説が読みたい』鮎川哲也 晶文社 1992.09.15
『幻の探偵作家を求めて 完全版(下)』鮎川哲也、日下三蔵編 論創社 2020.05.10
- 「大庭武年」西原和海、ほか
朱夏13号 1999.10.
- 「解題」横井司
『大庭武年探偵小説選1』 論創社・論創ミステリ叢書21 2006.12.10
『大庭武年探偵小説選2』 論創社・論創ミステリ叢書22 2007.01.20
- 「戦前期中国東北部刊行日本語資料の書誌的研究」岡村敬三
Web Site 「おおすみ書屋」収蔵庫 2009.03.
- 「雑誌『満蒙』における文芸とその時代」王占一
Web Site 名古屋大学学術機関リポジトリ 2019.09.
- 「満洲の霧、未だ晴れやらず……」いなばさがみ
SRマンスリー
- ほか
- 「大庭商会」「山葉洋行」
『記念誌 大連開業二十年聯合祝賀會』 遼東新報社 1924.12.01 (国DC)
※大庭仙三郎経歴と大庭商会写真
- (「富士製紙樺太工場建設工事概況」大庭仙三郎)
満州建築協会雑誌 1925.10.
※未見